TPM・設備保全まとめ|予防保全・事後保全・生産保全の体系を図解で整理
過去問を解いていたとき、「TPMの8本柱」という選択肢が出てきて、柱の名前がまったく頭に入っていないことに気づきました。設備保全はBM・TBM・CBM・PMと略語が多くて、整理できていなかったのだと思います。この記事で一度きちんと体系化してみます。
高頻度難易度 ★★☆
設備保全には「壊れてから直す」「壊れる前に直す」「状態を見ながら直す」という考え方があり、それぞれに略語と体系名がついています。BM・TBM・CBM・PMの関係、そしてTPMが何を目指す活動なのかを、体系図とともに整理してみました。OEEの計算式も含め、1次試験の頻出ポイントを丁寧に確認していきます。
目次
設備保全の体系
設備保全の分類体系
事後保全(BM: Breakdown Maintenance)
故障が発生してから修理・復旧する方法
計画的事後保全と非計画的事後保全に分かれる
交換頻度が低く低コストの設備に適用
予防保全(PM: Preventive Maintenance)
故障が起きる前に点検・交換を行う方法
定期保全(TBM)と状態基準保全(CBM)に分かれる
重要設備・停止損失が大きい設備に適用
定期保全(TBM: Time-Based Maintenance)
一定の時間間隔・使用頻度で定期的に保全
計画立案が容易・スケジュール管理しやすい
まだ使える部品も交換してしまう「過剰保全」の懸念あり
状態基準保全(CBM: Condition-Based Maintenance)
センサーで設備の状態を継続的に監視
異常兆候を検知したタイミングで保全を実施
「予知保全(Predictive Maintenance)」とも呼ばれる
生産保全(PM: Productive Maintenance)は、これらすべての保全方式を「生産性の向上」という観点から体系化した概念です。さらに進んで、設備のライフサイクル全体でコストと性能を最適化しようとする考え方がTPM(全員参加の生産保全)へと発展しました。
事後保全(BM)と予防保全(PM)の違い
| 比較項目 |
事後保全(BM) |
予防保全(PM) |
| 保全のタイミング |
故障発生後に対応 |
故障発生前に計画的に対応 |
| 初期コスト |
低い(計画コストなし) |
高い(計画・点検・部品交換費用) |
| 予期しない停止 |
発生しやすい |
大幅に低減できる |
| 適用設備の例 |
安価・代替可能な設備、停止損失が小さい設備 |
生産ラインのボトルネック設備、停止損失が大きい設備 |
| リスク |
突発的な大きな損失が生じる可能性 |
過剰保全(TBM)・センサーコスト(CBM)の懸念 |
POINT 01
「安い設備ほどBM向き」
故障しても損失が小さく、交換部品が安価なら、事後保全のほうがトータルコストが低くなる場合があります。保全方式の選択は「設備の重要度とコスト構造」で判断するのが基本です。
POINT 02
「ボトルネックはPM必須」
生産ラインの中でその設備が止まると全体が止まる場合、予防保全は必須です。1分の停止がどれだけの損失につながるかを試算して保全方式を選ぶ視点が重要です。
予知保全(CBM)とは
定期保全(TBM)との違い
「時間」ではなく「状態」で判断する
TBMは「3ヶ月ごとに交換」のように時間で判断するため、まだ使える部品も交換してしまいます。CBMは振動・温度・音などをセンサーで常時監視し、実際の劣化状態に基づいて保全タイミングを決めます。
センサー・IoTとの連携
データが保全判断を変える
振動センサー・赤外線カメラ・超音波測定器などを使い、設備の異常兆候をリアルタイムで把握します。近年はIoTとの組み合わせで遠隔監視も可能になり、工場のスマートファクトリー化の核となっています。
メリットとデメリット
導入コストと精度がトレードオフ
適切なタイミングで保全できるため過剰保全を防げる一方、センサー・分析システムの導入コストが高い点が課題です。設備の重要度と故障コストを比較して費用対効果を判断する必要があります。
TBM
定期交換
CBM
状態監視
Predictive
AI予測保全
TPM(全員参加の生産保全)の8本柱
TPM(Total Productive Maintenance)は、1971年に日本プラントメンテナンス協会が提唱した概念で、設備を使うオペレーターも保全に参加し、全員で生産性を最大化しようとする活動です。中核となる8本柱を整理します。
PILLAR 01
個別改善
設備の16大ロスを削減し、OEEを最大化する活動
PILLAR 02
自主保全
オペレーター自身が清掃・点検・給油・増締めを担う活動
PILLAR 03
計画保全
保全部門が計画的に点検・修理を行い、故障ゼロを目指す
PILLAR 04
教育・訓練
オペレーターと保全担当のスキルアップ・多能工化の推進
PILLAR 05
初期管理
設備・製品の開発・設計段階から保全性・稼働性を作り込む
PILLAR 06
品質保全
設備の状態を管理することで不良ゼロ・品質維持を実現する
PILLAR 07
管理・間接部門のTPM
生産部門だけでなく事務・管理部門にもTPMの考え方を展開
PILLAR 08
安全・衛生・環境
災害ゼロ・公害ゼロを目指し、安全な職場環境を維持する
「自主保全」は特に試験で問われやすい柱です。「オペレーターが設備を自分で守る」というイメージを持つと、他の柱との区別がつきやすくなります。8本柱の頭文字を覚えるよりも、各柱の「誰が」「何を」「なぜ」という視点で整理すると記憶に残りやすいと感じています。
設備総合効率(OEE)の計算
