中小企業の賃上げ支援——業務改善助成金・キャリアアップ助成金 | 中小企業診断士1次試験 中小企業経営・政策
「業務改善助成金とキャリアアップ助成金って何が違うの?」「最低賃金の引き上げで中小企業は何をすればいいの?」と過去問で混乱した経験があります。両方とも「賃金を上げた企業を応援する」助成金ですが、対象・要件・金額がまったく異なります。整理して覚えると実務でも役立つ知識です。
最低賃金の引き上げは中小企業にとって大きな経営課題です。政府はこれを支援するため、生産性向上設備投資と最低賃金引き上げをセットで支援する「業務改善助成金」と、非正規雇用の正規化を支援する「キャリアアップ助成金」を設けています。両制度の目的・支給要件・金額を整理して覚えましょう。
目次
業務改善助成金——生産性向上と最低賃金引き上げをセットで支援
業務改善助成金は、生産性向上のための設備投資を行い、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者を支援する助成金です。厚生労働省が所管し、都道府県労働局・ハローワークを通じて申請します。
3/4
〜9/10
設備投資費用の補助率(賃金引上げ額・事業場規模により変動)
最大
600万円
助成上限額(賃金引上げ額・対象労働者数による)
30円
〜90円以上
最低賃金引上げの最低幅(コースにより異なる)
業務改善助成金の対象:中小企業・小規模事業者(事業場内の最低賃金が1,000円未満の事業場)。生産性向上につながる設備(機械設備・ICTツール・POSシステム等)への投資と、賃金引き上げをセットで行うことが要件です。
業務改善助成金の仕組み——「生産性を上げて賃金を上げる」流れ
単に「賃金を上げたから補助してほしい」ではなく、「生産性向上のための設備投資を行い、その結果として最低賃金を引き上げる」というストーリーが必要です。機械設備の導入やICT化によって業務効率が上がり、その分を賃金に還元する——という政策意図が背景にあります。
| コース(引上げ額) | 助成上限(労働者数10人未満) | 補助率 |
| 30円コース | 30万円〜120万円 | 4/5(小規模9/10) |
| 45円コース | 45万円〜180万円 | 4/5(小規模9/10) |
| 60円コース | 60万円〜230万円 | 4/5(小規模9/10) |
| 90円コース | 90万円〜450万円 | 4/5(小規模9/10) |
キャリアアップ助成金——非正規雇用を正規雇用に転換した企業を支援
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者等のいわゆる非正規雇用を、正規雇用へ転換した事業主を支援する助成金です。こちらも厚生労働省所管です。
コース 01
正社員化コース(最重要)
有期雇用労働者等を正規雇用に転換または直接雇用した場合に支給。
支給額:1人あたり57万円(大企業42.75万円)
派遣から直接雇用:1人あたり28.5万円(大企業21.375万円)
最も利用の多いコース
コース 02
賃金規定等改定コース
有期雇用等の賃金規定等を改定し、賃金を3%以上増額した場合に支給。
支給額:対象労働者1人あたり最大5万円
賃上げ支援
正社員化コースの主な要件:①就業規則等に有期雇用→正規雇用への転換規定を設ける②転換後6ヵ月以上継続して雇用③転換後6ヵ月の賃金が転換前6ヵ月より5%以上増加していること——これらをすべて満たす必要があります。
業務改善助成金とキャリアアップ助成金の比較
| 比較項目 | 業務改善助成金 | キャリアアップ助成金 |
| 目的 | 生産性向上投資+最低賃金の引き上げ | 非正規雇用の正規転換・処遇改善 |
| 主な要件 | 設備投資+事業場内最低賃金引き上げ | 有期→正規転換・賃金5%以上増加等 |
| 支給形態 | 設備投資費用の補助(補助率3/4〜9/10) | 1人あたり定額(57万円等) |
| 上限額 | 最大600万円 | 1人あたり最大57万円(人数制限あり) |
