U簡易合併と略式合併、どちらの手続きが省略されるか——過去問でその選択肢を見るたびに、頭の中でパーセンテージが混乱していました。20分の1なのか5分の1なのか、どちらが「存続会社」の話なのか。数値だけ覚えようとするといつも崩れてしまうので、今回は合併全体の仕組みから整理し直してみました。
組織再編は会社法の中でも範囲が広く、「合併・会社分割・株式交換・株式移転」の4手法が横断的に出題されます。それぞれ「何を統合・分離するのか」「どんな対価が使われるか」「どんな手続きが必要か」という3点が論点の軸になります。この記事では4手法の全体像を図解で整理したうえで、簡易・略式手続きの数値要件、保護措置の仕組みまでまとめました。
組織再編の全体像
会社法上の組織再編は4つの手法に分類できます。「会社そのものをまとめる」のが合併・株式交換・株式移転、「事業の一部を切り出す」のが会社分割という整理が出発点です。
合併(吸収合併・新設合併)
合併は「2社以上の会社が1社にまとまる」組織再編です。吸収合併と新設合併で、受け皿となる会社が異なります。
| 種別 | 仕組み | 存続・消滅 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 吸収合併 | 消滅会社が存続会社に吸収される | 存続会社は残る。消滅会社は解散・清算不要で消滅 | 実務上の大半はこちら。手続きが比較的シンプル |
| 新設合併 | 合併する全社が消滅し、新たに設立される会社に権利義務を承継 | 合併当事会社は全社消滅。新設会社が権利義務を包括承継 | 設立手続きが加わるため実務では少ない。対等合併のイメージ |
対価の柔軟化(平成17年会社法改正)により、合併の対価は存続会社の株式だけでなく、金銭・社債・新株予約権等も使えます。いわゆる「三角合併」では存続会社の親会社株式を対価とすることも可能です。
合併の手続きには原則として株主総会の特別決議が必要ですが、要件を満たす場合は「簡易合併」「略式合併」として手続きを省略できます。
| 手続き | 対象会社 | 省略できる要件 | 省略される手続き |
|---|---|---|---|
| 簡易合併 | 存続会社 | 消滅会社に交付する対価の額が、存続会社の純資産の5分の1以下(定款で引き下げ可) | 存続会社の株主総会の承認決議を省略 |
| 略式合併 | 消滅会社 | 存続会社が消滅会社の総株主の議決権の10分の9以上を保有(特別支配会社) | 消滅会社の株主総会の承認決議を省略 |



簡易合併の「5分の1以下」は存続会社が使う要件、略式合併の「10分の9以上」は消滅会社に対して存続会社が持つ比率——という整理をしてから、数値が混乱しにくくなりました。「どちらの会社を基準にした数値か」を意識するのが、この論点のコツのようです。
会社分割(吸収分割・新設分割)
会社分割は「会社はそのままに、事業の一部だけを切り出す」手法です。不採算事業の売却、グループ内の事業再編、持株会社体制への移行などに活用されます。
また、会社分割は対価を誰が受け取るかによって2つに分類できます。
| 種別 | 対価の受取先 | 特徴・使われ場面 |
|---|---|---|
| 物的分割 | 分割会社自身が対価(承継会社の株式等)を受け取る | 分割会社が承継会社の親会社となる。持株会社体制の構築に多用 |
| 人的分割 | 分割会社の株主が対価を受け取る(分割型分割) | 分割会社の株主が承継会社の株主になる。いわゆる「スピンオフ」に近い形 |
株式交換・株式移転
株式交換と株式移転は、いずれも「完全親子会社関係を作る」手法です。会社を解散・消滅させず、株式のやり取りだけで親子会社化を実現できます。
| 項目 | 株式交換 | 株式移転 |
|---|---|---|
| 親会社 | 既存会社 | 新設会社 |
| 子会社 | 既存会社(完全子会社化) | 既存会社(完全子会社化) |
| 利用場面 | 特定企業を子会社化したい場合 | ホールディングス設立・グループ再編 |
