税効果会計まとめ|一時差異・繰延税金資産・繰延税金負債を図解で整理

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過去問を解いていて、「繰延税金資産」という言葉に何度も手が止まりました。「繰延」って何を繰り延べているの?「税金が資産?」という感覚で、最初はしっくりこなかったんです。でも、「会計と税務がズレる理由」から整理してみたら、急に霧が晴れた感覚がありました。同じように感じていた方のお役に立てたら嬉しいです。

税効果会計は、「会計の利益」と「税務の利益」の一時的なズレを調整するための仕組みです。この記事では、一時差異・繰延税金資産・繰延税金負債の関係を具体的な仕訳例とともに整理し、試験でよく問われる論点を中心に解説しています。

目次

「会計」と「税務」、なぜズレるのか

少し想像してみてください。あなたが経営する会社が、得意先の売掛金100万円のうち10万円が回収できなくなりそうだとします。会計上は「貸倒引当金」として10万円を費用に計上します。でも税務当局は言います――「まだ実際には損してないでしょ?証明できる損失だけ認めます」と。

この瞬間、会計の利益と税務上の課税所得にズレが生まれます。そのズレを放置すると、「税金の費用計上額」と「実際に払う税金」がかみ合わなくなってしまう。それを帳尻合わせする仕組みが税効果会計です。

会計上

貸倒引当金 10万円 → 費用計上 → 税引前利益 90万円
ズレ発生(引当金を税務は損金不算入)
税務上

引当金は損金不算入 → 課税所得 100万円(実態より高い)
このズレは将来解消される(一時差異)
税効果会計の役割

将来解消されるズレ分の「税負担の先取り or 繰り延べ」を資産・負債として計上する
もし税効果会計がなかったら?
費用として計上した引当金の分だけ税金費用が「多すぎる」状態になります。P/Lで「税引前利益90万円なのに、税金は100万円分かかっている」という奇妙な状態が出来上がり、財務諸表の対応関係が崩れてしまいます。

一時差異と永久差異――「いつか埋まるか」で判断する

差異には2種類あります。将来いつか解消されるもの(一時差異)と、永遠に解消されないもの(永久差異)です。税効果会計が対象にするのは一時差異だけ。永久差異は調整しません。

一時差異(税効果会計の対象)
将来の期間に解消されるズレ
例:貸倒引当金超過額、減価償却超過額
例:退職給付引当金、未払費用の損金不算入
繰延税金資産 or 繰延税金負債を計上する
永久差異(税効果会計の対象外)
永遠に解消されないズレ
例:交際費の損金不算入(上限超過分)
例:受取配当金の益金不算入
税効果会計の処理は不要

交際費の損金算入限度超過分は「会計では費用・税務では費用にならない」まま永遠に埋まりません。だから調整しても意味がない。一方、引当金は「今期は認めないが、実際に損失が確定した期に損金算入する」という形でいつか解消されます。この「いつか埋まるか」が判断の分岐点です。

将来減算一時差異 → 繰延税金資産(将来の節税効果を先取り)

「将来減算一時差異」は、今は税務上認められなかったけれど、将来に課税所得を減らす(=節税になる)差異です。今期は余分に税金を払っているけど、将来に取り戻せる。その「取り戻せる権利」を資産として計上します。それが繰延税金資産です。

身近な場面で考えてみると…

たとえば、会社が社員の退職金のために「退職給付引当金」を今期100万円計上したとします。会計上はもう費用です。でも税務当局は「まだ退職してないから損金にしない」と言う。

結果として、今期は100万円多く課税所得が計算されて税金を余分に払います。でも数年後に社員が実際に退職したとき、その退職金支払いが損金に算入され、税金が減ります。この「将来の節税効果 × 実効税率」を今期に繰延税金資産として計上するのです。

仕訳例:退職給付引当金(引当金計上時)― 実効税率 30%
【会計上の処理】退職給付引当金 100万円を計上
退職給付費用
費用
/
退職給付引当金
負債 100万円
【税効果会計の処理】将来の節税効果を繰延税金資産として計上
繰延税金資産
資産 30万円(100×30%)
/
法人税等調整額
利益調整(貸方)30万円
法人税等調整額(貸方)=税金費用の減額。P/L上の税金費用を「実態に合った金額」に近づける役割を果たします。
引当金・超過額など → 税務上は損金不算入(今期は費用と認めない)
将来に課税所得が減る(将来減算一時差異)
繰延税金資産を計上(差異 × 実効税率)

将来加算一時差異 → 繰延税金負債(将来の税負担を先に認識)

逆のケースもあります。今期は税務上の益金が会計上の収益より多く、将来に課税所得が増える(=追加の税負担がある)差異です。これを将来加算一時差異といい、その税負担を繰延税金負債として計上します。

代表的な例が「圧縮積立金」や「その他有価証券評価差額金」の税効果です。有価証券をその他有価証券として保有し、時価評価益(評価差額金)が生じた場合、会計では純資産に計上されますが、将来売却したときに税務上の益金になります。

