コーポレートガバナンスまとめ|取締役会・監査役・内部統制・コードを図解で整理
2026
4/26
「監査役設置会社」「指名委員会等設置会社」「監査等委員会設置会社」という3つの機関設計を、何度テキストで読んでも混乱していました。それぞれどこが違うのかを比較表で一度並べてみたら、ようやく輪郭がはっきりしてきた気がします。コーポレートガバナンスの全体像とあわせて整理していきます。
コーポレートガバナンスは「経営者をどう監視・規律するか」という仕組みの総称です。日本では会社法による機関設計の選択肢が3つあり、さらにコーポレートガバナンス・コードという任意の原則が上場企業に適用されています。内部統制のCOSOフレームワークとあわせて、試験頻出の構造を整理していきます。
目次
コーポレートガバナンスとは
定義
企業統治の仕組み
株主・経営者・利害関係者の間で、企業が適切に経営されるよう監視・規律する仕組みの総称です。日本語では「企業統治」と訳されます。
目的
持続的な企業価値の向上
経営の透明性・公正性を確保し、企業が長期的に価値を創造し続けることを目的としています。不正や経営の暴走を防ぐ「守り」と、成長を後押しする「攻め」の両面があります。
エージェンシー問題
所有と経営の分離から生じる問題
株主(プリンシパル)と経営者(エージェント)の利害が一致しない状況を「エージェンシー問題」と呼びます。経営者が株主の利益より自分の利益を優先するリスクをいかに抑えるかが、ガバナンスの核心です。
株主(プリンシパル)
経営者(エージェント)
取締役会(監視機関)
日本の機関設計パターン
日本の会社法では、取締役会設置会社に対して3つの機関設計パターンが認められています。監査の主体と方法が異なります。
比較項目
監査役設置会社
指名委員会等設置会社
監査等委員会設置会社
監査機関
監査役(会)
監査委員会(取締役で構成)
監査等委員会(取締役で構成)
委員会の数
なし
指名・報酬・監査の3委員会(必置)
監査等委員会の1委員会
業務執行
代表取締役
執行役(取締役と分離可能)
代表取締役
社外取締役
必須ではない(CGコードは要求)
各委員会の過半数が社外取締役
監査等委員の過半数が社外取締役
特徴
日本の伝統的な形態・中小企業に多い
経営の透明性・独立性が高い/大企業・外資系
2015年会社法改正で導入・移行企業が増加
3つの違いは「誰が監査するか」と「委員会が何個あるか」を軸に覚えると整理できます。監査役設置会社は「監査役」という独自の機関が監査する旧来型。指名委員会等設置会社は「取締役の中の委員会」が監査する形で、3委員会すべてが必置です。監査等委員会設置会社はその中間で、2015年から増えています。
取締役会の機能と独立社外取締役
モニタリング機能
経営執行の監督
取締役会は業務執行の意思決定だけでなく、執行状況を監督(モニタリング)する役割を担います。近年は「意思決定機関」から「監督機関」への転換が求められています。
独立社外取締役
独立した視点からの監督
会社や経営陣から独立した立場の社外取締役です。CGコードは上場企業に対して独立社外取締役を一定数(プライム市場は取締役の3分の1以上)選任することを求めています。
スキルマトリクス
取締役の多様性確保
2021年改訂CGコードでは、取締役会が必要なスキル・経験・多様性を確保しているかを「スキルマトリクス」として開示することが求められるようになりました。
内部統制の6つの基本的要素
内部統制とは、「業務の有効性・効率性」「財務報告の信頼性」「法令等の遵守」「資産の保全」という4つの目的を達成するための仕組みです。COSOフレームワークでは6つの基本的要素が定義されています。
要素 01
統制環境
内部統制の基盤。経営者のコミットメント・倫理観・組織文化・権限と責任の整備が含まれる
要素 02
リスクの評価と対応
目的の達成を妨げるリスクを識別・分析し、対応策を講じるプロセス
要素 03
統制活動
リスクへの対応策として実施する方針・手続き。承認・照合・職務分掌などが含まれる
要素 04
情報と伝達
内部統制に必要な情報を識別・収集し、関係者に適時・適切に伝える仕組み
要素 05
モニタリング
内部統制が有効に機能しているかを継続的または定期的に評価・確認する活動
要素 06
ITへの対応
業務にITを活用する場合の統制。日本の内部統制基準ではCOSOの5要素に加えて独自に追加された要素
コーポレートガバナンス・コードの概要
コーポレートガバナンス・コード(CGコード)は2015年に策定(2018年・2021年改訂)された、上場企業向けの行動規範です。法的拘束力はなく「comply or explain(遵守するか、遵守しない場合はその理由を説明する)」という原則で運用されます。
株主の権利・平等性の確保
株主の権利が実質的に確保されるよう、適切な対応を行う。外国人株主・少数株主の権利も平等に扱う。
株主以外のステークホルダーとの適切な協働
従業員・取引先・顧客・地域社会など多様なステークホルダーの利益を尊重し、持続的な価値創造につなげる。
適切な情報開示と透明性の確保
