U「機能別組織と事業部制の違いは?」と聞かれたとき、スラスラ答えられるでしょうか。過去問を解いていると、この4つの組織形態はセットで問われることが多く、それぞれの特徴をしっかり整理しておく必要があると感じました。チャンドラーの命題やコンティンジェンシー理論まで含めると、意外と論点が広いのです。今回は図解と比較表を使って、自分なりに整理してみました。
組織設計の基本概念
指揮命令系統(命令一元化の原則):各メンバーが報告・指示を受ける上司は原則として1人に限るべきという考え方。後述するマトリクス組織では、この原則が崩れることが最大の問題点とされます。
4大組織形態の概要
5軸で比較する組織構造
| 比較軸 | 機能別組織 | 事業部制 | マトリクス | カンパニー制 |
|---|---|---|---|---|
| 意思決定 | トップに集中 集権的・遅め |
事業部長へ委譲 分権的・速い |
二重構造 複雑・混乱も |
カンパニーが自律 高度に分権 |
| 専門性 | 高い(機能特化) | 事業内で完結 やや分散 |
専門家を維持 | カンパニー内で確保 |
| 柔軟性 | 低い(縦割り) | 製品・市場に 対応しやすい |
人材の横断活用 | 事業単位で機動的 |
| コスト | 機能共有で低い | 機能重複で 増大しやすい |
調整コスト 高め |
管理コスト 最も高い |
| 適合規模 | 中小〜中堅 | 大企業(多角化) | プロジェクト型 | 超大企業・複合体 |
日常の場面で考えると
一方、事業部制は「青果フロア・精肉フロア・惣菜フロア」それぞれが仕入れから販売まで責任を持つ形。各フロアが独自判断で値引きや仕入れを決められる分、素早く動けます。ただ、仕入れ担当が3フロアに重複する分、コストもかかります。
マトリクス組織は、各フロアに専属の仕入れ担当を置きつつ、「野菜のプロ」「鮮魚のプロ」が複数フロアを横断してアドバイスする構造。カンパニー制は、各フロアが独立した会社のように採算を管理し、将来的に分社化・売却も視野に入れられる状態、といったイメージです。
U比較表を見て気づいたのですが、4つの形態はグラデーションになっているのですね。機能別→事業部制→カンパニー制と移行するほど、分権化・自律性が上がる一方でコストも増えていく構造です。どれが「正解」というわけではなく、企業の規模・戦略・環境によって最適解が変わるというのが、コンティンジェンシー理論の考え方だと理解しました。
チャンドラーの命題
アルフレッド・チャンドラーは1962年に名著『組織は戦略に従う』を著し、アメリカ大企業の発展史を分析しました。当初の命題は「戦略は組織に従う」——しかし研究結果は逆であることを示しました。
(例:単一製品→多角化戦略)
そのあとで
(例:機能別組織→事業部制組織)
したがって
「組織は戦略に従う」
| 戦略の変化 | 対応する組織形態の変化 |
|---|---|
| 単一製品・単一市場 | 機能別組織(効率重視) |
| 地理的拡大(市場開拓) | 機能別組織を維持しながら地域部門を追加 |
| 多角化戦略(製品多角化) | 事業部制組織(製品別の自律性が必要に) |
| さらなる多角化・グローバル展開 | カンパニー制・グローバルマトリクス |
試験頻出ポイント:「戦略は組織に従う」ではなく「組織は戦略に従う」が正しい命題です。選択肢で逆の表現が出たとき即座に誤りと判断できるようにしておきましょう。
コンティンジェンシー理論
コンティンジェンシー理論(条件適合理論)は、「どんな環境・状況にも普遍的に最適な組織形態はなく、状況(コンティンジェンシー変数)によって最適解は変わる」という考え方です。バーンズ&ストーカー、ローレンス&ローシュらが実証研究で体系化しました。
不安定環境(変化が激しい)→ 有機的組織(柔軟・分権的・コミュニケーション重視)が適合。
バーンズ&ストーカーの研究(1961)
プロセス生産・多品種少量 → フラット・有機的な組織が適合。
ウッドワードの研究(1965)
大規模 → 公式化・標準化・分権化(事業部制等)が必要になる。
アストン・グループの研究
関連多角化 → 事業部制(製品部門制)が適合。
非関連多角化 → カンパニー制・持株会社制が適合。
チャンドラーの命題と連動
| 状況(コンティンジェンシー変数) | 機械的組織(集権・公式化) | 有機的組織(分権・柔軟) |
|---|---|---|
| 環境の安定性 | 安定環境 → 適合 | 不安定環境 → 適合 |
| 技術の複雑性 | 単純・定型作業 | 高度・非定型作業 |
| 組織規模 | 中小規模 | 大規模(の場合は分権化) |
| 戦略の多角化度 | 単一製品・集中戦略 | 多角化・差別化戦略 |
過去問で確認する
H28 第8問
- ア.機能別組織は、製品ライン別に部門を設けるため、複数製品への対応が容易である。
- イ.事業部制組織では、各事業部が利益責任を担い、意思決定の分権化が進む。
- ウ.マトリクス組織は単一の命令系統を持ち、責任の所在が明確である。
- エ.カンパニー制は機能別組織の一形態であり、規模の経済が最も働きやすい。
R2 第10問
- ア.「戦略は組織に従う」とは、組織形態が先行して決まり、それに合わせて戦略が形成されることを意味する。
- ウ.単一製品戦略をとる企業は、事業部制組織を採用するのが最も効率的である。
- エ.多角化戦略へ移行した企業が事業部制組織を採用するのは、「組織は戦略に従う」の命題と整合的である。
H30 第9問
- ア.いかなる環境においても最適な唯一の組織形態(ワン・ベスト・ウェイ)が存在する。
- イ.環境の不確実性が高い状況では、有機的組織(分権・柔軟)が適合しやすい。
- ウ.バーンズ&ストーカーの研究によれば、安定環境には有機的組織が適合する。
- エ.組織規模が大きくなるほど、非公式な調整メカニズムに依存すべきである。
U過去問を見ると、選択肢の「ひっかけ」のパターンが読めてきます。チャンドラーの命題は「戦略 → 組織」という方向を逆にした選択肢、コンティンジェンシー理論は「ワン・ベスト・ウェイ」という一般化の表現、マトリクスの選択肢は「命令系統が単一」という誤った記述が繰り返し登場します。このパターンを覚えておくだけでも、ずいぶん判断が速くなるように感じています。
まとめ
-
機能別組織は職能ごとに部門を分ける最も基本的な形態。専門性は高いが縦割りになりやすく、集権的意思決定が特徴。 -
事業部制は製品・地域単位で機能をまとめ、利益責任を事業部長に委ねる分権的形態。多角化企業に適合するが機能の重複コストが課題。 -
マトリクス組織は機能軸と事業軸を重ね合わせる二重命令系統。専門性と柔軟性を両立できる反面、責任の曖昧さと調整コストが生じやすい。 -
カンパニー制は事業部制を発展させ、法人に近い独立性を各カンパニーに与える形態。高い自律性・分社化容易が強みだが、全社シナジーが出にくい。 -
チャンドラーの命題は「組織は戦略に従う」。戦略の変化(多角化)が先行し、組織形態がそれに適応する。「戦略は組織に従う」との混同に注意。 -
コンティンジェンシー理論は「ワン・ベスト・ウェイはない」が前提。環境・技術・規模・戦略によって最適な組織形態が変わるという考え方。
U のメモ

