カフェを開業したとき、「何杯売れば黒字になるか?」という問いに答えるのがCVP分析のすべてです。費用を「売上に比例して増える変動費」と「売上に関係なく発生する固定費」に分けることで、利益の構造が見えてきます。
事例IVで毎年高い頻度で出題されるのが、CVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis)です。費用を「変動費」と「固定費」に分類し、損益分岐点の売上高や目標利益を達成するために必要な売上高を計算します。公式は4つだけ。仕組みを理解してから繰り返し計算練習することで、確実に得点源にできる分野です。
目次
CVP分析の基本概念(固定費・変動費・限界利益)
CVP分析の出発点は、「費用を2種類に分ける」ことです。売上が増えるほど増える費用(変動費)と、売上に関係なく毎月かかる費用(固定費)を区別することで、利益の構造が見えてきます。
売上高の構造イメージ(売上高 = 変動費 + 固定費 + 利益)
上段:売上がある場合(利益が出ている状態)/下段:損益分岐点(利益がゼロの状態)
固定費
売上高の増減にかかわらず、毎期一定額が発生するコストです。試験では「CF」と表記されることもあります。
例:家賃・リース料・役員報酬・減価償却費・保険料
変動費
売上高に比例して増減するコストです。「変動費率」(変動費 ÷ 売上高)として表すことが多く、試験では与件文から読み取ります。
例:材料費・仕入原価・外注費・販売手数料
限界利益
売上高から変動費を差し引いた金額です。「固定費を回収するための利益」と考えると理解しやすいです。限界利益が固定費を超えた時点で利益が発生します。
限界利益 = 売上高 − 変動費 / 限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高
必ず使う4つの公式と計算手順
事例IVのCVP分析で使う公式は4つだけです。この4つをどんな問題でも迷わず使えるようになることが第一の目標です。公式の意味と「何を求めるための式か」を合わせて覚えることが重要です。
補足:安全余裕率と営業レバレッジ
安全余裕率
(売上高 − 損益分岐点売上高) ÷ 売上高 × 100(%)
売上高が損益分岐点からどれだけ余裕があるかを示します。数値が大きいほど「売上が多少落ちても赤字になりにくい」安定した経営状態です。問題文で「安全余裕率を求めよ」と問われることがあります。
営業レバレッジ(DOL)
限界利益 ÷ 営業利益(= 1 ÷ 安全余裕率)
売上高が1%変化したとき、営業利益が何%変化するかを示す指標です。固定費比率が高いほどレバレッジが大きく、売上増加時の利益拡大も大きくなりますが、売上減少時のリスクも高まります。
計算例を通して手順を確認
具体的な数値を使って、公式の使い方と計算の流れを確認します。設問に数字が与えられたら、この手順を頭の中で踏むことが計算ミスを防ぐコツです。
設定条件
売上高:1,000万円 / 変動費:600万円 / 固定費:300万円
目標利益:50万円(税引後) / 法人税率:40%
変動費率を求める
与えられた変動費と売上高から変動費率を計算します。この値が後続の全計算に使われるため、最初に正確に出すことが重要です。
変動費率 = 600万円 ÷ 1,000万円 = 0.6(60%)
売上の60%が変動費として発生することがわかります。
限界利益率を求める
1から変動費率を引くだけです。損益分岐点の計算で分母に入る数値です。
限界利益率 = 1 − 0.6 = 0.4(40%)
売上が1万円増えるごとに、0.4万円が固定費回収または利益に回ります。
損益分岐点売上高を求める
固定費を限界利益率で割ります。「この売上を下回ると赤字になる」という境界値です。
損益分岐点売上高 = 300万円 ÷ 0.4 = 750万円
750万円を超えた売上分が利益の源泉になります。現在の売上1,000万円との差額250万円 × 0.4 = 100万円が営業利益です(確認:1,000 − 600 − 300 = 100万円)。
目標利益達成売上高を求める(税率がある場合)
税引後利益が与えられている場合は、まず税引前利益に換算してから計算します。
税引前目標利益 = 50万円 ÷(1 − 0.4)= 50 ÷ 0.6 ≒ 83.3万円
目標利益達成売上高 =(300 + 83.3)÷ 0.4 = 383.3 ÷ 0.4 ≒ 958.3万円
税引後50万円の利益を得るには、約958万円の売上が必要です。現在の1,000万円を下回るため、現状でも達成できていることがわかります。
計算手順の中で一番ミスが起きやすいのは「ステップ1の変動費率」です。与件文に「変動費率は売上高の〇%」と書かれている場合と、「変動費は〇万円」と金額で書かれている場合で、求め方が変わります。問題文をよく読んで、どちらの形式で与えられているかを先に確認する癖をつけると安心です。
試験でよく出るCVP応用問題パターン
基本の4公式を使えるようになったら、試験でよく見られる応用パターンを押さえます。パターンごとに「何が変わって、何は変わらないか」を整理することが解法のポイントです。
