新規事業開発・多角化への組織対応 | 中小企業診断士2次試験 事例I

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新しい事業を始めるとき、組織はそのままで大丈夫?という問いが事例Iの新規事業問題の核心です。多角化戦略を学んだとき、「戦略の話なのに、なぜ組織の設問が来るんだろう」と不思議でした。でも過去問を重ねるうち、戦略と組織は必ずセットで問われることに気づきました。新規事業の成否を分けるのは、アイデアより先に「誰がやるか・どう動かすか」という組織設計なんです。

事例Iの「新規事業・多角化」問題では、アンゾフの成長マトリクスを軸に多角化の種類を整理し、それに伴う組織上の課題(人員配置・権限設計・既存事業との摩擦)をどう解決するかを論述する力が問われます。「多角化した」という事実だけでなく、「なぜその組織対応か」という理由まで書くことが採点ポイントです。このページでは、出題パターンと解答の型を整理します。

このページでわかること
  • アンゾフの成長マトリクス4類型と試験での出題場面
  • 新規事業立ち上げ時に生じる「組織の課題」3つと対策の型
  • 専任チーム・社内ベンチャー・TF設置の違いと使い分け
  • 既存事業とのカニバリゼーション問題と解答骨格
  • 解答に使えるキーワード15個
目次

多角化戦略の4類型(アンゾフの成長マトリクス)

アンゾフの成長マトリクスは「製品」と「市場」を既存・新規で分けた2×2のフレームワークです。事例Iでは与件文の企業がどの象限に進もうとしているかを特定し、それに見合った組織対応を論じることが求められます。

既存製品
新規製品
既存市場
新規市場
象限 A — リスク最小
市場浸透
既存市場に既存製品をさらに深耕する。シェア拡大・販促強化・価格戦略が中心。大きな組織変革は不要で、現行体制の強化が基本対応。
象限 B — 製品開発力が鍵
製品開発
既存市場に新製品を投入する。R&D強化・開発部門の権限拡大・製品ラインナップ拡充。開発と営業の連携体制が組織課題になりやすい。
象限 C — 営業力が鍵
市場開発
既存製品を新市場(地域・顧客層)に展開する。新チャネル開拓・エリア拡大。営業部門への権限委譲と人員配置が組織課題になりやすい。
象限 D — リスク最大
多角化
新市場に新製品を投入する。4類型でリスクが最も高く、組織対応の問いが最も多い象限。専任組織・権限設計・既存事業との分離が論点になる。
試験の与件文では「新たな顧客層」「これまでとは異なる事業領域」「異業種への参入」といった表現が多角化(象限D)のシグナルです。これが見えた瞬間に「専任組織の設問が来る可能性が高い」と予測しながら与件文を読み進めることが大切です。

新規事業を始める際に生じる「組織の課題」

新規事業を立ち上げるとき、組織には3種類の課題が生まれやすい構造があります。それぞれの課題・原因・対策を整理することで、設問への解答骨格が作りやすくなります。

課題の種類 具体的な問題 原因 組織対策の方向性
人員配置 新規事業の担い手が不足する。既存部門から引き抜くと既存事業が弱体化する。外部採用は時間とコストがかかる。 経営資源(人材)の総量が限られており、既存と新規で取り合いになる 専任チームの編成・外部人材の活用・育成計画の前倒し。既存業務の効率化で人員余力を生み出す
権限設計 新規事業の意思決定が遅い。経営トップへのお伺いが続き、スピードが落ちる。現場が動きにくい。 既存の機能別組織の意思決定ルートが新規事業に適用され、柔軟な判断ができない 新規事業担当への権限委譲・責任範囲の明確化・事業部制もしくはプロジェクト型組織の採用
既存事業との摩擦 既存部門が新規事業に協力しない。資源(人・予算・設備)の配分で対立する。「自分たちの仕事が減る」という不安から抵抗が生まれる。 既存事業部門と新規事業が同じ組織内にあり、評価・報酬の軸が異なることで利害対立が生じる 新規事業を既存組織から分離する・評価軸を整合させる・トップが変革の意図を明確に発信する
3つの課題は与件文の中で同時に描かれることがあります。設問の字数制限に合わせて「与件文で最も強調されている課題1〜2つに絞って対策を記述する」ことが実戦的な対応です。全部書こうとすると論点が散漫になり、採点者に伝わりにくくなります。

