損益分岐点分析(CVP分析)| 中小企業診断士1次試験 財務・会計

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過去問で「損益分岐点売上高」の計算が出るたびに、なんとなく解けるけれど、なぜこの式になるのかが腑に落ちていませんでした。あるとき、コロナ禍に「売上が半分になったのに生き残ったカフェ」のニュースを読んで、その理由が一瞬で見えた気がしました。今回は、その「なぜ?」から整理してみます。

売上が半分になった夜

2020年の春、飲食店の多くが時短営業を強いられ、売上が前年の半分以下になりました。それでも閉店しなかった店があります。一方で、コロナ前まで満席だったのに、あっという間に店を畳んだ人気店もありました。

この差は、料理の腕前でも、立地でも、SNSのフォロワー数でもありませんでした。費用の構造が違った——それだけです。

「赤字でも生き残る」はなぜ起きるのか 売上がゼロでも毎月出ていく費用(家賃・正社員の給与など)と、売上に応じて増減する費用(食材・アルバイト代など)——このふたつが混在している限り、「どこまで売れば黒字か」という分岐点が必ず存在します。それが損益分岐点です。
目次

固定費と変動費——カフェで考えると一瞬でわかる

あなたが駅前に小さなカフェを開いたとします。毎月かかる費用を書き出してみると、こんな感じになります。

固定費(売上に関係なく出ていく)
家賃:15万円
正社員の給与:20万円
設備リース代:5万円
合計:40万円/月
変動費(売上と連動して変わる)
コーヒー豆・牛乳代
フードの材料費
アルバイト代
売上の40%程度

固定費は、お客さんが一人も来なくても毎月40万円出ていきます。変動費は売れれば増えるけれど、売れなければゼロ——売上と一緒に動く費用です。

ここで重要な考え方が出てきます。売上から変動費を引いた残りを、限界利益と呼びます。

限界利益とは
限界利益 = 売上高 − 変動費
この「残り」で、固定費を回収していくイメージです

コーヒー1杯500円を売ったとき、材料費が200円(変動費率40%)かかります。限界利益は300円。この300円が、家賃や正社員の給料という固定費に少しずつ積み上がっていきます。

損益分岐点売上高の計算——「何杯売れば黒字か」

限界利益が固定費を超えた瞬間、はじめて利益が生まれます。その「ちょうど超えたタイミング」の売上高が損益分岐点です。

損益分岐点売上高の公式
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 = 1 − 変動費率

カフェの数値を当てはめてみます。

01
限界利益率を求める
変動費率が40%なので、限界利益率 = 1 − 0.4 = 0.6(60%)
売上の60%が固定費の回収に使えます。
02
損益分岐点売上高を計算する
固定費40万円 ÷ 0.6 = 約66.7万円
月に66.7万円売れば、ちょうど利益ゼロ(黒字でも赤字でもない)。
03
コーヒー何杯に換算すると?
66.7万円 ÷ 500円 = 1,334杯/月、つまり1日約44杯。これを下回ると赤字、上回ると黒字です。
40万
円/月
固定費(家賃・人件費)
60
%
限界利益率(変動費率40%)
66.7万
損益分岐点売上高
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「限界利益率で割る」という計算、最初は機械的に覚えていました。カフェの例で考えると、「売上の60%が固定費に積み上がっていって、40万円分積み上がった瞬間が分岐点」というイメージが自然に出てきます。公式を忘れても、このイメージがあれば導けます。

安全余裕率——今の売上は分岐点からどれだけ遠いか

損益分岐点を求めたあと、「今の売上が損益分岐点からどれだけ余裕があるか」を示す指標があります。それが安全余裕率(マージン・オブ・セーフティ)です。

安全余裕率
安全余裕率 =(売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 売上高 × 100
高いほど余裕がある。売上が下がっても赤字になりにくい。