パターン1
固定費が変化する場合(設備投資・人員追加など)
「設備を新たに導入するため固定費が〇万円増加する。新しい損益分岐点売上高を求めよ」という形式です。変動費率は変わらず、固定費の数値だけが変わります。変化後の固定費で再計算するだけなので、変動費率と限界利益率は使い回せます。
変化後固定費 = 300 + 50 = 350万円
新損益分岐点 = 350 ÷ 0.4 = 875万円(固定費が増えるほど損益分岐点が上がる)
パターン2
変動費率が変化する場合(原材料費の変動・価格改定)
「材料費の高騰により変動費率が〇%上昇した場合の損益分岐点を求めよ」という形式です。変動費率が変わると限界利益率も変わるため、ステップ1から計算し直す必要があります。変化後の変動費率で限界利益率を再計算することが重要です。
変化後変動費率 = 0.6 + 0.05 = 0.65 → 限界利益率 = 0.35
新損益分岐点 = 300 ÷ 0.35 ≒ 857万円(変動費率上昇 → 損益分岐点が上がる)
パターン3
複数製品がある場合(製品ミックス)
「製品AとBの2種類を販売している。売上比率がA:B = 6:4のとき、全社の損益分岐点を求めよ」という形式です。それぞれの変動費率と売上比率から加重平均の限界利益率を計算し、全社の固定費を割ります。売上比率の仮定が変わると答えも変わる点に注意が必要です。
製品A(限界利益率50%)× 60% + 製品B(限界利益率30%)× 40%
= 0.5×0.6 + 0.3×0.4 = 0.30 + 0.12 = 0.42(加重平均限界利益率)
損益分岐点 = 固定費 ÷ 0.42
計算ミスを防ぐチェックリスト
CVP分析の計算ミスは特定のパターンに集中します。以下のポイントを計算前と計算後に確認することで、ケアレスミスを大幅に減らせます。
単位の確認(万円か円か、%か小数か)
問題文が「万円」で与えられているのに途中で「円」に換算してしまうミスが頻発します。また変動費率が「60%」と書かれている場合、計算では「0.6」として使うことを忘れないようにします。
問題を解き始める前に「単位を統一する」ことを最初のステップにする
変動費率は「変動費 ÷ 売上高」の順で計算する
焦ると分子と分母が逆になりやすいです。「売上高分の変動費」と日本語で確認しながら計算すると逆転ミスを防げます。変動費率が1を超えるようなら計算が逆になっているサインです。
変動費率 < 1 であることを計算後に必ず確認する
税率の扱い(税引後利益を税引前に換算してから使う)
設問に「税引後利益〇万円を達成するための売上高」と書かれている場合、目標利益をそのまま公式に入れてはいけません。まず「税引前利益 = 税引後利益 ÷(1 − 税率)」で換算してから計算に入ります。
「税引後」という言葉が見えたら、必ず換算を先に行う
損益分岐点の計算結果を実際の損益で検証する
損益分岐点売上高を求めたら、「その売上高で計算した利益がゼロになるか」を確認します。損益分岐点売上高 × 限界利益率 = 固定費 となれば正解です。答えを出して終わりにせず、一度検証することで計算の精度が上がります。
損益分岐点売上高 × 限界利益率 = 固定費 で検証する
まとめ
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費用を変動費と固定費に分け、限界利益の概念を正確に理解することがすべての出発点
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4つの公式(変動費率・限界利益率・損益分岐点売上高・目標利益達成売上高)を順番通りに使う
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応用パターン(固定費変化・変動費率変化・複数製品)では「何が変わり、何が変わらないか」を整理する
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税引後利益が与えられた場合は、先に税引前に換算してから公式に代入する
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計算後は「損益分岐点 × 限界利益率 = 固定費」で検証し、答えの正しさを確認する習慣をつける
CVP分析で最初につまずいたのは「限界利益」という言葉の意味でした。「限界」というと「限界まで追い詰められた利益」みたいなイメージがあって混乱したのですが、英語のMarginal Profit(限界的な利益=1単位追加したときの利益)だと理解してからすっきりしました。変動費率と限界利益率を先に正確に出して、あとは公式を当てはめるだけ——この流れを体に覚えさせるために、過去問の同じ問題を10回解き直したら、本番でも落ち着いて解けるようになりました。
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