家電の買い替えで「何年使えば元が取れるか」と考えたことはありませんか。実はその考え方がNPV計算の原型です。事例IVの投資評価は、この「元が取れるか」という問いを、貨幣の時間的価値も含めて厳密に計算する技術です。
事例IVの投資評価問題は、毎年安定して出題される得点源のひとつです。NPV法・IRR法・回収期間法の3手法を整理し、特に「税引後キャッシュフローの正確な計算」と「現在価値への換算」を押さえることで、確実に得点できるようになります。計算量は多いですが、手順が決まっているため、繰り返し練習することで体に覚えさせることができます。
目次
投資評価の3つの手法(NPV法・IRR法・回収期間法)
投資の経済性を評価する手法には大きく3種類あります。試験では特にNPV法が頻出ですが、IRR法・回収期間法も出題されるため、それぞれの特徴と使い分けを整理しておきましょう。
| 手法 |
計算方法 |
判断基準 |
メリット |
デメリット |
頻出度 |
NPV法 正味現在価値法 |
将来のCFをすべて現在価値に換算し、初期投資額を差し引いた値を求める |
NPV > 0 なら投資採算あり。複数案比較では NPV が大きい方を選ぶ |
貨幣の時間的価値を考慮。投資の絶対的な価値を示す |
割引率の設定が結果に大きく影響する。直感的にわかりにくい |
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IRR法 内部収益率法 |
NPV = 0 となる割引率(IRR)を求める。通常は補間法または試算で求める |
IRR > 資本コスト(要求収益率)なら投資採算あり |
割引率を仮定せず計算できる。投資の収益性を率で示せる |
複数のIRRが存在する場合がある。投資規模の大小を無視した比較になりやすい |
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回収期間法 Payback Period |
初期投資額 ÷ 年間CF(単純法)または累積CFが初期投資額を超える年数を求める |
回収期間 < 目標回収期間(または複数案比較で短い方を選ぶ) |
計算が簡単。流動性・リスクを直感的に評価できる |
時間的価値を無視する(単純法)。回収後のCFを考慮しない |
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頻出度は5段階で示しています。NPV法は最重要(5/5)、IRR法・回収期間法は補足的な位置づけ(3/5)です。
NPV法の計算ステップ(最重要)
NPV法は「将来もらえるお金を今の価値に換算したら、投資額と比べてどうか」を数値で示す方法です。計算は4ステップに分解できます。各ステップで何を求めているのかを理解してから計算練習に入ると、ミスが減ります。
税引後キャッシュフロー(税引後CF)を計算する
各年度の税引後CFを求めます。これが現在価値換算の元となる数値です。「利益」ではなく「CF(現金の動き)」であることに注意が必要です。
税引後CF = (売上 − 費用(減価償却費を含む) ) × (1 − 税率) + 減価償却費
減価償却費の扱いに注意:損益計算では費用として差し引くが、現金支出ではないため最後に加え戻す。「タックスシールド(節税効果)」という呼び方もある。
残存価値がある場合:最終年度のCFに「残存価値(帳簿残存価値)」を加算する。
運転資本が必要な場合:初年度に流出、最終年度に回収(流入)として計上する。
各年度のCFを現在価値に換算する
将来のCFに「現価係数」を掛けて、現在の価値に換算します。現価係数は試験問題に与えられることがほとんどです。
現在価値 = 将来CF × 現価係数 (現価係数 = 1 ÷ (1 + 割引率)ⁿ )
現価係数の使い方:問題文に「現価係数表」が与えられている場合はそれを使用する。毎年CFが等しい場合は「年金現価係数」を使うと計算が1回で済む(年金現価係数 = 各年の現価係数の合計)。
NPVを算出する
全年度の現在価値の合計から、初期投資額(と初年度の運転資本流出があればそれも)を差し引いた値がNPVです。
NPV = 各年度の現在価値の合計 − 初期投資額(− 運転資本の初期流出)
初期投資額のタイミング:通常は0年度(現時点)の支出なので、割引計算は不要(そのまま引く)。
投資判断を行う
NPVの符号と大きさで投資の採否や優劣を判断します。
NPV > 0 → 投資採択(価値を生む投資) / NPV < 0 → 投資棄却 / 複数案比較 → NPVが大きい案を選ぶ
よく間違える「税引後CF」の計算(減価償却費の扱い)
NPV計算で最もミスが起きやすいのが「税引後CFの算出」です。減価償却費は損益上は費用ですが、現金支出ではありません。この扱いを正確に理解することが、NPV計算の精度を上げる最重要ポイントです。
設定条件
売上高:2,000万円 / 現金支出費用(減価償却費を除く):1,200万円 / 減価償却費:200万円 / 法人税率:30%
売上高2,000万円
− 現金支出費用− 1,200万円
− 減価償却費− 200万円
= 税引前利益600万円
− 法人税(× 30%)− 180万円
= 税引後利益420万円
+ 減価償却費(加え戻し)+ 200万円
= 税引後CF(現金流入)620万円
減価償却費200万円を費用計上したことで、税引前利益が200万円減り、税金が60万円(200万円×30%)節約できました(タックスシールド効果)。
税引後CF = 税引後利益 + 減価償却費 = 420 + 200 = 620万円 は、もとの式(売上 − 現金支出費用)×(1 − 税率)+ 減価償却費×税率 でも求められます。
別の導出方法(公式の別形)
税引後CF = (売上高 − 現金支出費用) × (1 − 税率) + 減価償却費 × 税率
