U「GMROI」という文字列を見た瞬間、手が完全に止まりました。Gross Margin Return On Investment——頭文字はわかるのに、何を何で割るのか、在庫回転率とどう違うのか、頭の中でバラバラになっている。商品予算計画もOTBも、同じ「小売の在庫コントロール」の話のはずなのに、つながっていない。整理してから先に進もうと思い、図を描きながら書き直しました。
商品予算計画とは
商品予算計画(マーチャンダイジング計画・MD計画)とは、小売業が一定期間の売上・在庫・仕入の目標値を事前に設定し、それをもとに商品調達と在庫コントロールを行う計画体系のことです。単なる仕入計画ではなく、「いくら売るか→いくら在庫を持つか→いくら仕入れるか」という連鎖として設計します。
OTB(Open To Buy)とは
OTB(オープン・トゥ・バイ)は「まだ発注していない仕入枠の残り」を指します。計画した仕入予算のうち、既発注分を差し引いた残額が OTB です。売場の在庫状況や売れ行きを見ながら OTB の範囲内で追加発注を判断するため、過剰仕入れの防止と機動的な補充の両立が可能になります。
- 計画月末在庫:その月末に保有する予定の在庫(原価ベースまたは売価ベース)
- 計画売上:当月の売上予定額
- 月初在庫:当月期首に実際に保有している在庫
- 発注残:既に発注済みで未着の在庫
GMROI とは(計算式と意味)
GMROI(Gross Margin Return On Inventory Investment)は、在庫への投資(原価)が粗利益としてどれだけ回収できているかを示す指標です。「在庫1円あたりが生み出す粗利益」として直感的に解釈できます。
- 売上総利益:売上高 − 売上原価(「粗利益」とも呼ばれる)
- 平均在庫高(原価ベース):期中の平均的な在庫金額を原価で評価した値
- GMROIが 1.0 なら在庫1円で1円の粗利益を生む。一般に 1.0 以上 が収益的に健全とされる
売上総利益 = 3,000 − 2,000 = 1,000万円
GMROI = 1,000 ÷ 500 = 2.0(在庫1円あたり2円の粗利益を生む)
分解式:粗利益率 × 在庫回転率(原価ベース)
GMROIは以下のように2つの指標の積に分解できます。この分解式を理解することで、「どちらの軸で改善するか」を考えやすくなります。
- 粗利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高
- 在庫回転率(原価ベース) = 売上原価 ÷ 平均在庫高(原価)
- 導出:(粗利益/売上高)×(売上原価/平均在庫) = 粗利益 × 売上原価 ÷(売上高 × 平均在庫)
- これを整理すると粗利益/平均在庫(原価)となり、基本式と一致する
GMROI = 0.333 × 6.0 ≈ 2.0 ※回転率は原価÷原価ベース在庫なので 2,000÷500=4.0、粗利率×回転率=0.333×4.0×(売上高/売上原価係数修正後)= 2.0 と一致
GMROI の分解図
GMROIがどの数値から構成されているかを、ツリー構造で整理します。
売価×販売数
仕入原価の合計
分子(原価ベース)
原価で評価
GMROI を高める方法
GMROI改善は「粗利益率を上げる」「在庫回転率を上げる」の2軸で整理できます。どちらかを上げても、もう一方が同時に悪化しては意味がありません。2軸を複合的に管理する視点が求められます。
値入率の引き上げ
仕入原価に対して十分な値入(マークアップ)を設定する。値入率が低い商品は売れても粗利が薄い。カテゴリ別に値入率を見直すことが起点となる。
MDミックスの最適化
高粗利商品の品揃え比率を高め、低粗利商品を絞り込む。ロスリーダー(客寄せ低価格品)と高利益品のバランス調整がMD戦略の核心。
値引きロスの抑制
売れ残り処分による値引きは実現粗利益率を押し下げる。初期の値入率が高くても、値引きが多ければ結果的に粗利益率は下がる。
過剰在庫の削減
平均在庫高(原価)を下げることで回転率が上がる。死に筋商品を早期にカットし、在庫資金を主力商品に集中させることが重要。
欠品の防止
売れ筋商品の欠品は売上原価(回転率の分子)を減らすため、かえって回転率を下げる場合がある。発注精度の向上と安全在庫設定が必要。
リードタイム短縮
仕入先との関係強化やSCM改善でリードタイムを短縮すると、在庫バッファを減らしても品切れリスクが低下し、平均在庫高を抑えられる。
関連指標との比較
GMROIに近い指標として「交叉主義比率」「在庫回転率」「在庫回転期間」があります。それぞれの計算式と用途の違いを整理します。
交叉主義比率との違い
- 在庫回転率(売価ベース) = 売上高 ÷ 平均在庫高(売価ベース)
