商標法まとめ|商標権の取得要件・効力・更新・6種類の商標を図解で整理

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過去問を解いていて「商標権は10年で更新できる」とは覚えていたのですが、「では更新の回数に制限はあるのか」と問われると、一瞬手が止まってしまいました。それをきっかけに商標法の全体像を整理し直したところ、6種類の商標の分類から不使用取消審判まで、意外と体系としてスッキリまとまるものだと気づきました。

商標法は、商品やサービスに使うブランド名・ロゴマークを保護する法律です。特許法が「発明のアイデア」を守るのに対し、商標法は「そのブランドが誰のものか」を識別するしるしを守ります。
存続期間は登録から10年で何度でも更新でき(特許の20年・更新不可と好対照)、事業が続く限り権利を維持できる点が大きな特徴です。

6 商標の種類
(2015年改正で拡充)
10年 存続期間
(更新回数は無制限)
3年 不使用取消審判
の不使用期間
目次

商標法とは

目的・保護対象・特許法との違い
商標法の目的(第1条)
商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。

商標法が守るのは「ブランドの信用」です。長年かけて育ててきたロゴや店名が、別の誰かに無断で使われると、消費者は「どちらが本物か」を判断できなくなります。その混乱を防ぎ、作り手の信用も消費者の安心も両方守るのが商標法の役割です。

比較項目 商標法 特許法
保護対象 商標(ブランド名・ロゴ等) 発明(技術的アイデア)
保護の目的 業務上の信用・需要者保護 発明の奨励・産業発達
登録の方式 登録主義・先願主義 登録主義・先願主義
存続期間 10年(更新回数は無制限) 出願から20年(更新不可)
権利発生 登録により発生 登録により発生
使用義務 あり(3年不使用で取消可) なし

商標の種類(6種類)

2015年商標法改正で追加された新しい商標

2015年(平成27年)の商標法改正により、従来の文字・図形・立体に加え、色彩のみからなる商標・音商標・動き商標・ホログラム商標・位置商標が新たに保護対象となりました。試験ではとくに「音商標」と「色彩のみからなる商標」の追加が問われやすいため、きちんと押さえておきたいところです。

文字商標
従来から
文字・数字・アルファベット等からなる商標。ブランド名・会社名など
図形商標
従来から
図形・記号・絵等からなる商標。ロゴマーク・シンボルマークなど
立体商標
従来から
立体的形状からなる商標。コカ・コーラのボトル形状など
色彩のみからなる商標
2015年追加
単色または複数の色彩の組み合わせのみからなる商標。高い識別力が必要
音商標
2015年追加
音楽・音声・自然音等からなる商標。CMのサウンドロゴなど
結合商標
従来から
文字・図形・立体的形状等を組み合わせた商標。多くの企業ロゴはこれに該当
2015年改正で追加された5種類
音商標・色彩のみからなる商標のほか、動き商標(動画のロゴアニメーション等)、ホログラム商標(光の反射で変化する標識)、位置商標(商品の特定位置に付ける標識)の3種類も同時に追加されています。試験では「音商標」「色彩のみ」の2つが特に頻出です。

商標権の取得要件

登録主義・先願主義・識別力・登録不可商標
商標権を取得するための基本原則
登録主義
商標権は特許庁への出願・審査・登録によって発生する。使用している事実だけでは権利を取得できない(著作権の無方式主義とは異なる点に注意)。
先願主義
同一・類似の商標が複数出願された場合、最も早く出願した者が登録を受けられる。「先に使っていた」ことより「先に出願した」ことが優先される。
識別力の具備
自己の商品・役務を他人のものと識別できる力(識別力)が必要。産地・品質・普通名称など、誰もが使いたい言葉は原則として登録できない。
指定商品・指定役務との結びつき
商標権はどの商品・サービスに使うか(指定商品・指定役務)と一体で登録される。異なる分野には権利が及ばない場合がある。
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「識別力のない商標は登録できない」という原則は、具体例と一緒に頭に入れると定着しやすいように感じます。「産地・品質・普通名称・慣用商標・ありふれた氏名や外観」という5分類で整理しておくと、過去問の選択肢を見たときに判断がつきやすくなりました。