OEE(Overall Equipment Effectiveness:設備総合効率)は、TPM活動の代表的な成果指標です。設備が本来持つ能力をどれだけ有効に使えているかを示します。
計算例
ある設備の1日の稼働データを例に計算してみます。
- 計画稼働時間:480分 / 実際の稼働時間:420分(停止ロス:60分)
- 理論サイクルタイム:1分/個 / 実際のサイクルタイム:1.2分/個
- 生産数量:350個 / 良品数量:336個
- 時間稼働率:420 ÷ 480 = 87.5%
- 性能稼働率:(1 ÷ 1.2) × 350 ÷ 420 ≒ 69.4%(速度ロスを反映)
- 良品率:336 ÷ 350 = 96.0%
- OEE:87.5% × 69.4% × 96.0% ≒ 58.3%(世界水準は85%超)
| 構成要素 |
何を測るか |
主なロスの原因 |
| 時間稼働率 |
計画に対して実際に動いた時間の割合 |
故障・段取り替え・チョコ停 |
| 性能稼働率 |
理論速度に対する実際の速度・稼働の割合 |
速度低下・空転・チョコ停(短時間停止) |
| 良品率 |
全生産数に対する良品の割合 |
不良・手直し・立ち上がりロス |
OEEの計算で「性能稼働率」が少しとっつきにくいと感じていましたが、「理論的には毎分1個つくれるはずなのに、実際は1.2分かかっている」という速度ロスを表しているとわかると、すっきり整理できました。3つをかけ合わせると実感よりずっと低い数値になるのが、現場改善の難しさを表しているのだと思います。
過去問で確認する
設備保全に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 事後保全とは、設備の故障が発生した後に修理を行う保全方式であり、停止損失が小さい設備や修理コストが低い設備に適している。
- イ 定期保全(TBM)は、設備の劣化状態を常時監視し、異常の兆候が見られた時点で保全を行う方式である。
- ウ 状態基準保全(CBM)は、センサーや診断技術によって設備の状態を監視し、その状態に基づいて保全のタイミングを決定する予知保全の考え方に基づく。
- エ TPMの自主保全活動は、保全専門部門のスタッフが設備の清掃・点検・給油を担当するものである。
正解:ウ / 解説
ア:事後保全の説明は正しいですが「最も適切」ではなく正確な記述であるウが優先されます。イ:設備の状態を監視して保全タイミングを決める方式はCBM(状態基準保全)であり、TBMは時間基準です。ウ:CBMの正確な説明です。センサーで劣化状態を監視し、兆候を検知してから保全するため「予知保全」とも呼ばれます。エ:自主保全はオペレーター(設備を使う現場作業者)が担当するのが特徴です。保全専門部門ではありません。
設備総合効率(OEE)の計算式として、最も適切なものはどれか。
- ア 稼働率 × 品質稼働率
- イ 時間稼働率 × 良品率
- ウ 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
- エ 稼働率 × 性能稼働率
正解:ウ / 解説
OEEは「時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率」の3要素の積で求めます。それぞれ「設備がどれだけ動いたか」「どれだけの速度で動いたか」「どれだけ良品をつくれたか」を表します。3つをかけ合わせることで、設備の総合的な有効活用度が算出されます。世界的な基準では85%以上が優良とされています。
TPM(Total Productive Maintenance)の活動に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 自主保全は、保全専門部門が設備の定期点検と給油を一括して担うことで、オペレーターの負担を減らす活動である。
- イ 初期管理は、新製品や新設備が立ち上がった後に、品質不具合を素早く改善する活動である。
- ウ TPMの8本柱には「個別改善」「自主保全」「計画保全」「教育・訓練」「初期管理」「品質保全」「管理・間接部門のTPM」「安全・衛生・環境」が含まれる。
- エ 個別改善とは、全社一斉に同じ改善活動を行うことで、改善のスピードを上げる活動である。
正解:ウ / 解説
ア:自主保全はオペレーター自身が清掃・点検・給油を担う活動です。保全部門ではなく現場作業者が主体であることが重要です。イ:初期管理は設備や製品の開発・設計段階から保全性を作り込む活動であり、立ち上がり後の改善ではありません。ウ:8本柱の正しい一覧です。エ:個別改善は特定の設備や工程を対象に「16大ロスの徹底排除」を行う活動です。全社一斉ではなく個別テーマに絞った改善活動です。
この記事のまとめ
- 設備保全はBM(事後)・TBM(定期)・CBM(状態基準)・PM(予防)に分類される
- CBM(状態基準保全)はセンサーで劣化を監視し、兆候に基づいて保全するため「予知保全」とも呼ばれる
- TPMの8本柱は「個別改善・自主保全・計画保全・教育訓練・初期管理・品質保全・管理間接部門・安全衛生環境」
- 自主保全はオペレーターが主体となる点が試験頻出ポイント(保全専門部門ではない)
- OEE = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率 世界水準は85%超
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この記事を書いた人
中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。