U「産業競争力強化法って名前は聞いたことあるけど、経営革新計画との関係がよく分からない」──中小企業経営・政策の法律系テーマは制度の全体像から押さえると一気にスッキリします。認定から支援措置まで丁寧に整理しましょう。
産業競争力強化法の目的と背景
産業競争力強化法は2014年(平成26年)1月に施行されました。背景には、リーマンショック後の日本経済の停滞、少子高齢化による国内市場の縮小、グローバル競争の激化という厳しい経済環境があります。
この法律は「産業の新陳代謝と中小企業・ベンチャーの活躍により経済を活性化する」という安倍政権の成長戦略(日本再興戦略)の柱として制定されました。それ以前に別々に存在していた複数の法律・制度を統合・強化したものです。
- 企業の新陳代謝の促進(企業の統廃合・事業再編の支援)
- ベンチャー企業の創出・育成
- 規制改革の推進(グレーゾーン解消制度・企業実証特例制度)
- 中小企業・中堅企業の経営革新の支援
- 開業率・廃業率の均衡化(新陳代謝のある経済構造へ)
| 年 | 主な改正内容 |
|---|---|
| 2014年(平成26年) | 産業競争力強化法施行。旧企業活力強化法等を廃止・統合 |
| 2018年(平成30年) | 生産性革命に向けた改正。コネクテッドインダストリーズ推進等 |
| 2021年(令和3年) | デジタル化・グリーン化に対応した大幅改正。事業再構築補助金の根拠法整備 |
| 2024年(令和6年) | スタートアップ支援・M&A促進・カーボンニュートラル対応の強化 |
経営革新計画とは何か──制度の全体像
経営革新計画は、中小企業が新しい事業活動を行うための計画を策定し、都道府県知事等の認定を受けることで各種支援措置を受けられる制度です。産業競争力強化法の前身となる「中小企業新事業活動促進法」(2005年)から引き継がれた制度で、現在は同法の枠組みで運用されています。
「経営革新」とは、事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ることをいいます(新製品・新サービス・新手法の導入等)。
| 申請する事業者 | 認定機関 |
|---|---|
| 中小企業者(単独) | 都道府県知事 |
| 異分野連携(複数の中小企業が連携) | 主たる事業の所在地の都道府県知事 or 国(経済産業大臣) |
| 農商工連携(農業者+中小企業者) | 農林水産大臣+経済産業大臣(共同認定) |
経営革新計画の認定要件──目標指標と計画期間
経営革新計画の認定を受けるためには、計画期間(3〜5年間)の終わりに達成すべき数値目標を設定する必要があります。
| 目標指標 | 計画期間中の目標増加率 |
|---|---|
| 付加価値額(または一人当たり付加価値額) | 3年計画:9%以上 5年計画:15%以上 |
| 給与支払総額(参考指標) | 付加価値額の目標と連動(年率換算で一定率以上) |
「3年で9%(年率3%)以上、5年で15%(年率3%)以上」という数値は試験で問われます。正確に覚えましょう。「経常利益」ではなく「付加価値額」(または一人当たり付加価値額)であることも重要です。
経営革新計画で対象となる「新事業活動」は以下の4種類です。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 新商品の開発・生産 | 自社にとって新しい商品の開発・製造 |
| 新役務の開発・提供 | 自社にとって新しいサービスの開発・提供 |
| 商品の新たな生産・販売の方式の導入 | 新たな製造方法・販売方法の導入 |
| 役務の新たな提供の方式の導入 | 新たなサービス提供方法の導入 |
ポイントは「業界として新しい」ではなく「その企業にとって新しい」という点です。他社がすでに行っている取り組みでも、その企業が初めて行うのであれば対象になります。
認定後の支援措置──政府系金融機関・信用保証の特例
経営革新計画の認定を受けた中小企業は、以下の支援措置を活用できます。試験では「どのような支援措置があるか」が問われます。
| 支援措置 | 内容 |
|---|---|
| 政府系金融機関の優遇融資 | 日本政策金融公庫・商工組合中央金庫による低利融資(利率の優遇) |
| 中小企業信用保険の特例 | 信用保証協会の保証限度額の拡大(通常の保証とは別枠で保証が可能) |
| 中小企業投資育成株式会社の投資対象拡大 | 資本金基準を超える会社でも投資対象になり得る |
| 販路開拓コーディネーター事業 | 販路開拓のためのコーディネーターの派遣・支援 |
| ニュービジネス支援(SBIR) | 研究開発型中小企業への政府調達・補助金の優先配分 |
認定を受けた経営革新計画に対しては、①日本政策金融公庫等による低利融資と②信用保証協会による保証の特例(別枠)が主な支援措置です。「無利子融資」ではなく「低利融資」という点に注意。
通常の中小企業信用保険では、保証限度額が普通保険2億円・無担保保険8,000万円等と定められています。経営革新計画の認定を受けた場合、通常の保証枠とは別枠で追加の保証が受けられます。これにより、より大きな資金調達が可能になります。
産業競争力強化法の主要制度──グレーゾーン解消・企業実証特例
