事例IVの記述問題(財務的助言)の書き方 | 中小企業診断士2次試験

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事例IVで一番差がつくのは計算問題ではなく、計算結果をどう言語化するかだと気づきました。NPVの数字が出せても、「だから何なのか」を書けないと得点につながりません。

事例IVの記述設問は「計算した数値の意味を言葉で伝える」問題です。NPVがプラスかマイナスかを書くだけでは部分点止まりになります。「なぜその値が出たのか」「経営にどう影響するのか」を財務の言葉でまとめる力が、事例IV全体の得点を底上げします。このページでは、記述問題の3パターンを整理し、試験で使えるテンプレートと解答例をまとめています。
目次

記述問題の3パターン

事例IVの記述設問は、大きく3つのパターンに分類できます。設問文を読んだ瞬間に「どのパターンか」を見抜くことが解答の出発点です。

最頻出
計算結果の根拠説明(「採択・棄却の理由を述べよ」)
NPV・IRR・回収期間などを計算したうえで、「なぜ採択(または棄却)するのか」を説明するパターンです。「NPVがプラスであるため採択する」だけでは字数も根拠も不足します。数値の大きさ・リスク・与件文の事業背景まで含めて膨らませることが求められます。
採択・棄却の判断基準(NPV≥0、IRR≥資本コスト等)を明示したうえで、与件文の文脈を加えると採点者に刺さる解答になります。
頻出
財務的観点からの助言(CF・安全性・収益性について述べよ)
「財務的な観点から助言せよ」「財務上の課題を述べよ」という形式で、キャッシュフローの状況・安全性・収益性を軸に意見を述べるパターンです。収益性(利益率)・安全性(自己資本比率・流動比率)・効率性(回転率)・CF(営業CF・投資CF)の4軸を意識した記述が求められます。
「何が問題か」→「なぜそうなっているか」→「どう対処すべきか」の3段構成で書くと解答がまとまります。
出題あり
財務知識の説明(デリバティブ・リース・社債等)
「ファイナンシャル・リースとオペレーティング・リースの違いを説明せよ」「デリバティブを利用するメリットを述べよ」など、財務知識そのものを説明するパターンです。計算が不要な分、正確な定義と使用上のメリット・デメリットを端的に書くことが評価されます。
「定義→特徴→使う理由(メリット)」の順に書くと、短い字数でも採点者に伝わる解答になります。

パターン別:テンプレートと解答例

各パターンに対応したテンプレートと、実際の試験に近い解答例を示します。テンプレートの空欄(下線部)を埋める練習を繰り返すことで、記述スピードが上がります。

パターン1:計算結果の根拠説明

テンプレート
指標名・数値正/負・基準比較であるため、採択/棄却する。
これは与件文の根拠(設備の老朽化・需要の増加等)によりCF・利益・コストの改善が見込まれるためであり、財務的に有利性・合理性があると判断できる。
解答例 A(NPV採択)
NPVは+2,450万円(正の値)であるため、本投資案を採択する。設備更新により製造コストが年間700万円削減され、5年間の累積CFが初期投資額を上回ることが確認できる。また、与件文に示された受注増への対応という戦略的意義を踏まえると、財務的にも事業的にも採択の合理性がある。
ポイント:NPVの符号→数値→CF改善の理由→与件文の文脈の順で書くことで根拠が厚くなる。
解答例 B(IRR基準で棄却)
IRRは7.2%であり、加重平均資本コスト(WACC)8.5%を下回るため、本投資案を棄却する。キャッシュインフローの回収が遅く、投資回収期間も6年超となることから、資金効率の観点でも採択基準を満たさない。
ポイント:IRRと資本コストを対比させ、回収期間でも補強する二重根拠で説得力を増す。

パターン2:財務的観点からの助言

テンプレート
財務的課題として、収益性/安全性/CFの観点から問題点が挙げられる。
具体的には指標名・数値業界水準と比較して低い/高い状況にあり、与件文の根拠が主因と考えられる。
改善策として具体的対応(コスト削減・借入返済・CF改善策)を実施することで財務健全性の向上が見込まれる。
解答例 C(CFの健全性・安全性・収益性)
財務的観点からの助言として、以下3点を指摘する。第一に収益性について、売上高営業利益率が同業他社平均の半分程度にとどまっており、原材料費の高騰と価格転嫁の遅れが主因と考えられる。第二に安全性について、流動比率が100%を下回っており、短期的な資金繰りに懸念がある。第三にCFについて、設備投資が増加する中で営業CFが減少傾向にあるため、フリーCFがマイナスになるリスクがある。これらの改善には、価格見直しと借入の長期化による資金構造の安定化が有効である。
ポイント:3つの視点を「第一に・第二に・第三に」で並べると構成が明確になり採点しやすくなる。

