U減損会計の問題で「減損損失の金額はどう計算するの?」と迷ったことがあります。「帳簿価額 − 回収可能価額」という式は単純なのですが、「回収可能価額」の中身(正味売却価額と使用価値の高い方)の意味が最初つかみにくかったです。整理してみると、減損の仕組みはシンプルな考え方で成り立っていました。
減損会計とは、保有する固定資産の帳簿価額が「そこから将来回収できる価値」を上回ったとき、その差額を損失として計上する会計処理です。資産を「使いすぎた簿価のまま載せておかない」という考え方です。
目次
減損会計とは何か
帳簿価額 vs 回収可能価額
例:5億円で買った工場設備が、今は帳簿上3億円(取得原価から減価償却した後)。しかしこの設備が将来生み出す価値(または今売れる金額)が1億円しかないとしたら、3億円 − 1億円 = 2億円を損失(減損損失)として計上します。
帳簿価額が「将来回収できる価値」を超えているとき、その超過分が減損損失です。
帳簿価額が「将来回収できる価値」を超えているとき、その超過分が減損損失です。
減損損失 = 帳簿価額 − 回収可能価額
回収可能価額 = MAX(正味売却価額,使用価値)
回収可能価額 = MAX(正味売却価額,使用価値)
| 概念 | 意味 | 具体的なイメージ |
|---|---|---|
| 帳簿価額 | B/Sに計上されている現在の価額 | 取得原価 − 累計減価償却費 |
| 正味売却価額 | 今すぐ売ったらいくらになるか | 時価 − 売却費用 |
| 使用価値 | 今後使い続けたときに生まれる将来CFの現在価値 | 将来CF × 割引率で計算 |
| 回収可能価額 | 正味売却価額と使用価値の高い方 | 「売るか使い続けるか、有利な方」 |
減損処理の4ステップ
01
減損の兆候を確認する
「経営環境の著しい悪化」「資産の使用範囲・方法の著しい変化」「市場価格の著しい下落(50%超が目安)」「営業損失・CFがマイナスになっている」などが兆候とされます。兆候がなければ以降の手続きは不要です。
02
減損損失を認識するか判定する
兆候がある場合、「割引前の将来CF合計 < 帳簿価額」であれば減損損失を認識します。割引前のCFを使う点が重要です(割引後ではない)。割引前CFが帳簿価額以上なら減損処理は不要。
03
回収可能価額を測定する
正味売却価額と使用価値を計算し、高い方を回収可能価額とします。使用価値は割引後のCF(将来CFの現在価値)で計算します。
04
減損損失を計上する
減損損失 = 帳簿価額 − 回収可能価額
P/Lに特別損失として計上します。B/S上の資産は回収可能価額に切り下げられ、翌期以降はその価額を新たな帳簿価額として減価償却を続けます。原則として減損損失の戻し入れは不可です。
P/Lに特別損失として計上します。B/S上の資産は回収可能価額に切り下げられ、翌期以降はその価額を新たな帳簿価額として減価償却を続けます。原則として減損損失の戻し入れは不可です。
ステップ2の「割引前」とステップ3の「割引後」
ステップ2(認識の判定)では割引前の将来CFと帳簿価額を比較します。
ステップ3(測定)では割引後の将来CF(現在価値)で使用価値を計算します。
「判定は割引前、測定は割引後」という使い分けは頻出の引っかけポイントです。
ステップ3(測定)では割引後の将来CF(現在価値)で使用価値を計算します。
「判定は割引前、測定は割引後」という使い分けは頻出の引っかけポイントです。
数値例で確認する
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 帳簿価額 | 300万円 |
| 正味売却価額 | 80万円 |
| 割引前の将来CF合計 | 240万円 |
| 割引後の将来CF(使用価値) | 200万円 |
判定
割引前CF(240万)< 帳簿価額(300万)→ 減損損失を認識する
割引前CFが帳簿価額を下回っているので、減損損失を計上します。
測定
回収可能価額 = MAX(80万,200万)= 200万円
正味売却価額80万 vs 使用価値200万 → 高い方の200万円が回収可能価額
計上
減損損失 = 300万 − 200万 = 100万円
P/Lに特別損失100万円を計上。B/Sの資産は300万円→200万円に切り下げ。
帳簿価額(300万)− 回収可能価額(200万)= 減損損失 100万円
試験でよく出る3つの罠
1
「判定は割引前CF、測定は割引後CF(使用価値)」の混同
最頻出の引っかけです。減損損失を認識するかどうかの判定には割引前の将来CFを使い、減損損失の金額(回収可能価額)の測定では割引後の将来CF(現在価値)= 使用価値を使います。逆にしないよう注意。
2
「回収可能価額 = 正味売却価額」と思い込む
回収可能価額は「正味売却価額と使用価値の高い方」です。「売却より使い続けた方が価値が高い」ケースも多く、問題では両方計算して比較することが必要です。どちらか一方だけを使うと誤答になります。
3
「減損損失は戻し入れできる」と思い込む
日本基準では原則として減損損失の戻し入れは認められません。資産の価値が後から回復しても、一度計上した減損損失は取り消せません(IFRS は戻し入れ可能ですが、日本基準は原則禁止)。日本基準とIFRSの違いとして問われることがあります。



「兆候→認識(割引前)→測定(割引後MAX)→計上」という4ステップの流れを覚えておくと、問題のどのステップを問われているのかが瞬時にわかるようになります。特に「割引前で判定、割引後で測定」の使い分けは丁寧に確認するようにしています。
身近な例で考えると
帳簿価額150万円の中古車
3年前に200万円で買い、毎年減価償却して今の帳簿価額は150万円。でも故障が多く、市場での売値は50万円にしかならない。
使い続ける価値は?
今後3年間使い続けると、仕事で稼げる金額の現在価値が80万円と試算された。これが「使用価値80万円」です。
回収可能価額を比較する
正味売却価額50万 vs 使用価値80万 → 高い方の80万円が回収可能価額。「使い続けた方が得」という判断です。
減損損失を計上する
帳簿価額150万 − 回収可能価額80万 = 減損損失70万円をP/Lに特別損失として計上します。
「帳簿価額が実態より高すぎる場合に、実態に合わせて切り下げる」というシンプルな考え方が減損会計の本質です。実態(回収可能価額)を「売るなら売値」と「使うなら将来の稼ぎの現在価値」の2軸で考えることがポイントです。
まとめ
- 減損損失 = 帳簿価額 − 回収可能価額(正味売却価額と使用価値の高い方)
- 認識の判定は割引前CF vs 帳簿価額、測定(使用価値)は割引後CFで行う
- 減損損失はP/Lに特別損失として計上、B/Sの資産は回収可能価額に切り下げ
- 日本基準では原則として減損損失の戻し入れは不可(IFRSは可能)
- 手順:兆候確認 → 認識判定(割引前)→ 回収可能価額測定(割引後MAX)→ 計上
Uのメモ
「割引前で判定、割引後で測定」という使い分けは、初めて見たときに「なぜ2回CFが出てくるの?」と混乱しました。後から知ったのですが、判定を「割引前CF」で行うのは計算を簡素にして実務負担を下げるためだそうです。正確に減損額を測定するのは、認識が確定した後の話、という考え方です。背景を知ると迷いにくくなりました。
また、「減損損失は戻し入れ不可」という点も印象に残りやすいポイントです。一度認識した損失は取り消せない、という保守的な考え方です。
また、「減損損失は戻し入れ不可」という点も印象に残りやすいポイントです。一度認識した損失は取り消せない、という保守的な考え方です。







