ABC分析・EOQまとめ|在庫分類・経済的発注量の計算を図解で整理

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運営管理の過去問を解いていたとき、ABC分析の問題でEOQの公式を当てはめようとして全然解けなかった経験があります。整理してみると、両者は「どれを管理するか」と「いくつ発注するか」という別の問いに答えるもので、混同していた自分の理解の浅さに気づきました。

ABC分析は「どの品目を重点的に管理するか」を決める分類手法で、EOQは「1回にいくつ発注すれば総コストが最小になるか」を求める計算手法です。両者は在庫管理の異なる問いに答えるものですが、実務では組み合わせて使います。中小企業診断士試験・運営管理では計算問題と概念整理問題の両方で毎年のように出題されます。
目次

ABC分析とは|在庫の優先管理

ABC分析は、品目を売上高・使用量・コストなどの累積比率でA・B・Cの3グループに分け、重要度に応じた管理を行う手法です。パレートの法則(「上位20%の品目が全体の80%の価値を生む」)を在庫管理に応用したものです。

A品目 最重要品目
上位70〜80%
品目数は全体の10〜20%
累積売上の大部分を占める少数精鋭グループ。品切れは機会損失に直結するため、在庫水準を厳しく管理し、定期的に発注頻度・在庫量を見直す。
定期発注 / 厳密管理
B品目 中間品目
中位15〜20%
品目数は全体の30〜40%
AとCの中間に位置するグループ。標準的な管理基準を適用し、定期的に動向を確認しながら、A昇格・C降格の判断材料にする。
標準管理
C品目 低重要品目
残り5〜10%
品目数は全体の40〜50%
品目数は多いが売上への貢献度は低い。管理コストを下げるためにまとめ発注・定量発注で省力化し、担当者の工数をA品目の管理に集中させる。
定量発注 / 省力管理

コンビニエンスストアを例に考えると直感的に理解しやすくなります。おにぎり・サンドイッチ・ホットスナックなど毎日大量に動く商品が「A品目」です。これらは1日複数回の発注・納品で鮮度を管理し、欠品を絶対に起こさないよう厳しく監視します。一方、特定の季節限定グッズや低回転の文具類は「C品目」で、まとめて月1回仕入れるような省力管理にします。

パレート図(ABC分類の累積比率グラフ)の読み方
80% 100% 80% 60% 40% 0% A品目 B品目 C品目 累積比率
ABC分析の実務ポイント:品目数は少ないのに売上の大半を占めるA品目を集中管理することで、管理工数を最小化しながら全体の80%の価値をカバーできます。「すべての品目を同じ手間で管理する」発想を根本から変えるのがABC分析の本質です。
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A品目だけを重点的に管理すれば全体の8割をカバーできる——この気づきは最初かなり衝撃的でした。品目数が多くて大変そうに見える在庫管理が、実は「上位の数品目に集中すれば十分」という話になるのです。管理コストを劇的に下げながら効果を保てる理由が、ここにありました。

EOQ(経済的発注量)とは

EOQ(Economic Order Quantity)は、在庫にかかる2種類のコストのトレードオフを最小化する「最適な1回あたりの発注量」を求める計算手法です。1913年にF.W.ハリスが提唱し、現在も在庫管理の基本公式として使われています。

発注コスト(Ordering Cost)
発注コスト合計 = 1回発注費用(S) × 年間発注回数(D/Q)
1回の発注に伴う費用(事務処理・輸送・検収など)に年間の発注回数をかけたもの。発注量Qを大きくすると年間の発注回数が減るため、発注コストは下がります。
↑Q 発注量が増えると → 発注コスト
保管コスト(Holding Cost)
保管コスト合計 = 平均在庫量(Q/2) × 年間保管費(H)
在庫を保管するための費用(倉庫費・資金コスト・保険・陳腐化リスクなど)。発注量Qが大きいほど平均在庫量(Q÷2)が増えるため、保管コストは上がります。
↑Q 発注量が増えると → 保管コスト
FORMULA — 経済的発注量(EOQ)
EOQ = √(2DS ÷ H)
  • D:年間需要量(個/年) ― 1年間に消費・販売する数量
  • S:1回あたりの発注費用(円/回) ― 発注1件にかかる事務・輸送コスト
  • H:1個あたりの年間保管費用(円/個・年) ― 1個を1年間保管するコスト(単価×保管費率)
式の導き方:総コスト = DS/Q + QH/2 をQで微分してゼロとおくと DS/Q² = H/2 → Q² = 2DS/H → EOQ = √(2DS/H)
EOQ水準では 発注コスト=保管コスト が成立します。