パターン3:財務知識の説明

テンプレート
用語名とは、定義(何をする手段か)をいう。
主なメリットは具体的なメリットであり、利用場面(リスクヘッジ・資金調達等)において活用される。
解答例 D(ファイナンシャル・リースとオペレーティング・リースの違い)
ファイナンシャル・リースとは、リース期間中に解約不能で、資産に関するコストをリース利用者がほぼ全額負担する契約形態であり、BS上に資産・負債として計上される。一方、オペレーティング・リースは解約可能で、コスト全額負担を求めない契約であり、オフバランス処理が可能なため財務指標を悪化させずに設備を利用できるメリットがある。
ポイント:違いを問われたときは「A→Bの対比」で書く。BS計上の有無を明示すると財務的視点が明確になる。

「計算根拠→結論→理由」の3点構成(記述の黄金パターン)

記述設問で安定して得点するための構成が「計算根拠→結論→理由」の3点構成です。どのパターンの設問にも応用できる汎用フレームとして、試験前に身体に染み込ませておくことをおすすめします。

計算
根拠
計算した数値・指標を明示する
「NPVは+○万円」「回収期間は○年」「IRRは○%」など、計算で得た数値を最初に示します。採点者はまずここで「正しく計算できているか」を確認します。数値を省くと根拠がない解答になるため必須です。
例:「NPVは+1,850万円、回収期間は4.2年である。」
結論
採択・棄却・課題・助言を明確に述べる
「〜のため採択する」「〜が財務上の課題である」「〜を助言する」など、設問が求める判断・助言を端的に一文で述べます。曖昧に書くと採点者に判断が伝わらず、得点を落とす原因になります。
例:「NPVが正であるため、本投資案を採択することが妥当である。」
理由
与件文・財務的根拠で補強する
なぜその結論になるのかを、与件文の記述(設備老朽化・受注増・コスト構造等)と財務指標の両方から説明します。理由が薄い解答は「数値を出しただけ」と判断されやすく、差がつきにくくなります。
例:「与件文に示された設備更新による生産効率化でコストが削減され、5年間のCFが初期投資を上回るためである。また、安全性の観点からも自己資本比率が改善する見込みがある。」

3点構成の解答例 3本

解答例 1(NPV正・採択)
【計算根拠】NPVは+2,100万円(正の値)である。【結論】したがって、本投資案を採択する。【理由】与件文に示されているとおり、既存設備の老朽化により維持費が増加しており、今回の更新によって年間800万円のコスト削減が可能であるため、5年間の累積キャッシュインフローが初期投資額3,200万円を上回る。財務的合理性は十分に確認できる。
三段構成を【】で明示することで、採点者が各要素を見つけやすくなる。
解答例 2(IRR基準・棄却)
【計算根拠】IRRは6.8%であり、加重平均資本コスト(8.0%)を下回る。【結論】よって、本投資案を棄却することが財務的に妥当である。【理由】投資回収期間も6.5年と長く、資金を長期拘束するリスクがある。与件文にも資金繰りへの懸念が示されており、現時点での採択は財務リスクを高める。
棄却理由は「基準未達+リスクの存在」の二軸で補強すると説得力が増す。
解答例 3(財務助言・CF視点)
【計算根拠】営業CFは前期比20%減少し、フリーCFはマイナスに転じている。【結論】財務的課題としてキャッシュフロー水準の低下を指摘する。【理由】売上高は維持されているが、売上債権回転期間の長期化により運転資金需要が増加している。早期の回収体制の改善と、在庫圧縮による運転資本の削減が急務である。
CF設問では「なぜCFが悪化しているか」の原因分析まで書けると高得点に近づく。

財務知識を説明する記述設問への答え方

デリバティブ・ファクタリング・リースなどの財務知識問題は、定義が正確に書けるかどうかが得点の分かれ目です。「なんとなく知っている」では字数を使ってしまい、肝心の定義が曖昧になりがちです。以下のカードで各用語の定義・メリット・使用場面を整理します。

