プロジェクト管理まとめ|PMBOK・WBS・ガントチャート・EVM(アーンドバリュー)を図解で整理

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過去問を解いていて、EVM(アーンドバリュー・マネジメント)の計算問題で手が止まりました。PV・EV・ACという3つの数値が出てきた瞬間、「これは何を意味しているのか」がぼんやりしていて。図で整理し直したら、プロジェクト管理の全体像がすっきりとつながったのです。PMBOKからWBS・ガントチャートまで、一度まとめておきたいと思って整理しました。

プロジェクト管理は、中小企業診断士1次試験「経営情報システム」の中でも計算問題が出る数少ない分野のひとつです。PMBOK・WBS・ガントチャートといった概念の定義問題だけでなく、EVM(アーンドバリュー・マネジメント)ではSPI・CPIの数値計算も問われます。この記事では、プロジェクト管理の全体像を図解で整理し、計算例とあわせて確認していきます。

目次

プロジェクト管理とは

DEFINITION
プロジェクトとは
独自の成果物を生み出すために行われる、有期性のある活動のこと。繰り返し行われる定常業務とは区別されます。
MANAGEMENT
プロジェクト管理とは
プロジェクトの目標(スコープ・スケジュール・コスト・品質)を達成するために、知識・スキル・ツールを適用する活動です。

プロジェクトには、次の3つの特性があります。

01
特性
有期性
明確な開始と終了がある
02
特性
独自性
毎回異なる成果物を生み出す
03
特性
段階的な詳細化
進行とともに計画を精緻化する

PMBOKについて

PMBOKとは「Project Management Body of Knowledge」の略で、プロジェクト管理に関する知識体系(フレームワーク)です。特定の手法や方法論ではなく、「何を知っておくべきか」をまとめた標準的なガイドラインにあたります。米国のPMI(Project Management Institute)が整備・発行しています。

項目内容
名称PMBOK Guide(PMBOKガイド)
性格知識体系・フレームワーク(特定の手法ではない)
発行元PMI(Project Management Institute)
構成5つのプロセス群 × 10の知識エリア
試験との関係1次試験「経営情報システム」で基本概念が出題される

PMBOKの5つのプロセス群

PMBOKでは、プロジェクトの活動を5つのプロセス群に分類しています。プロジェクトの流れに沿って順番に把握しておくと、全体像が見えやすくなります。

01
立上げ
Initiating
02
計画
Planning
03
実行
Executing
04
監視・
コントロール
Monitoring
05
終結
Closing
01 立上げ
プロジェクト憲章の作成
プロジェクトの目的・スコープ・承認者を定義し、正式にプロジェクトを認可します。プロジェクトマネジャーもここで任命されます。
02 計画
計画の策定・WBS作成
スコープ・スケジュール・コスト・品質・リスク等の計画を策定します。WBSの作成もこのプロセスで行います。最もプロセス数が多い群です。
03 実行
作業の実施・チーム管理
計画に従って実際の作業を実施します。チームメンバーの育成・コミュニケーション管理なども含まれます。
04 監視・コントロール
進捗追跡・変更管理
計画と実績を比較し、差異があれば是正措置を取ります。EVMによる進捗測定はこのプロセスで活用されます。
05 終結
成果物の引渡し・教訓整理
成果物を顧客に引き渡し、プロジェクトを正式に終了します。得られた教訓を記録に残すことも重要な作業です。

監視・コントロールは立上げ以外のすべてのプロセスと並行して行われます。計画を立てたら終わりではなく、実行中も継続的に状況を把握し続けることがポイントです。

WBS(作業分解構造)

WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構造)は、プロジェクトのスコープを管理可能な単位に分解するための手法です。ここで重要なのは、WBSが分解するのは「タスク」ではなく「成果物」である点です。

プロジェクト (例:Webサイト構築) 要件定義 成果物1 設計 成果物2 開発・実装 成果物3 テスト・公開 成果物4 フロントエンド実装 ワークパッケージ バックエンド実装 ワークパッケージ プロジェクト全体 成果物(中間レベル) ワークパッケージ(最小単位)
WBSの目的
スコープの明確化
「何を作るか」をすべて洗い出し、漏れをなくします。WBSに含まれていない作業はスコープ外と見なされます(スコープ定義の根拠となる文書です)。
ワークパッケージ
WBSの最小単位
WBSの最下位に位置する成果物の単位。工数見積もり・コスト計算・担当割当てはこの単位で行います。これ以上分解しない「管理の最小単位」です。
スコープ定義との関係
WBS辞書
WBSの各要素の詳細(作業内容・担当者・完了条件等)を記述した文書をWBS辞書と呼びます。スコープの管理に不可欠な補足資料です。
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WBSとガントチャートの関係で最初に混乱したのですが、整理すると「WBS=何をつくるか(成果物の分解)」「ガントチャート=いつ作業するか(時系列の計画)」という順序になっています。WBSで成果物を洗い出してから、それを作る作業をスケジュールに落とし込むのですね。

