U「OR(オペレーションズ・リサーチ)って名前は格好いいけど、試験で何が問われるの?」——線形計画法、待ち行列、デシジョンツリー、PERTをひとまとめに整理すると、この分野が得点源に変わります。
OR(オペレーションズ・リサーチ)とは——意思決定を数学で最適化する
OR(Operations Research)は第二次世界大戦中に軍事作戦の効率化を目的として誕生した応用数学の分野です。限られた資源(人・物・お金・時間)をどう配分すれば最大の成果を得られるか——この問いに、数理モデルを使って答えます。
製造業なら生産計画の最適化、物流なら配送ルートの短縮、金融なら資産配分、サービス業なら窓口人員の適正配置。ORは業種を問わず「最適解を探す道具箱」として機能します。
| OR技法 | 主な問いかけ | 代表的な適用場面 |
|---|---|---|
| 線形計画法(LP) | 限られた資源でどう利益を最大化するか | 製品ミックス・原料配合・輸送計画 |
| 待ち行列理論 | どれだけ待たせずにサービスを提供できるか | 窓口設計・コールセンター・レジ配置 |
| デシジョンツリー | 不確実な状況でどの選択肢が期待値最大か | 新規事業判断・投資意思決定 |
| PERT/CPM | プロジェクトをどう組めば最短で完了するか | 建設・システム開発・製品開発 |
| ゲーム理論 | 競争相手の行動を考慮した最善手は何か | 価格戦略・入札戦略・交渉 |
| 在庫理論(EOQ) | いつ・どれだけ発注すれば総コスト最小か | 製造業・小売業の在庫管理 |
| シミュレーション | 複雑すぎて解析できない系をどう評価するか | リスク分析・需要変動シナリオ |
線形計画法(LP)——制約の中で利益を最大化する
- 目的関数:最大化(利益・生産量)または最小化(コスト・時間)したい数式
- 制約条件:資源量・設備稼働時間・需要上限など、守らなければならない不等式
- 非負条件:変数は0以上(生産量がマイナスにはならない)
グラフ解法で解く手順(試験で最もよく出るパターン)
製品AとBを生産する企業を例に取ります。変数が2つのとき、グラフ解法は最も直感的で確実な方法です。
設定:製品A(利益3万円)・製品B(利益2万円)を生産。機械1は月160時間、機械2は月120時間使用可能。
- 製品Aの製造には:機械1を4時間・機械2を2時間
- 製品Bの製造には:機械1を2時間・機械2を4時間
定式化:
- 目的関数:Z = 3A + 2B → 最大化
- 制約①:4A + 2B ≤ 160(機械1の時間制約)
- 制約②:2A + 4B ≤ 120(機械2の時間制約)
- 非負条件:A ≥ 0、B ≥ 0
グラフ解法の手順:
- 各制約不等式を等式に直して直線を引く
- 実行可能領域(すべての制約を満たす多角形)を特定する
- 目的関数の等高線(等利益線)を動かし、最後に実行可能領域と接する点(頂点)を求める
- その点の座標を目的関数に代入して最適値を確認
計算:制約①②の連立方程式を解くと
4A + 2B = 160、2A + 4B = 120 → A = 35、B = 12.5
Z = 3×35 + 2×12.5 = 105 + 25 = 130(万円)が最大利益
シンプレックス法とは
変数が3つ以上になるとグラフが描けません。そのときに代数的に頂点を移動しながら最適解を探すのがシンプレックス法です。手計算では煩雑ですが、コンピュータで大規模LPを解く基盤技術です。試験では「変数が多い場合に使う手法」として名称を押さえれば十分です。
| 解法 | 適用場面 | 特徴 |
|---|---|---|
| グラフ解法 | 変数2つ | 視覚的・直感的・手計算可能 |
| シンプレックス法 | 変数3つ以上 | 代数的・コンピュータ向き・確実に最適解到達 |
双対問題とシャドウプライス(感度分析)
線形計画問題には必ず「双対問題」が存在します。主問題が「利益最大化」ならその双対問題は「費用最小化」になります。双対変数はシャドウプライス(影の価格)とも呼ばれ、「制約を1単位緩めたとき目的関数がいくら改善するか」を示します。例えば「機械1の稼働時間を1時間増やしたら利益がいくら増えるか」を定量化できる、資源の希少価値評価に重要な概念です。