デリバティブ(金融派生商品)
将来の価格・金利・為替などの変動リスクを回避するために、原資産から派生した契約(先物・オプション・スワップ)を指す。
主なメリット
為替や金利変動のリスクを一定のコストで固定化できるため、事業計画の安定性が高まる。ただし、投機目的に使うと損失が大きくなるリスクもある。
ファクタリング
企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、早期に現金化する資金調達手法。
主なメリット
回収期間を短縮して運転資金を早期確保できる。銀行融資と異なり負債計上されないため、自己資本比率等の財務指標を悪化させずに資金繰りを改善できる。
リース(ファイナンシャル/オペレーティング)
ファイナンシャル・リース:解約不能・フルペイアウト型でBS計上が必要。オペレーティング・リース:解約可能・オフバランスが可能。
主なメリット
オペレーティング・リースはオフバランス処理により財務指標を改善しつつ設備を利用できる。ファイナンシャル・リースは所有同等の利用が可能で、減価償却費を費用計上できる。
社債(普通社債・転換社債)
普通社債:確定利息を支払う一般的な社債。転換社債(CB):一定条件下で株式に転換できる権利付き社債。
主なメリット
転換社債は株式転換の可能性から低利率での発行が可能。転換前は負債だが、転換後は自己資本に変わるため財務レバレッジの管理に使われる。
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財務知識の説明問題は「知っているかどうか」だけで決まります。定義・メリット・使用場面の3点を、短い言葉で確実に書けるように練習しておくと、出題された瞬間に落ち着いて対応できます。

採点者に刺さる「財務的視点の言葉」

記述問題で差がつくのは、財務の専門用語を正確かつ自然に使えるかどうかです。「安い」「大きい」ではなく、「収益性が低い」「安全性が懸念される」という言葉遣いが採点者に「財務的視点で考えられている」と伝えます。以下のキーワードを設問のカテゴリごとに整理します。

収益性に関するキーワード
売上高営業利益率 売上高経常利益率 売上総利益率(粗利率) 収益性が低い/改善 価格転嫁 コスト構造
「利益率が低い」ではなく「売上高営業利益率が業界平均を下回る」と書くことで具体性が上がります。収益性に言及する場合は「何の利益率」かを特定することが大切です。
安全性に関するキーワード
流動比率 当座比率 自己資本比率 固定長期適合率 財務健全性 短期的な資金繰り 倒産リスク
「お金が足りない」ではなく「流動比率が100%を下回り短期的な支払い能力に懸念がある」と書くと採点者に安全性の問題として伝わります。
キャッシュフローに関するキーワード
営業CF 投資CF フリーCF 運転資本(NWC) 回収期間 CF水準の低下 資金繰りの悪化
CF設問では「営業CFが減少」だけでなく「なぜ減少しているか(売上債権増加・在庫増加等)」まで書けると答案の厚みが増します。
投資評価に関するキーワード
NPV(正味現在価値) IRR(内部収益率) 加重平均資本コスト(WACC) 投資回収期間 採算性 資金効率 財務的合理性
採択・棄却を述べる際は必ず「NPV≥0」「IRR≥資本コスト」といった判断基準を明示することで、根拠のある解答になります。

まとめ

  • 設問パターン(計算根拠説明・財務的助言・財務知識説明)を瞬時に見抜いてから書き始める
  • 「計算根拠→結論→理由」の3点構成を全パターン共通の基本フレームとして使う
  • 結論(採択・棄却・課題・助言)を曖昧にせず、一文で明確に述べる
  • 財務知識(デリバティブ・ファクタリング・リース・社債)の定義とメリットを短文で言えるよう練習する
  • 「収益性・安全性・CF」などの財務的視点のキーワードを正確に使って採点者に伝わる解答を書く
Uのメモ
記述問題が苦手だった頃、自分の解答を見返すと「NPVはプラスです。だから採択します。」という一行で終わっていました。採点者に伝えるべき情報が7割方抜けていたわけです。「3点構成」を意識するようになってから、解答の骨格が安定しました。特に「理由」のパートで与件文を引用する習慣をつけると、事例IVの記述設問が「書ける設問」に変わってきます。計算が合っているかどうかだけでなく、言語化の訓練も事例IV対策の重要な柱です。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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