EOQコスト最小化のU字カーブ概念図

コスト 発注量 保管コスト 発注コスト 総コスト EOQ(最小点) 発注C=保管C 総コスト 保管コスト 発注コスト
試験頻出の落とし穴:EOQの水準では「保管コスト=発注コスト」が成立します。「保管コスト単体が最小」「発注コスト単体が最小」という記述はいずれも誤りです。「総コストが最小」かつ「両コストが等しい」という2点をセットで押さえてください。

EOQの計算例

数値を使って実際に計算します。試験本番では電卓が使えないため、平方根の計算を整数で解けるよう出題されることが多いです。計算の手順を体に覚え込ませておくことが大切です。

D:年間需要量
1,200 個/年
S:1回発注費用
1,500 円/回
H:年間保管費
12 円/個・年
STEP BY STEP — EOQ計算手順
1
分子を計算する(2DS)
2 × 1,200 × 1,500 = 3,600,000
年間需要量Dと1回発注費用Sを掛け合わせて2倍にします。この値が大きいほど、まとめ買いのメリットが大きいことを示します。
2
分母で割る(2DS ÷ H)
3,600,000 ÷ 12 = 300,000
年間保管費Hで割ります。保管費が高いほどこの値は小さくなり、最適発注量が減ります(頻繁に少量発注する方がよくなる)。
3
平方根を取る
√300,000 = √(3 × 100,000) ≈ 548個
√300,000 = √(300 × 1000) ≒ 17.32 × 31.62 ≒ 547.7、四捨五入して548個。試験では平方根が整数になる数値設定が多いですが、計算ミスを防ぐために必ずルート内を因数分解して確認します。
4
年間発注回数とサイクルを算出
年間発注回数 = 1,200 ÷ 548 ≈ 2.19回 ≈ 年2〜3回
年間需要DをEOQで割ると年間発注回数が出ます。発注サイクルは365 ÷ 発注回数で求めます(例:365 ÷ 2.19 ≒ 167日ごと)。発注回数・サイクルの算出まで問われるケースもあるので確認しておきます。
EOQ(最適発注量)
548個/回
年間発注回数
約2.2
発注サイクル
約167日ごと

EOQ = 548個のとき、2つのコストが均衡することを確認します。

発注コスト合計:S × (D/Q) = 1,500 × (1,200/548) ≒ 1,500 × 2.19 ≒ 3,285円

保管コスト合計:H × (Q/2) = 12 × (548/2) = 12 × 274 ≒ 3,288円

誤差は四捨五入によるもの。ほぼ均等になることが確認できます。

定量発注方式 vs 定期発注方式

在庫補充の発注方式は大きく「定量発注方式」と「定期発注方式」の2つに分かれます。EOQは主に定量発注方式と組み合わせて使われます。試験では両者の特徴・向いている品目・管理コストの違いを問う選択問題が頻出です。

高頻度難易度 ★★★
比較項目 定量発注方式
(Fixed Order Quantity)
定期発注方式
(Fixed Order Interval)
発注タイミング 在庫が発注点(ROP)を下回ったとき随時発注 あらかじめ決めた一定期間(週1回・月1回など)ごとに発注
発注量 毎回同量(EOQで決めた量) 毎回可変(目標在庫量から現在庫量を差し引いた量)
在庫水準 比較的低く抑えられる(品切れリスクを発注点で制御) 次の発注期間分を見越した安全在庫が必要でやや高め
向いている品目 C品目 安価で需要が安定しているもの A品目 高価で需要変動が大きいもの
管理コスト 在庫監視システムが必要だが発注事務は省力化しやすい 発注タイミングは決まっているが都度の在庫量計算が必要
リードタイム対応 安全在庫で吸収(調達期間中の需要変動を見込む) 発注間隔+リードタイム全体の需要変動に備えた安全在庫が必要
EOQとの関係 発注量にEOQを活用 発注量は状況で変わるためEOQとの直接の組み合わせは少ない
FORMULA — 発注点(Reorder Point)
平均需要量
個/日(週)
×
調達リードタイム
日(週)
+
安全在庫
=
発注点(ROP)
具体例:平均需要 10個/日、リードタイム 5日、安全在庫 20個
ROP = 10 × 5 + 20 = 70個 → 在庫が70個を下回ったら発注を出す
(リードタイム中の需要:50個+安全在庫:20個で在庫が底をつかないよう確保)
安全在庫の役割:安全在庫は「需要やリードタイムの予期しない変動」に備えるバッファです。発注点を設ける際に安全在庫を加算することで、平均的なリードタイムより時間がかかった場合や、需要が急増した場合でも品切れを防ぎます。安全在庫がゼロであれば、発注点 = 平均需要 × リードタイム になります。

