経営革新計画の基礎(中小企業等経営強化法) | 中小企業診断士1次試験 中小企業経営・政策
「経営革新計画と経営改善計画って何が違うの?」——政策科目の選択肢でいつも迷っていました。名前は似ていますが、目的も対象も支援機関もまったく別物だと気づいてから、ようやく整理できた気がします。
経営革新計画は「新しいことに挑戦する中小企業を、国や都道府県が認定して支援する制度」です。根拠法は中小企業等経営強化法(2016年施行)。この制度が独特なのは、「新しいことに挑戦する」という意欲だけでなく、具体的な数値目標とその達成計画を国・都道府県に承認してもらう点にあります。試験では4つの目標指標・計画期間・数値目標・認定後の支援措置が繰り返し問われます。
目次
経営革新計画の根拠法と制度の歴史的背景
もし経営革新計画という制度がなかったとしたら——「新規事業に挑戦したいが、実績がなくて銀行が貸してくれない」「革新的な取組をしているのに、外部から評価してもらえない」という中小企業が多く生まれていたはずです。その空白を埋めるために設計された制度が経営革新計画です。
4
つの指標
付加価値額・一人当たり・給与・経常利益
法律の変遷——どう統合されてきたか
中小企業経営革新支援法(1999年):経営革新計画の初期の根拠法
↓ 2012年 中小企業経営力強化支援法が施行
↓ 2016年 中小企業等経営強化法が施行。中小企業経営革新支援法・中小企業経営力強化支援法を統合・整理
試験では「現行法が中小企業等経営強化法」であることを押さえます。
4つの目標指標——何を達成する計画なのか
経営革新計画では、次の4つの指標のうちいずれか(または組み合わせ)で目標を設定します。単なる「計画書」ではなく、数値目標を明確にする点が特徴です。
INDICATOR 01
付加価値額
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費(粗付加価値)。企業が新たに生み出した価値の総額を表します。
目標:年率3%以上の向上
INDICATOR 02
一人当たり付加価値額(労働生産性)
付加価値額 ÷ 従業員数。人員規模にかかわらず、一人ひとりの生産性を表します。
目標:年率3%以上の向上
INDICATOR 03
給与支払総額
全従業員への給与の合計額。従業員への分配の拡大という観点から設定されています。
目標:年率1.5%以上の向上
INDICATOR 04
経常利益
本業+財務活動による利益。収益性の向上を表します。
目標:年率3%以上の向上(または黒字転換)
数値目標は「年率」であることに注意
「計画期間全体で3%以上」ではなく、「毎年3%以上の伸び率」が求められます。3年計画なら3年後に約9%以上(複利計算)、5年計画なら5年後に約16%以上の向上が目標値になります。
| 指標 | 年率目標 | 計算の対象 |
| 付加価値額 | 3%以上向上 | 営業利益+人件費+減価償却費 |
| 一人当たり付加価値額 | 3%以上向上 | 付加価値額÷従業員数 |
| 給与支払総額 | 1.5%以上向上 | 全従業員への給与合計 |
| 経常利益 | 3%以上向上(または黒字転換) | 税引前経常利益 |
計画期間と申請の流れ
計画書の作成
「新規事業活動」の内容と4指標の数値目標を具体的に記述します。計画期間は3年・4年・5年から選択します。
認定機関に申請・相談
経営革新計画は都道府県知事または国(経済産業大臣)が認定機関です。規模・内容によって申請先が変わります。
審査・認定
計画の新規性・目標の妥当性・実施体制などが審査されます。認定されると「経営革新計画認定企業」として証明されます。
認定後——各種支援措置の活用
政府系金融機関の特例融資・信用保証の特例・販路開拓コーディネート事業などの支援を受けられます。
認定後の支援措置——何が受けられるのか
政府系金融機関の特例融資
日本政策金融公庫・商工中金から、通常よりも低い金利での融資が受けられます。挑戦的な事業計画でも融資を受けやすくなります。
信用保証の特例
信用保証協会の保証枠の拡大や、保証料率の優遇が受けられます。民間金融機関からの借入れにも活用できます。
販路開拓コーディネート
中小企業基盤整備機構が、新事業の販路開拓をコーディネートします。展示会への出展や販売先の紹介なども支援します。
その他の特例
公共調達における優遇・国有財産の貸付制度・証券化支援など、事業の性質に応じたメニューが用意されています。
経営革新計画 vs 経営改善計画——混同しやすい2つの整理
名前が似ているために、試験の選択肢でよく引っかかる2つの制度を対比して整理します。
