U価格を10%上げたら売上は増えるのか、それとも減るのか——この問いにすぐ答えられるかどうかが、弾力性を理解しているかどうかの分岐点です。数字で表せるシンプルな指標ですが、「どの財でどの方向に作用するか」を整理するまで、なかなかすっきりしませんでした。今回は価格弾力性・所得弾力性・交差弾力性を、グラフも交えて順に整理していきます。
弾力性とは「あるものが変化したとき、需要量がどのくらい反応するか」を示す指標です。価格が変わったとき・所得が変わったとき・関連財の価格が変わったとき——それぞれに対して需要量がどう動くかを、数値で表します。単なる暗記テーマではなく、「なぜその財はこの値になるのか」を理解すると、初見問題にも対応できるようになります。
価格弾力性の定義と計算式
符号について:需要の法則により価格↑ → 需要量↓ なので、本来はEdは負の値になります。試験では絶対値|Ed|で扱うことが多く、「Ed = 1.5」のように正の数で表記するのが一般的です。
Ed が大きい → 価格変化に需要が敏感に反応(弾力的)
Ed が小さい → 価格変化に需要があまり反応しない(非弾力的)
計算例で確認してみます。
Ed > 1 なので弾力的。価格上昇に対して需要量が大きく反応している。
Ed < 1 なので非弾力的。価格変化の割に需要量の減少が小さい。
Ed = 1 なので単位弾力的。変化率が完全に一致する特殊なケース。
弾力性の大小と需要曲線の形
弾力性の大小は、需要曲線の傾きの急さとして視覚化できます。縦軸を価格(P)、横軸を数量(Q)にとったとき、傾きが急な(立っている)曲線ほど非弾力的、傾きが緩い(寝ている)曲線ほど弾力的です。
価格変化 < 需要変化
価格変化 = 需要変化
価格変化 > 需要変化
極端なケースとして、完全弾力的(Ed=∞)は水平な需要曲線(価格が少しでも上がると需要がゼロになる)、完全非弾力的(Ed=0)は垂直な需要曲線(価格が何倍になっても需要量が変わらない)です。試験では「どのグラフが弾力的か」を問う設問が頻出です。



「価格を上げると売上が増えるか減るか」——これは弾力性の大小で決まる、と整理できたとき、かなりすっきりしました。弾力的な財なら値上げで客が逃げて売上が落ち、非弾力的な財なら値上げしても買われ続けるので売上が増える。これを数式で確認していきます。
総収入と弾力性の関係
総収入(TR)= 価格(P)× 需要量(Q)。価格が変化したとき、TRがどう動くかは弾力性の大小で決まります。
| 弾力性の種類 | Ed の値 | 価格を上げたとき | 価格を下げたとき |
|---|---|---|---|
| 弾力的 | Ed > 1 | 総収入は減少(需要減がPの上昇を上回る) | 総収入は増加(需要増がPの下落を上回る) |
| 単位弾力的 | Ed = 1 | 総収入は変化しない | 総収入は変化しない |
| 非弾力的 | Ed < 1 | 総収入は増加(需要減よりPの上昇が大きい) | 総収入は減少(Pの下落が需要増を上回る) |
所得弾力性と需要の分類
Ey > 0:所得が増えると需要も増える → 上級財(正常財)
Ey < 0:所得が増えると需要が減る → 下級財(劣等財)
Ey > 1(上級財のうち):所得増加率より需要増加率が大きい → 奢侈財(贅沢品)
交差弾力性(補完財・代替財)
Exy > 0(正):Y財の価格↑ → X財の需要↑ → Y財の代わりにX財を買う → 代替財(競合財)
Exy < 0(負):Y財の価格↑ → X財の需要↓ → Y財とX財はセットで使う → 補完財
Exy = 0:Y財の価格変化がX財の需要に影響しない → 独立財
身近な場面で考えてみると
弾力性の概念は、日常の価格動向に当てはめると記憶に残りやすくなります。
所得弾力性でいえば、景気が良くなると高級レストランの予約が増え、安価なファストフードへの需要が相対的に落ちる現象も、上級財・下級財の区分でそのまま説明できます。
過去問で確認する
ある財の価格弾力性が1より大きい(弾力的)とき、価格を引き上げた場合の総収入(TR)の変化として、最も適切なものはどれか。
- ア.総収入は減少する
- イ.総収入は増加する
- ウ.総収入は変化しない
- エ.弾力性の値が2以上か1〜2かによって異なる
弾力的(Ed > 1)の財では、価格上昇率よりも需要量の減少率が大きい。TR = P × Q なので、Qの減少率がPの上昇率を上回り、TRは減少する。値下げすれば逆に需要が大きく増え、TRは増加する。「弾力的な財は値下げで収入が増える」と覚えると判断しやすい。
所得弾力性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア.所得弾力性が正(プラス)の財は下級財と呼ばれる
- イ.所得弾力性が1を超える財は必需品(生活必需品)に分類される
- ウ.所得弾力性が負(マイナス)の財では、所得が増加すると需要量が減少する
- エ.所得弾力性はすべての財で0より大きくなる
ア:所得弾力性が正の財は「上級財(正常財)」。負の財が「下級財(劣等財)」(×)。
イ:所得弾力性が1を超えるのは奢侈財(贅沢品)。必需品は0〜1の範囲(×)。
ウ:Ey < 0 → 所得増加で需要が減少 → 下級財の定義そのもの(正解)。
エ:下級財ではEy < 0 となるため、すべての財でEy > 0 とはならない(×)。
まとめ
- 価格弾力性 Ed = 需要量変化率 ÷ 価格変化率。Ed > 1 が弾力的、Ed < 1 が非弾力的
- 需要曲線の形:弾力的=傾き緩(寝ている)、非弾力的=傾き急(立っている)
- 総収入と弾力性:弾力的→値下げで収入増、非弾力的→値上げで収入増
- 所得弾力性 Ey > 0 が上級財、Ey < 0 が下級財、Ey > 1 が奢侈財(贅沢品)
- 交差弾力性 Exy > 0 が代替財、Exy < 0 が補完財、Exy = 0 が独立財
- ギッフェン財は需要の法則の例外——価格上昇で需要が増えるが現実ではほぼ存在しない