| 概念 | 意味 | 実務的活用 |
|---|---|---|
| シャドウプライス | 制約1単位緩和による目的関数の改善量 | ボトルネック資源の価値評価・増設投資判断 |
| タイトな制約 | 最適解でぴったり満たされている制約(余裕=0) | シャドウプライスが正→追加投資が有効 |
| スラック変数 | 制約の余裕分を表す変数 | 余剰資源の把握に使用 |
待ち行列理論——列の長さと待ち時間を数式で求める
銀行の窓口、コールセンター、工場の仕掛品、病院の外来——あらゆる「待ち」を数学的にモデル化するのが待ち行列理論(Queueing Theory)です。窓口をいくつ設置すれば平均待ち時間を○分以内にできるか、こうした設計問題を解きます。
待ち行列モデルは「到着分布 / サービス分布 / 窓口数」で表記します。M/M/1は「ポアソン到着・指数分布サービス・窓口1つ」という最もシンプルなモデルです。
| 記号 | 名称 | 説明と単位 |
|---|---|---|
| λ(ラムダ) | 到着率 | 単位時間あたりの平均到着客数(例:1時間に10人) |
| μ(ミュー) | サービス率 | 単位時間あたりの平均処理客数(例:1時間に15人) |
| ρ(ロー) | 利用率・交通強度 | ρ = λ/μ。ρ < 1 でないと行列が無限に伸びる |
| 1/μ | 平均サービス時間 | 1人あたりの平均処理時間 |
M/M/1モデルの主要公式
| 指標 | 公式 | 意味 |
|---|---|---|
| システム内平均顧客数 L | L = ρ/(1−ρ) = λ/(μ−λ) | 待ち中 + サービス中の合計平均人数 |
| 待ち行列内平均顧客数 Lq | Lq = ρ²/(1−ρ) = λ²/[μ(μ−λ)] | 純粋に「待っている」平均人数 |
| システム内平均滞在時間 W | W = 1/(μ−λ) | 到着から退去までの平均時間 |
| 平均待ち時間 Wq | Wq = λ/[μ(μ−λ)] | サービス開始までの平均待ち時間 |
| リトルの法則 | L = λW、Lq = λWq | どのモデルにも成立する基本関係式 |
λ = 6人/時間、μ = 10人/時間のとき
- ρ = 6/10 = 0.6(60%稼働)
- L = 0.6/(1−0.6) = 0.6/0.4 = 1.5人(システム内平均人数)
- Lq = 0.36/0.4 = 0.9人(待ち行列内平均人数)
- W = 1/(10−6) = 1/4時間 = 15分(平均滞在時間)
- Wq = 6/[10×4] = 6/40 = 0.15時間 = 9分(平均待ち時間)
検証:L = λW = 6×(1/4) = 1.5 ✓、Lq = λWq = 6×(9/60) = 0.9 ✓
M/M/s モデル(複数窓口)
窓口を s 個に増やしたM/M/sモデルでは、有効サービス率が s×μ になります。計算公式は複雑になりますが、「窓口数を増やすと待ち時間が急激に減少する(逓増的な改善効果)」という定性的理解が重要です。
| モデル | 特徴 | 安定条件 |
|---|---|---|
| M/M/1 | 窓口1つ。最もシンプルなモデル | λ < μ(ρ < 1) |
| M/M/s | 窓口s個。スーパーのレジや銀行ATM | λ < sμ |
| M/D/1 | サービス時間一定(決定的)。自動化ラインなど | λ < μ |
サービス規律の種類
| 略称 | 英語名 | 内容 | 適用例 |
|---|---|---|---|
| FCFS | First Come First Served | 先着順サービス | 一般的な窓口・レジ |
| LCFS | Last Come First Served | 後着先出し | スタック構造(工場の一部) |
| SIRO | Service In Random Order | ランダムサービス | 抽選型 |
| Priority | 優先順位付き | 緊急度・重要度で順位付け | 救急外来・CPU処理スケジューリング |
