グローバル戦略まとめ|国際経営4類型・OLIパラダイム・ダイヤモンドモデルを図解で整理
「グローバル戦略」という言葉は何となく知っていましたが、試験で「トランスナショナル戦略とはどれか」と問われて選択肢を全て読んでも確信が持てませんでした。統合度と現地適応度の2軸で考えれば4類型がすっきり整理できると気づいて、改めてまとめ直しました。
目次
グローバル戦略とは
グローバル戦略とは、複数の国・地域にまたがる事業活動をどのように展開するかを定める経営戦略。国内戦略との最大の違いは、「各国市場を統一的に扱う(グローバル統合)か、各国の違いに応じる(現地適応)か」というトレードオフを常に意識しなければならない点にある。中小企業診断士試験では、バートレット&ゴシャールの4類型と海外進出形態のリスク・コスト比較が頻出テーマ。
バートレット&ゴシャールの国際経営4類型
C.バートレットとS.ゴシャールは、国際経営戦略を「グローバル統合度」と「現地適応度」の2軸で整理した。どちらを重視するかで4つの類型が生まれる。
現地適応度:低
標準化・規模の経済を重視
現地適応度:高
各国ニーズへの対応を重視
グローバル統合度:高
グローバル戦略
Global Strategy
世界を単一市場として扱い、製品・サービスを標準化。規模の経済を最大化するため、生産・R&Dを一か所に集中させる傾向。
例:半導体・航空機・消費財メーカーの一部
トランスナショナル戦略
Transnational Strategy
グローバル統合と現地適応を同時に実現しようとする理想型。各国拠点が独自能力を持ちながら全体で連携する「統合ネットワーク型」組織。
例:P&G・ABBなどのグローバル大企業
グローバル統合度:低
インターナショナル戦略
International Strategy
本国で開発した製品・技術をそのまま海外に輸出・移転する方式。統合も適応も低く、海外展開の初期段階に多い。
例:輸出中心の中小製造業・伝統的輸出型企業
マルチドメスティック戦略
Multi-domestic Strategy
各国市場の違いに最大限対応するため、現地子会社が独立して製品・マーケティングを決定。国際統合は最小限。
例:食品・飲料・小売業の現地適応型展開
← 現地適応度 →
試験で問われるポイント
- 「規模の経済で世界標準品を売る」= グローバル戦略(統合高・適応低)
- 「各国で別々の製品を売る」= マルチドメスティック戦略(統合低・適応高)
- 「本国の製品をそのまま輸出」= インターナショナル戦略(両方低)
- 「統合も適応も両立」= トランスナショナル戦略(両方高)——理想だが実現が最も難しい
- 著者名:バートレット(Bartlett)&ゴシャール(Ghoshal)が問われることがある
海外進出形態:リスクとコントロールのトレードオフ
海外に進出する方法は複数あり、必要な投資・リスクが小さいほど現地へのコントロール度も下がるというトレードオフがある。
① 輸出(Export)
国内で製造し海外に売る。設備投資不要で参入コストが最小。間接輸出(商社経由)と直接輸出(自社で販路開拓)がある。
コントロール度:最低 / 学習機会:限定的
② ライセンシング(Licensing)
特許・商標・技術などを現地企業に使用許諾し、ロイヤルティを得る。直接投資不要だが、技術流出リスクがある。
コントロール度:低 / 知的財産の保護が課題
③ 合弁会社(Joint Venture)
現地企業と共同出資で会社を設立。現地パートナーの知識・ネットワークを活用できる。利益分配・意思決定の対立リスクがある。
コントロール度:中 / リスク・知識を共有できる
④ 完全子会社(Wholly Owned Subsidiary)
100%出資の現地法人を設立。グリーンフィールド投資(新設)またはM&A(既存企業買収)がある。コントロール度が最高だが、投資額・リスクも最大。
コントロール度:最高 / グリーンフィールドvsM&Aの選択が重要
「なぜ海外に進出するのか」という根本的な問いに答えるフレームワークはありますか?
