中小企業白書まとめ②|開業率・後継者不在・人手不足の最新統計を図解で整理

U

過去問を解いていて、「開業率は何%だったか」「後継者不在率って6割?7割?」と選択肢の前で手が止まったことがありました。白書の統計は毎年似た数字が並ぶのに、いざ問われると曖昧になる——そんな経験から、今回は開業率・後継者不在・人手不足の3テーマを図と表で一気に整理してみました。

中小企業白書(2024・2025年版ベース)のなかでも、開業率・後継者不在・人手不足は「毎年変わらず問われる定番テーマ」です。このページでは、国際比較の図解・頻出数値の暗記カード・過去問パターンの3点セットで整理しています。試験の直前期にも使いやすい形にまとめましたので、ざっと眺めるだけでも数字の感覚が整ってくると思います。

目次

開業率・廃業率の現状

日本の開業率は、おおよそ4〜5%程度とされています(白書2024年版ベース)。これは欧米主要国と比べると際立って低い水準で、企業の新陳代謝が進みにくい構造的な課題として長年指摘されています。廃業率はほぼ同水準の3〜4%程度で推移しており、廃業の理由として最も多いのが「後継者不在」です。

開業率の国際比較(おおよその目安値・白書ベース)
英 国
約12%
米 国
約10〜11%
ドイツ
約7〜8%
日 本
約4〜5%

※ 各国の白書・OECDデータを参考にした目安値です。年次・定義により差異があります。

POINT 01
開業率はおおよそ4〜5%
英国(約12%)・米国(約10〜11%)の半分以下の水準。「開業が少ない=廃業も少ない」と見えますが、廃業理由の質が問題です。
POINT 02
廃業理由トップは「後継者不在」
廃業を選ぶ理由の上位は後継者不在・代表者の高齢・健康問題です。収益性の悪化ではなく「担い手不足」による廃業が多い構造です。
POINT 03
開業率向上が政策目標
政府は「開業率・廃業率を欧米並みの10%台へ」という目標を掲げてきました。スタートアップ支援・創業融資・廃業支援が三位一体で整備されています。
指標 日本(おおよその目安) 主な比較国 試験での着目点
開業率 約4〜5%程度 米国10〜11%、英国12%前後 日本は欧米の「半分以下」という大小関係
廃業率 約3〜4%程度 欧米は開業率と近い水準 廃業が開業を上回ると企業数が減少する方向
廃業理由1位 後継者不在 「収益悪化」ではなく「後継者不在」が最多
廃業理由2位以下 経営者の高齢・健康問題 担い手問題が共通の根本原因

経営者の高齢化と後継者不在問題

中小企業では経営者の高齢化が年々進んでいます。白書のデータでは、70歳以上の経営者が占める比率が増加傾向にあり、後継者が決まっていない企業の割合はおおよそ60%程度と推計されています。いわゆる「2025年問題」として、団塊世代(1947〜49年生まれ)の経営者が一斉に70代後半に差し掛かり、大量廃業が懸念された時期でもありました。

約60
%程度
後継者不在率(白書ベースの推計)
70
歳以上
高齢化が顕著な経営者年齢層
約245
万社
2025年頃までに廃業リスクがあるとされた中小企業数(推計)
後継者不在が生む連鎖(因果の流れ)
出発点
経営者の高齢化が進む一方、親族・従業員への承継が進まない
後継者が見つからないまま廃業を選択
黒字でも廃業せざるを得ない企業が増加
廃業により雇用が喪失される
地域雇用の喪失・技術・ノウハウの散逸・サプライチェーンへの影響
親族内承継の変化
かつては子どもへの承継が主流でしたが、近年は従業員承継(MBO)や第三者承継(M&A)が増加しています。政府は事業承継税制の拡充でこれを後押ししています。
事業承継・引継ぎ支援センター
全国に設置された公的相談機関。M&Aのマッチング支援や承継計画の策定支援を無償で行います。試験では「支援機関の名称・役割」として問われることがあります。
廃業が生む経済的損失
後継者不在による廃業が続くと、累計で数百万人規模の雇用喪失、22兆円超のGDP損失が生じるという推計(中小企業庁試算)が白書で示されています。
U

「後継者不在率約60%」という数字は、選択肢で50%・60%・70%・80%のような並び方をすることがあります。絶対値より「おおよそ6割」という感覚で覚えておくと、消去法でも対応できそうです。