設問でよく問われる「新規事業立ち上げの組織対応策」の型

新規事業の組織対応として試験で問われる施策には、主に3つの型があります。与件文に描かれた事業の規模・リスク・スピード感を見て使い分けることが重要です。

TYPE 01 — 分離型
専任チームの設置
新規事業専従のチームを既存部門から切り離して設ける。既存業務との干渉を避け、スピード感のある意思決定を可能にする。与件文に「既存部門との摩擦」「動きが遅い」があれば有効。責任者への権限委譲とセットで書くことが重要。
TYPE 02 — 独立型
社内ベンチャーの設立
新規事業を既存組織から実質的に独立させた小会社・分社組織として運営する。失敗のリスクを既存事業から隔離しつつ、起業家精神を持った担当者に高い自律性を与える。大胆な多角化・異業種参入の場面で有効。独自の評価軸と報酬体系の設計が前提になる。
TYPE 03 — 横断型
タスクフォース(TF)の設置
複数部門から人材を集めた期間限定の横断チームを組成する。新規事業の初期探索・市場調査・試行段階に向いている。固定的な組織変更をせずに機動的に動ける点が強み。既存部門との兼務になる場合は役割・優先順位を明確化しないと機能不全に陥りやすい。
3つの型は「どれが正解か」ではなく、「与件文の企業規模・新規事業の性格・既存組織との関係」に照らして選ぶものです。「専任チームを設置し、担当者に権限を委譲して迅速な意思決定を可能にする」のように、型の名称+理由の形で書くと論理が明確になります。
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TFと専任チームの違いがずっと曖昧でした。「TFは期間限定・横断型で初期探索向け、専任チームは継続的な実行フェーズ向け」と整理したら、与件文を読んで判断できるようになりました。事業のフェーズをまず見ること——これが使い分けの入口です。

既存事業と新規事業の「カニバリゼーション」問題と対処法

カニバリゼーション(共食い)とは、新規事業が既存事業の顧客・売上・資源を侵食する現象です。事例Iでは「既存事業と新規事業の共存をどう設計するか」という問いとして出てきます。問題の構造と対処法を整理します。

問題 01 — 顧客の流出
新規事業の顧客が既存事業から奪われ、既存事業の売上が減少する。「同じ会社の別サービスに乗り換えられる」という構造。
対処法
ターゲット・価格帯・チャネルを意図的に差別化・住み分けする。既存事業と新規事業で顧客セグメントが重ならないようにポジショニングを設計する。
問題 02 — 資源の奪い合い
人材・設備・予算を新規事業に投入するほど既存事業が手薄になる。特に中小企業では経営資源が希少なため、トレードオフが顕著に表れる。
対処法
経営資源の配分優先度を明示する。既存事業の自動化・効率化によって余力を生み出し、その余力を新規事業に充当するという論理で書くと整合性が高い。
問題 03 — 組織内のモチベーション低下
既存事業担当者が「新規事業ばかりが優遇される」と感じ、士気が下がる。新規事業担当者も「支援が得られない」と孤立感を持つ。
対処法
全社共通のビジョン・戦略の方向性を丁寧に共有する。既存事業の貢献が会社全体にとって重要であると経営トップが明言し、評価軸を整合させる。
カニバリゼーションを完全に防ぐことは難しいため、解答では「どう最小化するか」「どう共存を設計するか」という視点で書くことが重要です。「分離・差別化・ビジョン共有」の3軸を軸にしておくと、与件文に応じて組み合わせを調整しやすくなります。

キーワード集

新規事業開発・多角化への組織対応の設問で使いやすいキーワードを15個まとめました。与件文の根拠と結びつけた文脈で使うことで、採点者に伝わる解答になります。

専任チームの設置 権限委譲 事業の分離・独立 タスクフォース 多角化リスクの管理 社内ベンチャー 経営資源の配分 カニバリゼーションの回避 ターゲットの住み分け 自律的な意思決定 ビジョンの共有 評価軸の整合 既存事業との相乗効果 段階的な展開 スピード重視の体制設計
ハイライトのキーワードは特に使用頻度が高いものです。ただし、キーワードだけを並べた解答は得点になりません。「与件文のどの問題に対して、この施策を行うのか」という理由の論理を常に添えてください。

まとめ

新規事業開発・多角化への組織対応テーマで得点するために、押さえておきたいポイントをチェックリストにまとめました。

  • 与件文で企業がアンゾフの成長マトリクスのどの象限を目指しているかを先に特定する
  • 組織課題(人員配置・権限設計・摩擦)のうち与件文で描かれているものに絞って対策を記述する
  • 専任チーム・社内ベンチャー・TFの3型は「事業のフェーズと規模」で使い分ける
  • カニバリゼーションは「防ぐ」ではなく「住み分け・分離・ビジョン共有で最小化する」という視点で書く
  • 施策の名称を書いたら必ず「なぜその施策が与件文の企業に有効か」の理由を添える
U のメモ
多角化の設問を見るたびに「専任チームを設置し権限を委譲する」と書いていた時期がありました。それが間違いとは言えないけれど、「なぜこの企業には専任チームが必要なのか」という与件文との接続がないと、どこかふわっとした答案になってしまいます。アンゾフのマトリクスで象限を特定してから組織対応を考えるという順番を身につけてから、解答の骨格が安定してきました。戦略が先、組織はその手段——この順番を忘れないようにしています。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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