Uスーパーの棚を眺めていたとき、人気商品のコーナーだけ空になっているのを見かけました。「なぜ切らしてしまうのか」「なぜ逆に山積みになる商品があるのか」。その疑問から在庫管理の仕組みを調べ始めたら、EOQ・安全在庫・ABC分析という3つの考え方が軸になっていることがわかってきました。
在庫管理の3つの基本課題
在庫管理の難しさは「多すぎてもコストがかかり、少なすぎても機会損失になる」というトレードオフにあります。まず3つの基本課題を整理します。
EOQ(経済的発注量)|最適な発注量を求める
EOQ(Economic Order Quantity)は、発注コストと保管コストの合計が最小になる「最適な1回あたり発注量」を求める計算式です。在庫管理の中心的な定量手法であり、試験でも計算問題として頻出です。
- D:年間需要量(個/年)
- S:1回あたりの発注費用(円/回)
- H:1単位あたりの年間保管費用(円/個・年)
EOQ = √(2 × 1,200 × 5,000 ÷ 200)= √60,000 ≈ 245個
コスト最小化の直感的な理解
発注量を増やすと1回あたりの発注頻度は減るため「発注コストは下がる」一方、1回に多く仕入れる分だけ平均在庫が増えて「保管コストが上がる」。逆に発注量を小さくすれば保管コストは下がるが発注コストが上がる。この2つが均衡する点がEOQです。



発注コストと保管コストはトレードオフの関係にある。EOQはその均衡点であって、どちらか一方のコストが最小になるわけではない——この直感をつかんでから計算式を見ると、なぜ√(2DS/H)という形になるのかが自然と腑に落ちました。
安全在庫と発注点|いつ発注するか
EOQで「何個発注するか」が決まったら、次は「いつ発注するか」を決める必要があります。その基準が発注点(ROP)であり、その計算に安全在庫が組み込まれます。
- 需要やリードタイムの変動に備えるバッファ在庫。変動が大きいほど多く必要。
- 安全係数は許容する品切れ確率から決まる(例:95%サービス率 → 1.65)。
- 在庫がROPを下回った時点で発注を出すことで、リードタイム後に品切れを起こさず入荷できる。
ROP = 10 × 5 + 15 = 65個 → 在庫が65個を下回ったら発注する
発注から入荷までのステップフロー
ABC分析|重要度で在庫を分類する
すべての在庫品目を同じ基準で管理しようとすると、コストと手間が膨大になります。ABC分析はパレートの法則を応用し、売上高や重要度に基づいてA・B・Cの3クラスに分類することで、管理の重点を適切に配分する手法です。
| クラス | 品目数の比率 | 売上高の比率 | 管理方針 |
|---|---|---|---|
| A クラス | 約20% | 70〜80% | 厳重管理・定期発注・頻繁な棚卸し |
| B クラス | 約30% | 15〜20% | 標準的な管理・定期的なレビュー |
| C クラス | 約50% | 5〜10% | 簡略管理・まとめ発注・定量発注方式 |
A / B / C クラスの比率イメージ
定量発注方式 vs 定期発注方式
発注のタイミングと量の決め方には大きく2つの方式があります。それぞれの特徴を理解し、どの品目に適しているかを把握しておくことが試験でも問われます。
- 毎回一定量(EOQ)を発注する
- 発注のタイミングは在庫水準によって変わる
- 需要が安定している品目に向く
- 管理が比較的シンプルで手間が少ない
- 重要度の高いAクラス品目に適用
- 毎回の発注量は在庫状況に応じて変える
- 発注のタイミングは一定(週次・月次など)
- 需要変動への柔軟な対応が可能
- 高価な品目・需要変動が大きい品目に向く
- 管理は煩雑だが在庫の精緻な制御ができる
過去問で確認する
- ア 発注コストが増加するとEOQは小さくなる
- イ 保管コストが増加するとEOQは小さくなる
- ウ 年間需要が増加するとEOQは小さくなる
- エ EOQの水準では保管コストの総額が最小になる
・ア:発注コスト(S)が増えると2DS/Hの分子が増えるためEOQは大きくなる → 誤り
・イ:保管コスト(H)が増えると分母が増えるためEOQ = √(2DS/H’)< √(2DS/H)となり小さくなる → 正解
・ウ:年間需要(D)が増えると2DS/Hが増えるためEOQは大きくなる → 誤り
・エ:EOQの水準では「保管コスト=発注コスト」となり両者の合計が最小になる。保管コスト単体の最小ではない → 誤り
- ア Aクラスは品目数が最も多く、売上高に占める割合は低い
- イ CクラスはAクラスよりも厳重に管理する必要がある
- ウ ABC分析はパレートの法則を在庫管理に応用したものである
- エ 定量発注方式はCクラス品目の管理に特に適している
・イ:売上高への貢献が最も大きいAクラスをより厳重に管理する。CをAより重点管理するのは逆 → 誤り
・ウ:「20%の品目が80%の売上を占める」パレートの法則を在庫管理に応用した手法がABC分析 → 正解
・エ:定量発注方式(発注点方式)は需要が安定したAクラスの重要品に適している。Cクラスはまとめ発注・簡略管理が基本 → 誤り
- EOQ = √(2DS/H)。発注コストと保管コストのトレードオフが均衡する最適発注量。EOQの水準では保管コスト=発注コストが成立し、合計が最小になる。
- 安全在庫は需要変動・リードタイムのずれに備えるバッファ。発注点(ROP)= 平均需要 × リードタイム + 安全在庫で算出する。
- ABC分析はパレートの法則の応用。A(品目20%・売上70〜80%)を最重要管理し、C(品目50%・売上5〜10%)は簡略化する。
- 定量発注方式は発注量一定・タイミング変動。A品目向け。定期発注方式は発注タイミング一定・量変動。高価品・需要変動大の品目向け。
- 試験の引っかけとして「EOQで保管コストが最小になる(×)」「AよりCを厳重管理(×)」「発注コスト増でEOQ小(×)」が頻出。式の構造を理解しておくと確実。









