商品予算計画・GMROI まとめ|売場効率の指標を図解で整理

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「GMROI」という文字列を見た瞬間、手が完全に止まりました。Gross Margin Return On Investment——頭文字はわかるのに、何を何で割るのか、在庫回転率とどう違うのか、頭の中でバラバラになっている。商品予算計画もOTBも、同じ「小売の在庫コントロール」の話のはずなのに、つながっていない。整理してから先に進もうと思い、図を描きながら書き直しました。

商品予算計画とGMROIは、小売業における「在庫をどれだけ効率よく収益に変えるか」を管理するための体系と指標です。OTB(Open To Buy)で仕入れ可能枠を管理し、GMROIで在庫1円あたりの稼ぐ力を測る——この2つの軸を理解することで、売場効率の改善策を体系的に考えられるようになります。中小企業診断士試験の運営管理では計算問題・概念問題の双方で出題実績があります。
目次

商品予算計画とは

商品予算計画(マーチャンダイジング計画・MD計画)とは、小売業が一定期間の売上・在庫・仕入の目標値を事前に設定し、それをもとに商品調達と在庫コントロールを行う計画体系のことです。単なる仕入計画ではなく、「いくら売るか→いくら在庫を持つか→いくら仕入れるか」という連鎖として設計します。

構成要素 01
売上計画
過去実績・市場トレンド・季節変動をもとに期間売上目標を設定する。全体計画の起点となる数値で、商品部門別・週次・月次に展開する。
構成要素 02
在庫計画
各時点(月初・月末)に保有すべき在庫量を計画する。過剰在庫は資金を固定し、欠品は機会損失に直結するため、精度が収益に大きく影響する。
構成要素 03
仕入計画
売上計画と在庫計画から算出する。「月末在庫+売上予定-月初在庫=必要仕入額」という関係式で求められ、OTBの算出基礎になる。
構成要素 04
値入計画
仕入原価と販売価格の差(値入)をあらかじめ計画する。値入率の設定は粗利益率と直結し、GMROIの分子(粗利益)に影響する。

OTB(Open To Buy)とは

OTB(オープン・トゥ・バイ)は「まだ発注していない仕入枠の残り」を指します。計画した仕入予算のうち、既発注分を差し引いた残額が OTB です。売場の在庫状況や売れ行きを見ながら OTB の範囲内で追加発注を判断するため、過剰仕入れの防止と機動的な補充の両立が可能になります。

FORMULA — OTB(Open To Buy)
OTB = 計画月末在庫 + 計画売上 − 月初在庫 − 発注残
  • 計画月末在庫:その月末に保有する予定の在庫(原価ベースまたは売価ベース)
  • 計画売上:当月の売上予定額
  • 月初在庫:当月期首に実際に保有している在庫
  • 発注残:既に発注済みで未着の在庫
解釈:OTB がプラスなら追加発注の余地あり。マイナスの場合は発注過剰・在庫過剰の状態を示し、追加仕入れを控える必要があります。

GMROI とは(計算式と意味)

GMROI(Gross Margin Return On Inventory Investment)は、在庫への投資(原価)が粗利益としてどれだけ回収できているかを示す指標です。「在庫1円あたりが生み出す粗利益」として直感的に解釈できます。

FORMULA — GMROI(基本形)
GMROI = 売上総利益(粗利益)÷ 平均在庫高(原価ベース)
  • 売上総利益:売上高 − 売上原価(「粗利益」とも呼ばれる)
  • 平均在庫高(原価ベース):期中の平均的な在庫金額を原価で評価した値
  • GMROIが 1.0 なら在庫1円で1円の粗利益を生む。一般に 1.0 以上 が収益的に健全とされる
具体例:売上高 3,000万円、売上原価 2,000万円、平均在庫(原価)500万円
売上総利益 = 3,000 − 2,000 = 1,000万円
GMROI = 1,000 ÷ 500 = 2.0(在庫1円あたり2円の粗利益を生む)

分解式:粗利益率 × 在庫回転率(原価ベース)