仕訳例:その他有価証券の評価差額金(時価評価増 100万円)― 実効税率 30%
【会計上の処理】評価差額を純資産(その他有価証券評価差額金)へ
投資有価証券
資産 100万円
/
その他有価証券評価差額金
純資産
【税効果会計の処理】将来の税負担を繰延税金負債として計上
その他有価証券評価差額金
純資産から控除 30万円
/
繰延税金負債
負債 30万円(100×30%)
純資産に計上される評価差額金は、税効果を控除した後の金額(100-30=70万円)が実質的な純資産の増加額になります。
評価差益・圧縮積立金など → 今期は会計上の収益だが税務上はまだ益金でない
将来に課税所得が増える(将来加算一時差異)
繰延税金負債を計上(差異 × 実効税率)
U

「資産」と「負債」どっちになるのかが混乱しやすいポイントですよね。わたしは「将来、税金が減る(節税できる)なら資産、増える(払わなきゃいけない)なら負債」と整理したら、すっと入ってきました。方向性と漢字をセットで覚えると迷いにくくなります。

実効税率と課税所得の計算ステップ

繰延税金資産・負債を計算するときに使う「実効税率」について整理しておきます。法定実効税率は法人税・住民税・事業税を組み合わせた実質的な税率で、試験では「実効税率30%」や「40%」といった数値が問題文で与えられるケースがほとんどです。

30%
実効税率(試験での典型値)
繰延税金資産・負債の計算に使用
差異
× 実効税率
= 繰延税金資産 or 負債の金額
P/L
調整勘定
法人税等調整額(費用 or 利益)
01
税引前当期純利益を把握する
会計上の利益(費用・収益の差額)を確認します。
02
加算・減算調整で課税所得を計算
損金不算入(加算)・益金不算入(減算)を加減し、課税所得を算出します。
課税所得=税引前当期純利益 + 損金不算入額 − 益金不算入額
03
一時差異に実効税率をかけて繰延税金資産・負債を計算
将来減算一時差異 × 実効税率 → 繰延税金資産
将来加算一時差異 × 実効税率 → 繰延税金負債
04
法人税等調整額を計上してP/Lを調整
繰延税金資産が増えたら → 法人税等調整額(貸方:税金費用の減額)
繰延税金負債が増えたら → 法人税等調整額(借方:税金費用の増額)

減価償却のズレで理解する具体的な仕訳

税効果会計の中でも特に頻出なのが、減価償却の定額法・定率法の違いによるズレです。会社が定額法で減価償却しているのに、税務上の限度額(税法の定率法など)と差が出るケースです。

たとえば備品を取得原価100万円・耐用年数5年で定額法(年20万円)で償却しているとします。税法上の限度額が年25万円だった場合、会計上の償却費は税法より少ない。逆に会計が税法を超えると「償却超過額」として損金不算入になります。

ケース:定率法(税法)30万円 vs 定額法(会計)20万円 ― 差額10万円が損金算入超過
【会計上の仕訳】定額法で20万円償却
減価償却費
費用 20万円
/
備品(減価償却累計額)
20万円
【差異の方向】会計20万 < 税法30万 → 今期の会計上の費用が少ない分、将来は会計費用が多くなる期が来る(将来減算)
繰延税金資産
10万円 × 30% = 3万円
/
法人税等調整額
3万円(貸方)
逆に会計の方が税法より償却費が多い(償却超過額)場合は、損金不算入 → 将来減算一時差異 → 繰延税金資産の処理になります。
パターン 会計 vs 税務 差異の種類 計上する勘定
会計償却費 > 税務限度額 会計費用が多い 将来減算一時差異(超過額が後で損金に) 繰延税金資産
会計償却費 < 税務限度額 税務費用が多い 将来加算一時差異(後で会計費用が追いつく) 繰延税金負債

貸倒引当金超過額のケーススタディ

試験で頻繁に登場するのが貸倒引当金の超過額のケースです。会社が売掛金に対して設定した貸倒引当金が、税法の繰入限度額を超えた部分(超過額)は損金不算入になります。

設例
  • 売掛金残高:1,000万円
  • 会計上の貸倒引当金繰入額:30万円(3%)
  • 税法上の繰入限度額:10万円(1%)
  • 超過額:20万円(損金不算入 → 将来減算一時差異)
  • 実効税率:30%
仕訳:貸倒引当金超過額20万円に対する税効果処理
【会計処理】30万円全額を引当金繰入
貸倒引当金繰入
費用 30万円
/
貸倒引当金
負債 30万円
【税効果処理】超過額20万円 × 30% = 繰延税金資産 6万円を計上
繰延税金資産
6万円
/
法人税等調整額
6万円(貸方)
将来、実際に貸倒れが確定したときに、繰延税金資産を取り崩します(逆仕訳)。

このケーススタディで押さえておきたいのは、「超過額」という言葉が出たら損金不算入 → 将来減算一時差異 → 繰延税金資産という流れが自動的に頭に浮かぶようにすることです。過去問でも「超過額が与えられていて、繰延税金資産の残高を求めなさい」という形式がよく出ます。

