アジャイル開発・スクラムまとめ|スプリント・バックログ・ベロシティを図解で整理

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過去問を解いていて「スクラムマスターって何をする人だっけ?」と選択肢の前で固まったことがあります。ロール・イベント・作成物、それぞれの名称と役割が頭の中で混線していたのです。この記事では、スクラムの構造をまるごと整理しています。

この記事では、アジャイル開発の基本思想からスクラムの全構造(3ロール・5イベント・3作成物)、ベロシティとバーンダウンチャートの読み方、XPの主要プラクティス、そして過去問での出題パターンまでを一気に整理します。「なんとなく知っている」状態から「選択肢で迷わない」状態に持っていくことを目指しています。

目次

アジャイル開発とは何か

AGILE vs WATERFALL

アジャイル(Agile)とは「機敏な・素早い」を意味する英語です。2001年に発表された「アジャイルソフトウェア開発宣言」によって体系化されました。従来のウォーターフォール型と比較すると、開発の思想そのものが異なります。

アジャイルマニフェスト 4つの価値
プロセスよりも個人と対話
ドキュメントよりも動くソフトウェア
契約交渉よりも顧客との協調
計画に従うことよりも変化への対応
右側にも価値はある
「右側(ドキュメント・計画等)に価値がない」という意味ではなく、左側をより重視する、という宣言です。試験での誤答選択肢によく使われるポイントです。
観点 ウォーターフォール アジャイル
要件定義 開始前に全要件を確定する 開発しながら継続的に精緻化する
変更への対応 困難(後工程での変更コストが大きい) 歓迎する(スプリント単位で柔軟に対応)
リリース 最終工程で一括リリース 各スプリントで部分的にリリース
品質確認 テスト工程で一括確認 各スプリントで随時確認
向いている場面 要件が明確で変化が少ない大規模システム 要件が不明確で変化が多いWebサービス等

スクラムの3つのロール

SCRUM ROLES

スクラムでは「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」「開発チーム」の3つのロールが明確に定義されています。試験では各ロールの責任範囲を問う問題が頻出です。

ROLE 01
プロダクトオーナー
Product Owner / PO
製品の価値を最大化する責任を持つ。プロダクトバックログを管理し、優先順位を決定する。顧客・ステークホルダーの代表として開発チームに要求を伝える。
試験ポイント:バックログの優先順位を決めるのはPOのみ。スクラムマスターや開発チームには変更権限がない。
ROLE 02
スクラムマスター
Scrum Master / SM
スクラムが正しく実践されるようチームをサポートする。開発の指揮者ではなくファシリテーター・コーチ的な役割。チームの障害(インピーダンント)を除去する。
試験ポイント:SMはプロダクトの優先順位を決めない。開発の意思決定も開発チームに委ねる。「プロセスの守護者」と覚えると混乱しにくい。
ROLE 03
開発チーム
Development Team
実際のプロダクト開発を行う自己組織化されたチーム。一般に3〜9名が目安とされる。特定の役職(リーダー等)を置かず、チーム全体で成果に責任を持つ。
試験ポイント:自己組織化・クロスファンクショナルがキーワード。マネージャーがタスクを割り振るのではなく、チーム自らがスプリントバックログを管理する。

スクラムの5つのイベント

SCRUM EVENTS

スクラムのイベントは、スプリント自体を含めて5つあります。それぞれの目的と所要時間を整理しておくと、試験での選択肢の判断が速くなります。

EVENT 01 スプリント
プランニング
EVENT 02 デイリー
スクラム
EVENT 03 開発作業
EVENT 04 スプリント
レビュー
EVENT 05 レトロス
ペクティブ
イベント名 目的 参加者・時間
スプリント(Sprint) 1〜4週間の固定開発サイクル。期間中は目標を変更しない スクラムチーム全員
スプリントプランニング スプリントのゴールを設定し、スプリントバックログを作成する 全員/スプリント期間×2時間が目安
デイリースクラム 毎日15分の短い同期会。昨日の成果・今日の計画・障害を共有する 開発チーム主体/15分上限
スプリントレビュー スプリントで完成したインクリメントを顧客・ステークホルダーに示し、フィードバックを得る 全員+ステークホルダー
スプリントレトロスペクティブ チームのプロセス改善を話し合う振り返り。「何がうまくいったか・次に改善するか」を検討する スクラムチーム全員
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「レビュー」と「レトロスペクティブ」の違いが最初わかりにくかったのですが、レビューはプロダクト(成果物)を見せる場、レトロスペクティブはチームのプロセスを振り返る場、と整理したら混同しなくなりました。