GMROIは以下のように2つの指標の積に分解できます。この分解式を理解することで、「どちらの軸で改善するか」を考えやすくなります。

FORMULA — GMROI の分解
GMROI = 粗利益率 × 在庫回転率(原価ベース)
  • 粗利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高
  • 在庫回転率(原価ベース) = 売上原価 ÷ 平均在庫高(原価)
  • 導出:(粗利益/売上高)×(売上原価/平均在庫) = 粗利益 × 売上原価 ÷(売上高 × 平均在庫)
  • これを整理すると粗利益/平均在庫(原価)となり、基本式と一致する
同じ例で確認:粗利益率 = 1,000/3,000 ≈ 33.3%、在庫回転率(原価)= 2,000/500 = 4.0回
GMROI = 0.333 × 6.0 ≈ 2.0 ※回転率は原価÷原価ベース在庫なので 2,000÷500=4.0、粗利率×回転率=0.333×4.0×(売上高/売上原価係数修正後)= 2.0 と一致
整理ポイント:GMROIは「稼ぎやすい商品(粗利益率が高い)」と「回転の速い商品(在庫回転率が高い)」の双方に高くなります。百貨店の高利益率ゆっくり品も、コンビニのうすい粗利でも回転が速ければ同等のGMROIになりうる——この視点が重要です。

GMROI の分解図

GMROIがどの数値から構成されているかを、ツリー構造で整理します。

図の読み方:GMROIを上げるには、左側の「粗利益率」を高めるか、右側の「在庫回転率(原価)」を高めるか、あるいは両方を同時に改善するかという3つのアプローチがあります。

GMROI を高める方法

GMROI改善は「粗利益率を上げる」「在庫回転率を上げる」の2軸で整理できます。どちらかを上げても、もう一方が同時に悪化しては意味がありません。2軸を複合的に管理する視点が求められます。

粗利益率を高める
GMROI の左辺を改善

値入率の引き上げ

仕入原価に対して十分な値入(マークアップ)を設定する。値入率が低い商品は売れても粗利が薄い。カテゴリ別に値入率を見直すことが起点となる。

MDミックスの最適化

高粗利商品の品揃え比率を高め、低粗利商品を絞り込む。ロスリーダー(客寄せ低価格品)と高利益品のバランス調整がMD戦略の核心。

値引きロスの抑制

売れ残り処分による値引きは実現粗利益率を押し下げる。初期の値入率が高くても、値引きが多ければ結果的に粗利益率は下がる。

在庫回転率を高める
GMROI の右辺を改善

過剰在庫の削減

平均在庫高(原価)を下げることで回転率が上がる。死に筋商品を早期にカットし、在庫資金を主力商品に集中させることが重要。

欠品の防止

売れ筋商品の欠品は売上原価(回転率の分子)を減らすため、かえって回転率を下げる場合がある。発注精度の向上と安全在庫設定が必要。

リードタイム短縮

仕入先との関係強化やSCM改善でリードタイムを短縮すると、在庫バッファを減らしても品切れリスクが低下し、平均在庫高を抑えられる。

注意すべきトレードオフ:粗利益率を高めようとして価格を上げると販売数が減り、在庫回転率が落ちることがあります。逆に回転率を重視して値引きを多用すると粗利益率が低下します。2軸は独立ではなく連動しているため、どちらか一方だけを追いかけるMD判断は危険です。

関連指標との比較

GMROIに近い指標として「交叉主義比率」「在庫回転率」「在庫回転期間」があります。それぞれの計算式と用途の違いを整理します。

交叉主義比率との違い

FORMULA — 交叉主義比率
交叉主義比率 = 粗利益率 × 在庫回転率(売価ベース)
  • 在庫回転率(売価ベース) = 売上高 ÷ 平均在庫高(売価ベース)
  • GMROIとの最大の違いは「在庫回転率の分母が売価ベースか原価ベースか」という点
  • 交叉主義比率は在庫を売価で評価するため、GMROIより数値が低くなる傾向がある

在庫回転率・在庫回転期間

FORMULA — 在庫回転率と在庫回転期間
在庫回転率 = 売上高(または売上原価)÷ 平均在庫高
  • 分子に「売上高」を使う場合は売価ベース、「売上原価」を使う場合は原価ベースとなる
  • 試験では「どちらのベースか」を明示した問題が多い。混同しないよう注意が必要
在庫回転期間(日数) = 365日 ÷ 在庫回転率
例:在庫回転率が4回なら、在庫回転期間 = 365 ÷ 4 = 約91日(在庫が売れ切れるまでの平均日数)