人手不足の深刻化

中小企業の人手不足は、白書のなかでも近年急速に取り上げが増えているテーマです。有効求人倍率は全国平均で1倍超が続いており、特に建設・介護・飲食・運輸などでは深刻な状況が続いています。中小企業は大企業に比べて賃金水準や福利厚生で見劣りしやすく、採用競争で不利な立場に置かれやすいという構造的な問題があります。

1倍超
(有効求人倍率の目安)
求人が求職を上回る状態が継続
3〜4
業種
特に深刻:建設・介護・飲食・運輸
約30
%程度
外国人労働者を活用する中小企業の割合(推計)
対応策 概要 試験での着目点
外国人材の活用 特定技能・技能実習制度の整備。在留資格の種類と対象業種がポイント 特定技能1号・2号の区別、在留期間の上限
デジタル化による省力化 ITツール導入補助(IT導入補助金)で業務効率化。中小企業のDX推進 IT導入補助金の対象・補助率(最大450万円程度)
働き方改革の推進 時間外労働の上限規制・同一労働同一賃金の中小企業への適用 適用猶予業種(建設・運輸・医療)の2024年問題
女性・高齢者の活躍推進 多様な人材の活用で労働力を補う。助成金・税制優遇の活用 雇用関係助成金の種類と要件
日常の場面で考えてみると

近くのコンビニやスーパーで「スタッフ募集中」の貼り紙を見かけることが増えたと感じます。あの光景は、中小企業の人手不足を毎日目撃していることと同じです。

「大企業は給与が高いから人が集まりやすいが、中小企業はそこで競争しにくい」——白書が繰り返し指摘するこの構造は、日常の採用貼り紙の数にそのまま現れているのだと思うと、数字がより実感を持って見えてきます。

中小企業の生産性格差

生産性の格差は、中小企業白書のなかでも継続的に取り上げられるテーマです。労働生産性(従業者1人当たりの付加価値額)を大企業と比べると、中小企業の製造業はおおよそ大企業の70%程度、非製造業ではさらに低い60%程度と推計されています。この格差の背景には、IT投資の遅れ・設備の老朽化・規模の経済が働きにくい構造があります。

労働生産性の比較(大企業を100とした場合のおおよその目安)
大企業(製造)
100
中小(製造)
約70
大企業(非製造)
100
中小(非製造)
約60

※ 白書・経済センサスを参考にした目安値です。年次により変動します。

IT投資の遅れ
中小企業のDX推進率は大企業より低く、紙・電話・FAXによる業務が残っている割合が高い。IT導入補助金などで後押しされているものの、活用が進んでいない企業も多くあります。
設備老朽化
設備の平均年齢が大企業より高く、更新投資が滞っている企業も少なくありません。省力化投資補助金などで設備投資を促す施策が整備されています。
規模の経済が働きにくい
少量生産・多品種対応が多く、固定費の分散が難しいため、1単位当たりのコストが高くなりやすい構造です。

試験頻出数値まとめ

試験で繰り返し問われる定番数値を一覧にまとめました。覚えるときは「なぜその数字なのか」の背景と一緒に押さえておくと、選択肢を比較する際に迷いにくくなります。

99.7
%
中小企業が全企業数に占める割合
約70
%
中小企業の従業者数(全体比)
約50
%
付加価値額(全体比)
4〜5
%
日本の開業率(おおよその目安)
約60
%程度
後継者不在率
約357
万社
中小企業の総数(おおよその目安)
小規模企業者の従業員基準(中小企業基本法)
業種 小規模企業者の基準 覚え方のポイント
製造業・その他 従業員20人以下 「モノを作る=20人」と覚える
商業・サービス業 従業員5人以下 「売る・サービスする=5人」と覚える

暗記チートシート(フラッシュカード)

左が「問い」、右が「答えと補足」です。隠しながら確認する使い方がおすすめです。

日本の開業率はおおよそ何%?
4〜5%程度
英国12%・米国10〜11%の「半分以下」が試験のポイント
後継者不在率はおおよそ何%?
約60%程度
廃業理由トップは「後継者不在」。収益悪化ではない点を押さえる
中小企業は全企業の何%?
99.7%
大企業はわずか0.3%。圧倒的に中小企業が多い
従業者数は全体の何%を中小企業が占める?
約70%
付加価値額は約50%——従業者数より付加価値額が低い=生産性格差
小規模企業者の従業員基準(製造業)は?
20人以下
商業・サービスは5人以下。「製造20・商サービス5」で対比を覚える
中小企業の総数はおおよそ何社?
約357万社
経済センサスベースの目安値。「350万社台」という水準感で覚える