デシジョンツリー——不確実な未来を「期待値」で比較する
新工場を建設するか・既存設備を改良するか——将来の需要が不確実な中での意思決定を、ツリー図と期待値計算で整理するのがデシジョンツリーです。直感的な図示法でありながら、確率論的に厳密な分析ができます。
- 🔲 決定ノード(□):意思決定者が選択する分岐点。「どの枝を選ぶか」は意思決定者が決める
- ⭕ 確率ノード(○):自然・市場が決める分岐点。各枝に確率が付く(合計=1)
- 💰 葉(末端):各経路の最終的な成果値(利益・損失)
バックワードインダクション(後ろ向き帰納法)
ツリーの葉(末端)から逆向きに計算する手法です。これがデシジョンツリー分析の核心です。
- 各確率ノードの期待値を計算(確率×成果値を全枝で合計)
- 各決定ノードで最大期待値の枝を選択(他の枝を「刈り取る」)
- 根(スタート)まで遡ることで最適意思決定を特定
選択肢A:新製品開発(投資費用3,000万円)
- 需要大(確率0.4)→ 収益8,000万円、純利益 = 8,000−3,000 = 5,000万円
- 需要小(確率0.6)→ 収益500万円、純利益 = 500−3,000 = −2,500万円
- 期待純利益 = 0.4×5,000 + 0.6×(−2,500) = 2,000 − 1,500 = 500万円
選択肢B:既存製品維持(投資費用0)
- 確実な純利益:400万円
→ 選択肢A(500万円 > 400万円)が期待値最大。新製品開発を選択。
情報の価値(EVPI:完全情報の期待価値)
「もし将来の需要が確実にわかったら、今より意思決定をどれだけ改善できるか?」——この改善幅を金額で表したのがEVPI(Expected Value of Perfect Information)です。
- 完全情報がある場合の期待利益:
- 需要大(確率0.4)→ 新製品開発を選択:5,000万円
- 需要小(確率0.6)→ 既存維持を選択:400万円
- 期待利益 = 0.4×5,000 + 0.6×400 = 2,000+240 = 2,240万円
- 完全情報がない場合の期待利益:500万円(選択肢Aの期待純利益)
- EVPI = 2,240 − 500 = 1,740万円
市場調査費用が1,740万円以下なら、調査を行う経済的価値があります。
PERT/CPM——プロジェクトの最短完了時間を求める
| 項目 | PERT | CPM |
|---|---|---|
| 正式名称 | Program Evaluation and Review Technique | Critical Path Method |
| 作業時間の扱い | 確率的(3点推定:楽観・最可能・悲観) | 確定的(1点推定) |
| 起源 | 米海軍ポラリスミサイル開発(1958年) | デュポン社の工場建設(1957年) |
| 主な目的 | 不確実プロジェクトのスケジュール管理 | コストと時間のトレードオフ分析 |
| 現在の使われ方 | 境界が曖昧になり「PERT/CPM」として統合的に利用 | |
ネットワーク図の要素
- イベント(○):作業の開始・完了時点。番号で識別
- アクティビティ(→):実際の作業。矢印で表現し、所要時間を付記
- ダミーアクティビティ(破線矢印):時間0・論理的な先行関係だけを示す
クリティカルパスの計算手順
| 作業 | 経路(イベント) | 所要時間 | 先行作業 |
|---|---|---|---|
| A | ①→② | 3日 | なし |
| B | ②→③ | 5日 | A |
| C | ③→⑤ | 2日 | B |
| D | ①→④ | 4日 | なし |
| E | ④→⑤ | 6日 | D |
経路① ①②③⑤:3+5+2 = 10日
経路② ①④⑤:4+6 = 10日
→ 両経路ともクリティカルパス(所要時間が等しく、フロートがゼロ)
最早開始時刻(ES)・最遅完了時刻(LF)・フロート
| 概念 | 計算方向 | 意味 |
|---|---|---|
| 最早開始時刻(ES) | 前向き計算(Forward Pass) | 最も早く作業を開始できる時刻 |