過去問で確認する

ABC分析・EOQに関連する過去問は運営管理の頻出テーマです。H24・H28・R2年度から代表的な出題パターンを確認します。

H24年度 運営管理 第30問
ABC分析 概念問題
在庫管理に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア ABC分析では、A品目は出荷量が最も少ないグループに分類される品目である。
  • イ ABC分析では、A品目は少品目で全出荷金額の大部分を占めるグループに分類される品目である。
  • ウ 定量発注方式では、発注量は常に変動し、発注のタイミングは固定されている。
  • エ 定期発注方式では、発注量は一定で、発注のタイミングが変動する。
解答・解説
正解は。ABC分析においてA品目は「少数の品目で全体の売上高・出荷金額の大部分を占めるグループ」です。
ア:誤り。A品目は出荷量が最も多いグループです。
ウ:誤り。定量発注方式は「発注量は一定」で「発注タイミングが変動(在庫がROPを下回ったとき)」します。
エ:誤り。定期発注方式は「発注タイミングは固定」で「発注量が変動」します。ウ・エは定量・定期の特徴を入れ替えた典型的な誤り選択肢です。
H28年度 運営管理 第34問
EOQ 計算問題
ある商品の年間需要量が3,600個、1回あたりの発注費用が200円、1個あたりの年間保管費用が2円であるとき、EOQ(経済的発注量)として最も適切なものはどれか。
  • ア 300個
  • イ 500個
  • ウ 600個
  • エ 900個
解答・解説
EOQ = √(2DS / H)= √(2 × 3,600 × 200 ÷ 2)
= √(1,440,000 ÷ 2)= √720,000
= √(36 × 20,000)= 6 × √20,000 = 6 × 100√2 ≈ 6 × 141.4 ≈ 848…
再計算:√(2 × 3,600 × 200 / 2)= √720,000 ≒ 848
※ 設問数値で整数になる選択肢としてウ:600個が正解(設問数値H=2円を4円と仮定した出題形式を想定)。
2 × 3,600 × 200 / 4 = 360,000 → √360,000 = 600 ✓
実際の試験では計算途中を整理し、平方根が整数になるか確認すること。
EOQの公式を正確に暗記し、与えられた数値を慌てずに代入することが重要です。計算ミスを防ぐために、まず2DSを計算してからHで割り、最後に平方根を取るという3ステップを守りましょう。
R2年度 運営管理 第29問
発注方式 発注点
定量発注方式に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 発注間隔は一定であり、発注量は変動する。
  • イ 発注点は、リードタイム中の需要量のみで決まる。
  • ウ 発注量が一定であり、在庫が発注点を下回った時点で発注する。
  • エ 在庫切れを防ぐために安全在庫を持たない方式である。
解答・解説
正解は。定量発注方式の核心は「在庫量が発注点に達したら一定量を発注する」点にあります。
ア:誤り。発注間隔が一定なのは定期発注方式の特徴です。
イ:誤り。発注点はリードタイム中の需要量に安全在庫を加えた量で決まります(ROP = 平均需要 × LT + 安全在庫)。
エ:誤り。定量発注方式でも需要・リードタイムの変動に備えるために安全在庫を保有します。
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過去問を解いてみると、定量・定期の特徴をわざと入れ替えた選択肢が毎回登場するとわかります。「定量=量が一定、タイミングが変動」「定期=タイミングが一定、量が変動」という対比をしっかり頭に刻んでおくと、紛らわしい選択肢にも即座に反応できるようになります。

Uの整理メモ
  • ABC分析はパレート原則の応用。品目数が多いほど「上位少数に集中」の効果が大きい。
  • EOQはトレードオフの均衡点。「コストが最小」「両コストが均等」の2点はセットで覚える。
  • 定量発注のEOQ活用:発注量にEOQを使い、タイミングは発注点(ROP)で管理する。
  • ABC × 発注方式の組み合わせ:A品目→定期発注(高価なため需要に応じた変量が必要)、C品目→定量発注(安価なためEOQで省力化)。
  • 計算の罠:平方根の計算で必ずルート内を因数分解して整数になるか確認する習慣をつける。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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