ERP・SCM・CRMまとめ|企業情報システムの全体像と役割を図解で整理

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ERPとSCMとCRMって、名前はよく聞くのに「で、何が違うの?」がなかなか整理できなくて。特にSFAとCRMの境界線が曖昧なまま試験に臨みそうになっていました。「誰の何を管理するか」という軸で並べ直したら、それぞれの役割がくっきり見えてきたので、その整理を図解でまとめます。

高頻度難易度 ★★☆
現代の企業が競争力を維持するためには、社内の業務プロセスを統合し、社外のサプライチェーン・顧客関係を一体で管理する情報システムが不可欠です。診断士1次試験の経営情報システムでは、ERP・SCM・CRM・SFA・KMそれぞれの定義と役割の違いが頻出です。
ERP 社内統合
SCM 供給連鎖管理
CRM 顧客関係管理
SFA 営業支援
KM 知識管理
目次

企業情報システムの全体像

5つのシステムは「どこを、誰のために管理するか」という視点で整理するとわかりやすくなります。社内の業務統合・外部サプライチェーン・顧客関係という3つの方向性で位置づけます。

企業情報システムの位置づけ
ERP
社内統合型。財務・会計・人事・生産・販売・在庫等のあらゆる業務データを一元管理するシステム
SCM
社外連携型(上流)。原材料の調達から製造・物流・販売まで、サプライチェーン全体を可視化・最適化するシステム
CRM
社外連携型(下流)。顧客との関係を長期的に維持・強化するためのデータ管理・分析システム
SFA
営業プロセス特化型。商談の進捗・顧客接触履歴・営業活動を管理し、営業効率を向上させるシステム(CRMの一部として扱われることもある)
KM
知識・ノウハウ管理型。組織内の知識・経験・ノウハウを蓄積・共有・再利用するためのシステム・仕組み

ERP(統合基幹業務システム)

ERPはEnterprise Resource Planningの略です。企業の基幹業務をすべてカバーする「業務の一元管理基盤」として機能します。

ERP 統合基幹業務システム — Enterprise Resource Planning
財務・会計・人事・製造・販売・在庫など、企業のあらゆる業務データを単一のデータベースで統合管理するシステムです。部門間のデータの整合性が保たれ、リアルタイムの経営情報を経営層が意思決定に活用できるようになります。
財務・会計
仕訳・決算・原価管理
人事・給与
勤怠・人事評価・給与計算
在庫・調達
発注・入荷・在庫管理
製造管理
生産計画・BOM・工程管理
販売管理
受注・出荷・売上管理
経営分析
BI・レポーティング・KPI
  • 代表製品
    SAP(S/4HANA)、Oracle ERP、Microsoft Dynamics等。中小企業向けにはfreee・弥生クラウドなども広義のERP機能を持つ
  • メリット
    データの一元管理により部門間の情報連携が迅速化。入力の二重手間がなくなり、リアルタイムな経営判断が可能になる
  • デメリット
    導入コストが高く、カスタマイズに時間がかかる。業務プロセスをERPの標準仕様に合わせる(BPR)必要があり、社内抵抗が生じやすい

SCM(サプライチェーン管理)

SCMはSupply Chain Managementの略です。原材料の調達から最終顧客への届けまで、チェーン全体を通した情報・物・資金の流れを最適化します。

SCM サプライチェーン管理 — Supply Chain Management
原材料の調達→製造→物流→販売→顧客という一連の流れ(サプライチェーン)を一体として可視化・最適化するシステムです。チェーン内の各参加者が情報を共有することで、在庫の過剰・欠品を防ぎ、全体のリードタイムを短縮します。
  • ブルウィップ効果
    需要の小さな変動が上流に向かうほど増幅されて伝わる現象。SCMでの情報共有によりこの効果を抑制できる。鞭(ブルウィップ)を振ったときに先端が大きく揺れる様子に例えた用語
  • VMI
    Vendor Managed Inventory(ベンダー管理在庫)。サプライヤー側が小売側の在庫を管理し、自動的に補充する仕組み。コンビニの棚補充が代表例
  • 3PL
    Third Party Logistics(サードパーティロジスティクス)。荷主企業の物流業務を第三者(専門業者)に包括的に委託する形態。自社物流コストの削減と専門性向上が目的
  • CPFR
    Collaborative Planning, Forecasting and Replenishment。メーカーと小売が共同で需要予測・補充計画を立案する取り組み
ブルウィップ効果の試験頻出ポイント
「なぜ上流ほど変動が大きくなるか」が問われます。理由は①各段階での発注ロット最小化、②リードタイムによる予測誤差の蓄積、③価格変動への過剰反応の3つです。対策は「情報共有の強化(POSデータの上流共有)」「発注頻度の増加」「リードタイムの短縮」です。

CRM(顧客関係管理)

CRMはCustomer Relationship Managementの略です。顧客との長期的な関係を構築・維持することで、顧客生涯価値(LTV)を最大化することを目的とします。

CRM 顧客関係管理 — Customer Relationship Management
顧客の属性・購買履歴・行動データを蓄積・分析し、一人ひとりの顧客に合わせたマーケティング・サービスを提供するシステムです。新規顧客獲得よりも既存顧客のリテンション(維持)に重点を置きます。
  • One-to-One
    One-to-Oneマーケティング。顧客をセグメントではなく個人単位で把握し、個別最適化されたアプローチを行うマーケティング手法。CRMの中核概念
  • LTV
    Life Time Value(顧客生涯価値)。1人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす収益の合計。CRMの目的はこのLTVを最大化すること
  • RFM分析
    Recency(最終購買日)・Frequency(購買頻度)・Monetary(購買金額)の3軸で顧客をスコアリングし、優良顧客の特定・離脱予備軍の把握を行う分析手法
  • チャーン率
    顧客の解約率・離脱率。CRMではこのチャーン率を下げることが重要な指標となる。チャーン率が低いほどLTVが高くなる

