倒産法制まとめ|破産・民事再生・会社更生の3手続きを図解で整理

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過去問を解いていて「民事再生と会社更生、どっちが管財人を選任するんだっけ……」と手が止まりました。名前はわかっていても、細部になると混乱してしまって。整理してみると、清算型か再建型か・経営者が続投できるかどうか、この2軸で驚くほどすっきり分類できました。

倒産に関わる法律は複数存在し、手続きの性質・対象・申立権者がそれぞれ異なります。試験でも実務でも頻繁に登場するのが、破産・民事再生・会社更生の3手続きです。まずは「企業(または個人)が資金難に陥ったとき、何を目的にどの法律を使うか」という大枠から整理していきます。
2 手続きの大分類
(清算型・再建型)
3 主要3手続き
(破産・民再・更生)
4 手続き全体
(特別清算含む)
目次

倒産法制の全体像

2つの分類から考える

倒産手続きは大きく「清算型」と「再建型」に分かれます。清算型は財産を換価して債権者に配分し、法人であれば消滅します。再建型は事業の継続を目指し、経営を立て直すことが目的です。

清算型
LIQUIDATION
事業を終了して清算
  • 財産を換価し債権者へ配分
  • 法人は手続き終了後に消滅
  • 個人は免責制度により債務から解放
  • 代表手続き: 破産・特別清算
再建型
REHABILITATION
事業を継続して再建
  • 再建計画を策定し債権者の同意を得る
  • 法人は存続(解散しない)
  • 雇用・取引先の維持を図る
  • 代表手続き: 民事再生・会社更生
経営危機に陥った企業・個人 どの手続きを選ぶか?
事業継続が困難 清算型
破産 / 特別清算
事業継続の見込みあり 再建型
民事再生 / 会社更生
根拠法について
倒産に関わる法律は複数あります。破産法(2004年改正・全面施行)、民事再生法(2000年施行)、会社更生法(1952年制定・2002年改正)、そして会社法に基づく特別清算が主な根拠法です。経営法務の試験では各法律の内容と違いが問われます。

破産(清算型)

破産法に基づく清算手続き
破産
清算型 / 破産法
根拠法
破産法
対象
法人・個人どちらも対象。自然人・法人を問わず申立可能
申立権者
債務者本人(自己破産)のほか、債権者も申立可能(債権者申立)。複数の債権者が連名で申立てることもできる
手続き主体
裁判所が選任する破産管財人が財産を管理・換価する。裁判所主導
経営者の地位
法人の場合、代表者は財産管理権を失う。手続き終結後に法人は消滅
担保権の扱い
担保権者は別除権として破産手続きによらず担保物から優先弁済を受けられる
個人の免責
免責制度あり。免責許可決定が確定すると非免責債権(税金・養育費等)を除き残債務が免除される
U のメモ
破産は「誰でも申立できる」という点が他の手続きと大きく異なります。債権者からも申立できるという点は試験に出やすいので、しっかり押さえておきたいところです。また、個人には免責制度があるので「自己破産=人生終わり」ではなく、あくまで再出発の仕組みとして設計されているのだと知って、少し見方が変わりました。

民事再生(再建型)

民事再生法に基づく再建手続き
民事再生
再建型 / 民事再生法
根拠法
民事再生法(2000年4月施行)
対象
法人・個人どちらも対象。個人は「個人再生」として利用可能(住宅ローン特則あり)
申立権者
債務者本人が中心。債権者も申立可能(破産と同様)
手続き主体
原則として経営者が続投(DIP型)。裁判所が選任する監督委員が監視役として関与するが、経営権は経営者が維持
主な利用者
中小企業が中心。手続きが比較的簡便で費用も抑えられるため、中小規模の法人・個人事業主に多く利用される
再生計画の可決
債権者集会での多数決(頭数過半数かつ金額の過半数)で可決。裁判所が認可することで効力が生じる
担保権の扱い
担保権者は別除権として手続きによらず優先弁済を受けられる(破産と同様)
個人再生の特則
個人が民事再生を利用する場合、住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)が適用できます。これにより、住宅ローンを通常通り支払い続ける代わりに、住宅を手放さずに他の借金を圧縮・整理することが可能です。個人破産との大きな違いのひとつです。

会社更生(再建型)