財務情報だけでなく、経営戦略・ガバナンス・リスク・ESG情報など非財務情報も適切に開示する。
取締役会等の責務
取締役会は中長期的な企業価値向上の観点から経営の方向性を示し、経営陣の適切なリスクテイクを支援するとともに、モニタリング機能を果たす。
株主との対話
株主・投資家の視点を経営に反映するため、建設的な対話(エンゲージメント)を促進する。インサイダー情報の管理にも留意する。
CGコードの「comply or explain」という考え方が興味深いと感じています。すべての原則を義務として強制するのではなく、「なぜ遵守しないのかを説明する責任を負わせる」ことで企業の自主性を尊重しながらガバナンスを高めていく仕組みなのだと理解しています。ソフトローの典型例として試験でも問われることがあります。
過去問で確認する
コーポレートガバナンスに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 監査役設置会社では、業務執行に関する意思決定は執行役が行い、取締役会はモニタリングに特化する。
イ 指名委員会等設置会社では、指名・報酬・監査の3委員会の設置が任意とされている。
ウ コーポレートガバナンス・コードは「comply or explain」の原則に基づき、遵守しない場合はその理由を開示することが求められる。
エ 内部統制のCOSOフレームワークにおける基本的要素は、統制環境・リスク評価・統制活動・情報と伝達・モニタリングの5つである(日本基準)。
正解:ウ / 解説
ア:執行役(業務執行の分離)は指名委員会等設置会社の特徴です。監査役設置会社では代表取締役が業務執行を担います。イ:指名委員会等設置会社では3委員会の設置は「必置」です。任意ではありません。ウ:CGコードは正確に「comply or explain」原則を採用しています。法的拘束力はなく、遵守しない場合はその理由を開示することで説明責任を果たします。エ:日本の内部統制基準ではCOSOの5要素に「ITへの対応」を加えた6要素とされています。
日本の会社法における機関設計に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 指名委員会等設置会社では、監査委員会・指名委員会・報酬委員会の各委員会の委員の過半数は、社内取締役で構成されなければならない。
イ 監査等委員会設置会社では、監査等委員会の委員の過半数は社外取締役でなければならない。
ウ 監査役設置会社では、監査役は取締役会の決議に参加して議決権を持つ。
エ 指名委員会等設置会社では、代表取締役が業務執行を行い、執行役を置く必要はない。
正解:イ / 解説
ア:指名委員会等設置会社の各委員会の委員の過半数は「社外取締役」でなければなりません。社内取締役ではありません。イ:監査等委員会設置会社の監査等委員会は取締役で構成され、その過半数は社外取締役でなければならないとされています。正しい記述です。ウ:監査役は取締役会に出席して意見を述べる権限はありますが、議決権は持ちません。エ:指名委員会等設置会社では業務執行は「執行役」が担います。代表取締役は存在せず、代表執行役となります。
内部統制の基本的要素に関する記述として、最も適切なものはどれか(日本の内部統制基準に基づく)。
ア 内部統制の基本的要素は「統制環境」「リスクの評価と対応」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」の5つである。
イ 日本の内部統制基準は、COSOフレームワークに「ITへの対応」を加えた6つの基本的要素を定めている。
ウ 「統制活動」とは、内部統制の有効性を継続的に評価・確認する活動を指す。
エ 「統制環境」は6要素の中の1つであり、その他の要素から独立して機能する。
正解:イ / 解説
ア:COSOフレームワークの要素は5つですが、日本の内部統制基準ではITへの対応を加えた6つです。イ:正しい説明です。日本の内部統制基準(金融庁)はCOSOの5要素に「ITへの対応」を追加しています。ウ:継続的に有効性を評価・確認する活動は「モニタリング」です。「統制活動」はリスクへの対応策として実施する承認・照合・職務分掌などの手続きを指します。エ:「統制環境」は他の要素の基盤となるものであり、他の要素と有機的に関連しています。独立して機能するものではありません。
この記事のまとめ
コーポレートガバナンスはエージェンシー問題を解決し企業価値を持続的に高めるための仕組み
機関設計は「監査役設置」「指名委員会等設置(3委員会必置)」「監査等委員会設置」の3類型
指名委員会等設置会社では業務執行は「執行役」が担い、各委員会の過半数は社外取締役
内部統制の基本的要素は日本基準で6つ(COSO5要素+ITへの対応)
CGコードは「comply or explain」原則・法的拘束力なし・上場企業が対象
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この記事を書いた人
中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。