【中小企業診断士試験令和7年度過去問財務会計 第8問 解説】損益計算書の区分・のれん償却を図解で整理

U

令和7年度の過去問を解いていて、この問題で少し手が止まりました。

「のれん償却」という言葉のどこか特別な響きに引きずられて、最初は特別損失の方へ引っ張られそうになったんです。

でも整理してみると、のれん償却は毎月の人件費や家賃と同じ「販売費及び一般管理費」として計上される費用でした。

P/Lの5区分の地図を一緒に確認してみましょう。

令和7年度 第1次試験 財務・会計 第8問
損益計算書項目のうち、営業損益計算の区分に含まれるものとして、最も適切なものはどれか。
  • ア 国庫補助金受贈益
  • イ 支払利息
  • ウ のれん償却 ← 正解
  • エ 有価証券利息
正解・論点
答え:ウ のれん償却
のれん償却は販売費及び一般管理費に計上されるため、営業損益計算の区分に含まれる。他の3つは営業外損益・特別損益の区分。
頻出度
★★★★☆
P/L区分の識別は形を変えて繰り返し出題される定番論点
難易度
★★☆☆☆
計算なし。「のれん=販管費」の知識が盲点になりやすい
得点戦略
必答
知識があれば30秒で解ける。ここを落とすと差がつく
目次

損益計算書の5区分構造|4つの選択肢はどこに入るか

P/Lには「どの活動から生まれた損益か」によって区分が分かれています。まず全体の地図を確認して、それぞれの選択肢がどの区分に入るかを一気に整理してみましょう。

営業損益計算の区分(本業の稼ぎ) 正解の区分
売上高
売上原価
売上総利益(粗利)
販売費及び一般管理費 人件費・広告宣伝費・減価償却費・のれん償却・地代家賃 等
ウ 正解
営業利益 ← 営業損益計算の区分はここまで
営業外損益の区分(財務活動の損益) 選択肢イ・エ
営業外収益 受取利息・受取配当金・有価証券利息・為替差益 等
エ 不正解
営業外費用 支払利息・社債利息・為替差損 等
イ 不正解
経常利益
特別損益の区分(臨時・偶発的な損益) 選択肢ア
特別利益 固定資産売却益・国庫補助金受贈益・保険差益 等
ア 不正解
特別損失 固定資産除却損・減損損失・災害損失 等
税引前当期純利益
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少し考えてみてください。

もしP/Lに区分がなくて、売上も利息収入も補助金も全部ひとまとめに「当期純利益」だけが見える設計だったとしたら——

その会社が「本業で稼いでいるのか」「借金頼みなのか」を判断できるでしょうか?

区分があるからこそ、数字の「質」がわかるんですよね。次の比較でイメージしていただけますか。

区分のないP/L(何が見えない?)
売上500万+補助金200万+利息収入50万=収益合計750万
仕入200万+人件費300万+利息50万=費用合計550万

→ 当期純利益:200万円

「黒字だ!」←でも補助金と利息収入が消えた翌期は?本業の実力がまったく読めない。
区分のあるP/L(何がわかる?)
売上500万-仕入200万-人件費300万
営業利益 0万(本業はトントン)
+利息収入50万-利息50万=経常利益 0万
+補助金200万=税引前純利益 200万

「補助金で黒字を作っているだけ」←本業の実力が丸見え!

のれん償却はなぜ「営業損益」なのか|M&Aのコストがコツコツ費用になる仕組み

「のれん」という言葉はどこか特別な響きがあります。M&A・企業買収・超過収益力——こうした非日常的な言葉と一緒に登場するせいか、「特別損失」の方に入れたくなってしまう気持ち、よくわかります。でも考えてみてください。毎期コツコツと、決まった金額で計上される費用は、「特別」なものでしょうか?