会社更生法に基づく大企業向け再建手続き
会社更生
再建型 / 会社更生法
根拠法
会社更生法(2002年改正で大幅刷新)
対象
株式会社のみ対象。持分会社・個人は利用不可
申立権者
債務者本人(株式会社)、または一定規模の債権者・株主
手続き主体
管財人(更生管財人)が選任され、経営権を全面的に掌握する。既存経営者は原則として経営から排除される点が民事再生と大きく異なる
主な利用者
大企業・上場企業。過去の適用事例として日本航空(JAL)、マイカル(旧ニチイ)、そごう・西武などが知られる
更生計画の可決
債権者・株主を複数の組(クラス)に分けて決議。各組において所定割合の賛成(担保権者グループは3/4以上等)が必要で、民事再生より要件が厳格
担保権の扱い
担保権者も更生手続きに組み込まれる(別除権は認められない)。この点が破産・民事再生と大きく異なる
U のメモ
会社更生で特に押さえたいのが「担保権者も手続きに組み込まれる」という点です。破産や民事再生では担保権者が別除権として手続きの外で弁済を受けられるのに対し、会社更生ではそれができません。大企業の再建を社会全体の問題として捉え、担保権者にも一定の譲歩を求める仕組みになっているのだと理解しました。

3手続きの比較テーブル

破産 / 民事再生 / 会社更生の横断比較
比較項目 破産 民事再生 会社更生
手続きの分類 清算型 再建型 再建型
根拠法 破産法 民事再生法 会社更生法
対象 法人・個人(どちらも可) 法人・個人(個人再生含む) 株式会社のみ
申立権者 債務者本人
債権者も可
債務者本人
債権者も可
債務者本人
一定の債権者・株主
経営者の地位 財産管理権を喪失
(管財人が管理)
経営者続投(DIP型)
監督委員が監視
管財人が全権掌握
経営者原則排除
担保権の扱い 別除権
(手続き外で弁済)
別除権
(手続き外で弁済)
別除権なし
(手続きに組み込まれる)
計画可決要件 配当計画を管財人が策定
(多数決不要)
頭数過半数
かつ金額の過半数
各グループで
所定割合(担保権者3/4以上等)
主な利用対象 全規模・個人 中小企業が中心 大企業・上場企業
個人免責 免責制度あり なし(個人再生は残債を圧縮) 対象外(法人のみ)

特別清算(補足)

会社法に基づく清算手続き
SUPPLEMENT — 特別清算

特別清算は会社法に基づく清算手続きであり、通常の清算では完了できない場合に利用します。

対象: 株式会社のみ(解散後に清算手続き中の会社)
申立権者: 清算株式会社、清算人、監査役、債権者、株主
手続き主体: 清算人が中心(裁判所の関与はあるが管財人は選任されない)
特徴: 通常清算より裁判所の監督が強い。協定(債権者集会での決議)または個別弁済契約によって進める

破産とよく比較されますが、特別清算はすでに解散した会社が対象で、破産管財人ではなく清算人が手続きを進める点が異なります。

身近な場面で考えてみると

飲食チェーン経営危機のシナリオで整理

3つの手続きの選択が実際にどう分かれるかを、飲食チェーンの経営危機を例に考えてみます。

シナリオ
地方で30店舗を展開する飲食チェーンが、コスト増・集客不振で資金繰りが悪化。債務超過に陥り、銀行からの新規融資も難しい状況になりました。どの手続きを選ぶかは、「事業に再建の可能性があるか」と「会社の規模・形態」によって変わります。
選択肢A — ブランド・店舗に価値がなく再建困難な場合
破産を申立て、全資産を換価して債権者へ配分。会社は消滅する。
30店舗の内装・設備を売却し、食材取引先・リース会社・銀行への配当に充てる。
選択肢B — ブランド力が残り、中規模で再建余地がある場合(最もよく使われる)
民事再生を申立て。現経営者が続投しながら、不採算店舗を閉鎖して残りの店舗で収益改善を目指す再生計画を策定。債権者の過半数の同意を得て計画認可を受ける。
中小企業の飲食チェーンが経営危機に陥った際に最もよく使われるのがこのケースです。
選択肢C — 上場企業・大規模チェーンで社会的影響が大きい場合
会社更生を申立て。管財人が経営権を引き継ぎ、スポンサー企業と連携して抜本的な事業再建を目指す。担保権者も手続きに組み込まれ、計画に参加する。
日本航空(JAL)の再建がこの典型例として知られています。
U のメモ
「経営者が続投できるか」は実際の当事者にとって非常に大きな違いです。民事再生なら経営者が再建をリードできる一方、会社更生では管財人に委ねるしかない。企業規模・再建の確度・担保権者との関係、これらを総合して選択することになるのだと、シナリオで考えると納得しやすくなりました。