先ほどのカフェで、月の実際の売上が100万円だったとします。

項目金額解説
実際の売上高100万円今月の実績
損益分岐点売上高66.7万円黒字になる最低ライン
余裕の幅33.3万円売上がこれだけ下がっても赤字にならない
安全余裕率33.3%33.3 ÷ 100 × 100

コロナ禍で売上が半分の50万円になった場合——分岐点が66.7万円なので、このカフェは赤字に転落します。しかし、固定費が低く分岐点が40万円だった別の店なら、50万円でも黒字を維持できます。「コロナで生き残った店と潰れた店の差」は、まさにここにありました。

営業レバレッジ——小さな増収が大きな増益につながる仕組み

CVP分析でもう一つ出題されるのが営業レバレッジ係数です。「売上が1%増えると、営業利益が何%増えるか」を示します。

営業レバレッジ係数
営業レバレッジ係数 = 限界利益 ÷ 営業利益
係数が高い = 固定費が重い = 売上増加の恩恵が大きい(下落リスクも大きい)

カフェの例(売上100万円・変動費40万円・固定費40万円・営業利益20万円)なら:

計算
限界利益100万 − 40万 = 60万円
営業利益60万 − 40万 = 20万円
営業レバレッジ係数60万 ÷ 20万 = 3倍

係数3倍なら、売上が10%増えると営業利益は30%増えます。逆に売上が10%減ると、営業利益は30%減る——これが「レバレッジ(てこ)」の意味です。

過去問で確認する

中小企業診断士1次試験 財務・会計損益分岐点分析
ある企業の年間売上高は1,000万円、変動費は400万円、固定費は360万円である。この企業の損益分岐点比率として、最も適切なものはどれか。
  • ア 54%
  • イ 58%
  • ウ 60%
  • エ 66%
解説
限界利益 = 1,000万 − 400万 = 600万円
限界利益率 = 600万 ÷ 1,000万 = 60%
損益分岐点売上高 = 360万 ÷ 0.6 = 600万円
損益分岐点比率 = 600万 ÷ 1,000万 × 100 = 60%(ウ)

損益分岐点比率は「現在の売上高のうち、何%が損益分岐点か」を示します。安全余裕率とは表裏の関係(安全余裕率 = 1 − 損益分岐点比率 = 40%)です。
中小企業診断士1次試験 財務・会計営業レバレッジ
売上高500万円、変動費200万円、固定費240万円の企業がある。売上高が10%増加したとき、営業利益の増加率として最も適切なものはどれか。
  • ア 10%
  • イ 20%
  • ウ 30%
  • エ 50%
解説
限界利益 = 500万 − 200万 = 300万円
営業利益 = 300万 − 240万 = 60万円
営業レバレッジ係数 = 300万 ÷ 60万 = 5倍
売上10%増 × 5倍 = 営業利益50%増(エ)

営業レバレッジ係数を先に求め、「売上増加率 × 係数 = 営業利益増加率」の関係を使います。固定費が大きいほど係数が高くなります。

まとめ——CVP分析の用語を整理する

用語定義・計算式ポイント
限界利益売上高 − 変動費固定費回収の源泉
限界利益率限界利益 ÷ 売上高 = 1 − 変動費率高いほど固定費を早く回収できる
損益分岐点売上高固定費 ÷ 限界利益率利益ゼロになる売上高
損益分岐点比率損益分岐点売上高 ÷ 現在の売上高低いほど経営が安定
安全余裕率(売上 − 損益分岐点売上)÷ 売上1 − 損益分岐点比率 でも求まる
営業レバレッジ係数限界利益 ÷ 営業利益固定費比率が高いほど大きくなる
  • 「固定費 ÷ 限界利益率」の計算式を軸に、他の指標を派生させて覚える
  • 損益分岐点比率 + 安全余裕率 = 100%(表裏の関係)
  • 営業レバレッジは「限界利益 ÷ 営業利益」——固定費が大きいほど高くなる
  • 過去問は数値代入で確実に解けるようになるまで繰り返す

学習ツール: 財務計算ドリル暗記カード学習スケジューラー

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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