OLIパラダイム(ダニングの折衷理論)
ジョン・ダニングが提唱したOLIパラダイムは、なぜ企業が海外直接投資(FDI)を行うのかを説明する理論。O・L・Iの3つの優位性が揃ったとき、企業は現地での直接生産を選択する。
O
Ownership advantages(所有優位性)
他社にはない「自社固有の強み」
特許技術・ブランド・ノウハウ・規模の経済など、競合他社が持たない資産や能力。これがないと外国で戦えない。
例:技術力・ブランド価値・経営管理能力
L
Location advantages(立地優位性)
その国・地域に進出する理由
現地の市場規模・低廉な労働力・天然資源・税制優遇・輸送コストなど、特定の場所を選ぶ動機。
例:巨大消費市場・安い製造コスト・豊富な資源
I
Internalization advantages(内部化優位性)
ライセンスではなく自社運営を選ぶ理由
技術・ノウハウを外部にライセンス供与するより、自社内部で活用した方が有利な場合(技術流出防止・品質管理等)。
例:ブランドイメージ管理・コア技術の保護
OLIパラダイムの解釈
- O優位性がない → そもそも海外展開できない(外国企業との競争で負ける)
- O・Lはあるが I がない → ライセンシングで十分(わざわざ自社拠点を持つ必要がない)
- O・L・I 全てある → 海外直接投資(FDI)が最適解
- 「折衷(eclectic)理論」とも呼ばれる——既存の各FDI理論を統合したフレームワーク
ポーターのダイヤモンドモデル
マイケル・ポーターは著書『国の競争優位』(1990)で、特定の産業がなぜある国で強くなるのかを説明するダイヤモンドモデルを提唱した。4つの要素が互いに作用し合い、国全体の競争優位を形成する。
① 要素条件(Factor Conditions)
熟練労働力・インフラ・資本・技術基盤など、産業競争に必要な生産要素の質と量。天然資源より「高度な人的資本」の方が持続的な優位を生む。
② 需要条件(Demand Conditions)
国内需要の規模・質・成熟度。要求水準の高い国内顧客が企業のイノベーションを促進する。日本の精密機器産業などが典型例。
③ 関連・支援産業(Related & Supporting Industries)
世界競争力を持つサプライヤーや関連産業の存在。部品・素材・機器の高品質な供給網が産業集積(クラスター)を生む。
④ 企業戦略・競合状況(Firm Strategy, Structure & Rivalry)
国内での激しい競争が企業を鍛え、国際競争力を高める。競争が少ない保護産業はグローバル市場で弱くなる傾向がある。
ダイヤモンドモデルの2つの外部要素
- 政府:4要素全てに影響を与える触媒的役割(産業政策・規制・教育等)
- チャンス(偶然):戦争・技術革命・外国為替変動など、予測不能な出来事が産業地図を塗り替えることがある
過去問で確認する
H27年度第7問
バートレットとゴシャールの国際経営戦略の類型に関する記述として、最も適切なものはどれか。
「トランスナショナル戦略とは、グローバルな統合効率と現地適応を同時に追求する戦略であり、各国拠点が独自の強みを持ちながら全体として統合ネットワークを形成する」
解答:適切。トランスナショナル戦略は統合度・適応度ともに高い「理想型」。単純なグローバル統一でも現地分権でもなく、各拠点が役割を持ちながら連携する「統合ネットワーク型」組織が特徴。
R2年度第9問
海外進出形態に関する記述として、最も適切なものはどれか。
「ライセンシングは、現地への直接投資を行わず比較的低コストで海外展開できるが、技術・ブランドの品質管理が難しく、ノウハウが流出するリスクがある」
解答:適切。ライセンシングは低コスト・低リスクで海外展開できる反面、製品・サービスの品質コントロールが困難で、知的財産の流出リスクが高い。特に技術を核とする企業には不向き。
R4年度第8問
ダニングのOLIパラダイムに関する記述として、最も適切なものはどれか。
「Iの優位性(内部化優位性)とは、その国・地域に進出することで得られる市場規模・低コストなどの地理的メリットを指す」
解答:不適切。「その国・地域に進出することで得られる地理的メリット」はL(立地優位性)の説明。I(内部化優位性)とは、技術・ノウハウを外部に委託するよりも自社内部で活用・管理する方が有利な理由(品質管理・技術流出防止等)を指す。
まとめと関連記事
この記事のポイント
- 4類型の覚え方:統合↑適応↓=グローバル/統合↓適応↑=マルチドメスティック/両方↓=インターナショナル/両方↑=トランスナショナル
- 海外進出はリスク低い順:輸出→ライセンス→合弁→完全子会社 / コントロール度は逆順
- OLIパラダイム:O=自社の強み、L=進出先の魅力、I=なぜ内部化するか——3つ揃って直接投資
- ポーターのダイヤモンド:要素条件・需要条件・関連産業・競合状況の4要素が国の競争力を決める
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この記事を書いた人
中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。