減損会計 | 中小企業診断士1次試験 財務・会計

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減損会計って「資産の価値が下がったら帳簿を書き下げる」という話なのですが、どのタイミングで、いくら書き下げるのかが曖昧でした。「減損の兆候→減損の認識→減損損失の測定」という3ステップで整理できると知って、急に理解が深まりました。

この記事でわかること
・減損会計が必要な理由(保守主義の原則との関係)
・減損処理の3ステップ(兆候→認識→測定)
・回収可能価額の計算(使用価値 vs 正味売却価額)
・キャッシュ・フロー生成単位(CGU)のグルーピング
・診断士1次試験での出題パターンと引っかけ
目次

なぜ減損会計が必要なのか:「買った時の価格」がずっと残る問題

なぜ必要か

日本の会計では、固定資産は「取得原価」で計上し、毎期減価償却していきます。でも実際には、事業環境の変化などで帳簿上の価値が実際に生み出せる価値を大きく上回ってしまうことがあります。

たとえば、10億円で買った工場(帳簿価額8億円)が、その後の需要低迷で実質的に2億円分しか稼げないと見込まれても、減損会計がなければ帳簿には8億円のまま載り続けます。これでは財務諸表が実態を反映せず、読み手を誤解させます。

減損会計がない世界
帳簿価額取得原価から減価償却した金額。実態と乖離することも
問題点不採算事業の巨額資産が帳簿に残り、利益が過大に見える
財務への影響資産が水増しされた状態→投資家の判断を誤らせるリスク
減損会計がある世界
減損処理後の帳簿価額「この資産が生み出せる価値(回収可能価額)」まで切り下げる
メリット財務諸表が実態を反映し、投資家・金融機関が正確に判断できる
財務への影響損失が一時的に大きく出るが、将来の業績見通しが改善する

減損処理の3ステップ:兆候→認識→測定

3ステップ
01
減損の兆候がある資産を識別する
まず「この資産に減損の可能性があるか」をチェックします。以下のような兆候があれば次のステップへ。
【兆候の例】
・資産(または資産グループ)が属する事業に営業損失・キャッシュ・フローのマイナスが継続
・資産の市場価格が著しく下落(帳簿価額の50%超など)
・経営環境の著しい悪化(規制強化・競争激化など)
・資産の使用範囲・方法の著しい変化(用途廃止・遊休化)
02
減損損失を認識するかどうかを判定する
兆候がある資産について、「割引前将来キャッシュ・フロー(CF)の合計」と「帳簿価額」を比較します。
割引前将来CF合計 < 帳簿価額 → 減損損失を認識する(次のStep03へ)
割引前将来CF合計 ≧ 帳簿価額 → 減損損失は認識しない(終了)
03
減損損失の金額を測定する
帳簿価額を「回収可能価額」まで切り下げます。その差額が減損損失(特別損失)として計上されます。
減損損失 = 帳簿価額 − 回収可能価額
回収可能価額 = MAX(正味売却価額, 使用価値)
認識と測定で使う「CF」の違いに注意:
認識(Step02):割引前の将来CF合計と比較(保守的に認識しやすくする)
測定(Step03):割引後の使用価値で回収可能価額を計算(より正確な現在価値)
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「割引前」で認識して「割引後」で測定する——という使い分けが最初は混乱しました。でも「認識は広めに(小さな兆候でも拾う)、測定は正確に(現在価値で計算)」という意図があると知ってから、理屈がわかりました。

回収可能価額の計算:使用価値と正味売却価額

回収可能価額
回収可能価額 = MAX(使用価値, 正味売却価額)
→ 「持ち続けた場合の価値」と「売った場合の価値」の大きい方
使用価値
定義この資産を使い続けることで得られる将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引いた金額
計算将来の各期CFを割引率で割り引いて合計。残存価値(処分時CF)も含む
割引率原則として市場の実勢を反映したリスクフリーレート(リスク調整後)
意味「売らずに使い続けるとしたら、この資産は今いくらの価値があるか」
正味売却価額
定義この資産を今すぐ売却した場合に得られる正味の金額
計算売却価格 − 処分コスト(撤去費用・仲介手数料など)
時価観察可能な市場価格がない場合は合理的な見積りによる
意味「今すぐ売ったらいくら手元に残るか」