スクラムの3つの作成物(アーティファクト)

SCRUM ARTIFACTS
01
プロダクトバックログ(Product Backlog)
開発すべき機能・要件・改善点を優先順位付きで一覧化したリスト。プロダクトオーナーが管理し、随時更新する。上位にあるものほど詳細に記述される。「誰が管理するか=PO」が試験頻出。
02
スプリントバックログ(Sprint Backlog)
当該スプリントで実施するタスクの一覧。プロダクトバックログから選んだアイテムを、開発チームがタスクレベルに分解して管理する。「誰が管理するか=開発チーム」がポイント。
03
インクリメント(Increment)
スプリントで完成した「動作するプロダクトの増分」。各スプリントの成果物。「完成の定義(Definition of Done)」を満たしたもののみがインクリメントと見なされる。

ベロシティとバーンダウンチャート

VELOCITY & BURNDOWN
ベロシティの定義と計算
ベロシティ = 1スプリントで完了したストーリーポイントの合計
例)スプリント1でユーザーストーリーA(3pt)・B(5pt)・C(2pt)が完了した場合
ベロシティ = 3 + 5 + 2 = 10ポイント

活用方法:過去数スプリントの平均ベロシティをもとに、「残りのバックログを消化するのに何スプリント必要か」をおおよそ予測できます。ベロシティが安定してくることがチームの成熟を示す指標の一つです。
バーンダウンチャートのイメージ
100 50 0 Day1 Day10 Day20 残作業量(pt)
理想線(計画通りに進んだ場合)
実績線(実際の消化ペース)
実績線が理想線より上にある
計画より作業が遅れている状態。残作業が予定より多い。スプリントゴールの達成リスクがあるため、スクラムマスターがボトルネックを調査します。
実績線が理想線より下にある
計画より速く作業が進んでいる状態。スプリントが順調か、あるいは見積もりが甘かった可能性があります。余裕ができた場合はバックログから追加タスクを取り込むこともあります。

XP(エクストリームプログラミング)の主要プラクティス

XP PRACTICES

XP(Extreme Programming)はスクラムと並ぶアジャイル手法の代表格です。技術的なプラクティスに特に注力しており、以下の項目が試験で問われます。

プラクティス 内容 試験ポイント
テスト駆動開発(TDD) 先にテストを書き、そのテストをパスするコードを書く 「テストを先に書く」が最重要。実装前にテストが存在する。
ペアプログラミング 2人で1台のPCを共有し、1人がコードを書き1人がレビューする レビューコストの削減とナレッジ共有が目的。生産性は短期的に下がることもある。
継続的インテグレーション(CI) コードを頻繁にリポジトリへ統合し、自動テストを実行する 「頻繁な統合」「自動テスト」がキーワード。結合コストを小さく保つ。
リファクタリング 外部から見た動作を変えずに内部構造を改善する 「機能を変えずに構造を改善」が定義。バグ修正や機能追加とは異なる。
小さなリリース 価値を小さな単位で頻繁にリリースする フィードバックサイクルを短縮し、リスクを分散する。
シンプルな設計 現時点で必要な機能だけを実装する(YAGNI原則) YAGNI = “You Ain’t Gonna Need It”。過剰設計を排除する考え方。
顧客代表(オンサイト顧客) 顧客の代表がチームに常駐し、優先度決定やフィードバックを行う スクラムのプロダクトオーナーと役割が近いが、XPでは常駐が強調される。
共同所有 コードの特定部分を担当者が占有せず、誰でも変更できる 属人化を防ぎ、バス係数(キーパーソン離脱リスク)を下げる。
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TDDは「テストを後から書く」と勘違いしていた時期がありました。「テスト→実装→リファクタリング」の順番(Red-Green-Refactorサイクルとも呼ばれます)をそのまま覚えておくと選択肢で迷わなくなりました。