| 最早完了時刻(EF) | EF = ES + 所要時間 | 最も早く作業を完了できる時刻 |
| 最遅完了時刻(LF) | 後向き計算(Backward Pass) | プロジェクトを遅らせずに完了できる最遅時刻 |
| 最遅開始時刻(LS) | LS = LF − 所要時間 | プロジェクトを遅らせずに開始できる最遅時刻 |
| トータルフロート(TF) | TF = LF − ES − 所要時間 | プロジェクト完了を遅らせずに許容できる余裕時間 |
| フリーフロート(FF) | 後続作業のESとの差 | 後続作業に影響しない余裕時間。FF ≤ TF |
PERTの3点推定
作業時間が不確実な場合、3つの見積もりから期待時間を統計的に計算します。
| パラメータ | 意味 | 公式 |
|---|---|---|
| 楽観時間(a) | 最も順調に進んだ場合の時間 | te = (a + 4m + b) / 6 |
| 最可能時間(m) | 最も可能性が高い時間(最頻値) | |
| 悲観時間(b) | 最悪の場合の時間 | |
| 分散(σ²) | 作業時間のばらつき | σ² = [(b − a) / 6]² |
ゲーム理論の基本——競争相手の行動を読んだ最適戦略
ゲーム理論は「自分の利得が相手の行動に依存する状況」での最適戦略を分析します。OR文脈では価格戦略・入札戦略・提携交渉に応用され、近年は行動経済学との融合が進んでいます。
| 概念 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ゼロサムゲーム | 一方の利得=他方の損失。合計常に0 | 将棋・チェス・ジャンケン |
| 非ゼロサムゲーム | 合計が変わりうる。協調で全体利益増加可能 | 価格競争・公共財供給 |
| ナッシュ均衡 | 「相手が戦略を変えない限り自分も変えない」均衡状態 | 囚人のジレンマの均衡 |
| 支配戦略 | 相手の戦略によらず常に最善の戦略 | 囚人のジレンマで「裏切り」が支配戦略 |
| パレート最適 | 誰かの利得を下げずには他者の利得を上げられない状態 | 社会的に効率的な配分 |
| ミニマックス戦略 | 最悪の結果を最小化する戦略 | リスク回避的な入札・価格設定 |
| B:協調(黙秘) | B:裏切り(自白) | |
|---|---|---|
| A:協調(黙秘) | A:−1年、B:−1年(社会最適) | A:−10年、B:0年 |
| A:裏切り(自白) | A:0年、B:−10年 | A:−5年、B:−5年(ナッシュ均衡) |
ナッシュ均衡は「裏切り・裏切り」(−5,−5)ですが、社会的最適は「協調・協調」(−1,−1)。個人合理性が集団合理性を損なう典型例として、価格競争や軍拡競争の分析に使われます。
OR技法の比較まとめ——試験直前に整理する
| 技法 | キーワード | 主な公式・概念 | 試験での出方 |
|---|---|---|---|
| 線形計画法 | 目的関数・制約条件・実行可能領域 | グラフの頂点で最適解、シンプレックス法 | 計算問題(利益最大化) |
| 待ち行列 | λ・μ・ρ・リトルの法則 | L=ρ/(1−ρ)、W=1/(μ−λ) | 計算問題(平均待ち時間) |
| デシジョンツリー | 期待値・バックワードインダクション・EVPI | 確率×成果値の合計 | 計算問題(最適選択) |
| PERT/CPM | クリティカルパス・TF・ES/LF | te=(a+4m+b)/6、TF=LF−ES−t | 計算問題(最短完了日数) |
| ゲーム理論 | ナッシュ均衡・支配戦略・ゼロサム | 利得表からの均衡特定 | 概念問題(均衡の特定・パレート最適) |
よくある質問(FAQ)
OR技法は「名前を覚えて終わり」ではなく、実際に手を動かして計算することで定着します。線形計画法はグラフを描いて頂点座標を求める練習を、待ち行列はλ・μを代入してL・Wを計算する練習を、PERTはネットワーク図を手書きしてクリティカルパスを特定する練習を——それぞれ最低3問は手計算で解いてみましょう。数式に慣れていない方でも、手順を体で覚えれば必ず得点できる分野です。