過去問パターン分析

白書問題は、統計数値を直接問うタイプと、傾向・方向性を問うタイプの2種類に大別されます。解き方のコツをまとめました。

タイプ①:大小・最大・最小を問う
「開業率が最も高い国はどれか」「後継者不在率が最も高い業種はどれか」のように、順位・最大最小を選ばせる形式。絶対値の暗記より「どちらが大きいか」の対比で覚えると対応しやすいです。
タイプ②:変化の方向を問う
「近年の開業率の傾向として正しいものはどれか」のように、増加・減少・横ばいの方向性を選ぶ形式。白書の「最近の傾向」を押さえる必要があります。
タイプ③:正誤の組み合わせ
「ア〜エの記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか」という形式。1つでも確実に正誤判断できる記述があれば消去法が使えます。定番数値の確実な把握が武器になります。
U のメモ — 解き方のコツ

白書問題は「正確な数値を暗記する」よりも、「傾向と対比で理解する」ほうが効率的だと感じています。たとえば開業率であれば、「日本は欧米の半分以下」という対比感覚さえあれば、「4.3%か4.7%か」で迷う問いはほぼありません。

一方で「99.7%」「70%」「50%」のような定番数値は、問われ方が単純なぶん確実に取りたい問題です。この2種類を区別して覚えると、白書問題に対するストレスがかなり軽くなりました。

過去問チャレンジ

中小企業経営・政策 — 白書統計(平成29年度 改題) 開業率・廃業率
次の記述のうち、中小企業白書の内容として最も適切なものはどれか。
  • ア 日本の開業率は米国・英国と同水準で、おおよそ10%台で推移している。
  • イ 日本の開業率はおおよそ4〜5%程度で、英国(約12%)や米国(約10〜11%)と比較して低い水準にある。
  • ウ 近年の廃業理由の第1位は収益悪化であり、後継者不在による廃業は少数にとどまる。
  • エ 廃業率が開業率を大幅に上回って推移しており、中小企業の総数は毎年急激に減少している。
正解:イ / 解説
ア:誤り。日本の開業率は欧米の半分以下程度で、10%台ではありません。
イ:正しい。おおよそ4〜5%程度という水準と、英米との大小比較が正確に記述されています。
ウ:誤り。廃業理由の第1位は後継者不在であり、収益悪化ではありません。
エ:誤り。廃業率は開業率と近い水準で推移しており、「大幅に上回る」とは言えません。
中小企業経営・政策 — 白書統計(令和3年度 改題) 後継者・生産性
中小企業の後継者問題と生産性に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを選べ。

ア 後継者不在の中小企業の割合はおおよそ60%程度と推計されており、後継者が決まっていない企業が多数を占める。
イ 中小企業の労働生産性は、製造業・非製造業ともに大企業と同水準で推移している。
ウ 黒字であっても後継者不在を理由に廃業する企業が存在しており、雇用や技術の喪失につながる。
エ 中小企業の従業者数は全体の約50%程度で、付加価値額は約70%程度を占めている。
  • ア・イ
  • ア・ウ
  • イ・ウ
  • ウ・エ
正解:ア・ウ / 解説
ア:正しい。後継者不在率はおおよそ60%程度という水準が白書で示されています。
イ:誤り。中小企業の労働生産性は大企業より低く、製造業で約70%・非製造業で約60%程度と推計されています。
ウ:正しい。黒字廃業は白書でも問題提起されています。廃業による雇用・技術の喪失が政策課題です。
エ:誤り。従業者数が約70%・付加価値額が約50%であり、記述が逆になっています。この逆が試験でよく問われます。
U

白書の数字は「絶対値を丸暗記する」よりも「傾向と対比で理解する」ほうが、選択肢の前で迷わなくなると感じています。特に「従業者数70%・付加価値50%」の順序と、「開業率は欧米の半分」という2点は、落とせない定番です。

この記事で整理したこと
  • 日本の開業率はおおよそ4〜5%程度で、英国・米国の半分以下という対比が重要
  • 廃業理由の第1位は後継者不在であり、収益悪化ではない
  • 後継者不在率はおおよそ60%程度。従業者数(70%)と付加価値額(50%)の順序も頻出
  • 労働生産性は製造業で大企業比約70%・非製造業で約60%程度——IT投資と設備老朽化が主因
  • 小規模企業者の基準:製造業20人以下、商業・サービス業5人以下
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

目次