01
M&Aで会社を買収する
競合会社を3億円で買収したとします。その会社の純資産(資産-負債)は2億円でした。純資産より1億円多く支払ったのはなぜか——それはその会社の「ブランド力・顧客基盤・技術力・優秀な人材」という目に見えない価値に対価を払ったからです。
買収金額 3億円 ー 純資産 2億円 = のれん 1億円
→ 帳簿に載らない「見えない価値」の対価として認識する
02
のれんをB/S(無形固定資産)に計上する
のれん1億円はB/Sの資産の部に「無形固定資産」として載ります。建物や機械と同じように「将来にわたって収益に貢献する資産」として扱われます。ここまでは特別損益とは全く関係がありません。
03
20年以内に定額でコツコツ償却する → これが「のれん償却」
日本会計基準では、のれんは原則20年以内に定額法等で償却します。毎期均等に費用化されるこの金額が「のれん償却」です。
1億円 ÷ 20年 = 毎年 500万円 を販売費及び一般管理費に計上
→ 建物の減価償却費と同じ構造で、毎年同じ金額が定額で費用化される
なぜ「特別損失」ではなく「販管費」か?
特別損失とは「臨時かつ偶発的な損失」のことです。のれん償却は毎期決まった金額が計画的・継続的に発生する費用であり、「臨時」でも「偶発的」でもありません。だから販売費及び一般管理費(=営業損益の区分)に入るのです。
のれん償却 → 販管費(営業損益)
  • 毎期定額・計画的に発生する
  • 本業の管理コストとして継続する
  • 減価償却費と同じ仕組み
  • 20年以内の定額法が原則
のれんの減損損失 → 特別損失
  • 臨時・偶発的に発生する
  • 収益性が著しく低下した場合のみ
  • 特別損失として処理される
  • 毎期必ず発生するわけではない
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ここで少し意外なことをお伝えしたくて。

「のれん」という文字を含む項目が試験には2種類登場するんです。どちらも「のれん」なのに、P/L上の区分がまったく違います。初めて知ったとき、「同じ名前で別の扱いになるの?」と驚きました。

次の比較表で一気に整理してみましょう。

比較項目
のれん償却
のれんの減損損失
P/L区分
販管費(営業損益の区分)
特別損失
発生タイミング
毎期・計画的に発生
臨時・偶発的に発生
発生条件
のれん計上後、毎年自動的
収益性が著しく低下した時のみ
金額の変動
毎期同額(定額法)
その期の評価次第で変動
身近な例え
家賃・月々の固定費
突然の損害・天災費用

各区分に入る代表的な項目|試験で使える分類一覧

3区分の代表例を押さえておくと、初見の項目が出ても「本業から生まれたか・財務活動から生まれたか・臨時か」の一軸で瞬時に判断できます。

区分 主な収益項目 主な費用・損失項目
営業損益
(本業)
売上高 売上原価・人件費・広告宣伝費・のれん償却・減価償却費・地代家賃・貸倒引当金繰入
営業外損益
(財務活動)
受取利息・受取配当金・有価証券利息・為替差益・仕入割引 支払利息・社債利息・為替差損・売上割引・株式交付費償却
特別損益
(臨時・偶発的)
固定資産売却益・国庫補助金受贈益・保険差益・投資有価証券売却益 固定資産売却損・固定資産除却損・減損損失・災害損失・のれん減損損失
判断の一軸:「本業の活動から生まれたか?」を常に問う
支払利息は「費用」なので販管費に入りそうに見えますが、「借りたお金に対して払う代価」=財務活動のコストです。商品の販売・管理とは無関係なので営業外費用になります。有価証券利息も「収益」ですが、「貸したお金の見返り」=財務的な収益なので営業外収益。名前から受ける印象ではなく、「どの活動から生まれたか」で判断することが大切です。
U

整理していて気づいたことがあります。

この「本業から生まれたか?」という問い、財務の教科書では当たり前のように書いてあるのですが、実際の経営現場でも同じ感覚で数字を読むんですよね。

たとえば「今期は黒字だけど、補助金がなかったら?」という視点は、銀行が融資審査で必ず確認するポイントです。試験の知識が実務につながる瞬間でもあります。下のフローで判断ルールを確認しましょう。

この損益項目はどの区分に入る?
— 判断フローチャート —
本業(商品販売・サービス提供)の
活動から生まれたコストや収益か?
YES → 本業由来
売上高・売上原価・人件費・のれん償却・減価償却費・地代家賃 等
営業損益の区分
(売上総利益・営業利益)
NO → さらに判断
財務活動から? それとも臨時・偶発的?
財務活動
→ 営業外損益
利息・配当 等
臨時・偶発
→ 特別損益
補助金・売却益 等