スケジュール管理

スケジュール管理では、WBSで定義した成果物を実際にいつ・どの順番で作業するかを計画します。主要な手法として、ガントチャートPERT/CPMが試験に頻出です。

GANTT CHART
ガントチャート
横軸を時間、縦軸をタスクとする棒グラフ形式のスケジュール表。作業の開始・終了日が一目でわかります。

進捗管理がしやすい一方で、タスク間の依存関係が見えにくいという欠点があります。
PERT / CPM
PERT・クリティカルパス法
タスク間の依存関係(先行・後続)をネットワーク図で表現する手法。クリティカルパス(最長経路=プロジェクト完了に最低限必要な期間)を特定できます。

クリティカルパスとは

ネットワーク図上のすべての経路の中で、所要時間の合計が最大となる経路のこと。クリティカルパス上のタスクが1日でも遅延すると、プロジェクト全体の完了が遅れます。逆に言えば、クリティカルパス外のタスクには「余裕時間(フロート)」があります。

手法特徴得意なこと
ガントチャート棒グラフ形式・視覚的にわかりやすい進捗の見える化・報告資料
PERTネットワーク図・確率的な所要時間推定不確実性が高いプロジェクト
CPMネットワーク図・確定的な所要時間クリティカルパスの特定・短縮策の検討

PERT/CPMの詳しいネットワーク図の解き方は、「PERT・クリティカルパス法」の記事で計算例とあわせて整理しています。試験の計算問題対策にはあわせてご確認ください。

EVM(アーンドバリュー・マネジメント)

EVM(Earned Value Management:アーンドバリュー・マネジメント)は、スケジュールとコストを同時に監視するプロジェクト管理手法です。3つの基本指標を使って、現在の進捗と予算消化の状況を数値で把握できます。1次試験でも計算問題として出題されることがある重要テーマです。

PV
計画価値
Planned Value
ある時点までに完了する予定だった作業の予算額。「計画上、いくらの仕事が終わっているはずか」を示します。
EV
出来高
Earned Value
ある時点までに実際に完了した作業の予算額。「実際にいくら分の仕事が終わったか」を示します。EVMの核心となる指標です。
AC
実際コスト
Actual Cost
ある時点までに実際に発生したコストの総額。「実際にいくらお金を使ったか」を示します。

SPI・CPIの計算式

SPI
スケジュール効率指数(Schedule Performance Index)
SPI = EV ÷ PV
SPI > 1.0計画より進んでいる
SPI = 1.0計画通り
SPI < 1.0計画より遅れている
CPI
コスト効率指数(Cost Performance Index)
CPI = EV ÷ AC
CPI > 1.0予算より少ないコストで済んでいる
CPI = 1.0予算通り
CPI < 1.0予算超過気味

計算例:Webサイト制作プロジェクトで確認する

EVMの計算例|Webサイト制作プロジェクト(測定時点:3か月目)
PV(計画価値):この時点で完了予定だった作業量の予算600万円
EV(出来高):実際に完了した作業量の予算換算値480万円
AC(実際コスト):実際に使ったコスト560万円
SPI = EV ÷ PV = 480 ÷ 6000.80(計画より遅れている)
CPI = EV ÷ AC = 480 ÷ 5600.857(予算超過気味)
この状況の意味:作業の進みは計画の80%しか達成できていない上に、かけたコストは予算を超えている。スケジュールとコストの両面で対策が必要な状態です。
SV(スケジュール差異)= EV − PVSV がマイナス → スケジュール遅れ (上記例:480万 − 600万 = −120万)
CV(コスト差異)= EV − ACCV がマイナス → コスト超過 (上記例:480万 − 560万 = −80万)

リスク管理と品質管理

プロジェクト管理では、スケジュール・コスト管理に加えてリスク管理品質管理も重要な知識エリアです。試験では特にリスク対応戦略の4分類が問われやすい内容です。

リスク対応の4戦略

01
回避(Avoid)
リスクそのものをなくす
リスクが発生する原因となる作業や計画を変更し、リスクを根本から取り除きます。例:技術的に不確実な機能の削除。
02
転嫁(Transfer)
第三者に移転する
リスクの影響を外部(保険会社・外注先等)に移します。財務的なリスクに対して有効な手段です。例:外注契約・損害保険。
03
軽減(Mitigate)
発生確率・影響度を下げる
リスクが起こる可能性や、起きた際の影響を小さくするための対策を事前に講じます。例:テストの強化・早期プロトタイプ。
04
受容(Accept)
リスクをそのまま受け入れる
コスト対効果の観点から、対策を講じずにリスクを許容します。「能動的受容(コンティンジェンシー予備を設ける)」と「受動的受容」があります。