| 所管 | 厚生労働省 | 厚生労働省 |
| 対象 | 中小企業・小規模事業者(最低賃金1,000円未満の事業場) | 有期雇用等を雇用する事業主(規模問わず) |
試験で問われる本質的な違い
業務改善助成金:「設備投資をして最低賃金を上げた」→ 生産性向上が前提
キャリアアップ助成金:「非正規を正規に転換した」→ 雇用形態の改善が前提
両方とも「賃金を上げる」という結果は同じですが、スタート地点(何をするか)がまったく違います。
その他の賃上げ関連助成金との使い分け
助成金 03
人材確保等支援助成金
雇用管理の改善(離職率低下等)や人材育成を行った事業主を支援。雇用管理制度コース・中途採用等支援コース等がある。
助成金 04
働き方改革推進支援助成金
時間外労働の上限規制対応・勤務間インターバル導入・テレワーク推進等の取り組みを行う中小企業・小規模事業者を支援。
試験の注意点:助成金の金額・補助率・要件は年度改正で変更されることがあります。診断士試験では「最新の数字の正確な暗記」より「制度の目的・対象・仕組みの理解」が問われます。「業務改善助成金=設備投資+最低賃金引き上げ」「キャリアアップ助成金=非正規の正規転換」という本質を押さえることを優先してください。
過去問で問われる頻出ポイント整理
業務改善助成金の対象となる事業場はどのような条件がありますか?
中小企業・小規模事業者が対象で、原則として事業場内の最低賃金が地域別最低賃金より30円以内の事業場(改正により1,000円未満の事業場が対象となる場合もあります)が申請できます。生産性向上のための設備投資を行い、事業場内の最低賃金を30〜90円以上引き上げることが要件です。
キャリアアップ助成金の正社員化コースで1人あたりいくら支給されますか?
中小企業の場合、1人あたり57万円が支給されます(大企業は42.75万円)。有期雇用→正規雇用への転換、および転換後6ヵ月の賃金が転換前より5%以上増加していること等が要件です。
業務改善助成金とキャリアアップ助成金の最大の違いは何ですか?
業務改善助成金は「設備投資+最低賃金引き上げ」がセット要件(生産性向上が前提)であるのに対し、キャリアアップ助成金は「非正規雇用の正規転換」が主要件です。両方とも厚生労働省所管の賃金引き上げ支援策ですが、目的・要件・支給額の計算方法がまったく異なります。
業務改善助成金:生産性向上設備投資+最低賃金引き上げのセット支援
業務改善助成金:補助率3/4〜9/10、最大600万円、厚生労働省所管
キャリアアップ助成金:非正規→正規転換した事業主に1人あたり57万円(中小)
キャリアアップ助成金の主要件:転換後6ヵ月の賃金が転換前より5%以上増加
両方ともに厚生労働省所管の賃金引き上げ支援策(目的・要件は異なる)
Uのメモ——「何をしたら何をもらえるか」で2つを区別する
「賃金を上げる系の助成金が2種類ある」と混乱しやすいですが、「何をすると何がもらえるか」で整理すると区別しやすくなります。
- 業務改善助成金の暗記:「機械買って→最低賃金上げた→設備投資費用の3/4〜9/10補助・最大600万円」
- キャリアアップ助成金の暗記:「非正規→正社員に転換した→1人57万円(中小)」
- 両助成金の共通点:厚生労働省所管・中小企業が主な対象・賃金引き上げが絡む。混同しやすいので「何をするか」を起点に覚える
業務改善助成金は「生産性向上設備投資+最低賃金引き上げ」のセット支援(補助率3/4〜9/10・最大600万円)、キャリアアップ助成金は「非正規→正規転換」への支援(1人あたり57万円・中小企業)です。両方とも厚生労働省所管の賃金引き上げ支援策ですが、「何をしたら支給されるか」という要件がまったく異なります。試験では制度の目的と主要要件を軸に区別できるよう整理しておきましょう。
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この記事を書いた人
中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。