U「下請法って、大企業が下請けをいじめるのを防ぐ法律でしょ?」——その通りです。でも試験で問われるのは「資本金いくらの会社が対象か」「禁止行為は何類型あるか」という細部です。11の禁止行為と3+1の親事業者義務——この具体的な中身を整理すれば、中小企業政策の得点源になります。
下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者と下請事業者の取引を公正にし、下請事業者の利益を保護するための法律です(1956年制定)。資本金の規模差がある取引に適用され、親事業者に書面交付・支払期日設定・支払方法等の義務を課し、受領拒否・代金減額等の11類型を禁止行為として定めています。試験では適用範囲(資本金基準)・親事業者の義務・禁止行為の具体例が問われます。
下請法の目的と適用される取引類型
| 取引類型 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 製造委託 | 物品の製造・加工を他の事業者に委託すること | 自動車部品の製造を下請け工場に委託 |
| 修理委託 | 物品の修理を他の事業者に委託すること | 機械設備の修理・メンテナンスを委託 |
| 情報成果物作成委託 | ソフトウェア・コンテンツ・デザイン等の作成を委託すること | システム開発・映像制作・デザイン制作を委託 |
| 役務提供委託 | サービス・役務の提供を他の事業者に委託すること | 運送・清掃・警備・コールセンター業務を委託 |
適用される資本金基準(親事業者と下請事業者の規模差)
| 取引類型 | 親事業者の資本金 | 下請事業者の資本金 | 適用条件 |
|---|---|---|---|
| 製造委託・修理委託 | 3億円超 | 3億円以下 | 親が3億円超・下請が3億円以下の規模差がある場合 |
| 製造委託・修理委託 | 1,000万円超〜3億円以下 | 1,000万円以下 | 資本金1,000万円超の会社が1,000万円以下の会社に委託 |
| 情報成果物作成委託・役務提供委託 | 5,000万円超 | 5,000万円以下 | 親が5,000万円超・下請が5,000万円以下の規模差がある場合 |
| 情報成果物作成委託・役務提供委託 | 1,000万円超〜5,000万円以下 | 1,000万円以下 | 資本金1,000万円超の会社が1,000万円以下の会社に委託 |
製造・修理委託:3億円が境界線(3億円超の親→3億円以下の下請)
情報成果物・役務提供委託:5,000万円が境界線(5,000万円超の親→5,000万円以下の下請)
製造は金型・設備が必要で規模が大きいため3億円と設定されています。IT・サービス系は設備が少ないため5,000万円が基準です。
親事業者の義務——4つの法的義務
義務①:書面の交付
- 発注の際は直ちに法定記載事項を記載した書面を交付する義務
- 記載事項:下請事業者の名称・委託内容・代金額・支払期日等
- 口頭での発注は認められない(書面化必須)
- 電磁的方法(メール等)による交付も可
義務②:支払期日の設定
- 下請代金の支払期日を物品等の受領後60日以内に定める義務
- 60日以内に支払期日を定めない場合は受領日から60日目が支払期日
- 60日を超える支払条件は違法(下請法違反)
義務③:書類の作成・保存
- 下請取引に関する書類を3年間保存する義務
- 公正取引委員会の調査に対応できるよう保管
- 発注書・検収書・支払証明等が対象
義務④:遅延利息の支払
- 支払期日を超えて代金を支払う場合は遅延利息を支払う義務
- 遅延利息率:年率14.6%
- 遅延日数分の利息を下請事業者に支払う
親事業者の禁止行為——11類型
①受領拒否
注文した物品・役務の受け取りを正当な理由なく拒否すること。
②支払遅延
下請代金を支払期日までに支払わないこと(60日ルール違反)。
③代金の減額
受領した後に、一方的に代金を減額すること。
④返品
受け取った物品を正当な理由なく返品すること。
⑤買いたたき
通常より著しく低い代金を一方的に定めること。
⑥購入・利用強制
親事業者の指定商品・サービスの購入・利用を強制すること。
⑦報復措置
下請事業者が公正取引委員会に申告したことを理由に不利益を与えること。
⑧有償支給原材料等の対価の早期決済
