U「監査役設置会社」「指名委員会等設置会社」「監査等委員会設置会社」という3つの機関設計を、何度テキストで読んでも混乱していました。それぞれどこが違うのかを比較表で一度並べてみたら、ようやく輪郭がはっきりしてきた気がします。コーポレートガバナンスの全体像とあわせて整理していきます。
コーポレートガバナンスは「経営者をどう監視・規律するか」という仕組みの総称です。日本では会社法による機関設計の選択肢が3つあり、さらにコーポレートガバナンス・コードという任意の原則が上場企業に適用されています。内部統制のCOSOフレームワークとあわせて、試験頻出の構造を整理していきます。
コーポレートガバナンスとは
(プリンシパル)
(エージェント)
(監視機関)
日本の機関設計パターン
日本の会社法では、取締役会設置会社に対して3つの機関設計パターンが認められています。監査の主体と方法が異なります。
| 比較項目 | 監査役設置会社 | 指名委員会等設置会社 | 監査等委員会設置会社 |
|---|---|---|---|
| 監査機関 | 監査役(会) | 監査委員会(取締役で構成) | 監査等委員会(取締役で構成) |
| 委員会の数 | なし | 指名・報酬・監査の3委員会(必置) | 監査等委員会の1委員会 |
| 業務執行 | 代表取締役 | 執行役(取締役と分離可能) | 代表取締役 |
| 社外取締役 | 必須ではない(CGコードは要求) | 各委員会の過半数が社外取締役 | 監査等委員の過半数が社外取締役 |
| 特徴 | 日本の伝統的な形態・中小企業に多い | 経営の透明性・独立性が高い/大企業・外資系 | 2015年会社法改正で導入・移行企業が増加 |
取締役会の機能と独立社外取締役
内部統制の6つの基本的要素
内部統制とは、「業務の有効性・効率性」「財務報告の信頼性」「法令等の遵守」「資産の保全」という4つの目的を達成するための仕組みです。COSOフレームワークでは6つの基本的要素が定義されています。
コーポレートガバナンス・コードの概要
コーポレートガバナンス・コード(CGコード)は2015年に策定(2018年・2021年改訂)された、上場企業向けの行動規範です。法的拘束力はなく「comply or explain(遵守するか、遵守しない場合はその理由を説明する)」という原則で運用されます。
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CGコードの「comply or explain」という考え方が興味深いと感じています。すべての原則を義務として強制するのではなく、「なぜ遵守しないのかを説明する責任を負わせる」ことで企業の自主性を尊重しながらガバナンスを高めていく仕組みなのだと理解しています。ソフトローの典型例として試験でも問われることがあります。
過去問で確認する
- ア 監査役設置会社では、業務執行に関する意思決定は執行役が行い、取締役会はモニタリングに特化する。
- イ 指名委員会等設置会社では、指名・報酬・監査の3委員会の設置が任意とされている。
- ウ コーポレートガバナンス・コードは「comply or explain」の原則に基づき、遵守しない場合はその理由を開示することが求められる。
- エ 内部統制のCOSOフレームワークにおける基本的要素は、統制環境・リスク評価・統制活動・情報と伝達・モニタリングの5つである(日本基準)。
- ア 指名委員会等設置会社では、監査委員会・指名委員会・報酬委員会の各委員会の委員の過半数は、社内取締役で構成されなければならない。
- イ 監査等委員会設置会社では、監査等委員会の委員の過半数は社外取締役でなければならない。
- ウ 監査役設置会社では、監査役は取締役会の決議に参加して議決権を持つ。
- エ 指名委員会等設置会社では、代表取締役が業務執行を行い、執行役を置く必要はない。
- ア 内部統制の基本的要素は「統制環境」「リスクの評価と対応」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」の5つである。
- イ 日本の内部統制基準は、COSOフレームワークに「ITへの対応」を加えた6つの基本的要素を定めている。
- ウ 「統制活動」とは、内部統制の有効性を継続的に評価・確認する活動を指す。
