配当政策を図解で整理|MM配当無関連命題・DDM・ゴードン成長モデルの計算式 | 中小企業診断士1次試験 財務・会計

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「配当を多く出す企業の方が株価が高い?」という問いに、MM理論は「配当政策は株価に影響しない」と答えます。一方で現実には配当を重視する投資家も多く、理論と実務の間に興味深いギャップがあります。配当割引モデル(DDM)の計算式と合わせて整理しました。

配当政策とは「利益をどれだけ配当として株主に還元し、どれだけ内部留保するか」の意思決定です。配当割引モデル(DDM)は「将来の配当の現在価値の合計が株価」という考え方で株式価値を算出します。

目次

配当政策の無関連命題(MM理論の拡張)

完全市場では「配当を出しても出さなくても株価は変わらない」
MM理論を配当に応用すると、「税金・取引コストがなく、情報が完全な市場では、配当政策は株式価値に影響しない」という結論になります(配当の無関連命題)。

理由:配当を出す代わりに新株発行で資金調達しても同じ効果が得られ、投資家は自分で「手作り配当」(株を一部売却)を作れるからです。

ただし現実には、税制・情報の非対称性・シグナリング効果などにより配当政策は重要な意味を持ちます。
シグナリング効果
増配は「経営者が将来の収益に自信がある」というシグナル。減配はその逆。投資家はこれを株価形成の材料にする。
クライアンテル効果
高配当を好む投資家(退職者等)と低配当を好む投資家(成長株志向)が棲み分ける。突然の配当変更は株主構成を乱す。
エージェンシー問題
配当を多く出すことで、経営者が余剰資金を無駄な投資に使う「フリーキャッシュフロー問題」を抑制できる。

配当割引モデル(DDM)の計算式

3つのモデルを使い分ける
ゼロ成長モデル
配当が毎期一定(成長なし)の場合。永続する定額配当の現在価値の合計。
P₀ = D ÷ r
D:1株配当、r:期待収益率
定率成長モデル(ゴードンモデル)
配当が毎期一定率 g で成長し続ける場合。最もよく試験で使われる。
P₀ = D₁ ÷ (r − g)
D₁:次期配当、r:期待収益率、g:成長率
多段階成長モデル
成長率が期間によって変わる場合。高成長期→安定成長期の2段階で計算することが多い。
各期のDを個別に現在価値化
+ 安定期以降はゴードン式で
ゴードンモデルの導出
配当が毎期 g% ずつ成長する場合、株価は「D₁ + D₁(1+g) + D₁(1+g)² + …」の現在価値の合計。
これは等比数列の和の公式で、r > g の条件を満たすとき:

P₀ = D₁ ÷ (r − g)

数値例で確認する

例1
ゼロ成長:毎期60円の配当、期待収益率5%
P₀ = 60 ÷ 0.05 = 1,200円
「年60円が永続するなら、5%利回りで逆算すると1,200円の価値」という計算。
例2
定率成長:次期配当80円、成長率3%、期待収益率8%
P₀ = 80 ÷ (0.08 − 0.03) = 80 ÷ 0.05 = 1,600円
成長が加味されるほど分母が小さくなり、株価が高くなる。
例3
期待収益率の逆算(試験頻出)
現在の株価2,000円、次期配当100円、成長率2%のとき:
r = D₁÷P₀ + g = 100÷2,000 + 0.02 = 0.05 + 0.02 = 7%
「配当利回り + 成長率 = 期待収益率」という形に変形できる。
r(期待収益率)= D₁ ÷ P₀ + g
配当利回り + 資本利得(成長率)= 総収益率

試験でよく出る3つの罠

1
D₀(当期配当)とD₁(次期配当)を混同する
ゴードンモデルの分子はD₁(次期に受け取る配当)です。「当期の配当D₀が与えられている場合」は D₁ = D₀×(1+g) に変換してから計算します。D₀をそのまま使うと答えが変わるので注意。
2
「r > g」の条件を忘れる
ゴードンモデルはr(期待収益率)> g(成長率)の条件が必須です。g ≥ r だと分母がゼロ以下になり、株価が無限大か負になってしまいます。問題の数値を代入する前にこの条件を確認する習慣をつけましょう。
3
「内部留保率」から成長率を求める問題
g(成長率)= ROE × 内部留保率(=1 − 配当性向)という関係が成り立ちます。「配当性向60%・ROE10%なら g = 10%×40% = 4%」という計算が試験に出ます。成長率が直接与えられない問題では、まずこの計算が必要です。
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「r = D₁÷P₀ + g」の形は、「配当利回りと成長率を足すと期待収益率になる」という意味で、株式の投資収益の構造を示しています。配当だけでなく株価の値上がり(成長率g)も含めた「トータルリターン」の考え方です。債券のYTMに相当するものとして整理すると覚えやすいと思います。

配当政策の主要理論まとめ

理論主張前提・背景
MM配当無関連命題配当政策は株価に影響しない完全市場(税なし・情報完全)
手の中の鳥理論配当を多く出すほど株価が高い投資家は不確実な将来より確実な今の配当を好む
税効果理論配当より株式売却益の方が有利配当への税率 > キャピタルゲイン税率の場合
シグナリング理論増配は好材料シグナル経営者と投資家の情報格差
残余配当理論良い投資機会に使った後の余剰を配当投資機会優先・配当は残余

まとめ

  • 完全市場では配当政策は株価に無関連(MM配当無関連命題)
  • ゼロ成長モデル:P₀ = D ÷ r
  • 定率成長モデル(ゴードン):P₀ = D₁ ÷ (r − g)。分子はD₁(次期配当)
  • 期待収益率の逆算:r = D₁÷P₀ + g(配当利回り+成長率)
  • 成長率の計算:g = ROE × 内部留保率(= ROE × (1 − 配当性向))
Uのメモ
ゴードンモデルで最初に迷ったのは「D₀とD₁どちらを使うか」という点でした。今は「来年もらう配当がD₁、今年もらった配当がD₀」と整理し、問題文に「当期の配当は…」とあればD₀なので×(1+g)してD₁を求めてから計算するようにしています。

また「g = ROE × 内部留保率」の式は、財務比率の問題と組み合わせて出題されることがあります。ROEと配当性向が与えられたらgを計算する、というパターンをセットで覚えておくと便利です。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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