身近な場面で整理するスクラムの構造

DAILY EXAMPLE

スクラムの構造が抽象的に感じられたとき、「ケーキ屋の新商品開発」に置き換えてみると整理しやすくなりました。

SCENE 01
プロダクトバックログ = メニュー候補リスト
「いちごタルト・チョコガトー・季節のマカロン…」という開発候補が優先順位つきで並ぶリストがプロダクトバックログです。オーナー(PO)がどれを先に出すか決めます。
SCENE 02
スプリント = 2週間の試作期間
「この2週間でいちごタルトを完成させよう」と決めたら、期間中はメニューを変えません。デイリースクラム=毎朝の「今日の作業と困りごとの共有」です。
SCENE 03
レビュー&レトロスペクティブ
2週間後、試作品をオーナーや顧客に味見してもらう=スプリントレビュー。「次はもう少し早く試作できるよう仕込みの段取りを変えよう」と話し合う=レトロスペクティブ。

過去問で確認する

PAST EXAMS
H30年度 第21問(経営情報システム) アジャイル・スクラム用語

スクラムに関する記述として最も適切なものを選ぶ形式の問題。スプリント・バックログ・スクラムマスター・デイリースクラムの説明がそれぞれ選択肢に並ぶ。

解法ポイント
各ロール・イベントの定義を正確に把握しているかが問われます。
スプリント:「固定期間(1〜4週間)の開発サイクル。期間中の目標は変更しない」
プロダクトバックログ:「POが管理する優先順位付きの要求リスト」
スクラムマスター:「プロセスサポート役。開発を指揮するわけではない」
誤答選択肢は「スクラムマスターが優先順位を決める」「スプリント中に目標を変更できる」などが典型です。
R3年度 第20問(経営情報システム) XP・テスト駆動開発

エクストリームプログラミング(XP)のプラクティスに関する記述。TDD・ペアプログラミング・継続的インテグレーション・リファクタリングの説明として適切なものを選ぶ。

解法ポイント
TDD(テスト駆動開発):「先にテストを書き、テストをパスするコードを実装する」が正しい説明。「テストを最後にまとめて書く」は誤り。
リファクタリング:「外部動作を変えずに内部構造を改善する」。「機能追加」や「バグ修正」はリファクタリングではない。
継続的インテグレーション:「頻繁にコードを統合し自動テストを実行する」。手動テストとの区別に注意。
R5年度 第22問(経営情報システム) ベロシティ・バーンダウンチャート

アジャイル開発における進捗管理の指標に関する問題。ベロシティの定義またはバーンダウンチャートの読み方を問う形式。

解法ポイント
ベロシティ:「1スプリントで完了したストーリーポイントの合計」。「計画したポイント数」ではなく「完了したポイント数」である点に注意。
バーンダウンチャート:縦軸=残作業量(ストーリーポイント)、横軸=日数。グラフが右下に向かって減少するのが理想的な形。実績線が理想線より上にある=遅延。
「燃え尽きる(Burn Down)」チャートなので、完了に向かって残作業量が減っていく点を押さえておきましょう。
U のメモ
スクラムを学んだ後に「スクラムとXPはどう違うの?」と思いました。簡単にいうと、スクラムはプロセス(何をどの順番でやるか)のフレームワーク、XPは技術的なプラクティス(どうやって良いコードを書くか)に特化したフレームワークです。実務では両方を組み合わせて使うチームも多いそうです。

また「カンバン」と「スクラム」の違いも試験で問われることがあります。スクラムはスプリントという固定の時間枠(タイムボックス)を持つのに対して、カンバンはフロー型(作業が終わったら次を引き取る)で固定サイクルを持ちません。詳しくはシステム開発手法の比較記事もあわせてご覧ください。
この記事のまとめ
  • アジャイルはウォーターフォールと対になる概念。変化への対応・短いサイクルでのリリースが核心
  • スクラムの3ロール:PO(バックログ管理)・SM(プロセスサポート)・開発チーム(自己組織化)
  • スクラムの5イベント:スプリント・プランニング・デイリースクラム・レビュー・レトロスペクティブ
  • スクラムの3作成物:プロダクトバックログ(PO管理)・スプリントバックログ(開発チーム管理)・インクリメント
  • ベロシティ=1スプリントで完了したストーリーポイントの合計。バーンダウンチャートは残作業量を可視化する
  • XPのプラクティス:TDD(テスト先行)・ペアプログラミング・CI・リファクタリング(動作を変えず構造改善)
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各用語の「誰が何をするか」「何が目的か」を一言で言える状態になると、選択肢の迷いがかなり減ります。同じように学習を進めている方のお役に立てましたら幸いです。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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