- エ 「統制環境」は6要素の中の1つであり、その他の要素から独立して機能する。
社外取締役の役割と独立性
コーポレートガバナンス強化の中心に据えられているのが社外取締役です。2021年の会社法改正により、監査役設置会社(上場会社)でも社外取締役の選任が義務化されました。「外から経営を見る目」として何を期待されているのかを整理します。
社外取締役に求められる独立性の主な要件は以下のとおりです(会社法+取引所規則)。現在または過去10年以内に当該会社の業務執行取締役・使用人でないこと、主要な取引先・親会社・大株主の関係者でないことなどが求められます。
2つのコード——CGコードとスチュワードシップ・コード
| コード名 | 策定年 | 対象 | 目的 | 原則数 |
|---|---|---|---|---|
| コーポレートガバナンス・コード | 2015年(金融庁・東証) | 上場企業(会社側) | 企業が株主・ステークホルダーに対して説明責任を果たすための行動規範 | 5原則・73原則 |
| スチュワードシップ・コード | 2014年(金融庁) | 機関投資家(投資家側) | 投資家が投資先企業と建設的な対話を行い、企業価値向上・受益者利益を実現するための行動規範 | 8原則 |
両コードを「車の両輪」と表現することがあります。企業が透明な経営を行い(CGコード)、投資家が積極的に対話する(スチュワードシップ・コード)ことで、日本全体の投資効率と企業価値を高めようとする政策的な設計です。
コーポレートガバナンスとコンプライアンスの違い
試験でよく混同されるのがこの2つです。一言でまとめると——
株主・ステークホルダーの利益のために、経営者が適切な意思決定をしているかをチェック・監督する仕組み。不祥事予防に加え、企業価値の向上も射程に入る。
法律・社内規程・社会規範に従って行動すること。ガバナンスの一部を構成するが、守ることが目的であり価値創造は直接の目的ではない。
たとえ話:コンプライアンスは「交通法規を守って運転すること」、コーポレートガバナンスは「どのルートで目的地に向かうか・運転手が安全に走っているかを助手席や後席の人が監視できる仕組みがあること」——そんなイメージで整理すると覚えやすいかもしれません。
3機関設計の詳細比較
机関設計の3類型は「どの機関が監督・業務執行・監査をどう分担するか」で区別します。以下の比較テーブルで横断的に整理しておきましょう。
| 比較項目 | 監査役設置会社 | 指名委員会等設置会社 | 監査等委員会設置会社 |
|---|---|---|---|
| 導入年 | 伝統的な形態 | 2003年(委員会等設置会社として) | 2015年(新設) |
| 業務執行機関 | 代表取締役・業務執行取締役 | 執行役(代表執行役) | 代表取締役・業務執行取締役 |
| 監督機関 | 取締役会+監査役(会) | 取締役会(3委員会が監督) | 取締役会+監査等委員会 |
| 監査役の有無 | 必置(監査役会は大会社) | なし | なし(監査等委員が代替) |
| 社外取締役要件 | 上場会社は1名以上 | 3委員会各過半数が社外取締役 | 監査等委員の過半数が社外取締役 |
| 役員報酬決定権 | 取締役会(株主総会決議あり) | 報酬委員会が決定 | 取締役会(監査等委員は株主総会で別途決議) |
| 特徴・メリット | 日本企業で最多。馴染みやすい形態 | 監督と執行の分離が最も明確。グローバル水準 | 監査役設置と指名委員会等設置の中間。移行しやすい |
上場企業の多くが採用している監査等委員会設置会社は、指名委員会等設置会社ほど厳格ではない一方、監査役設置よりも社外取締役を取締役会に組み込めるため、2015年以降の移行先として急速に普及しました。
- コーポレートガバナンスはエージェンシー問題を解決し企業価値を持続的に高めるための仕組み
- 機関設計は「監査役設置」「指名委員会等設置(3委員会必置)」「監査等委員会設置」の3類型
- 指名委員会等設置会社では業務執行は「執行役」が担い、各委員会の過半数は社外取締役
- 内部統制の基本的要素は日本基準で6つ(COSO5要素+ITへの対応)
- CGコードは「comply or explain」原則・法的拘束力なし・上場企業が対象









