U「どんな状況にも使える最強の組織形態があるはずだ」と思って組織論の章を読み始めたのですが、コンティンジェンシー理論にたどり着いたとき、その前提ごとひっくり返されました。環境が変われば、正解も変わる。当たり前のようでいて、経営学がそれを実証したのはずっと後のことだったのです。
コンティンジェンシー理論とは
テイラーの科学的管理法やファヨールの管理論は「どんな状況でも通用する普遍的な原則」を探しました。しかしコンティンジェンシー理論は逆の出発点に立ちます。「環境・技術・規模といった状況要因(コンティンジェンシー変数)が変われば、適切な組織構造も変わる」という実証的アプローチです。
バーンズ&ストーカー:環境と組織形態
1961年、スコットランドの電子産業とレーヨン産業を比較調査。環境の安定性が組織構造を規定すると示しました。上の「機械的 vs 有機的」二分法を最初に提唱した研究者です。
| 比較軸 | 機械的組織(Mechanistic) | 有機的組織(Organic) |
|---|---|---|
| 権限 | 上位集中・指揮命令系統明確 | 分散・専門知識に基づく影響力 |
| 職務定義 | 職務記述書で明確に規定 | 状況に応じて柔軟に再定義 |
| コミュニケーション | 垂直方向が主(命令・報告) | 水平方向が主(協議・情報共有) |
| 適した環境 | 安定・定型業務が多い | 変化・不確実性が高い |
| 意思決定速度 | ルールに沿って一定 | 状況判断で速く対応 |
試験のポイント:「機械的=悪い、有機的=良い」という優劣の話ではありません。安定環境には機械的、変動環境には有機的が適合するという相対論です。選択肢で「有機的組織は常に優れている」という記述が出たら誤りです。



「有機的組織のほうが現代的で良さそう」と思いがちなのですが、大量生産ラインのような安定業務では機械的組織のほうが効率的。どちらが優れているかではなく、どちらがその状況に適合しているかという問いへの転換が、コンティンジェンシー理論の本質だと理解しました。
ローレンス&ローシュ:分化と統合
1967年、プラスチック・容器・食品の3業界を比較。環境の不確実性が高い業界ほど部門間の分化が進み、同時に統合のメカニズムも発達するという二面性を明らかにしました。
研究結果として、高業績企業は分化と統合の両方が高い水準で達成されていたという点が重要です。「分化させれば良い」でも「統合すれば良い」でもなく、環境に見合ったバランスが業績を左右します。
ウッドワード:技術と組織構造
1965年、英国100社を調査し、生産技術の種類が組織構造を規定することを発見しました。
試験のポイント:「単品→大量→連続プロセス」の順に技術的複雑性が高まり、組織形態は「有機的→機械的→有機的」と変化します。連続プロセスで再び有機的になる点が出題されやすいです。
チャンドラー:「組織は戦略に従う」
1962年、デュポン・GM・スタンダード石油・シアーズを歴史分析し、企業が多角化戦略を採用すると、事業部制組織へと構造を変えたという法則を導き出しました。
「組織は戦略に従う(Structure follows strategy)」は中小企業診断士試験の頻出フレーズです。ただし後年、ホールとサイアスらは「戦略が組織に従う場合もある」という逆命題も提示しており、双方向の関係と捉えるのが現代的です。
4理論の比較まとめ
| 研究者 | 状況変数(独立変数) | 組織変数(従属変数) | 主要概念 |
|---|---|---|---|
| バーンズ&ストーカー | 環境の安定性 | 組織形態 | 機械的組織 vs 有機的組織 |
| ローレンス&ローシュ | 環境の不確実性 | 部門構造 | 分化と統合のバランス |
| ウッドワード | 生産技術の複雑性 | 組織構造 | 単品→大量→連続プロセス |
| チャンドラー | 多角化戦略 | 組織形態 | 組織は戦略に従う |
過去問で確認する
ア.バーンズとストーカーは、安定した環境下では有機的組織が有効であると主張した。
イ.ローレンスとローシュは、分化の程度が高いほど統合の必要性が低下すると主張した。
ウ.チャンドラーは、企業が多角化戦略を採用すると機能別組織が適合すると主張した。
エ.ウッドワードは、大量生産企業では機械的組織が適合すると示した。
ア.職務記述書による役割の明確化
イ.垂直方向のコミュニケーション重視
ウ.環境変化に応じた役割の柔軟な再定義
エ.権限の上位集中と指揮命令系統の整備
ア.企業規模が拡大すると自然に機能別組織へ移行する。
イ.多角化戦略を採用した企業は事業部制組織に移行する傾向がある。
ウ.単一製品の集中戦略には事業部制組織が適合する。
エ.組織構造が確定してから戦略が策定されるという関係を示した。