識別力がないとして登録できない商標(第3条)
産地・販売地
「京都産」「銀座」など、産地・販売地を普通に表したもの。特定企業の独占は許されないという発想。
品質・効能
「新鮮」「高品質」「最高級」など、商品・サービスの品質・効能を直接表したもの。
普通名称
「ラーメン」「コーヒー」など、商品の一般的な呼び名。登録しても他者が自由に使えなくなるため認められない。
慣用商標
業界で一般的に使われるようになった標章。かつて特定ブランドだったものが一般化した場合など。
ありふれた氏名
「田中」「山田」など、極めて多くの人が持つ氏名・名称。
識別力を後天的に獲得した場合(第3条2項)
上記のような本来は識別力がない商標でも、長年の使用によって需要者の間に広く知られ、自己の業務にかかる商品・役務を表示するものとして識別できるようになった場合には、例外的に登録が認められることがあります(使用による識別力の取得)。

また、第4条では公序良俗に反するもの・国旗・国際機関の紋章と紛らわしいもの・他人の著名な商標と類似するものなど、公益的観点や他者の権利保護の観点から登録が認められない商標も定められています。

商標権の効力と存続期間

専用権と禁止権・10年更新・指定商品
10年
存続期間
登録日から10年間
権利が続く
特許:出願から20年
無制限
更新回数
10年ごとに更新申請
すれば永続して維持可
特許:更新不可
3年
不使用取消
継続して3年間
不使用で取消請求可
使用義務あり
専用権(独占使用)
登録商標を独占的に使用できる権利
指定した商品・役務について、登録した商標を自分だけが使える権利。他者は同意なく使用できない。
例:登録したブランドロゴを商品に表示する、広告に使用する
禁止権(侵害排除)
類似する商標の使用を禁止できる権利
登録商標と同一・類似の商標を、指定商品・役務と同一・類似の分野で使う行為を禁止できる権利。
例:紛らわしいロゴを使う競合他社に使用中止を求める

商標権は指定商品・指定役務と一体になっています。同じ文字・マークでも、まったく異なる分野(例:食品と電子機器)では別々に登録できることがあります。権利の及ぶ範囲は「商標が同一・類似」かつ「指定商品・役務が同一・類似」の双方を満たす必要があります。

特許との存続期間の違い(試験頻出)
特許権は出願日から20年で消滅し、更新はできません。一方、商標権は登録日から10年ですが、期間満了前に更新申請をすれば何度でも継続できます。ブランドは長く育てるものですから、この差は合理的です。試験では「特許20年・更新不可」「商標10年・更新可能(無制限)」のセットで覚えておくと比較問題に対応しやすいです。

商標権の侵害と不使用取消審判

侵害判断の基準・不使用取消審判(3年)

商標権の侵害が成立するには、①商標が同一または類似であること、②指定商品・役務が同一または類似であること、の両方を満たす必要があります。どちらか一方だけでは原則として侵害にはなりません。

1
商標の同一・類似の判断
外観(見た目)・称呼(読み方)・観念(意味・イメージ)の3要素を総合的に判断。取引の実情も考慮される。
2
指定商品・役務の同一・類似の判断
商品・サービスの目的・用途・流通経路・需要者層などを考慮して類似かどうかを判断する。
3
両方を満たす場合 → 侵害成立の可能性
差止請求・損害賠償請求が可能。故意の場合は刑事罰の対象にもなる。
不使用取消審判(第50条)— 試験頻出
商標権者が指定商品・役務について登録商標を継続して3年以上日本国内で使用していない場合、利害関係人は特許庁に対して商標登録の取消審判を請求できます。
ポイントは「使用していないことの立証責任」:取消審判の請求があった場合、商標権者側が「使用していた」または「使用しないことに正当な理由がある」ことを証明しなければなりません(挙証責任の転換)。

商標を登録したまま長期間使わずに「他者の参入を妨げるためだけに権利を保有する」いわゆる「眠らせ商標」を防ぐための制度です。企業ブランドの管理においても重要な考え方のひとつです。

特許法・意匠法・著作権法との比較

存続期間・登録要否・保護対象の比較

経営法務では知的財産権4法の横断的な比較が非常に問われやすいポイントです。とくに存続期間の起算点の違い(出願日か登録日か創作時か)と更新の可否は、混同しやすいため表で整理しておきます。