SFA・KMとの違い

SFAとKMは試験でCRMとの違いを問われることが多いです。それぞれの役割を簡潔に整理します。

システム 正式名称 主な管理対象 主なユーザー 目的
ERP 統合基幹業務システム 全社業務データ 全部門・経営層 業務統合・意思決定支援
SCM サプライチェーン管理 調達〜物流〜販売 調達・物流・製造部門 在庫最適化・リードタイム短縮
CRM 顧客関係管理 顧客情報・購買履歴 マーケティング・カスタマーサポート LTV最大化・顧客満足向上
SFA 営業支援システム 商談・営業活動 営業部門 営業プロセスの効率化・可視化
KM ナレッジマネジメント 組織の知識・ノウハウ 全社員 知識の蓄積・共有・再利用
SFAとCRMの混同に注意
SFA(営業支援)は「商談をどう進めるか」という営業プロセス管理、CRMは「顧客との関係をどう維持するか」という長期的な顧客戦略です。SFAで蓄積したデータをCRMに取り込む、という関係性になることも多く、現代では一体化したツールも増えています。試験では「CRMは顧客生涯価値の最大化」「SFAは営業活動の効率化」という役割の違いを押さえておくと使いやすいです。
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SFAとCRMの境界線、ずっと「どちらも顧客向けでしょ」と混ざっていました。でも「SFAは社内の営業担当者のためのツール、CRMは顧客との関係を長期で見るための仕組み」と切り分けたら、スッと区別できるようになりました。自分なりの言い換えが見つかると、記憶への定着が全然違いますね。

過去問で確認する

経営情報システムの出題では、各システムの定義・特徴キーワード(ブルウィップ効果・RFM分析・VMI等)をそのまま問う問題が多いです。

過去問 H30年 経営情報システム 第7問
SCMに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア SCMとは、社内の財務・人事・製造・販売等の基幹業務を統合的に管理するシステムである。
  • イ ブルウィップ効果とは、消費者に近い川下から川上の生産者に向けて需要変動が小さくなっていく現象である。
  • ウ VMIとは、サプライヤーが顧客の在庫情報を共有し、在庫の補充タイミングや数量をサプライヤー側が決定・管理する仕組みである。
  • エ 3PLとは、荷主企業が自社で物流業務を内製化することで、物流コストを削減する取り組みである。
解説
正解はです。VMI(Vendor Managed Inventory)はサプライヤーが顧客在庫を管理・補充する仕組みです。
ア:社内の基幹業務を統合管理するのはERPの説明です。
イ:ブルウィップ効果は川下から川上に向けて変動が増幅される現象です(小さくなるのではありません)。
エ:3PLは自社内製化ではなく第三者への包括委託です。
過去問 R1年 経営情報システム 第9問
CRMに関連する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア CRMは、商談の進捗状況や顧客との接触履歴を管理し、営業担当者の活動効率を向上させることを主目的とするシステムである。
  • イ RFM分析とは、顧客を地域・年代・性別で分類し、マスマーケティングを効果的に実施するための手法である。
  • ウ LTV(顧客生涯価値)とは、1人の顧客が企業にもたらす収益を生涯にわたって合計した値であり、CRMの目的はこのLTVを最大化することにある。
  • エ One-to-Oneマーケティングとは、既存顧客のセグメント別に同一のメッセージを一斉送信するマーケティング手法である。
解説
正解はです。CRMの目的はLTV最大化であり、長期的な顧客関係の構築が核心です。
ア:商談進捗・営業活動管理はSFA(営業支援システム)の説明です。
イ:RFM分析は地域・年代ではなくRecency・Frequency・Monetary(最終購買日・頻度・金額)の3軸で顧客を分析します。
エ:One-to-Oneマーケティングは一斉送信ではなく個人単位の個別最適化アプローチです。
過去問 H27年 経営情報システム 第6問
ERPに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • ア ERPは、財務・会計・人事・製造・販売など企業のほぼ全業務を対象とする統合型ソフトウェアパッケージである。
  • イ ERPを導入する際には、標準業務プロセスに合わせて自社の業務を変えるBPRが求められることがある。
  • ウ ERP導入により、各部門が独自のデータを個別管理できるようになるため、業務の柔軟性と自律性が高まる。
  • エ ERPはモジュール構成をとるものが多く、必要なモジュールを選択して段階的に導入することも可能である。
解説
正解(最も不適切)はです。ERPは各部門のデータを一元化・統合管理するシステムであり、「部門が個別管理できるようになる」はERP導入の趣旨と正反対の記述です。
ア・イ・エはいずれもERPの正しい特徴を述べています。BPRとERPの関係性(ウ以外の選択肢)は正しい知識として押さえておく価値があります。

まとめ

この記事で整理したポイント
ERPは社内全業務を単一DBで統合管理。BPRが必要になることも多く、導入コストが高い反面、リアルタイムな経営情報を提供します。
SCMは調達〜製造〜物流〜販売のチェーン全体を最適化。ブルウィップ効果(上流ほど変動増幅)の抑制、VMI(サプライヤーによる在庫管理)、3PL(物流の第三者委託)がキーワードです。
CRMは顧客との長期関係を管理してLTVを最大化。One-to-Oneマーケティング・RFM分析(R:最終購買日、F:頻度、M:金額)が代表的な手法です。
SFAは営業プロセスの管理・可視化、KMは組織内知識の蓄積・共有が主目的で、CRMとは対象と目的が異なります。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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