U

実は、繰延税金資産って「回収可能性」という条件が付いているんです。将来に十分な課税所得が見込めない会社は、繰延税金資産を計上できない(または取り崩す必要がある)。だから優良企業ほど繰延税金資産が計上されやすく、業績が厳しい会社は資産が消えることもある。財務分析にもつながる面白い論点だな、と感じています。

過去問の出題傾向と押さえておくべき論点

財務・会計 過去問演習 繰延税金資産の計算
【問題】次の資料に基づき、当期末の繰延税金資産(または繰延税金負債)の金額として最も適切なものを選べ。

・貸倒引当金超過額(損金不算入):50万円
・退職給付引当金(損金不算入):80万円
・受取配当金の益金不算入:20万円
・交際費の損金不算入限度超過:10万円
・実効税率:30%
  • ア 繰延税金資産 24万円
  • イ 繰延税金資産 39万円
  • ウ 繰延税金資産 48万円
  • エ 繰延税金負債 6万円
解説
税効果会計の対象となるのは一時差異のみです。

・貸倒引当金超過額 50万円 → 将来減算一時差異(対象)
・退職給付引当金 80万円 → 将来減算一時差異(対象)
・受取配当金益金不算入 20万円 → 永久差異(対象外)
・交際費損金不算入超過 10万円 → 永久差異(対象外)

一時差異合計:50+80=130万円
繰延税金資産:130万円 × 30% = 39万円

永久差異(受取配当金の益金不算入・交際費の損金不算入超過)は将来解消されないため、税効果会計の対象外です。ここが引っかかりポイントです。

過去問の出題傾向を整理すると、以下の論点が繰り返し登場しています。

出題論点 頻出度 主なひっかけポイント
繰延税金資産・負債の計算 非常に高い 永久差異を含めて計算してしまう
一時差異 vs 永久差異の判別 高い 交際費・受取配当金を一時差異と混同
法人税等調整額の方向(借方/貸方) 高い 資産増 → 貸方調整額、負債増 → 借方調整額の方向を逆にする
繰延税金資産の回収可能性 中程度 回収可能性の要件(将来課税所得の見込み)を忘れる
有価証券評価差額金の税効果 中程度 純資産に計上されるケースで法人税等調整額を使わない点
有価証券評価差額金のとき「法人税等調整額」を使わない理由
通常の税効果処理では P/L の「法人税等調整額」を使って税金費用を調整します。でもその他有価証券評価差額金は、そもそもP/Lを通らずに純資産(OCI)に直接計上されます。だから税効果処理も P/L を通さず、純資産から直接控除する形になります。「経路が違う」と覚えると混乱しにくくなります。

税効果会計の全体像を図解で整理

ここで全体の流れをまとめて確認しておきます。

PATTERN 01
将来減算一時差異
→ 繰延税金資産
今期に税務で認められなかった費用が、将来に損金算入される。
主な例:貸倒引当金超過額、退職給付引当金、減価償却超過額
仕訳方向:繰延税金資産 / 法人税等調整額(貸方)
節税効果を先取り
PATTERN 02
将来加算一時差異
→ 繰延税金負債
今期は税務上の益金算入が先行し、将来に課税所得が増える。
主な例:その他有価証券評価差額金、圧縮積立金
仕訳方向:法人税等調整額(借方)/ 繰延税金負債
将来の税負担を認識
POINT
永久差異は対象外
将来解消されない差異には税効果会計を適用しない。
:交際費の限度超過、受取配当金の益金不算入
「永遠に埋まらない=調整しても意味がない」と整理する。
要注意ポイント
  • 一時差異か永久差異かを先に判別する(これが最初の分岐点)
  • 将来「減算」か「加算」かで、資産か負債かが決まる
  • 金額は「差異 × 実効税率」で計算する(試験では税率が与えられる)
  • 繰延税金資産が増えたら P/L の税金費用は減る(法人税等調整額が貸方)
  • 有価証券評価差額金の税効果処理は P/L を通さない(純資産から直接控除)
  • 繰延税金資産には「回収可能性」の要件がある(将来課税所得の見込みが必要)

Uのメモ

U’S MEMO

税効果会計でいちばん混乱したのは、「法人税等調整額が貸方のときと借方のときの意味」でした。整理すると、繰延税金資産が増える(将来減算)→ 今期の税金費用を下げる → 法人税等調整額が貸方。繰延税金負債が増える(将来加算)→ 今期の税金費用を上げる → 法人税等調整額が借方。「資産増えたら税金費用が減る、負債増えたら税金費用が増える」という感覚で覚えると仕訳の方向が自然に出てくるようになりました。

また、永久差異の代表例(交際費の限度超過・受取配当金の益金不算入)は、数字が出てきても税効果の計算から外す。問題文で「うっかり含めてしまった」というミスがとても多いので、まず差異のリストを見たら「これは一時差異か永久差異か」を必ず先にチェックするクセをつけています。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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