法律 保護対象 登録 存続期間 更新 使用義務
特許法 発明(技術的アイデア) 必要 出願日から20年 不可 なし
実用新案法 考案(形状・構造等) 必要 出願日から10年無審査登録主義 不可 なし
意匠法 工業デザイン(外観) 必要 登録日から25年 不可 なし
商標法 商標(ブランド・ロゴ等) 必要 登録日から10年 可(無制限) あり(3年)
著作権法 著作物(文芸・美術・音楽等) 不要 創作時から死後70年法人は公表後70年 不可 なし
存続期間の起算点に注意
特許・実用新案は「出願日」から起算し、意匠・商標は「登録日」から起算します。審査に時間がかかるほど実質的な保護期間が短くなる特許・実用新案と、登録が確定した時点から起算する意匠・商標で扱いが異なる点は押さえておきたい部分です。
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この比較表を最初に見たとき、商標法だけ「更新可能・使用義務あり」という二つの異質な特徴を持つことに気づいて、なるほどと思いました。ブランドは育てて使い続けるものだから、更新できる代わりに使わないと権利を失う、という設計の合理性が見えてくると、丸暗記より頭に残りやすくなります。

過去問で確認する

過去問|経営法務 商標法 令和3年度 第9問
商標法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 商標権の存続期間は、設定登録の日から10年であり、更新することができない。
  • イ 商標登録出願において、同一または類似の商標について同日に二以上の出願があったときは、特許庁長官が行う協議により定めた一の出願人のみが商標登録を受けることができる。
  • ウ 商標法において保護される商標の種類には、文字商標・図形商標・立体商標・結合商標のほか、色彩のみからなる商標・音商標が含まれるが、動き商標は含まれない。
  • エ 商標権者は、指定商品または指定役務について登録商標を使用していなくても、商標登録を取り消されることはない。
解答・解説
正解は。同日出願が競合した場合は協議によって登録者を決める(協議が成立しない場合はくじ引き)というのが正確なルールです。
ア:商標権は10年で更新可能(何度でも)なので誤り。
ウ:動き商標・ホログラム商標・位置商標も2015年改正で追加されているので誤り。
エ:継続して3年以上不使用の場合、不使用取消審判により取り消される可能性があるので誤り。
過去問|経営法務 商標法 令和元年度 第12問
商標法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 商標登録を受けようとする者は、商標の使用の意思がなくても出願できる。
  • イ 商標権の存続期間は、設定登録の日から15年である。
  • ウ 商標権者は、指定商品または指定役務について登録商標を継続して3年以上日本国内において使用していない場合、利害関係人から商標登録の取消審判を請求されることがある。
  • エ 商標権の効力は、登録商標と類似する商標を指定役務と非類似の役務に使用する行為には及ばない。
解答・解説
正解は不使用取消審判(第50条)の要件をそのまま問う設問です。「継続して3年以上」「日本国内において」「利害関係人から請求」の3点が正確に記述されています。
ア:商標は使用する意思がなければ原則登録できない(使用意思の要件)ので誤り。
イ:存続期間は10年(15年ではない)なので誤り。
エ:商標権の禁止権は商標が類似していても指定役務が非類似であれば原則として及ばない、とも読めますが、選択肢エは混乱を招く表現です。正解がウである点を確認しておきましょう。

まとめ

商標法 整理ポイント
商標の種類は6種類(2015年改正):文字・図形・立体・色彩のみ・音・結合。音商標・色彩のみが2015年追加の頻出ポイント。
取得要件:登録主義・先願主義・識別力の具備。産地・品質・普通名称等は識別力なしとして登録不可。
存続期間:登録日から10年、更新は無制限(特許:出願日から20年・更新不可との対比が重要)。
専用権+禁止権:指定商品・役務と商標の双方が同一・類似であることが侵害の要件。
不使用取消審判(3年):継続3年以上不使用なら利害関係人が取消請求可。挙証責任は商標権者側に転換される。
U のメモ
商標法を学んでいて気づいたのは、「ブランドは使い続けることで守られる」という思想が制度設計に貫かれているということです。更新が無制限に認められているのも、3年不使用で取り消されるのも、どちらも「実際に使われているブランドだけを保護する」という考え方から来ています。
過去問では「存続期間10年・更新可能」「不使用取消審判3年」「識別力のない商標の具体例」の3点が繰り返し問われる印象です。表で横断整理しておくと、他の知的財産権との比較問題にも対応しやすくなると感じています。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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