試験での頻出ポイント

ひっかけに注意したいポイント
  • 別除権の有無: 破産と民事再生では担保権者が別除権として手続き外で優先弁済を受けられますが、会社更生では別除権は認められません。会社更生だけが例外であることを意識しておきましょう。
  • 管財人が選任されるのは: 破産(破産管財人)と会社更生(更生管財人)です。民事再生では管財人は選任されず、経営者が続投します(監督委員が監視する)。混同しやすいので要注意です。
  • 個人に免責があるのは破産だけ: 民事再生の個人再生では債務が圧縮されますが、完全に免除されるわけではありません。免責(残債務の免除)という概念があるのは破産の個人のみです。
  • 会社更生は株式会社のみ: 持分会社(合名・合資・合同会社)や個人は利用できません。「中小企業でも会社更生を使える」は誤りです。実際の中小企業は民事再生を利用するケースが大半です。
  • 債権者申立ができるのは破産・民事再生: 「債権者が申立できるのは破産だけ」という思い込みに注意。民事再生でも債権者申立は可能です。会社更生は一定の要件を満たす債権者や株主に限られます。
試験での整理キーワード
別除権あり: 破産・民事再生 / 別除権なし: 会社更生
管財人あり: 破産・会社更生 / 管財人なし: 民事再生(監督委員のみ)
個人免責: 破産のみ / 株式会社のみ: 会社更生・特別清算
中小企業が多い: 民事再生 / 大企業向け: 会社更生

過去問で確認する

類題で理解を確認
類題 — 平成26年度 経営法務 倒産法制 改題
倒産手続きに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 破産手続きにおいて、担保権者は破産手続きによらなければ担保物から弁済を受けることができない。
  • イ 民事再生手続きでは、原則として経営者が事業を継続しながら再建計画を策定することができる。
  • ウ 会社更生手続きは、株式会社のほか合名会社・合資会社も対象となる。
  • エ 会社更生手続きにおいて、担保権者は別除権として手続きによらずに担保物から優先弁済を受けることができる。
正解と解説
正解: イ
ア: 誤り。破産手続きにおいて担保権者は別除権を持ち、破産手続きによらずに担保物から優先弁済を受けられます。
イ: 正しい。民事再生はDIP型(Debtor In Possession)であり、経営者続投が原則です。
ウ: 誤り。会社更生は株式会社のみが対象です。持分会社は対象外です。
エ: 誤り。会社更生では担保権者も手続きに組み込まれ、別除権は認められません
類題 — 令和2年度 経営法務 倒産法制 改題
倒産手続きにおける管財人の選任と担保権の扱いについて、次の記述のうち適切なものはどれか。
  • ア 破産手続きでは管財人は選任されず、債務者本人が財産を管理する。
  • イ 民事再生手続きでは更生管財人が選任され、経営者は原則として退任する。
  • ウ 会社更生手続きでは担保権者も更生手続きに組み込まれ、別除権は認められない。
  • エ 民事再生手続きでは担保権者に別除権は認められず、手続き内で処理される。
正解と解説
正解: ウ
ア: 誤り。破産では破産管財人が選任されます。
イ: 誤り。管財人(更生管財人)が選任され経営権を掌握するのは会社更生です。民事再生では経営者が続投します。
ウ: 正しい。会社更生では担保権者も手続きに組み込まれ、別除権はありません
エ: 誤り。民事再生でも担保権者には別除権が認められます
U

清算型か再建型か・経営者が続投できるか・担保権者が別除権を持つかどうか、この3つの視点が整理できると、倒産法制全体がかなりすっきりと見えてきます。会社更生だけ別除権がない点は特に試験で狙われやすいので、しっかり頭に刻んでおきたいところです。

この記事のまとめ
  • 倒産手続きは清算型(破産・特別清算)と再建型(民事再生・会社更生)に大別される
  • 民事再生は経営者続投(DIP型)・中小企業向け、会社更生は管財人が全権掌握・株式会社かつ大企業向け
  • 別除権(担保権者が手続き外で弁済を受ける権利)は破産・民事再生では認められるが、会社更生では認められない
  • 個人の免責制度があるのは破産のみ。民事再生の個人再生は債務を圧縮するが免除はしない
  • 会社更生は株式会社のみが対象。中小企業や個人は利用できず、民事再生が実質的な選択肢になる
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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