U「競争がなければ、企業は好き放題に値段を上げられるのだろうか?」——独占市場の問題を学ぶ前は、そんなふうに思っていました。実際には独占企業も「需要曲線」という制約の中で行動するのですが、それでも完全競争より高い価格・少ない産出量になり、社会全体に「死荷重」と呼ばれる損失が生じます。今回はその仕組みを数値例で整理してみます。
独占企業も利潤を最大化しようとしますが、「価格を上げると売れる量が減る」という需要曲線の制約の中で行動します。完全競争との最大の違いは、独占企業が「価格支配力(プライスメーカー)」を持つ点です。
限界収入(MR)とはなにか
独占企業が「もう1単位多く売ろう」とすると、価格を下げなければなりません。すると「追加で売れた1単位の収入」は価格そのものより小さくなります。これが限界収入(MR: Marginal Revenue)です。
線形需要関数の場合
例)P = 100 − 2Q のとき:MR = 100 − 4Q
この場合、MR は需要曲線の下方に位置し、常に P より低くなります(Q > 0 の範囲)。
最適産出量の計算例(MR = MC)
総費用関数:TC = 10Q + 200(限界費用 MC = 10、固定費 200)
4Q = 90 → Q* = 22.5
独占:Q = 22.5、P = 55 → 産出量が少なく、価格が高い
死荷重(デッドウェイトロス)とは
独占企業は完全競争より産出量を少なくすることで高価格を維持します。この「本来なら取引されていたはずなのに実現しなかった取引から生まれるはずだった余剰」が死荷重(デッドウェイトロス)です。
完全競争均衡:Q = 45、P = 10
死荷重 = (P* − MC) × (Q_comp − Q*) × 1/2
= (55 − 10) × (45 − 22.5) × 1/2
= 45 × 22.5 × 0.5 = 506.25
この「506.25」分の余剰が社会から消えています。消費者も独占企業も受け取れない損失です。
価格差別:同じ商品を違う価格で売る戦略
独占企業は顧客によって異なる価格を設定できる場合、「価格差別」を行います。映画の学割・シニア割引、航空券の早割などが典型例です。



「死荷重」という言葉が最初はピンとこなかったのですが、「独占がなければ生まれていたはずの幸福が、永遠に失われる」という意味だと気づいてから急に実感を持てるようになりました。独占禁止法や規制当局が存在する意義も、このモデルを通じると自然に理解できます。試験だけでなく、ニュースの読み方が変わる論点だと思っています。
Uのメモ
・線形需要曲線 P = a − bQ のとき MR = a − 2bQ(傾きが2倍・切片同じ)。
・独占利潤 = (P* − MC) × Q*(P* は需要曲線上の価格)。
・死荷重 = (P* − MC) × (Q_競争 − Q*) / 2(三角形の面積)。
・価格差別:第一種(個別WTP)= 死荷重ゼロ、第二種(数量割引)、第三種(市場分割)。
・過去問頻出:「需要関数 P = 120 − 3Q、MC = 30 のとき独占均衡を求めよ」→ MR = 120 − 6Q、6Q = 90、Q = 15、P = 75。
この記事のまとめ
- 独占企業の最適条件は MR = MC(完全競争の P = MC とは異なる)
- 線形需要曲線 P = a − bQ のとき MR = a − 2bQ(傾きが2倍急になる)
- 死荷重(デッドウェイトロス)=独占が産出量を絞ることで失われる社会的余剰
- 価格差別は第一種(個別)・第二種(数量)・第三種(市場分割)の3種類
- 第三種価格差別:価格弾力性が高い市場(敏感な顧客)に低価格、低い市場に高価格









