U過去問を解いていたとき、「割引率5%・3年後の100万円の現在価値を求めよ」という問いに出会いました。電卓をたたきながら「なぜ将来のお金をわざわざ割り引くのか」という疑問が先に立って、計算の手が止まりました。その後「今もらう100万円と3年後の100万円は、同じ金額でも同じ価値ではない」という感覚を掴んだとき、割引計算の意味がようやくつながりました。この記事はその感覚から整理しています。
「現在価値(PV)」と「将来価値(FV)」は、財務・会計の中でも特にファイナンス分野の根幹をなす概念です。割引計算・現価係数・年金の現在価値・NPV(正味現在価値)——これらはすべて「お金の時間価値」という一つの考え方からつながっています。まず感覚を掴み、式の意味を理解することで、試験の計算問題にも自信を持って臨めるようになります。
お金の時間価値とは
「今もらう100万円」と「5年後にもらう100万円」——金額は同じでも、価値は同じではありません。これがお金の時間価値の本質です。なぜ現在のお金のほうが価値が高いのか、3つの理由があります。
この3つの理由から、現在のお金は将来のお金より価値が高いというのがファイナンスの大前提です。この考え方を定量的に表すツールが「将来価値(FV)」と「現在価値(PV)」の計算です。
将来価値(FV)の計算
現在の元本を一定の利率で複利運用したとき、n年後にいくらになるかを示したものが将来価値(Future Value)です。
計算例:100万円をr=5%・3年間複利運用した場合
複利の威力は年数が長くなるほど大きくなります。100万円を年利5%で運用したときの将来価値の推移を確認します。
| 期間 | r=3% | r=5% | r=10% | r=15% |
|---|---|---|---|---|
| 1年後 | 103.00万円 | 105.00万円 | 110.00万円 | 115.00万円 |
| 3年後 | 109.27万円 | 115.76万円 | 133.10万円 | 152.09万円 |
| 5年後 | 115.93万円 | 127.63万円 | 161.05万円 | 201.14万円 |
| 10年後 | 134.39万円 | 162.89万円 | 259.37万円 | 404.56万円 |
r=10%・10年後は元本の約2.6倍になります。複利は「利子にも利子がつく」ことで雪だるま式に増えていきます。単利(毎年の利子が元本にしか適用されない)との差は年数が長いほど広がります。



将来価値の表を見たとき、r=10%・10年後が約2.6倍になると気づいて「72の法則」を思い出しました。72÷金利=元本が2倍になるおおよその年数、という計算です。72÷10=7.2年。実際には10年で2.59倍なので少しずれますが、暗算で感覚を掴むには使えます。試験では電卓が使えるので直接計算しますが、この感覚は持っておくと数値の妥当性をチェックするのに役立ちます。
現在価値(PV)の計算
将来価値の逆算が現在価値(Present Value)です。「n年後に受け取るFV円は、今のお金に換算するといくらか」を求めます。将来のキャッシュフローを割り引く操作です。
現価係数とは、「1÷(1+r)^n」の値を事前に計算した係数です。この係数を将来価値に掛けるだけで現在価値が求まります。
よく使う現価係数の値をまとめます(試験では与えられることが多いですが、計算の流れを把握しておくことが重要です)。
| 期間(n) | r=5%の現価係数 | r=10%の現価係数 |
|---|---|---|
| 1年後 | 0.9524 | 0.9091 |
| 2年後 | 0.9070 | 0.8264 |
| 3年後 | 0.8638 | 0.7513 |
| 4年後 | 0.8227 | 0.6830 |
| 5年後 | 0.7835 | 0.6209 |
割引計算は4ステップで進めます。
PV = 115.76万円 × 0.8638 ≒ 100万円(元本に戻る)
年金の現在価値
毎年一定額のキャッシュフローを受け取る場合(例:毎年100万円・3年間)、年ごとに現価係数を掛けて合計することで現在価値が求まります。これを年金の現在価値と呼びます。
計算例:毎年100万円・r=5%・3年間の場合
| 受取タイミング | CF | 現価係数(r=5%) | 現在価値 |