選択肢をイメージで理解する|4つの選択肢を日常の場面で解剖する

国庫補助金受贈益 不正解 | 特別利益
飲食店を経営するAさん。コロナ禍の影響で売上が落ちた年に、国から100万円の給付金を受け取りました。この年の決算書は黒字に見えますが、来年も同じお金が来る保証はどこにもありません。毎月の食材費や人件費とは全く性質が違う「今年限りの収入」です。もしこの補助金がなかったら、Aさんの本業の実力はどのくらいだったでしょうか?
国庫補助金受贈益は国・地方公共団体から受け取る補助金です。継続的・反復的に発生するものではなく、「臨時かつ偶発的な収益」として特別利益に分類されます。営業損益計算の区分(本業の稼ぎ)とは無関係です。
「補助金はボーナス支給と同じ。毎月来るものじゃない=特別利益」
支払利息 不正解 | 営業外費用
設備投資のために2,000万円を銀行から借りたBさんの会社。商品が1つも売れない月でも、「借りていること自体」に対して利息が発生します。これは販売活動や管理活動のコストではなく、「お金を借りた代わりに払うレンタル料」です。費用だからといって自動的に販管費にはなりません。
支払利息は借入金に対して支払う費用です。本業の商品販売・サービス提供とは切り離された「財務活動に伴うコスト」として営業外費用に分類されます。「費用だから販管費では?」という直感が最大の落とし穴です。
「利息は借金のレンタル料。本業と関係ない=営業外費用」
のれん償却 正解 | 販売費及び一般管理費
競合会社を買収したCさんの会社。そのブランド力・顧客基盤に対して余分に支払った1億円が「のれん」として帳簿に残りました。毎年500万円ずつ、20年かけてコツコツと費用として計上していきます。特別な年でも、業績が悪い年でも、同じ金額が淡々と計上される——これは建物の減価償却費と全く同じ構造の管理コストです。
のれん償却は毎期定額で計上される計画的な費用です。建物の減価償却費と同じ仕組みで販売費及び一般管理費(販管費)として処理されます。販管費は営業損益計算の区分に含まれるため、これが正解です。
「のれん償却=減価償却と同じ仲間。建物の償却が販管費なら、のれんも販管費」
有価証券利息 不正解 | 営業外収益
余剰資金で社債を購入したDさんの会社。半年ごとに利息が振り込まれてきます。これは商品を売った売上でも、サービスを提供した対価でもありません。「お金を貸した見返りとして受け取る報酬」です。もし社債を持っていなければ、この利息は1円も入ってきません。
有価証券利息は、所有する社債・国債等から受け取る利息収入です。本業の販売活動とは別の「資金運用から生まれた収益」として営業外収益に分類されます。「有価証券の評価」という言葉から本業関連と思ってしまうのが典型的な誤りです。
「有価証券利息=銀行預金の利息と同じ構造。本業の稼ぎではない=営業外収益」
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4つの選択肢を並べてみると、それぞれが「P/Lの4か所を代表する使節」として設計されているのがわかります。

アが特別利益・イが営業外費用・ウが販管費(正解)・エが営業外収益——試験委員が「全区分を一問でチェックしよう」と狙って選んでいるんですよね。

この問題一問を丁寧に解くことが、そのままP/L全体の理解につながっています。

試験本番のチェックポイント|30秒で解くための判断ルール

  • 判断の一軸:「本業の活動から生まれたか?」 → Yes=営業損益 / 財務活動から=営業外 / 臨時・偶発的=特別損益
  • のれん償却 = 販管費(営業損益の区分) — 毎期定額・計画的に発生する管理費用。特別損失と絶対に混同しない
  • 「利息」がつく項目は原則として営業外 — 支払利息(営業外費用)・有価証券利息(営業外収益)はセットで暗記
  • 国庫補助金受贈益 = 特別利益 — 「補助金・保険金・固定資産売却益」はまとめて特別利益の代表例
  • のれん減損損失 = 特別損失(のれん償却とは別物) — 「のれん償却(毎期定額)」vs「のれん減損(臨時)」はセットで押さえる
U のメモ
この問題を初めて解いたとき、「のれん」という言葉の特別感に引きずられてしまいました。M&Aという非日常的な場面で登場するせいか、どうしても「特別」な扱いを受けるイメージがあったのです。でも「毎期コツコツ定額で計上される費用」は、どれだけ特別な名前がついていても普通の管理費用です。この気づきを覚えておくと、似た問題が出ても迷わなくなります。

そもそも「のれん」とは?