品質管理との関係

概念内容タイミング
品質計画品質基準・測定方法・管理手法を定義する計画プロセス
品質保証(QA)プロセスが品質基準に従っているか監査する実行プロセス
品質コントロール(QC)成果物が品質基準を満たしているか検査する監視・コントロール

QC(品質コントロール)に関連するツールとして、特性要因図・管理図・ヒストグラム・パレート図などのQC7つ道具が挙げられます。これらはオペレーション管理(運営管理)の品質管理分野とも重なります。

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リスク対応の4戦略は「回避・転嫁・軽減・受容」と4文字で覚えていますが、試験では各戦略の事例がどれに当たるかを問われることが多いのです。「外注に依頼した」は転嫁、「プロトタイプで早期検証した」は軽減、といった具合に事例と対応づけて整理しておくと、問題文を読んだときに迷いにくくなりました。

過去問で確認する

プロジェクト管理の出題は、概念の定義問題とEVMの計算問題の両方が確認されています。特にEVMの計算は手を動かして解いてみると定着しやすいです。

過去問 01|PMBOKのプロセス群 経営情報システム・基本概念
PMBOKに示されるプロジェクトマネジメントのプロセス群に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 立上げプロセス群では、プロジェクトのWBSを作成する。
  • イ 計画プロセス群は、プロジェクトマネジメントプロセス群の中でプロセス数が最も多い。
  • ウ 実行プロセス群では、スコープのコントロールを行う。
  • エ 終結プロセス群では、リスク対応策の立案を行う。
解答・解説
正解はイ。計画プロセス群はPMBOKの中でプロセス数が最も多く、スコープ・スケジュール・コスト・品質・リスクなど多岐にわたる計画を策定します。
ア:WBSの作成は計画プロセス群。ウ:スコープのコントロールは監視・コントロールプロセス群。エ:リスク対応策の立案は計画プロセス群。
過去問 02|WBSの基本概念 経営情報システム・WBS
WBS(Work Breakdown Structure)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア WBSとは、プロジェクトのスケジュールを時系列で表すガントチャートの別名である。
  • イ WBSは、プロジェクトで行うべき作業(タスク)を時間軸に沿って分解したものである。
  • ウ WBSは、プロジェクトのスコープを成果物志向で階層的に分解したものである。
  • エ WBSの最下位の要素をクリティカルパスと呼ぶ。
解答・解説
正解はウ。WBSは「成果物」を基準に階層的に分解するものです。タスクではなく成果物ベースである点が重要です。
ア:ガントチャートは別のスケジュール管理ツール。イ:WBSは時間軸ではなく成果物の分解。エ:WBSの最下位要素は「ワークパッケージ」。クリティカルパスはPERT/CPMの概念。
過去問 03|EVMの計算問題 経営情報システム・EVM計算
あるプロジェクトの測定時点において、PV(計画価値)= 800万円、EV(出来高)= 640万円、AC(実際コスト)= 700万円であった。このときのSPI(スケジュール効率指数)とCPI(コスト効率指数)の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
  • ア SPI=0.80、CPI=0.914
  • イ SPI=0.80、CPI=0.914(正解は同じ値だが選択肢の意味の説明が問われる)
  • ウ SPI=1.25、CPI=1.09
  • エ SPI=0.80、CPI=1.09
解答・解説
SPI = EV ÷ PV = 640 ÷ 800 = 0.80(1未満 → スケジュール遅れ)
CPI = EV ÷ AC = 640 ÷ 700 ≒ 0.914(1未満 → コスト超過気味)

SPI<1かつCPI<1という状態は、進捗が計画より遅れていて、かつコストも予算を上回っているという二重の問題を示しています。プロジェクトの立て直しが急務な状況です。
U のメモ
EVM を勉強して一番「なるほど」と思ったのは、EV という概念の発想です。「実際に完了した作業の予算換算値」という考え方で、進捗とコストを同じ単位(お金)で比較できるようにしているのですね。SPI・CPI が両方1以上であれば理想ですが、試験ではどちらかが1を割っている状況の「意味」を問われるケースが多い印象です。計算自体は単純な割り算なので、3指標(PV・EV・AC)の定義を正確に覚えることが最初の一歩だと感じています。
  • PMBOKは「手法」ではなく「知識体系(フレームワーク)」
  • WBSが分解するのは「タスク」でなく「成果物」
  • EVM3指標:PV(計画)・EV(出来高)・AC(実際コスト)
  • SPI = EV÷PV、CPI = EV÷AC(いずれも1以上が良好)
  • リスク対応4戦略:回避・転嫁・軽減・受容
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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