産業競争力強化法には経営革新計画以外にも、新しいビジネスの展開を支援する制度があります。試験では略語や制度名が問われることがあります。
| 制度名 | 内容 | 活用例 |
|---|---|---|
| グレーゾーン解消制度 | 新規ビジネスが既存の法律に抵触するか否かを事前に確認できる制度。主務大臣が数十日以内に回答 | シェアリングエコノミー・フィンテック等の新サービスの規制適否確認 |
| 企業実証特例制度 | 規制の特例措置を企業単位で申請できる制度。事業計画と条件を示して特例を求める | 新技術の実証実験を特定の条件下で実施 |
| プロジェクト型規制サンドボックス(新産業特例) | 複数の事業者が特定の実証を行う際、関係省庁が一括して規制の特例を認める | 自動走行・無人店舗・デジタル新技術等の実証 |
異分野連携新事業分野開拓計画(農商工連携)との関係
産業競争力強化法の中小企業支援の枠組みの中に、農商工連携(農業者と商工業者が連携して新事業分野を開拓する計画)があります。正式名称は「異分野連携新事業分野開拓計画」です(農商工等連携促進法に基づく)。
経営承継円滑化法との関連
産業競争力強化法は経営承継円滑化法(2008年施行)と密接に関連しています。中小企業の成長支援(経営革新)と事業承継(経営承継)は、中小企業政策の両輪です。
| 支援メニュー | 内容 |
|---|---|
| 事業承継税制の特例(非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予) | 後継者が先代経営者から自社株を取得する際の税負担を軽減。一定条件で全額猶予→免除 |
| 遺留分に関する民法の特例 | 後継者が先代から取得した自社株の遺留分の計算を特例的に処理できる |
| 事業承継時の金融支援 | 経営承継円滑化法認定企業への政府系金融機関の低利融資・信用保証の特例 |
経営革新計画=現在の経営の「新展開・成長」支援(現役事業者対象)
経営承継円滑化法=事業の「引継ぎ」支援(承継を控えた事業者対象)
試験では両者の対象・支援内容を混同する選択肢が出ます。
中小企業政策の全体構造──経営革新計画の位置づけ
診断士試験では、中小企業政策の各制度が横断的に問われます。経営革新計画がどのような位置づけにあるかを把握しておきましょう。
| 分類 | 制度・計画名 | 対象・目的 | 認定機関 |
|---|---|---|---|
| 経営革新 | 経営革新計画 | 新事業活動による付加価値向上 | 都道府県知事(単独)、大臣(連携) |
| 経営改善 | 経営改善計画(経営革新とは別) | 財務状況の改善・再建 | 認定支援機関 |
| 新連携 | 異分野連携新事業分野開拓計画 | 複数業種の連携による新事業 | 主務大臣 |
| 農商工連携 | 農商工等連携事業計画 | 農林水産業者+中小企業の連携 | 農水大臣+経産大臣(共同) |
| 事業承継 | 経営承継計画(経営承継円滑化法) | 事業承継の円滑化 | 都道府県知事 |
| 地域資源活用 | 地域資源活用事業計画 | 地域の農林水産物・地場産品等を活用した新事業 | 都道府県知事 |
試験対策:経営革新計画の目標指標・認定機関・支援内容
中小企業経営・政策の分野で経営革新計画が出題されるときの頻出ポイントを整理します。
- ✅ 計画期間:3年〜5年
- ✅ 付加価値額(または一人当たり付加価値額)の目標増加率:3年=9%以上、5年=15%以上
- ✅ 「経常利益」ではなく「付加価値額」が指標
- ✅ 認定機関(単独の中小企業):都道府県知事
- ✅ 政府系金融機関(日本政策金融公庫等)の低利融資(無利子ではない)
- ✅ 信用保証協会の保証の特例(別枠)
- ✅ 中小企業投資育成株式会社の投資対象拡大
- 「経営革新計画の目標は経常利益の増加率で測る」→ 誤り(付加価値額)
- 「認定後は無利子融資が受けられる」→ 誤り(低利融資)
- 「農商工連携計画は都道府県知事のみが認定する」→ 誤り(農水大臣+経産大臣の共同認定)
- 「経営革新計画は大企業も対象となる」→ 誤り(中小企業者が対象)
- 「経営革新計画の計画期間は最長3年である」→ 誤り(最長5年)
よくある質問(FAQ)
まとめ──産業競争力強化法・経営革新計画の要点
- 産業競争力強化法は2014年施行。企業の新陳代謝・中小企業の成長支援・規制改革が目的
- 経営革新計画:中小企業が新事業活動の計画を策定→都道府県知事が認定
- 目標指標:付加価値額(または一人当たり付加価値額)の増加率
- 計画期間:3年で9%以上、5年で15%以上の増加が目標
- 認定後の支援:政府系金融機関の低利融資+信用保証の特例(別枠)
- 農商工連携:農水大臣+経産大臣の共同認定
- 産業競争力強化法の規制改革メニュー:グレーゾーン解消制度・企業実証特例制度
産業競争力強化法と経営革新計画は、中小企業経営・政策の中で「成長支援制度」を代表するテーマです。数値目標(3年9%・5年15%)と認定機関(都道府県知事)、支援措置(低利融資・保証特例)の3点セットを確実に覚えておけば、試験での得点につながります。次の記事では中小企業基本法の定義と政策体系について詳しく解説します。









