U「合理的に判断する」という言葉をよく使いますが、人間はそもそも完全に合理的になれない、とサイモンは言います。情報は常に不完全で、処理能力にも限りがある。それなのに私たちは毎日意思決定している。その「現実の意思決定」を正面から捉えようとしたのが意思決定論でした。
サイモンの限定合理性(Bounded Rationality)
古典的経済学は「人間は完全な情報をもとに効用を最大化する合理的意思決定者(経済人モデル)」を前提としていました。しかしサイモンは、現実の意思決定者は認知能力・情報・時間すべてに限りがあると指摘し、「経済人」に対して「経営人(Administrative Man)」モデルを提唱しました。
試験頻出:サイモンはこの研究でノーベル経済学賞(1978年)を受賞。「最適化(最大化)ではなく満足化」という対比は必ず押さえておきましょう。
プログラム化された意思決定 vs 非プログラム化
サイモンはまた、意思決定を繰り返しの程度で2種類に分類しました。



「プログラム化=ITシステム」と混同しがちですが、ここでの「プログラム」は手順・ルーティンのこと。繰り返し同じ状況が生じて、対処手順が確立しているものがプログラム化された意思決定です。逆に「前例がない・正解が見えない」場面で求められるのが非プログラム化の意思決定。これがトップ層の本来の仕事といえます。
カーネギーモデル(マーチ&サイアート)
マーチとサイアートは1963年の著書『企業の行動理論』で、組織の意思決定は複数の利害関係者間の連合(coalition)によって行われると主張しました。
ゴミ箱モデル(Cohen・March・Olsen)
1972年、コーエン・マーチ・オルセンは「組織化された無政府状態(organized anarchy)」と呼ばれる特殊な状況下での意思決定を記述しました。大学・病院・NPOなど、目標が曖昧で参加者が流動的な組織で起きる現象です。
この4つのストリームが偶発的に合流したときに意思決定が生じる、というのがゴミ箱モデルの核心です。合理的プロセスではなく、タイミングと偶然に左右されるという逆説的な洞察が特徴です。
試験頻出:「組織化された無政府状態」「4つのストリームの偶発的合流」というキーワードはそのまま選択肢に登場します。「ゴミ箱モデルは合理的意思決定の記述である」という引っかけ選択肢に注意。
3モデルの比較まとめ
| モデル | 提唱者 | 中心概念 | 組織の前提 |
|---|---|---|---|
| 限定合理性・経営人モデル | サイモン(1947) | 満足化・プログラム化 | 認知に限界がある個人 |
| カーネギーモデル | マーチ&サイアート(1963) | 連合・準解決・問題志向探索 | 利害が異なる複数の連合体 |
| ゴミ箱モデル | コーエン・マーチ・オルセン(1972) | 4ストリームの偶発的合流 | 組織化された無政府状態 |
過去問で確認する
ア.人間は完全な情報をもとに効用を最大化する意思決定を行う。
イ.意思決定者は利用可能なすべての代替案を列挙・比較したうえで最適解を選択する。
ウ.人間の認知能力と情報には限界があるため、満足できる水準の代替案が見つかった時点で意思決定を行う。
エ.組織の意思決定は複数の利害関係者からなる連合体によって行われる。
ア.前例のない問題に対して創造的な解決策を探索するプロセスである。
イ.定型的・反復的な問題に対して標準手続きや規則を適用するプロセスである。
ウ.トップマネジメントが行う戦略的意思決定の主たる形態である。
エ.不確実性の高い環境下で行われる非構造的な意思決定を指す。
ア.組織の意思決定は問題・解決策・参加者・選択機会の4つが偶発的に合流して生じる。
イ.組織化された無政府状態では、目標が明確で参加者が安定しているため合理的な意思決定が可能である。
ウ.問題が認識されてから解決策が体系的に探索されるプロセスを示したモデルである。
エ.ゴミ箱モデルはサイモンが提唱した限定合理性の精緻化モデルである。