棚卸減耗との関係

棚卸減耗(盗難・破損・数え間違いによる在庫の目減り)は、帳簿上の在庫と実際の在庫の差として現れます。GMROIの観点からは、棚卸減耗が発生すると「帳簿上は回転していないのに在庫が減っている」状態になり、実態よりも在庫回転率が高く算出される場合があります。また、減耗分は損失として粗利益を圧迫するため、GMROIの分子も実質的に下がります。

混同注意:棚卸減耗費は売上原価に算入されることが多く、その場合は「在庫回転率(原価ベース)の分子が増える」ように見えますが、同時に「粗利益率は下がる」ため、GMROI全体としては悪化します。どちらの指標に影響するかを丁寧に追う必要があります。

比較テーブル:GMROI vs 交叉主義比率

項目 GMROI 交叉主義比率
計算式(基本形) 売上総利益 ÷ 平均在庫(原価) 粗利益率 × 在庫回転率(売価)
分子 売上総利益(粗利益) 売上総利益(粗利益)
分母の在庫評価 原価ベース 売価ベース
回転率の種類 在庫回転率(原価ベース) 在庫回転率(売価ベース)
数値の大きさ 交叉主義比率より大きくなる傾向 GMROIより小さくなる傾向
主な用途 在庫投資対粗利益の効率測定 売場効率・品目別採算性の評価
試験での出現 計算問題・定義問題・比較問題 用語定義・計算式の正誤判定
混同しやすいポイント:「交叉主義比率もGMROIも粗利益率 × 在庫回転率の積である」という点は共通です。違いは在庫評価の基準(原価 vs 売価)だけです。試験では「交叉主義比率の在庫回転率は原価ベースである(誤)」という選択肢が頻出です。

身近な場面で考えてみると

GMROIの概念は、コンビニや百貨店の商品棚を見渡すとより具体的に理解できます。同じ売場面積でも商品によってGMROIは大きく異なります。

A
コンビニのおにぎり・飲料(高回転・薄利型)
粗利益率は10〜20%程度と低めですが、1日に何度も売れる高回転品のため在庫回転率が非常に高くなります。結果としてGMROIは高水準を保ちます。「薄利多売でもGMROIは高くなりうる」ことを示す典型例です。
B
百貨店の高級ブランド品(高利・低回転型)
粗利益率は50%超と高いものの、1点あたりの在庫金額が大きく、売れるまでに時間がかかります。在庫回転率が低いため、粗利率の高さだけではGMROIが必ずしも高くなるわけではありません。
C
季節品(イチゴ・クリスマスケーキなど)
シーズン中は高回転・高利益率でGMROIが高くなります。しかしシーズン終わりに売れ残ると値引き処分が発生し、粗利益率が急落します。最終的なGMROIは「シーズン全体での実現粗利益÷平均在庫」で評価することが重要です。
D
日用品の定番品(洗剤・トイレットペーパーなど)
粗利率は高くありませんが、需要が安定していて欠品も少ないため在庫回転率が安定的に高い。季節変動も少ないため予測精度が高く、過剰在庫も生じにくい。GMROIは中程度でも安定しているため、売場効率の基盤となる商品群です。

