U過去問を解いていて「標準時間の計算式、外掛けと内掛けのどちらを使えばいいのか」で手が止まりました。IE(インダストリアルエンジニアリング)は計算式の暗記だけでなく、作業研究全体の構造を理解していないと選択肢で迷う場面が多いのですよね。ここで改めて整理してみます。
IE(インダストリアルエンジニアリング)は、運営管理の中でも出題頻度が安定して高い領域のひとつです。「標準時間の計算」はほぼ毎年のように問われますし、サーブリッグ分析や稼働率といった用語も繰り返し登場します。今回は作業研究の全体像から計算式の使い分けまで、ひとつひとつ丁寧に整理してみます。
目次
IEとは何か
IEとは
Industrial Engineering(経営工学)の略。人・機械・材料・設備の最適な組み合わせを科学的に分析し、生産性を高める手法の体系です。
起源と背景
テイラーの科学的管理法(20世紀初頭)を基盤に、ギルブレス夫妻の動作研究が加わり発展。「勘と経験」に頼らない、測定・分析・改善の考え方が特徴です。
目的
作業の標準化・効率化・コスト削減。「最も良いやり方」を見つけ、誰でも同じ品質・時間で作業できる状態を目指します。
作業研究の2本柱
方法研究
Method Study
作業のやり方を分析・改善する
動作研究(サーブリッグ分析)
工程分析(流れ線図・工程図記号)
連合作業分析・フローダイアグラム
作業測定
Work Measurement
作業にかかる時間を測定・標準化する
ストップウォッチ法(時間研究)
ワークサンプリング(瞬間観測法)
標準時間の設定が最終目的
POINT — サーブリッグ分析
ギルブレス夫妻が考案した「動作の最小単位」への分解
作業を18種類の基本動作(サーブリッグ)に分解し、無駄な動作を発見・除去する手法です。「つかむ」「運ぶ」「組み合わせる」「検査する」などの単位で分析するため、微細な動作の改善につながります。「サーブリッグ」という名前はギルブレス(Gilbreth)のアルファベットを逆から読んだものです。
| 工程記号 | 記号 | 意味・内容 |
|---|---|---|
| 加工(処理) | ○(丸) | 対象物の品質・形状が変化する主体作業 |
| 運搬 | →(矢印) | 対象物の位置が変化する移動 |
| 検査 | □(四角) | 品質・数量の確認・判定 |
| 停滞(遅延) | D(D字) | 計画外の一時的な停止・待ち |
| 貯蔵 | ▽(三角) | 計画的な保管・在庫 |



方法研究と作業測定、この2つが「車の両輪」というイメージで整理できると、その後の標準時間の話がスムーズにつながります。「どうやるか」を決めてから「どのくらい時間がかかるか」を測る、という順序ですのでのです。
標準時間の計算
標準時間(ST)の計算式
ST(標準時間)
=
NT(正味時間)
×
(1 + 余裕率)
※余裕率を「外掛け」で計算する場合(正味時間に対する割合)
ST(標準時間)
=
NT(正味時間)
÷
(1 − 余裕率)
※余裕率を「内掛け」で計算する場合(標準時間に対する割合)
正味時間(NT)観測時間 × レイティング係数(熟練度補正)
余裕率(外掛け)余裕時間 ÷ 正味時間 × 100
余裕率(内掛け)余裕時間 ÷ 標準時間 × 100
レイティング係数100%が標準熟練度。110%なら10%速い作業者
余裕の内訳
個人余裕
生理的余裕
トイレ・水分補給など、生理的な必要に基づく余裕時間
疲労余裕
疲労余裕
作業による疲労で能率が低下する分を見込んだ余裕時間
職場余裕
職場余裕
機械の調整・材料待ちなど、職場の運営上避けられない待ち時間
計算例で確認する
01
与えられた条件
観測時間 = 120秒 / レイティング係数 = 110% / 余裕率 = 10%(外掛け)
02
正味時間(NT)を求める
NT = 観測時間 × レイティング係数 = 120秒 × 1.10
NT = 132秒
03
標準時間(ST)を求める(外掛け)
ST = NT × (1 + 余裕率) = 132秒 × (1 + 0.10) = 132 × 1.10
ST = 145.2秒
身近な場面で考えてみると
具体例 — コンビニのレジ作業
コンビニのレジ打ちを「標準時間」で整理してみる
コンビニのレジで1件の会計にかかる時間を考えてみます。ベテランのスタッフさんと研修中のスタッフさんでは同じ作業でも速さが違います。IEではこの差を「レイティング係数」として補正し、誰が担当しても通用する「標準的な時間」を算出します。
観測対象
新人スタッフが商品スキャン〜釣り銭受け渡しまで観測。平均90秒かかった
レイティング係数
新人のため標準より遅いと判断。レイティング係数を90%と設定
余裕
個人余裕・疲労余裕・職場余裕(袋詰め対応等)を合わせて余裕率10%
算出の目的
「1人で1時間に何件対応できるか」を見積もるための標準値として活用
NT = 90秒 × 0.90 = 81秒
ST = 81秒 × (1 + 0.10) = 89.1秒 ≒ 約90秒(標準時間)
1時間(3,600秒)÷ 90秒 = 約40件/時間 という稼働計画の根拠になります
ST = 81秒 × (1 + 0.10) = 89.1秒 ≒ 約90秒(標準時間)