| 対価 | 親会社の株式・金銭等 | 新設親会社の株式 |
| 手続きの原則 | 完全子会社となる会社の株主総会特別決議 | 移転する会社の株主総会特別決議 |
組織再編の手続き・保護措置
組織再編は当事会社の株主・債権者に大きな影響を与えるため、会社法はさまざまな保護措置を定めています。手続きの流れと保護措置をあわせて押さえておきましょう。
簡易・略式手続きの適用範囲を4手法で比較しておきます。
| 区分 | 手続き | 要件 | 省略できる決議 |
|---|---|---|---|
| 合併 | 簡易合併 | 存続会社が消滅会社に交付する対価が存続会社の純資産の1/5以下 | 存続会社の株主総会 |
| 合併 | 略式合併 | 存続会社が消滅会社議決権の9/10以上を保有 | 消滅会社の株主総会 |
| 会社分割 | 簡易分割 | 承継会社が分割会社に交付する対価が承継会社の純資産の1/5以下 | 承継会社の株主総会 |
| 会社分割 | 略式分割 | 承継会社が分割会社議決権の9/10以上を保有 | 分割会社の株主総会 |
| 株式交換 | 簡易株式交換 | 完全親会社が子会社に交付する対価が純資産の1/5以下 | 完全親会社の株主総会 |
| 株式交換 | 略式株式交換 | 完全親会社が子会社議決権の9/10以上を保有 | 完全子会社となる会社の株主総会 |
身近な場面で考えてみると
2016年にファミリーマートとサークルKサンクス(ユニーグループ・ホールディングス傘下)が経営統合した事例は、複数の組織再編手法が組み合わされた実例です。4手法がどのような場面で使われるかを確認してみます。
過去問で確認する
- ア 略式合併は、存続会社が消滅会社の総株主の議決権の過半数を保有している場合に、消滅会社の株主総会の承認を省略できる手続きである。
- イ 簡易合併は、消滅会社の純資産額が存続会社の純資産額の5分の1以下である場合に、存続会社の株主総会の承認を省略できる手続きである。
- ウ 略式合併は、存続会社が消滅会社の総株主の議決権の10分の9以上を保有している場合に、消滅会社の株主総会の承認を省略できる手続きである。
- エ 吸収合併における対価は存続会社の株式に限定されており、金銭等を対価とすることはできない。
ア:「過半数」ではなく「10分の9以上」が要件です。イ:簡易合併の要件は「消滅会社に交付する対価の額が存続会社の純資産の5分の1以下」であり、消滅会社の純資産との比較ではありません。エ:対価の柔軟化により、金銭等も対価とすることができます(三角合併も可能)。
- ア 株式移転では、完全親会社となる既存の会社に対して子会社の株式を移転するため、新会社を設立する手続きは不要である。
- イ 株式交換において、完全親会社が完全子会社の株主に交付できる対価は、完全親会社の株式のみに限られる。
- ウ 株式移転は、新たに設立する会社(完全親会社)に既存の会社が全株式を移転する手法であり、複数の会社が共同で持株会社を設立する場合にも活用できる。
- エ 株式交換を行う場合、完全子会社となる会社の株主総会の承認は一切不要である。
ア:株式移転では必ず新会社を設立します(既存会社に移転するのは「株式交換」)。イ:株式交換の対価は、株式のほか金銭等も可能です(対価の柔軟化)。エ:原則として完全子会社となる会社の株主総会特別決議が必要です(略式株式交換の要件を満たす場合のみ省略可)。
- 合併・会社分割・株式交換・株式移転の4手法を「会社が消滅するか」「新会社を設立するか」で分類できる
- 簡易合併は「対価が純資産の1/5以下」のとき存続会社の総会省略、略式合併は「議決権9/10以上保有」のとき消滅会社の総会省略
- 株式交換は「既存の親会社」へ、株式移転は「新設する親会社」へ株式を移転する
- 組織再編には原則として株主総会の特別決議(出席議決権の2/3以上)が必要
- 反対株主は公正な価格での株式買取請求権(効力発生日前後20日以内)を行使できる