「のれん」という言葉。会計を学び始めると必ずぶつかる壁ですが、その正体は驚くほど人間臭い「期待値」の話です。

ここからは、難しい専門用語を横に置いて、「行列のできるラーメン屋を買収する」ストーリーで、その本質を解き明かしましょう。


のれんの正体:なぜ形のないものに「1億円」払うのか?

あなたが、ある人気のラーメン屋をまるごと買い取るとします。

  • 目に見える資産: キッチン設備、店舗の契約権、在庫の麺。これらを全部バラして売ると5,000万円だとします。これを「時価純資産」と呼びます。
  • 実際の買収価格: しかし、あなたは店主に1億円払いました。

なぜ、5,000万円の価値しかないものに、倍の1億円も払ったのでしょうか?

それは、その店には「行列」があり、「秘伝のレシピ」があり、「常連さんの名簿」があるからです。これがあれば、明日からすぐにお金が稼げますよね。

この、「目に見える資産(5,000万円)」を超えて払った「プレミアム(5,000万円)」のことを、会計では「のれん」と呼びます。つまり、のれんの正体は「将来もっと稼いでくれるはず!」という期待代金なのです。


償却の理由:なぜその「1億円」を分割して減らすのか?

さて、この「期待代金(のれん)」は、帳簿の上では「資産」として扱われます。しかし、これはずっと持ち続けられるものではありません。ここで「償却」という考え方が登場します。

なぜ毎年減らすのか?

理由はシンプルです。「ブランドや評判は、いつか古くなるから」です。 秘伝のレシピも20年経てば流行遅れになるかもしれませんし、常連さんも少しずつ入れ替わります。

  • もし償却しなかったら: 買った瞬間に「5,000万円の魔法の資産を手に入れた!」と喜び、何十年もその価値が減らないことになります。これでは、実際のビジネスの劣化を無視することになってしまいます。
  • 償却することで: 「このブランドの効果は20年続くだろう」と予測し、毎年250万円ずつ(5,000万÷20年)「使い切った分」として費用に変えていきます。

これにより、毎年の正確な利益(稼いだお金 ー 使い切ったブランド代)を計算できるのです。


「会計 vs 税務」の視点:なぜ「20年」と「5年」のねじれが起きるのか?

ここが試験や実務で最も混乱するポイントです。実は、のれんを「何年で消すか」というルールが、「会計」「税務」で違うのです。

会計の視点:実態を重視する「ゆっくり派(最長20年)」

会計(日本基準)の目的は、投資家に「今の会社の本当の姿」を伝えることです。 「ブランドは急には消えない。だから、その効果が続く期間(実態)に合わせて、最長20年かけてゆっくり費用にしよう」と考えます。

税務の視点:公平さを重視する「せっかち派(一律5年)」

税務(法人税法)の目的は、公平に税金を取ることです。 「ブランドの効果が何年続くかなんて、会社ごとに判断したら不公平だ!一律5年(60ヶ月)でさっさと経費にしてしまいなさい」というルールを敷いています。

この「ねじれ」が何を生むのか?

  • 会計上の利益: ゆっくり経費にするから、利益が大きく出やすい。
  • 税務上の所得: 早く経費にするから、税金の計算上は利益が小さくなりやすい。

この「計算スピードの差」があるせいで、帳簿の上では「税金の先払い・後払い」のような調整が必要になります。これが、受験生を悩ませる「税効果会計」の入り口です。


まとめ:のれんは「未来へのバトン」

のれんは、単なる数字の差額ではありません。 それは、「目に見えない信用や努力を、どうやって時間の中に溶かし込んでいくか」という経営のドラマそのものです。

「20年」と「5年」という数字の裏には、「会社の本当の姿を見せたい会計」「ルールをカチッと決めたい税務」という、二つの正義のぶつかり合いがあるのです。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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