1時間(3,600秒)÷ 90秒 = 約40件/時間 という稼働計画の根拠になります



「なぜ観測時間をそのまま使わないのか」というところが最初はわかりにくかったのですが、観測した作業者がたまたま速い人だったり遅い人だったりするので、レイティングで「標準的な速さに換算する」という補正が必要なのですよね。そのうえで余裕時間を足して「現実的に誰でも達成できる時間」にするという流れが整理できました。
稼働分析と作業改善
主体作業
直接作業
付加価値を直接生み出す作業。製品の加工・組み立てなど。
例:部品の溶接、商品の陳列
付随作業
間接作業
主体作業の準備・後処理など、間接的に必要な作業。
例:材料の取り出し、工具の準備・後片付け
余裕・ロス
非作業
手待ち・調整・休憩など、付加価値に結びつかない時間。削減の対象。
例:機械待ち、不良品の手直し、ミーティング
| 指標・手法 | 内容 |
|---|---|
| 稼働率 | 直接作業時間 ÷ 総作業時間 × 100(%)。高いほど効率的 |
| ワークサンプリング | ランダムな時点に作業状態を瞬間観測し、稼働率を統計的に推定する手法。長時間の継続観測が不要で、コストが低い |
| 連合作業分析 | 作業者と機械の作業を時間軸で並べて可視化し、待ち時間(ロス)を発見する |
過去問で確認する
平成26年度 第16問(運営管理)
標準時間の計算
観測時間の平均が100秒、レイティング係数が120%、余裕率が20%(外掛け)のとき、標準時間として最も適切なものはどれか。
- ア 100秒
- ア 120秒
- ウ 144秒
- エ 150秒
解説
NT = 100秒 × 1.20 = 120秒
ST = 120秒 × (1 + 0.20) = 120 × 1.20 = 144秒
外掛けの場合は「× (1 + 余裕率)」を使います。内掛けの場合は「÷ (1 − 余裕率)」となるため、問題文で「外掛け・内掛けのいずれか」を必ず確認することが大切です。
ST = 120秒 × (1 + 0.20) = 120 × 1.20 = 144秒
外掛けの場合は「× (1 + 余裕率)」を使います。内掛けの場合は「÷ (1 − 余裕率)」となるため、問題文で「外掛け・内掛けのいずれか」を必ず確認することが大切です。
平成29年度 第13問(運営管理)
サーブリッグ分析
サーブリッグ分析に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 作業を流れの観点から加工・運搬・検査・停滞・貯蔵の5種類に分類する手法である
- イ 作業を18種類の基本動作要素に分解して動作の改善に活用する手法であり、考案者の名前に由来している
- ウ 稼働率を統計的に推定するために、ランダムな時刻に作業状態を観測する手法である
- エ 標準時間を設定するために、観測時間にレイティング係数と余裕率を用いて算出する手法である
解説
正解はイ。サーブリッグ(Therblig)は考案者ギルブレス(Gilbreth)の名前を逆から読んだものです。ア は工程分析(5工程)の説明、ウ はワークサンプリング、エ は標準時間の算出手順の説明であり、それぞれ別の手法です。各手法の定義を混同しないよう整理しておくと得点につながります。
令和3年度 第11問(運営管理)
稼働分析・稼働率
ある工場で1人の作業者を4時間観測したところ、直接作業が144分、間接作業が72分、非作業(手待ち・休憩等)が24分であった。このとき稼働率として最も適切なものはどれか。
- ア 50%
- ア 55%
- ウ 60%
- エ 70%
解説
総作業時間 = 4時間 = 240分
直接作業時間 = 144分
稼働率 = 144 ÷ 240 × 100 = 60%
稼働率の分子は「直接作業時間」のみです。間接作業を含めてしまう誤りが多いため、定義をしっかり確認しておきましょう。
直接作業時間 = 144分
稼働率 = 144 ÷ 240 × 100 = 60%
稼働率の分子は「直接作業時間」のみです。間接作業を含めてしまう誤りが多いため、定義をしっかり確認しておきましょう。
U のメモ
外掛けと内掛けの使い分けは「余裕率の定義」を確認することが先決だと気づきました。外掛けは「余裕時間 ÷ 正味時間」、内掛けは「余裕時間 ÷ 標準時間」という定義の違いがそのまま計算式の形に反映されています。問題文で「どちらの定義か」が明示されているときはそちらに従い、曖昧なときは問題の選択肢と照らし合わせるのが現実的なのではないかと思っています。サーブリッグ・工程分析・ワークサンプリングは「どの手法か」を正確に選べるよう、定義の違いを3つ並べて確認しておくと選択問題で点が安定します。
- IEは方法研究(やり方の改善)と作業測定(時間の標準化)の2本柱
- サーブリッグ分析はギルブレス夫妻考案、18種類の基本動作に分解
- 標準時間 = 正味時間 × (1 + 余裕率)〔外掛け〕、または ÷ (1 − 余裕率)〔内掛け〕
- 正味時間 = 観測時間 × レイティング係数(熟練度補正)
- 稼働率 = 直接作業時間 ÷ 総作業時間 × 100(間接作業は含めない)
- ワークサンプリングは瞬間観測による稼働率の統計的推定