|---|---|---|---|
| 1年後 | 100万円 | 0.9524 | 95.24万円 |
| 2年後 | 100万円 | 0.9070 | 90.70万円 |
| 3年後 | 100万円 | 0.8638 | 86.38万円 |
| 合計(年金の現在価値) | 272.32万円 | ||
この合計値を一発で求める係数が年金現価係数です。
| 期間(n) | r=5%の年金現価係数 | r=10%の年金現価係数 |
|---|---|---|
| 1年 | 0.9524 | 0.9091 |
| 2年 | 1.8594 | 1.7355 |
| 3年 | 2.7232 | 2.4869 |
| 4年 | 3.5460 | 3.1699 |
| 5年 | 4.3295 | 3.7908 |
年金現価係数は現価係数の累積合計です。毎年受け取るCFが一定の場合、係数をひとつ使うだけで合計の現在価値が求まります。1次試験では係数が問題文中に与えられることが多いので、「係数 × 毎期CF」という手順を確実に押さえておくことが重要です。
DCF法・NPVへの橋渡し
現在価値の考え方は、投資評価の実務・試験問題の両方で核心になります。特に重要なのがDCF法(Discounted Cash Flow)とNPV(Net Present Value:正味現在価値)です。
NPV > 0:投資する価値あり(割引後の収益が投資額を上回る)
NPV = 0:投資の回収がちょうど達成される(IRR=割引率)
NPV < 0:投資しないほうがよい(割引後の収益が投資額を下回る)
計算イメージ:初期投資250万円・毎年100万円のCF・r=5%・3年間の場合
| タイミング | CF | 現価係数(r=5%) | 現在価値 |
|---|---|---|---|
| 0年目(初期投資) | −250万円 | 1.0000 | −250.00万円 |
| 1年後 | +100万円 | 0.9524 | 95.24万円 |
| 2年後 | +100万円 | 0.9070 | 90.70万円 |
| 3年後 | +100万円 | 0.8638 | 86.38万円 |
| NPV(合計) | +22.32万円 | ||
NPV = 272.32万円 − 250万円 = 22.32万円(プラス)。この投資は5%の資本コストを考慮しても収益が上回るため、投資する価値があると判断できます。現在価値の計算は、最終的にこの投資判断に使われます。
過去問で確認する
なお、現価係数は以下を用いること。
・1年後:0.909 ・2年後:0.826 ・3年後:0.751
- ア 90.9万円
- ア 99.9万円
- ウ 90.9万円 → 121万円 × 0.751 = 90.87万円(正解:約90.9万円)
- エ 110万円
現価係数(r=10%):1年後0.909、2年後0.826
- ア −200万円
- イ 0万円
- ウ 約0.1万円(正解:ほぼゼロ)
- エ 31万円
2年後CF:121万円 × 0.826 = 99.95万円
PV合計 = 99.99 + 99.95 = 199.94万円
NPV = 199.94万円 − 200万円 ≒ −0.06万円(ほぼ0)
NPV ≈ 0 は、この投資の内部収益率(IRR)がちょうど割引率10%に等しいことを意味します。「NPV = 0 のとき割引率 = IRR」という関係の確認にもなります。
年金現価係数(r=5%・5年):4.329
- ア 200万円
- イ 216.5万円
- ウ 216.45万円(正解)
- エ 250万円
まとめ
- お金の時間価値の3理由:機会費用(投資できる)・インフレ(価値目減り)・不確実性(将来は不確か)
- 将来価値:FV = PV × (1+r)^n。現在価値:PV = FV ÷ (1+r)^n。この2式は表裏一体の関係
- 現価係数 = 1÷(1+r)^n。割引計算はFVに現価係数を掛けるだけで求まる
- 年金現価係数 = [1−(1+r)^(−n)]÷r。毎期一定CFの場合は係数を掛けるだけで合計の現在価値が出る
- NPV = Σ[CF÷(1+r)^t] − 初期投資。NPV>0なら投資価値あり、現在価値計算の集大成
- 試験では係数が与えられることが多い。「何を掛けるか」だけ迷わなければ計算は難しくない









