労働基準法まとめ|労働時間・休暇・解雇の基礎と重要ポイントを図解で整理

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労働基準法って、条文の数字がとにかく多くて。8時間、40時間、6日、10日……「どの数字がどの文脈の話なのか」が混ざりやすくて、何度読んでも頭の中で渋滞していました。でもある日、「労働時間→休暇→賃金→解雇」の順に縦に並べて整理したら、急にスッキリしたんです。今日はその整理ノートを公開します。

高頻度難易度 ★★☆
労働基準法は、使用者と労働者の間の最低限の労働条件を定める法律です。労働時間・休憩・休日・休暇・賃金・解雇の各テーマが1次試験の経営法務で繰り返し出題されます。数字の多い法律ですが、「原則→例外→違反時の効果」という構造で整理すると全体像が見えてきます。
1日8h 法定労働時間(原則)
週40h 法定労働時間(週)
30日 解雇予告の原則期間
目次

労働基準法とは

労働基準法(労基法)は、使用者が労働者に守らせなければならない最低基準を定めた法律です。この基準を下回る労働契約は、その部分が無効となり、労基法の基準が自動的に適用されます。

労働基準法の基本構造
目的
労働者の生存権を守るための最低基準を設定。憲法27条「勤労の権利・義務」を受けた立法
適用範囲
「事業」に適用。業種・規模を問わず原則全事業場に適用される(管理監督者・家事使用人等は一部除外)
強行規定
労基法の基準を下回る部分は無効となり、自動的に労基法の基準が補充される(民法より優先)
監督機関
労働基準監督署(厚生労働省)。違反には罰則規定あり

労働時間・休憩・休日の規定

試験頻出の数字が集中するセクションです。法定労働時間・変形労働時間制・36協定のそれぞれの意味と関係性を整理します。

法定労働時間と休憩・休日
法定労働時間
1日8時間・週40時間が上限。特例事業場(常時10人未満の一部業種)は週44時間
休憩
労働時間が6時間超→45分以上、8時間超→1時間以上。労働時間の途中に与えること
法定休日
毎週少なくとも1日(または4週4日)。法定休日の労働には割増賃金35%が必要
変形労働時間制のポイント
一定の期間を単位として平均労働時間が法定内に収まれば、特定の日・週に法定時間を超えることを認める制度です。1ヶ月単位・1年単位・1週間単位の3種類があります。繁閑に応じた柔軟な労働時間管理が可能になりますが、就業規則への記載と労使協定の締結が必要です。
36協定(時間外・休日労働協定)
定義
労基法36条に基づく労使協定。締結・届出により法定時間外・休日労働が可能になる
原則限度
時間外労働は月45時間・年360時間が原則上限(2018年労基法改正で上限規制が法定化)
特別条項
臨時的な特別の事情がある場合のみ、年720時間・単月100時間未満(休日含む)まで延長可能
届出先
所轄の労働基準監督署長に届出が必要(届出なき時間外労働は違法)

休暇の種類と付与ルール

休暇にはいくつかの種類があり、それぞれ付与条件・取得方法が異なります。年次有給休暇は特に出題頻度が高いテーマです。

年次有給休暇
6ヶ月継続勤務+出勤率80%以上で発生。最低10日付与
産前産後休業
産前6週・産後8週が原則。産後6週は就業禁止
育児・介護休業
育児介護休業法に基づく。子が1歳(最長2歳)まで
年次有給休暇の付与日数(勤続年数別)
継続勤務年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年〜
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
試験頻出:年5日取得義務(2019年〜)
年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、使用者は年5日を時季指定して取得させる義務があります(労基法39条7項)。取得できなかった場合は使用者に罰則(30万円以下の罰金)が科されます。この「義務化」の部分が近年の出題で増えています。

賃金・割増賃金の計算

割増賃金は「何%増しか」という数字とともに、「どの労働に対して適用されるか」をセットで覚えることが重要です。

労働の種類 割増率 根拠条文 備考
時間外労働(月60時間以下) 25%以上 37条1項 法定労働時間超
時間外労働(月60時間超) 50%以上 37条1項ただし書 大企業は2010年〜、中小は2023年〜適用
深夜労働(22時〜翌5時) 25%以上 37条4項 時間外と重複すれば50%以上
法定休日労働 35%以上 37条1項 所定休日(法定外)は時間外割増で対応
法定休日+深夜 60%以上 37条1項・4項 35%+25%の合算
賃金の原則(5原則)
賃金は 通貨払い・直接払い・全額払い・毎月払い・一定期日払い の5原則に従わなければなりません。法令に別段の定めがある場合や、労使協定がある場合を除き、控除や現物支給は原則禁止です。

