新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかると言われています。事例IIが既存顧客重視の施策を多く問う理由がここにあります。「新規か既存か」ではなく、両者の違いを理解したうえで、設問に合った施策を論理的に選べることが安定得点への近道です。
目次
新規顧客獲得と既存顧客維持の違い
事例IIでは「新規顧客を増やす施策」と「既存顧客のリピートを促す施策」が明確に問い分けられます。どちらを問われているかを設問文で判断し、それに対応した施策のキーワードと論理構造を使うことが得点の第一歩です。まず2つの違いを整理しておきましょう。
| 比較軸 |
新規顧客獲得 |
既存顧客維持(リテンション) |
| コスト |
高い(既存顧客維持の約5倍) |
低い(関係構築済みのため) |
| 目的 |
認知拡大・来店・購買の初回獲得 |
リピート・客単価向上・ファン化 |
| 主な施策 |
広告・SNS・口コミ・体験イベント・紹介 |
会員制度・ポイント・情報提供・コミュニティ |
| 事例IIでの問われ方 |
「新規顧客を獲得するためには」「認知を広げるためには」 |
「リピートを促すためには」「顧客との関係を深めるためには」 |
| 解答の骨格 |
ダナドコ × ターゲット特定 × 差別化 |
接点強化 × 体験価値 × LTV向上 |
| LTV(顧客生涯価値)への影響 |
間接的(まず獲得が先) |
直接的(継続購買でLTV上昇) |
事例IIで既存顧客維持が重視される理由
中小企業は大企業と比べて広告予算・人員が限られています。新規獲得に多額のコストをかけるより、すでに信頼関係がある既存顧客を繰り返し来店させる戦略の方が、費用対効果が高くなります。事例IIがCRM(顧客関係管理)・リピート・ロイヤルティを頻繁に問う背景がここにあります。
CRMとは何か
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)とは、顧客一人ひとりとの関係を継続的に深め、長期的な購買行動(LTV)を高めるための考え方・仕組みです。事例IIでは「関係を深める」「つながりを維持する」という設問でCRMの視点が求められます。接触から始まりファン化に至るまでの4ステップを押さえておきましょう。
最初の接点をつくる
認知・来店・初回購買
顧客がその企業・店舗を「知る」「行く」「買う」という最初の体験です。チラシ・SNS・口コミ・紹介・イベントなどが接点の起点となります。CRMはこの段階から「次につながる関係」を意識した設計が重要です。
事例IIでのポイント:初回来店時に顧客情報(氏名・連絡先・好み)を取得できる仕組みを設けると、その後のCRM施策の土台になります。
信頼と親しみを積み上げる
情報提供・個別対応・フォロー
購買後の継続的なコミュニケーション(ニュースレター・SNS・メール・ハガキ)によって、顧客との心理的距離を縮めます。「この店は自分のことを覚えてくれている」という感覚がリピートへの動機になります。
事例IIでのポイント:定期的な情報提供・季節の挨拶・購買履歴に基づいた個別提案が「関係構築施策」として解答に使えます。
繰り返し来店・購買を促す
ポイント・会員・定期購買
会員制度・ポイントカード・定期便・クーポンなど、「次も来る理由」を仕掛けとして設計します。単なる割引ではなく、特別感・優先感が顧客のリピート動機を高めます。
事例IIでのポイント:「ポイント制度の導入」「会員限定イベントの開催」「定期購買割引」などが頻出の解答キーワードです。
熱量の高い支持者をつくる
口コミ・紹介・コミュニティ
単なるリピーターから一歩進んで、「この店を人に薦めたい」「ここのファンだ」という強い関与度を持つ顧客層(ロイヤルカスタマー)へと育てます。口コミ・紹介・SNS発信が新規顧客獲得にも連鎖する状態が理想です。
事例IIでのポイント:コミュニティ形成・ファンイベント・限定商品・製造工程の公開など「熱量の高い関係」を生む施策が解答になります。
設問パターン別の解答の型
事例IIにおける顧客施策の設問は、主に3つのパターンに分類できます。それぞれで解答の骨格と使うキーワードが変わります。与件文を読んでどのパターンかを判断したうえで、対応する型を使いましょう。
PATTERN 01
「新規顧客獲得施策を述べよ」
解答の骨格:ダナドコ × ターゲット特定
「誰に(ターゲット)・何を(強み・価値)・どのように(チャネル・方法)・効果(客数・認知向上)」の順で組み立てます。ターゲットを冒頭に明示することが最重要です。
主な施策キーワード
SNS発信による認知獲得、体験型イベントの開催、観光施設・地域団体との連携、既存顧客からの紹介・口コミ促進、チラシ・地域メディアへの掲出
解答例の骨格:「健康志向の高い40〜50代女性(ターゲット)に対し、自社の無添加製法を強みとした試食イベント(方法)をSNSで発信(チャネル)し、新規来店を促すことで顧客数の増加(効果)を図る」
PATTERN 02
「既存顧客のリピートを促すには」
解答の骨格:ポイント・会員・体験価値
「次回来店のインセンティブ」「特別感の演出」「継続的な関係の仕掛け」の3方向から施策を組み合わせて解答します。割引だけでなく体験・感情価値も盛り込むと厚みが出ます。
主な施策キーワード
ポイントカード・スタンプカード導入、会員限定割引・先行案内、定期購買・定期便の設計、購買履歴に基づくパーソナル提案、季節イベント・記念日フォロー
解答例の骨格:「既存顧客に対し、購買履歴に基づいたニュースレターを送付(情報提供)するとともに、会員カード制度(インセンティブ)を導入し、再来店を促してリピート率を高める(効果)」