一言で区別するポイント
経営革新計画 = 「前向きな挑戦を国が後押しする」(健全企業向け)
経営改善計画 = 「ピンチの企業を協議会が支える」(困難企業向け)
「革新 = 前向き、改善 = 立て直し」という大まかなイメージを先に持ってから細部を覚えると、選択肢の中で「この制度は困難企業向けだから、革新計画の説明ではない」とすぐに判断できるようになりました。
日常の場面で考えてみると——新店舗オープンの挑戦
地方の小さな蕎麦屋を経営するAさんが、「テイクアウト専門の新業態を始めたい」と考えています。しかし銀行には「実績がない新事業への融資はリスクが高い」と言われてしまいました。
経営革新計画を活用すると
テイクアウト専門業態という「新規事業活動」に対し、3年後の付加価値額目標(年率3%向上)を計画書に記載して都道府県に申請します。認定されれば、日本政策金融公庫からの特例融資を受けやすくなります。
なぜ「数値目標」が必要なのか
「何となく頑張ります」では第三者が評価できません。具体的な指標と数字を示すことで、計画の実現可能性を公的に審査・承認できる仕組みになっています。融資する側も「公的に認定された計画」として安心して支援できます。
試験対策のポイントを整理する
POINT 01
4指標と年率目標を数字で覚える
付加価値額(年3%以上)・一人当たり付加価値額(年3%以上)・給与支払総額(年1.5%以上)・経常利益(年3%以上)。給与だけ1.5%と低い点がひっかかりポイントです。
POINT 02
計画期間は3〜5年
経営改善計画(10年以内)や事業再生計画との混同に注意。経営革新計画は3年・4年・5年のいずれかです。
POINT 03
認定機関は都道府県知事 or 国
認定は都道府県知事が窓口(全国的なものは経済産業大臣)。市町村や商工会議所は認定機関ではありません。
POINT 04
現行法は中小企業等経営強化法(2016年)
1999年の旧法・2012年の中間法から現在の法律に統合されています。「旧法の名前が正しい」という引っかけが出ることがあります。
よくある質問
Q. 経営革新計画の「新規事業活動」とはどんなものが対象ですか?
法律では「新商品の開発または生産」「新役務の開発または提供」「商品の新たな生産・販売方式の導入」「役務の新たな提供方式の導入」「その他の新たな事業活動」の5類型が挙げられています。業界内で初めて取り組むものであれば、既存技術の組み合わせでも対象になります。
Q. 経営革新計画と経営力向上計画の違いは何ですか?
経営力向上計画も同じ中小企業等経営強化法に基づく制度ですが、目的が異なります。経営革新計画は「新規事業への挑戦による成長」が目的で、経営力向上計画は「既存事業の人材育成・IT活用・設備投資などによる生産性向上」が目的です。試験では両方の目的の違いが問われることがあります。
Q. 経営革新計画の認定は何社くらい受けているのですか?
制度開始から年間数千件の認定がなされており、累計では数十万件に達しています。製造業から飲食業まで幅広い業種で活用されています。診断士が中小企業を支援する際に計画策定を支援する場面も多く、実務でも重要な制度です。
Q. 計画の目標を達成できなかった場合はどうなりますか?
未達成だからといって即座に罰則や融資の回収があるわけではありませんが、フォローアップが行われます。目標未達の場合は計画内容を見直し、必要に応じて再申請することになります。試験では「目標未達成 = 直ちに融資回収」という誤りの選択肢が出ることがあるので注意が必要です。
Q. 付加価値額の計算式はなぜ「営業利益+人件費+減価償却費」なのですか?
付加価値額は「企業が新たに生み出した価値」を表します。人件費(従業員への分配)+減価償却費(設備投資の回収)+営業利益(企業への残り分)を合算することで、「誰かに分配された価値の総量」として計算できます。この計算式は経営革新計画固有のもので、GDPの計算方法(支出面)と考え方が似ています。
政策科目は覚えることが多くて最初は苦手でしたが、「どんな企業を対象にした制度なのか」というターゲットを先に整理すると、他の制度との混同が減りました。
経営革新計画は「元気な企業がもっと挑戦できるよう後押しする」制度です。一方で経営改善計画は「苦しい企業を救う」制度。この対比のイメージが頭にあると、選択肢を読んだときにすぐ引っかかりを感じられます。
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この記事を書いた人
中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。