キャッシュ・フロー生成単位(CGU):グルーピングの考え方

CGUとグルーピング

多くの固定資産は単独でキャッシュ・フローを生み出さず、他の資産とセットで機能します。たとえば工場の機械一台では稼げなくても、建物・土地・設備全体で一つの生産ラインとして稼いでいる場合があります。

そこで減損会計では、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位(キャッシュ・フロー生成単位:CGU)ごとに減損判定を行います。

グルーピングのルール内容
原則 他の資産・資産グループと独立したCFを生み出す最小単位でグルーピング。単一資産で判定できる場合はそのまま
継続性 毎期継続して同じグルーピングを使う。正当な理由なく変更しない
のれん のれんは単独でCFを生まないため、関連する資産グループに配分して減損テストを行う
共用資産 本社ビル等の複数グループに共用される資産は、合理的な基準(床面積・売上高等)で各グループに配分

「マンションの部屋を賃貸に出している」で考えると腑に落ちる

減損会計の仕組みを個人の不動産投資に例えると、整理しやすくなります。

5,000
万円
帳簿価額(購入時から減価償却した残り)
2,500
万円
割引前将来CF合計(今後の賃料収入見込み)
2,000
万円
回収可能価額(売却or使用の大きい方)
3,000
万円
減損損失(帳簿価額−回収可能価額)

「5,000万円で買った物件の帳簿価額が残っているのに、今後の賃料を現在価値で計算したら2,500万円しか見込めない(割引前でも5,000万円を下回る)。売っても2,000万円にしかならない」——この場合、帳簿を回収可能価額2,000万円に切り下げ、差額3,000万円を減損損失として計上します。

減損損失の会計処理と表示

項目処理
減損損失の計上 (借)減損損失 ××× (貸)固定資産 ×××
減損損失は特別損失として損益計算書に表示
減損後の減価償却 減損後の帳簿価額を新たな取得原価とみなし、残存耐用年数で減価償却を続ける
減損損失の戻し入れ 日本基準では原則として認められない(IFRSは戻し入れ可能)。試験頻出の違い
注記事項 資産のグルーピング・回収可能価額の算定方法・減損損失の金額等を注記

診断士1次試験の出題パターンと引っかけ

試験対策
よく出る論点引っかけ・注意点正しい理解
認識の判定 「割引後将来CFと比較して認識判定する」 認識判定は割引前CF合計と帳簿価額の比較
回収可能価額 「使用価値と正味売却価額の小さい方をとる」 回収可能価額は大きい方(MAX)をとる
損失の戻し入れ 「日本基準でも業績回復時に減損損失を戻し入れできる」 日本基準では戻し入れ不可(IFRSは可能)
特別損失の区分 「減損損失は営業費用に計上する」 減損損失は特別損失に計上
のれんの扱い 「のれんは単独でCGUとして減損テストを行う」 のれんは関連する資産グループ(CGU)に配分して減損テスト
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「認識は割引前・測定は割引後」「回収可能価額はMAX(大きい方)」「日本基準は戻し入れ不可」——この3点は選択肢の誤文パターンで頻繁に登場します。過去問でも「戻し入れ可能」「小さい方をとる」と書かれた選択肢が多く、惑わされないようにしっかり押さえておきたいところです。

まとめ

  • 減損処理の流れ:「兆候の識別 → 割引前CFで認識判定 → 回収可能価額で損失測定」の3ステップ
  • 認識判定は「割引前将来CF合計 vs 帳簿価額」。測定は「帳簿価額 − 回収可能価額」
  • 回収可能価額 = MAX(使用価値, 正味売却価額)——大きい方をとる
  • 減損損失は特別損失。日本基準では戻し入れ不可(IFRSは可能)
  • のれんは単独でCGUにならず、関連する資産グループに配分して減損テスト
Uのメモ
減損会計で一番混乱しやすいのは「割引前vs割引後」と「MAX(大きい方)」の2点です。「認識判定は割引前→保守的に広く拾う」「回収可能価額はMAX→売るか使うか有利な方を選べる」という意図を理解しておくと、選択肢を見たときに迷わなくなります。日本基準とIFRSの違いも定番の出題ポイントです。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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