インフレ・デフレの種類まとめ | 中小企業診断士1次試験 経済学・経済政策

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物価が上がること=インフレ、と知っていても「なぜ上がるのか」の原因が違うと、政策対応も全く変わります。ディマンドプルとコストプッシュの違いがわかると、ニュースの「物価上昇」がより具体的に読めるようになりました。

物価の変動は経済の健康状態を示すバロメーターです。インフレーション(物価の持続的上昇)デフレーション(物価の持続的下落)は、なぜ起きるかによって適切な政策が全く異なります。

まず大きな軸を整理しておきます。インフレが起きる理由は「需要側」「供給側」の2方向から考えられます。

目次

ディマンドプル・インフレとコストプッシュ・インフレ

ディマンドプル・インフレ
Demand-Pull Inflation
需要の増加が物価を押し上げるインフレ。好景気や財政拡大・金融緩和により総需要(AD)が増加し、供給能力を超えた需要が生まれることで価格が上がる。

AD-AS図:AD曲線が右シフト → 物価上昇+生産量増加

例:好景気時の消費・投資の拡大、戦時中の政府支出急増
対策:金融引き締め(利上げ)・財政緊縮
コストプッシュ・インフレ
Cost-Push Inflation
生産コストの上昇が物価を押し上げるインフレ。原油・原材料価格の高騰や賃金上昇が企業のコスト増となり、その分が価格に転嫁される。

AD-AS図:AS曲線が左シフト → 物価上昇+生産量減少

例:オイルショック(1973年)・円安による輸入物価上昇
対策:難しい(需要抑制では悪化する可能性)・供給側支援・技術革新
コストプッシュが難しい理由
コストプッシュ・インフレに金融引き締め(利上げ)を行うと、需要を抑制して景気が悪化します。物価と生産の両方が悪化する「スタグフレーション」になるリスクがあります。コストプッシュは需要側からのアプローチが難しいのが特徴です。

スタグフレーション:最も厄介な状況

スタグフレーション(Stagflation)とは、景気停滞(Stagnation)と物価上昇(Inflation)が同時に起きる状態です。通常、景気が悪い(需要が少ない)ときは物価は下がるはずです。しかしスタグフレーションではその逆が起きます。

状況 物価 生産量・雇用 主な原因
ディマンドプル・インフレ上昇増加需要の過熱
コストプッシュ・インフレ上昇減少(悪化)原材料費・賃金コスト上昇
スタグフレーション上昇(インフレ)減少(不況)コストプッシュ圧力が継続・激化
デフレ下落減少需要不足・デフレスパイラル

スタグフレーションの典型例は1970年代のオイルショック(第一次:1973年、第二次:1979年)です。原油価格の急騰でコストが押し上げられ、日本でも「狂乱物価」と呼ばれるインフレと不況が同時に発生しました。

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スタグフレーションの怖さは「インフレ対策をすると景気が悪化し、景気対策をするとインフレが悪化する」というジレンマにあります。フィリップス曲線でいうと「失業とインフレのトレードオフ」が崩れる状態なんですね。

デフレーションとデフレスパイラル

デフレーションは物価の持続的な下落です。一見「物が安くなって良いこと」に思えますが、経済全体には深刻な影響があります。

デフレスパイラルのしくみ
物価が下がる → 企業の売上・利益が減少 → 賃金カット・雇用削減 → 家計の所得減少 → 消費がさらに減る → 物価がさらに下がる…

この悪循環を「デフレスパイラル」といいます。日本は1990年代後半から2000年代にかけてこの状態に陥ったとされています。

デフレの問題点:
実質債務の増加(名目の借金は変わらないのに物価が下がると実質負担が増える)
投資・消費の先送り(今より安くなると思えば、みんな買い控える)
金融政策の限界(名目金利はゼロ以下にしにくい→流動性の罠)

AD-ASモデルでの整理

インフレ・デフレの種類 AD-ASの変化 物価 生産量(GDP)
ディマンドプル・インフレAD右シフト上昇増加
コストプッシュ・インフレAS左シフト上昇減少
需要不足デフレAD左シフト下落減少
技術革新によるデフレ(良いデフレ)AS右シフト下落増加
「良いデフレ」と「悪いデフレ」
技術革新で生産性が上がり、物価が下落しながら生産量も増える場合を「良いデフレ」と呼ぶことがあります。AS曲線の右シフト(供給増大)によるものです。一方、需要不足で物価・生産量がともに下がる「悪いデフレ」とは区別されます。ただし「良いデフレ」も持続すると企業の設備投資意欲を削ぐリスクがあります。

過去問で確認する

インフレの種類 — 典型問題① 1次試験 経済学
コストプッシュ・インフレーションに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 総需要(AD)曲線の右シフトにより発生する。
  • イ 物価上昇と生産量の増加が同時に起きる。
  • ウ 原材料価格の上昇など生産コストの増大によって引き起こされ、AS曲線の左シフトとして表れる。
  • エ 金融緩和(金利引き下げ)を行うことで効果的に抑制できる。
正解:ウ
コストプッシュはコスト増大→AS左シフト→物価上昇+生産量減少(ウが正解)。
ア:AD右シフトはディマンドプル・インフレ。
イ:物価上昇と生産量「増加」はディマンドプルの特徴(コストプッシュは生産量減少)。
エ:金融緩和は需要を刺激するためコストプッシュには効果がなく、むしろインフレをさらに加速させるリスクがあります。
スタグフレーション — 典型問題② 1次試験 経済学
スタグフレーションに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア スタグフレーションは、総需要(AD)の急増によって引き起こされる。
  • イ スタグフレーション下では、物価と生産量がともに上昇する。
  • ウ スタグフレーションとは、景気停滞と物価上昇が同時に生じる状況であり、通常の金融政策での対処が難しい。
  • エ スタグフレーションは1990年代の日本で典型的に発生した現象である。
正解:ウ
スタグフレーション(停滞+インフレの同時発生)の説明として正確なのはウです。
ア:AD急増はディマンドプル・インフレの原因(景気は良くなる)。コストプッシュが原因。
イ:スタグフレーションでは生産量は減少し、物価は上昇(悪い組み合わせ)。
エ:1990年代日本の典型はデフレ。スタグフレーションの典型例は1970年代のオイルショック(日本・欧米)。

まとめ

  • ディマンドプル:需要増→AD右シフト→物価↑・生産量↑。対策は金融引き締め・財政緊縮
  • コストプッシュ:コスト増→AS左シフト→物価↑・生産量↓。対策が難しい
  • スタグフレーション:停滞+インフレの同時発生(1970年代オイルショックが典型例)
  • デフレスパイラル:物価下落→企業収益悪化→賃金低下→消費減→物価下落の悪循環
  • AD-ASで「どちらの曲線がどの方向にシフトするか」をセットで把握する
Uのメモ
「物価が上がった=インフレ」ではなく、「需要側から?コスト側から?」を問う問題が出ます。AD右シフト(ディマンドプル)はGDPも増えるのに対して、AS左シフト(コストプッシュ)はGDPが減るという対比がポイント。スタグフレーションは「インフレ+不況」という最悪の組み合わせで、政策のジレンマを問う形でも出題されます。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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