- GMROIとの最大の違いは「在庫回転率の分母が売価ベースか原価ベースか」という点
- 交叉主義比率は在庫を売価で評価するため、GMROIより数値が低くなる傾向がある
在庫回転率・在庫回転期間
- 分子に「売上高」を使う場合は売価ベース、「売上原価」を使う場合は原価ベースとなる
- 試験では「どちらのベースか」を明示した問題が多い。混同しないよう注意が必要
例:在庫回転率が4回なら、在庫回転期間 = 365 ÷ 4 = 約91日(在庫が売れ切れるまでの平均日数)
棚卸減耗との関係
棚卸減耗(盗難・破損・数え間違いによる在庫の目減り)は、帳簿上の在庫と実際の在庫の差として現れます。GMROIの観点からは、棚卸減耗が発生すると「帳簿上は回転していないのに在庫が減っている」状態になり、実態よりも在庫回転率が高く算出される場合があります。また、減耗分は損失として粗利益を圧迫するため、GMROIの分子も実質的に下がります。
比較テーブル:GMROI vs 交叉主義比率
| 項目 | GMROI | 交叉主義比率 |
|---|---|---|
| 計算式(基本形) | 売上総利益 ÷ 平均在庫(原価) | 粗利益率 × 在庫回転率(売価) |
| 分子 | 売上総利益(粗利益) | 売上総利益(粗利益) |
| 分母の在庫評価 | 原価ベース | 売価ベース |
| 回転率の種類 | 在庫回転率(原価ベース) | 在庫回転率(売価ベース) |
| 数値の大きさ | 交叉主義比率より大きくなる傾向 | GMROIより小さくなる傾向 |
| 主な用途 | 在庫投資対粗利益の効率測定 | 売場効率・品目別採算性の評価 |
| 試験での出現 | 計算問題・定義問題・比較問題 | 用語定義・計算式の正誤判定 |
身近な場面で考えてみると
GMROIの概念は、コンビニや百貨店の商品棚を見渡すとより具体的に理解できます。同じ売場面積でも商品によってGMROIは大きく異なります。
試験での頻出ポイント
GMROIと商品予算計画に関して、試験でよく問われるポイントを整理します。計算問題と概念問題の双方に対応できるよう確認してください。
- ステップ1:売上総利益 = 売上高 − 売上原価
- ステップ2:平均在庫(原価)=(期首在庫(原価)+ 期末在庫(原価))÷ 2
- ステップ3:GMROI = ステップ1 ÷ ステップ2
粗利益 = 4,800 − 3,000 = 1,800万
平均在庫(原価)=(600 + 400)÷ 2 = 500万
GMROI = 1,800 ÷ 500 = 3.6
過去問で確認する
・売上高:6,000万円
・売上原価:3,600万円
・期首在庫(原価ベース):800万円
・期末在庫(原価ベース):400万円
- ア 2.0
- イ 2.5
- ウ 3.0
- エ 4.0
平均在庫(原価)=(800 + 400)÷ 2 = 600万円
GMROI = 2,400 ÷ 600 = 3.0
・ア(2.0):平均在庫を1,200万で計算した誤り(合算せずに期末在庫600万を2倍している可能性)
・イ(2.5):分子か分母のどちらかに誤りが含まれる
・エ(4.0):平均在庫に期末在庫(400万)のみを使った誤り
- ア 交叉主義比率は在庫を原価ベースで評価して計算する
- イ GMROIが高いほど、在庫への投資効率が低いことを意味する
- ウ GMROIは粗利益率と在庫回転率(売価ベース)の積として求められる
- エ GMROIは在庫1円あたりの粗利益の大きさを示す指標である
・イ:GMROIが高いほど、在庫への投資に対する粗利益が大きく、効率が高いことを意味する → 誤り
・ウ:GMROIの在庫回転率は原価ベース。売価ベースは交叉主義比率 → 誤り
・エ:GMROI = 粗利益 ÷ 平均在庫(原価)なので、まさに「在庫1円が生む粗利益」を示す → 正解



GMROIは「在庫1円あたりの稼ぐ力」——この一文に集約できます。粗利益率と在庫回転率(原価ベース)の積で分解すれば、どちらの軸で改善余地があるかが見えてくる。交叉主義比率との違いは在庫評価が「売価か原価か」のたった一点。そこが試験の引っかけになる部分なので、計算手順と一緒に覚えておくと確実です。
- GMROI = 売上総利益 ÷ 平均在庫(原価ベース)。在庫1円あたりの粗利益を示す。1.0 以上が一般的な健全水準の目安。
- GMROIは「粗利益率 × 在庫回転率(原価ベース)」に分解できる。改善は粗利益率と回転率の2軸で考える。
- 交叉主義比率との違いは「在庫評価が原価か売価か」の一点のみ。交叉主義比率は売価ベース。
- OTBは「まだ発注できる枠の残り」。マイナスは仕入過剰を意味し、追加発注の余地はない。
- 計算問題では平均在庫 =(期首 + 期末)÷ 2 を使い忘れないこと。期末在庫だけを使う誤りが頻出。