PATTERN 03
「顧客との関係を深めるには」
解答の骨格:接点強化・情報提供・コミュニティ
「顧客と企業が接する機会を増やし、情報・体験を共有することで心理的なつながりを強化する」方向で解答を構成します。一方的な発信ではなく双方向の関係設計が重要です。
主な施策キーワード
SNS・メルマガによる定期情報発信、ワークショップ・体験教室の開催、顧客参加型コミュニティ・ファンクラブの設立、製造工程・こだわりの発信、顧客の声の収集と施策への反映
解答例の骨格:「月1回のワークショップ開催(接点強化)により顧客が参加する場を設け、SNSで活動を発信(情報提供)することでコミュニティ意識を高め(関係深化)、ロイヤルティ向上と口コミ拡散(効果)につなげる」
3つのパターンを頭に入れておくと、設問文を読んだ瞬間に「これはPATTERN 02だ」と判断できます。型を持つことで思考の迷いが減り、限られた試験時間の中で解答の組み立てが格段に速くなります。
LTV(顧客生涯価値)を高める施策の考え方
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、一人の顧客が企業と取引を続ける期間全体を通じてもたらす売上・利益の総量です。LTVを高めるには「購買頻度を増やす」「客単価を上げる」「取引継続期間を延ばす」の3軸から施策を設計します。
同じ顧客が1年間に来店・購買する回数を増やすことで、LTVを底上げします。「来る理由を繰り返しつくる」仕掛け設計が核心です。
施策例:季節限定商品の投入、定期便・サブスク、スタンプカード、定期イベント開催、購買タイミングに合わせたDM配信
1回の購買で支払われる金額を増やすことで、同じ来店回数でもLTVが上昇します。追加購買・アップグレードの提案設計が鍵です。
施策例:セット販売・まとめ買い割引、高付加価値商品ラインの追加、オプションサービスの提案、ギフト需要への対応、体験コースとの組み合わせ
顧客が離れずに取引を続ける期間を伸ばすことが、LTV最大化の根本です。「やめる理由をなくす」「やめられない仕掛けをつくる」設計が重要です。
施策例:会員ランク制度(長期優遇)、コミュニティへの帰属感醸成、定期購買契約、誕生日・記念日フォロー、顧客の声を反映した商品改善
LTVが最も高い顧客層(ロイヤルカスタマー)は、自ら口コミ・紹介をしてくれる「営業担当」でもあります。この層への特別対応がLTV全体を底上げします。
施策例:VIP会員向け限定イベント、製造工程見学・バックヤードツアー、顧客の声を商品に反映する共創施策、紹介報酬・友人割引制度
LTV向上の解答で押さえる論理構造
施策:〔具体的な仕掛け〕を設ける
顧客行動:〔購買頻度の増加 / 客単価の上昇 / 継続期間の延長〕が起きる
効果:顧客一人当たりの売上(LTV)が増加し、安定的な収益基盤が形成される
解答に使えるキーワード集
新規顧客獲得・既存顧客維持・CRM・LTVに関する設問で使いやすいキーワードを15個まとめました。与件文の状況と対応するものを選んで解答に組み込みましょう。
顧客関係管理(CRM)
LTV(顧客生涯価値)の向上
ロイヤルカスタマーの育成
ポイント・スタンプ制度
会員制度・会員限定特典
購買履歴に基づく個別提案
定期購買・サブスク設計
顧客接点の多様化・強化
ニュースレター・メルマガ配信
コミュニティ形成・帰属感
口コミ・紹介の促進
体験価値・感情的つながり
客単価向上(クロスセル・アップセル)
顧客離反(チャーン)防止
ダナドコ × ターゲット明示
まとめ
新規顧客獲得と既存顧客維持は、設問の問い方で明確に使い分けます。どちらを問われているかを判断し、対応する解答の型・施策キーワードを組み合わせることが、事例IIで安定した得点を取るための基本です。CRM・LTVの視点は「なぜ既存顧客維持が重要か」という問いへの答えとして、解答に厚みを加えてくれます。
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設問文から「新規獲得」か「既存維持」かを正確に判断し、対応する型を選んだか
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新規獲得の設問では「ダナドコ × ターゲット明示」の骨格で解答を構成したか
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既存顧客施策ではポイント・会員・体験価値・情報提供の組み合わせを意識したか
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LTV向上の論理(頻度・単価・継続期間)を意識して施策を提案したか
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CRM施策の4ステップ(接触→関係構築→リピート→ファン化)を解答の流れに活用したか
事例IIで「顧客との関係を深める施策を述べよ」という設問を最初に読んだとき、「とりあえず会員制度とポイントカードを書けばいいのかな」と思っていました。でも、それだけでは採点官に伝わらないんですよね。「なぜその施策が顧客との関係を深めるのか」という因果の説明が抜けているから。今は施策を書く前に「この施策で顧客のどの行動が変わるか」を必ず確認してから書くようにしています。CRMの4ステップ(接触→関係構築→リピート→ファン化)を頭に持っておくと、施策がどのフェーズに効くかが整理されて、解答の論理がつながりやすくなります。
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