解雇・雇用終了のルール

解雇は使用者からの一方的な契約終了であるため、労基法による強い規制があります。解雇予告・即時解雇・整理解雇(経営上の理由)の3つの場面を分けて整理します。

解雇の種類と要件
解雇予告
少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要がある(労基法20条)
即時解雇
労働者に重大な責任がある場合(懲戒解雇事由)や、天災等でやむを得ない場合に限り、労基署長の認定を受けて予告なし解雇が可能
解雇禁止期間
業務上の傷病による休業期間+30日間、産前産後休業期間+30日間は解雇禁止(労基法19条)
整理解雇(リストラ)の4要件 — 判例法理
人員削減の必要性——削減しなければ経営が維持できないという経営上の必要性があること
解雇回避努力義務——希望退職の募集・配転・残業削減等、解雇を避けるための努力を尽くしたこと
被解雇者選定の合理性——整理解雇の対象者の選定基準が合理的かつ公正であること
手続きの妥当性——労働組合や労働者への説明・協議等、解雇に至るまでの手続きが誠実に行われたこと
4要件の扱われ方に注意
整理解雇の4要件は判例が積み上げた法理であり、条文に明記されているわけではありません。試験では「4つをすべて満たす必要があるかどうか」という論点で問われることもあります。現在の判例の流れでは「4要素を総合考慮する」という立場が主流とされています。
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解雇の4要件、最初は「全部満たさないとダメなの?」と思っていたのですが、「総合考慮」という考え方を知って、すこし腑に落ちました。条文に書いていない分、「なぜこの要件が必要か」という背景から理解しないと、応用問題で迷いやすいなと感じています。

過去問で確認する

労働基準法は経営法務の中でも出題頻度が高いテーマです。特に割増賃金の計算・解雇予告・有給休暇の付与要件は繰り返し出題されています。

過去問 H29年 経営法務 第18問
労働基準法に規定する解雇に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも20日前にその予告をしなければならない。
  • イ 使用者は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、原則として解雇してはならない。
  • ウ 使用者は、解雇予告手当として、解雇予告の日数に不足する日数分の平均賃金を支払う必要があるが、30日分を超えて支払う必要はない。
  • エ 使用者は、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合において、その事由について所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告をせずに解雇することができる。
解説
正解はです。天災事変など事業継続が不可能な場合、所轄労働基準監督署長の認定を受けることで予告なし解雇が認められます(労基法20条1項ただし書・3項)。
ア:解雇予告は「少なくとも30日前」が正しく、20日では誤りです。
イ:正しい内容に見えますが、本問では正確な記述が他にあるため。実際には条文通りで正しい記述です(エが最も正確)。
ウ:30日分を超えて支払えば予告日数は不足日数分の計算で構いませんが、30日分を上限とする規定はありません。
過去問 R3年 経営法務 第19問
労働基準法に規定する時間外労働・深夜労働等の割増賃金に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、いずれの事業場も時間外労働の上限規制の適用対象であるものとする。
  • ア 使用者は、労使協定を締結した場合には、法定時間外労働に対して割増賃金を支払わなくてもよい。
  • イ 法定休日労働に対する割増賃金率は25%以上である。
  • ウ 1ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合、超えた時間の労働については50%以上の割増賃金を支払わなければならない。
  • エ 深夜(午後10時〜午前5時)に時間外労働を行った場合の割増賃金率は合計で40%以上である。
解説
正解はです。月60時間超の時間外労働には50%以上の割増賃金が義務づけられています(中小企業も2023年4月から適用)。
ア:労使協定(36協定)は時間外労働をさせることを認めるものであり、割増賃金の支払義務をなくすものではありません。
イ:法定休日労働の割増率は35%以上(25%ではない)。
エ:深夜+時間外の場合は25%+25%=50%以上(40%ではない)。
過去問 H26年 経営法務 第17問
年次有給休暇に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 年次有給休暇の権利は、労働者が継続して3ヶ月以上勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した場合に発生する。
  • イ 年次有給休暇の権利は、労働者が継続して6ヶ月以上勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した場合に発生する。
  • ウ 使用者は、時季変更権を行使して、労働者が請求した年次有給休暇の時季を変更することは、いかなる場合もできない。
  • エ 年次有給休暇は最大で2年間繰り越せる。
解説
正解はです。年次有給休暇の発生要件は継続勤務6ヶ月以上かつ全労働日の8割以上出勤(労基法39条1項)。
ア:3ヶ月は誤り。6ヶ月が正しい。
ウ:使用者は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り時季変更権を行使できます。
エ:時効は2年のため2年間繰り越せるのは正しい記述ですが、「最大で」という表現は誤解を招く可能性があります。本問では正確な発生要件を問うイが正解です。

まとめ

この記事で整理したポイント
法定労働時間は1日8時間・週40時間が原則。時間外・休日労働には36協定の締結・届出が必要です。
割増賃金は時間外25%・休日35%・深夜25%が基本で、月60時間超の時間外は50%以上に引き上げられます。
解雇予告は30日前が原則。整理解雇は判例上の4要件(必要性・回避努力・選定合理性・手続妥当性)が問われます。
年次有給休暇は継続勤務6ヶ月・出勤率8割以上で発生し、年10日以上付与される場合は年5日の取得義務があります。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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