U過去問を解いていて「退職給付費用の5要素」という言葉に出会い、少し整理が必要だと感じました。退職金の会計処理は、簿記の基礎とは少し違う考え方が必要なので、図解でまとめてみました。
目次
退職給付会計とは何か
退職給付会計とは、従業員の将来の退職金・企業年金を、在職期間中に費用として配分するための会計処理です。退職金を「退職したときに払う」のではなく、「毎期少しずつ費用に計上しておく」という考え方がベースになっています。
■ 退職給付引当金の基本式
退職給付引当金 = 退職給付債務(PBO) ー 年金資産
※ PBO:Projected Benefit Obligation(予測給付債務)
※ PBO:Projected Benefit Obligation(予測給付債務)
PBO
将来支払う退職金の現在価値
(割引計算済み)
(割引計算済み)
年金資産
積み立てた資産の時価
(外部積立)
(外部積立)
引当金
B/S負債に計上される差額
(未積立部分)
(未積立部分)
年金資産を外部に積み立てている企業では、PBOと年金資産の差額だけを引当金として計上します。年金資産を積み立てていない企業(退職一時金のみ)では、PBO全額が退職給付引当金になります。
退職給付費用の5要素
毎期の退職給付費用は、5つの要素から構成されます。これが試験でよく問われるポイントです。
①
勤務費用(Service Cost)
今期1年間の勤務によって発生した退職給付の現在価値。従業員が1年働くごとに積み上がるコスト。
+
②
利息費用(Interest Cost)
PBOに対して発生する1年分の利息。退職まで時間が経つほどPBOが増加するイメージ。
+
③
期待運用収益(Expected Return)
年金資産の期待運用収益。資産が増えると退職給付費用が減少する(マイナス要素)。
ー
④
過去勤務費用の償却
退職給付制度の改定により生じた差異を、平均残存勤務期間にわたって費用配分したもの。
±
⑤
数理計算上の差異の償却
予測と実績の乖離(死亡率・昇給率・運用収益等の見込み違い)。翌期から費用化される。
±
■ 退職給付費用の計算式
退職給付費用 = ①勤務費用 + ②利息費用 ー ③期待運用収益 + ④過去勤務費用償却 ± ⑤数理計算上の差異償却
基本的な仕訳の流れ
01
毎期末:退職給付費用の計上
■ 仕訳
退職給付費用 ×××
/
退職給付引当金 ×××
02
年金掛金の拠出(外部積立)
■ 仕訳
退職給付引当金 ×××
/
現金預金 ×××
03
退職時:退職一時金の支払い
■ 仕訳
退職給付引当金 ×××
/
現金預金 ×××
すでに引当金を積んであるため、退職時の仕訳は引当金の取り崩しになります。
簡便法(中小企業向け)
従業員数300人未満の中小企業等では、簡便法の使用が認められています。計算が大幅に簡略化されるため、試験でも登場します。
■ 簡便法による退職給付引当金
退職給付引当金 = 期末自己都合要支給額 × 一定割合(例:100%)
※ 自己都合要支給額:期末時点で全員が自己都合退職した場合の退職金総額
※ 自己都合要支給額:期末時点で全員が自己都合退職した場合の退職金総額
| 項目 | 原則法 | 簡便法 |
|---|---|---|
| 対象 | 全企業(上場企業等) | 従業員300人未満等 |
| 計算方法 | 割引現在価値計算(数理計算) | 期末要支給額×一定割合 |
| 費用の構成 | 5要素(勤務費用等) | 期末残高の増減で計算 |
| 精度 | 高い(保険数理士が関与) | 簡易(社内計算可) |
日常の場面で考えてみると
退職給付会計の考え方は、「毎月少しずつ積み立てる」という積み立て型の発想に似ています。
■ 身近なたとえ:積み立て定期
毎月1万円を積み立てて10年後に120万円を受け取る定期預金。
受け取る前から「今月分の1万円は積み立て済み」と記録するのが退職給付会計の考え方。
将来支払う退職金 → 現在価値に割り引いてPBOとして計上
積み立てた運用資産 → 年金資産として差し引く
受け取る前から「今月分の1万円は積み立て済み」と記録するのが退職給付会計の考え方。
将来支払う退職金 → 現在価値に割り引いてPBOとして計上
積み立てた運用資産 → 年金資産として差し引く



「退職金を払うときに費用計上」ではなく「働いた期間に費用配分する」という考え方が、この会計処理の核心だと気づいてから、5要素の意味もすんなり頭に入るようになりました。
過去問での出題パターン
| 出題テーマ | 問われる内容 |
|---|---|
| 退職給付費用の構成 | ①〜⑤の5要素のうち「加算」か「減算」かの判断 |
| 引当金残高の計算 | PBO・年金資産・数理差異から引当金を算出 |
| 簡便法 | 自己都合要支給額から引当金を計算する問題 |
| 仕訳の選択 | 費用計上・掛金拠出・退職時支払の仕訳問題 |
Uのメモ
■ 自分の言葉で整理するメモスペース