= (2,000 − 1,200)× 0.7 + 200 × 0.3
= 560 + 60 = 620万円 (上の計算と一致)
「減価償却費 × 税率」の部分がタックスシールド(節税額)です。
「減価償却費を足し戻す」という操作が最初わかりにくかったのですが、「損益計算書で費用にしたけれど、実際に現金は出ていない。だから返してもらう」と考えるとすっきりしました。現金ベースで考えることがCF計算の根本です。
IRRと回収期間法の計算(補足)
NPV法ほど頻出ではありませんが、IRR法と回収期間法も問われることがあります。それぞれの計算方法と判断基準を整理しておきましょう。
IRR法(内部収益率法)
NPV = 0 となる割引率 r を求める
(補間法:r = r₁ + (r₂ − r₁)× NPV₁ ÷ (NPV₁ − NPV₂))
判断:IRR > 資本コスト → 採択
試験では通常、「割引率 X% では NPV = △△万円、Y% では NPV = △△万円」という形で2点が与えられ、補間法でIRRを求める問題が多いです。補間法は「2点を直線で結んでNPVがゼロになる点を求める」操作です。
回収期間法(単純法)
回収期間 = 初期投資額 ÷ 年間CF(毎年CFが等しい場合)
毎年CFが異なる場合:累積CFが初期投資額を超える年を探す
判断:回収期間 < 目標値(または短い方を採択)
単純法は時間的価値を考慮しませんが、計算が速くリスクの大まかな評価に使われます。試験では「何年何ヶ月で回収できるか」という形で出題されることがあります。端数が出た場合は月数に換算して答えます(例:0.5年 → 6ヶ月)。
割引回収期間法
各年度の現在価値の累計が初期投資額を超える年数
判断:割引回収期間 < 目標値(単純法より厳密)
回収期間法に時間的価値を組み込んだ手法です。出題頻度は低いですが、NPV法の計算結果を使って求めることができます。単純法より長い回収期間になることを覚えておくと問題文の判断に役立ちます。
3手法の関係性のまとめ: NPV法は「いくら儲かるか(絶対値)」、IRR法は「何%の収益率か(率)」、回収期間法は「何年で元が取れるか(時間)」をそれぞれ示します。試験では複数の手法の計算を同一設問内で問われることもあります。
計算ミスを防ぐ確認ポイント
NPV計算には特有のミスパターンがあります。計算を始める前と終わった後に以下を確認することで、ケアレスミスを大幅に減らせます。
残存価値を最終年度のCFに加えているか
耐用年数終了時点での機械の売却価値(残存価値・スクラップ価値)がある場合、最終年度のCFに加算します。帳簿価値がゼロでも残存価値がある場合は、売却益として法人税が発生することもあるため注意が必要です。
最終年度のCFの計算式に「+ 残存価値」が入っているかを確認する
運転資本の流入・流出を正しく計上しているか
事業開始時に運転資本(売掛金・棚卸資産など)が必要な場合、0年度にCF流出として計上します。事業終了時には運転資本が回収されるため、最終年度にCF流入として計上します(流出と同額が戻ってくるイメージ)。
0年度:初期投資額 + 運転資本を流出計上 / 最終年度:運転資本を流入計上
現価係数は「年度ごと」に正しく使い分けているか
1年目は「1年の現価係数」、2年目は「2年の現価係数」と年度ごとに異なる係数を使います。毎年CFが等しい場合のみ「年金現価係数(各年の係数の合計)」を使って一括計算できます。CFが変わる年度があると年金現価係数は使えません。
CFが毎年異なる場合 → 各年度の現価係数を個別適用。毎年均等なら年金現価係数でOK
減価償却費は正しく計算されているか(定額法・定率法)
定額法(毎年同額)か定率法(帳簿価値×償却率)かで毎年の減価償却費が変わります。定率法では年度ごとに減価償却費が異なるため、毎年のCFが変わります。問題文で指定されている方法を必ず確認してください。
定額法:(取得原価 − 残存価値)÷ 耐用年数 / 定率法:期首帳簿価値 × 償却率(毎年変わる)
まとめ
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3手法(NPV法・IRR法・回収期間法)の特徴と判断基準を整理し、問われている手法を瞬時に判断できるようにする
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税引後CFの計算は「税引後利益 + 減価償却費」の手順で。減価償却費のタックスシールド効果を意識する
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残存価値・運転資本の計上タイミング(初年度流出・最終年度回収)を見落とさない
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現価係数は年度ごとに正しく使い分け、CFが均等な場合のみ年金現価係数を使う
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NPV計算後は符号と値を確認し、複数案比較では「NPVが大きい案を選ぶ」という判断基準を忘れない
NPV計算でいちばん手が止まったのは、「減価償却費を費用に入れてからまた足し戻す」という操作でした。「なぜ引いたのにまた足すの?」とループ思考に入りましたが、「引く目的(税金の計算のため)と、足す目的(現金ベースに戻すため)が違う」と整理したら一気に腑に落ちました。CF計算は利益計算とは目的が違う——このひとことで迷いがなくなった気がします。過去問を数問解くと、残存価値・運転資本のどちらかが毎回登場していることに気づきます。どの要素が出てきても構造は同じなので、チェックリストを頭に入れておくだけで対応できます。
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