支給した原材料・部品の代金を、下請代金支払日より早く差し引くこと。
⑨割引困難な手形の交付
支払期日より長期(120日超)の手形・割引が困難な手形で支払うこと。
⑩不当な経済上の利益の提供要請
協賛金・値引き等を正当な理由なく一方的に要求すること。
⑪不当な給付内容の変更・やり直し
受領後に不当に仕様変更・やり直しを要求し費用を下請けに負担させること。
禁止行為の例外——正当な理由がある場合
| 禁止行為 | 例外(正当な理由が認められる場合) |
|---|---|
| 受領拒否 | 注文通りの内容でない(品質不適合・規格外)ことが客観的に明らか な場合 |
| 返品 | 下請事業者の責任による瑕疵(欠陥)があり、受領後直ちに返品する場合 |
| 代金の減額 | 下請事業者の責任により生じた損害の額を限度とした減額 |
| やり直し要求 | 下請事業者の責任による瑕疵があり、やり直し費用を実費で支払う場合 |
「下請事業者の責任による不良品なら返品してよい」——これは条件付きで正しいです。ただし「受領後直ちに」という時間的制約があります。受領して長時間後に返品するのは禁止行為となります。また「親事業者の都合(在庫過剰・注文キャンセル等)」による返品は理由いかんにかかわらず禁止です。
公正取引委員会と中小企業庁の役割
公正取引委員会(公取委)の役割
- 下請法の主務官庁の一つ(中小企業庁と共同所管)
- 親事業者への立入検査・勧告・命令の権限
- 違反事業者への勧告(公表を伴う)
- 課徴金制度はない(罰則は50万円以下の罰金)
- 毎年「下請法違反事件の処理状況」を公表
中小企業庁の役割
- 下請法の共同所管官庁
- 下請事業者からの申告受付窓口
- 指導・助言・あっせん(行政指導)
- 下請かけこみ寺(相談窓口)の運営
- 下請法の普及啓発・研修
下請法の罰則
- 書面不交付・書類不保存:50万円以下の罰金
- 調査拒否・虚偽報告:50万円以下の罰金
- 禁止行為への主な対応:公正取引委員会の勧告(罰金ではなく行政指導)
- 刑事罰は比較的軽微だが、勧告は社名公表を伴うためブランドへの打撃が大きい
下請法と独占禁止法の関係
| 比較項目 | 下請法 | 独占禁止法(優越的地位の濫用) |
|---|---|---|
| 適用範囲 | 資本金基準で明確に規定(4取引類型) | 取引上優越的な立場にある者全般 |
| 規制の明確性 | 具体的な禁止行為11類型を列挙 | 「不当に」という概念的規定 |
| 立証の難易度 | 比較的容易(要件が明確) | 難しい(優越性・不当性の立証が必要) |
| 執行機関 | 公正取引委員会・中小企業庁 | 公正取引委員会 |
| 罰則 | 50万円以下の罰金+勧告 | 排除措置命令・課徴金(最大売上高の3%) |
まとめ——下請法の試験対策チェックリスト
得点のための確認ポイント
- 下請法の正式名称と制定年(1956年)を言えるか
- 4取引類型(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託)を言えるか
- 製造委託の資本金基準(3億円)と情報・役務委託の基準(5,000万円)を覚えているか
- 支払期日の上限(受領後60日以内)を言えるか
- 親事業者の4義務(書面交付・支払期日設定・書類保存・遅延利息)を言えるか
- 禁止行為が11類型あることを覚えているか
- 最頻出の禁止行為(受領拒否・返品・代金減額・支払遅延・買いたたき)を説明できるか
- 執行機関が公正取引委員会と中小企業庁の共同所管であることを覚えているか
支払期日「60日以内」はどこから数えますか?
「買いたたき」はどう定義されますか?
下請法と建設業法の下請保護はどう違いますか?
遅延利息の利率(14.6%)は覚えなければいけませんか?
下請法は「資本金の規模差がある取引」を対象に、親事業者の4つの義務と11の禁止行為で下請事業者を守る法律です。試験では資本金基準(製造委託3億円・情報役務5,000万円)、支払期日60日以内、禁止行為11類型の具体例という3点が繰り返し問われます。「受領拒否・返品・代金減額・支払遅延・買いたたき」という最頻出の5つの禁止行為と、その例外条件をセットで覚えておくことで、確実な得点につながります。