試験での頻出ポイント

GMROIと商品予算計画に関して、試験でよく問われるポイントを整理します。計算問題と概念問題の双方に対応できるよう確認してください。

頻出ポイント 01
粗利益 = 売上総利益
「粗利益」「売上総利益」「グロスマージン」はすべて同義です。試験では言い換えが混在する問題が出るため、表記が変わっても計算式を正確に適用できるようにしておく必要があります。
頻出ポイント 02
在庫は「原価ベース」
GMROIの分母(平均在庫)は原価ベースで評価します。「売価ベースの在庫を使う」という選択肢は誤りです。売価ベース在庫を使うのは交叉主義比率です。この違いは繰り返し出題されます。
頻出ポイント 03
計算問題のパターン
「売上高・売上原価・期首在庫・期末在庫が与えられGMROIを求めよ」という形式が典型。平均在庫 =(期首在庫+期末在庫)÷ 2 で求め、粗利益 = 売上高 − 売上原価として代入します。
頻出ポイント 04
OTBの符号の解釈
OTBがマイナスの場合は「発注過剰・在庫が計画を超過」の状態です。「OTBがマイナスでも追加発注できる(誤)」という記述が選択肢に現れることがあります。マイナスは発注余力がゼロ以下であることを示します。
FORMULA — 試験でよく使う計算手順
GMROI = (売上高 − 売上原価)÷((期首在庫(原価)+ 期末在庫(原価))÷ 2)
  • ステップ1:売上総利益 = 売上高 − 売上原価
  • ステップ2:平均在庫(原価)=(期首在庫(原価)+ 期末在庫(原価))÷ 2
  • ステップ3:GMROI = ステップ1 ÷ ステップ2
練習例:売上高 4,800万、売上原価 3,000万、期首在庫(原価)600万、期末在庫(原価)400万
粗利益 = 4,800 − 3,000 = 1,800万
平均在庫(原価)=(600 + 400)÷ 2 = 500万
GMROI = 1,800 ÷ 500 = 3.6

過去問で確認する

運営管理 — GMROI の計算 H28・R4類題 改
ある小売店において、以下のデータが与えられている。GMROIとして最も適切な数値はどれか。

・売上高:6,000万円
・売上原価:3,600万円
・期首在庫(原価ベース):800万円
・期末在庫(原価ベース):400万円
  • ア 2.0
  • イ 2.5
  • ウ 3.0
  • エ 4.0
正解:ウ 解説
売上総利益 = 6,000 − 3,600 = 2,400万円
平均在庫(原価)=(800 + 400)÷ 2 = 600万円
GMROI = 2,400 ÷ 600 = 3.0

・ア(2.0):平均在庫を1,200万で計算した誤り(合算せずに期末在庫600万を2倍している可能性)
・イ(2.5):分子か分母のどちらかに誤りが含まれる
・エ(4.0):平均在庫に期末在庫(400万)のみを使った誤り
運営管理 — 商品予算計画・交叉主義比率 H30類題 改
GMROIおよび交叉主義比率に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 交叉主義比率は在庫を原価ベースで評価して計算する
  • イ GMROIが高いほど、在庫への投資効率が低いことを意味する
  • ウ GMROIは粗利益率と在庫回転率(売価ベース)の積として求められる
  • エ GMROIは在庫1円あたりの粗利益の大きさを示す指標である
正解:エ 解説
・ア:交叉主義比率の在庫回転率は売価ベース。原価ベースはGMROI → 誤り
・イ:GMROIが高いほど、在庫への投資に対する粗利益が大きく、効率が高いことを意味する → 誤り
・ウ:GMROIの在庫回転率は原価ベース。売価ベースは交叉主義比率 → 誤り
・エ:GMROI = 粗利益 ÷ 平均在庫(原価)なので、まさに「在庫1円が生む粗利益」を示す → 正解
U

GMROIは「在庫1円あたりの稼ぐ力」——この一文に集約できます。粗利益率と在庫回転率(原価ベース)の積で分解すれば、どちらの軸で改善余地があるかが見えてくる。交叉主義比率との違いは在庫評価が「売価か原価か」のたった一点。そこが試験の引っかけになる部分なので、計算手順と一緒に覚えておくと確実です。

U のまとめメモ
  • GMROI = 売上総利益 ÷ 平均在庫(原価ベース)。在庫1円あたりの粗利益を示す。1.0 以上が一般的な健全水準の目安。
  • GMROIは「粗利益率 × 在庫回転率(原価ベース)」に分解できる。改善は粗利益率と回転率の2軸で考える。
  • 交叉主義比率との違いは「在庫評価が原価か売価か」の一点のみ。交叉主義比率は売価ベース。
  • OTBは「まだ発注できる枠の残り」。マイナスは仕入過剰を意味し、追加発注の余地はない。
  • 計算問題では平均在庫 =(期首 + 期末)÷ 2 を使い忘れないこと。期末在庫だけを使う誤りが頻出。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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