U過去問を解いていて、「36協定の届出が必要かどうか」という問いに手が止まりました。締結だけでよいのか、届出まで必要なのか——どちらも正しそうで、確信が持てなかったのです。それをきっかけに労働関連法規を一度きちんと整理してみることにしました。数値が多い分野ですが、体系を先に押さえてから数字を埋めていくと、かなりすっきりと見えてきます。
労働関連法規は、試験において企業経営理論・経営法務の両科目にまたがって出題される分野です。個別の数値(割増率・継続勤務年数など)に目が向きがちですが、まず「どの法律が何を規律しているか」という体系を整理すると、細かい規定の意味が見えやすくなります。このページでは、労働基準法・労働契約法・労働三法を一気に整理していきます。
労働法の全体像
労働法は大きく「個別的労働関係法」と「集団的労働関係法」の2つに分類されます。試験では個別的労働関係法——とりわけ労働基準法の数値規定——が中心的に問われます。
- 労働基準法(最低基準の強行的設定)
- 労働契約法(契約ルール・無期転換)
- 最低賃金法・労働安全衛生法 など
試験で最も頻出の領域
- 労働組合法(団結権・団体交渉権・不当労働行為)
- 労働関係調整法(争議の調整・あっせん)
労働三法の残り2法
労基法・労契法
労基+労組+労調
労組法・労調法
労働基準法の主要規定
労働基準法は、労働条件の最低基準を強行法規として定めるものです。当事者間の合意があっても、この基準を下回る条件は無効となります。試験では数値の正確な暗記が問われます。
労働時間・休憩・休日
| 区分 | 規定内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 法定労働時間 | 1日8時間・週40時間 | 原則(特例あり) |
| 時間外労働 | 36協定の締結+労基署への届出が必要 | 協定なしの残業は違法 |
| 休憩 | 6時間超→45分 / 8時間超→1時間 | 労働時間の途中に付与 |
| 法定休日 | 毎週少なくとも1日(または4週4日) | 曜日の指定は不要 |
割増賃金率(視覚化)
年次有給休暇の付与条件
数値まとめカード(暗記用)
試験で問われやすい数値を一覧で整理しました。解答の際は「単位」まで正確に押さえておくことが重要です。



割増率の「25・35・50」という数字は、そのまま並べると覚えにくいのですが、「時間外は最低ライン25%、休日は少し上がって35%、月60時間を超えるとさらに上がって50%」という順番で押さえると、試験中に混乱しにくくなりました。深夜の25%は単独でも重複でも同じ率なので、加算で対応できます。
労働契約法の主要規定
労働契約法は2008年に制定された比較的新しい法律で、労働契約の成立・変更・終了に関する基本ルールを定めています。特に有期労働契約の無期転換ルールは試験頻出です。
- 労働契約は労使合意によって成立・変更
- 就業規則は合理的内容であれば労働条件を規律
- 就業規則を下回る個別契約の部分は無効
- 解雇は客観的合理的理由+社会通念上の相当性が必要
- 整理解雇は4要件(4要素)での判断
- 雇い止めには雇い止め法理が類推適用
無期転換ルール(2013年施行)のポイント
労働三法(集団的労働関係法)
労働三法のうち、集団的労働関係を規律するのが労働組合法と労働関係調整法です。試験では不当労働行為の種類が問われることがあります。
- 労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権(労働三権)を保護
- 使用者による不当労働行為を禁止
- 労働委員会による救済制度
- あっせん・調停・仲裁の3種類の調整手続き
- 公益事業の争議行為には10日前予告が必要
- 労働委員会が手続きを担当
不当労働行為の主な類型(労組法7条)
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 不利益取扱い | 組合員であること・組合活動を理由とした解雇・降格・減給など |
| 団体交渉拒否 | 正当な理由なく団体交渉を拒否または無視すること |
| 支配介入 | 組合の結成・運営に支配または介入すること |
| 黄犬契約 | 雇用条件として「組合に加入しない」等を約束させること |
| 経費援助 | 組合の運営費の一部を負担するなど財政的に援助すること(一定の例外あり) |
近年の法改正ポイント
2019年施行の働き方改革関連法は、労働基準法をはじめ複数の法律を一括改正した大きな変更です。試験でも改正内容が問われる場合があります。
法定労働時間・割増賃金の数値まとめ
| 区分 | 基準・条件 | 割増率 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 時間外労働(通常) | 1日8h・週40hを超えた労働 | 25%以上 | 36協定の締結+届出が前提 |
| 時間外労働(長時間) | 月60時間を超えた時間外 | 50%以上 | 中小企業は2023年4月から適用 |
| 休日労働 | 法定休日(週1日)の労働 | 35%以上 | 時間外割増との重複なし |
| 深夜労働 | 午後10時〜午前5時の労働 | 25%以上 | 他の割増との重複適用あり |
| 時間外+深夜 | 時間外かつ深夜にまたがる | 50%以上 | 25+25の加算 |
| 休日+深夜 | 法定休日かつ深夜 | 60%以上 | 35+25の加算 |
解雇規制の数値まとめ
| 区分 | 内容 | 例外・備考 |
|---|---|---|
| 解雇予告 | 少なくとも30日前に予告 | 30日分の平均賃金支払いで即時解雇可 |
| 解雇予告なし | 天災・故意の事業妨害等で労基署の認定を受けた場合 | 即時解雇が認められる例外 |
| 解雇制限期間 | 業務上の負傷・疾病の療養期間中+その後30日間 | 産前産後の女性も同様 |
カフェオーナーの視点で考えてみると
法律の条文を読んでいるだけでは数値が頭に入りにくいものです。小さなカフェを開業したAさんを例に、実際の場面に当てはめてみます。
【設定】個人経営のカフェ。アルバイト1名を週5日・1日8時間で雇用中。
試験での頻出ポイント
過去の出題傾向から、特に注意が必要なポイントをまとめました。数値と条件を「セット」で押さえることが正確な解答につながります。
- 36協定は「締結」だけでなく「届出」まで必要。締結のみでは時間外労働を命じることはできない。
- 無期転換ルールの「5年」。5年経過で自動転換ではなく、労働者の「申込み」によって成立する。
- 解雇予告は「30日前」または「30日分の平均賃金」。日数と賃金の両方の選択肢が選べる。
- 割増率の数値は「25 / 35 / 50」。月60時間超の50%は2023年から中小企業にも適用されている。
- 年次有給休暇の年5日取得義務。使用者が時季を指定して取得させる義務(2019年改正)。
混同しやすい:労基法と労契法の役割の違い
| 観点 | 労働基準法 | 労働契約法 |
|---|---|---|
| 制定年 | 1947年 | 2008年 |
| 目的 | 最低基準の強行的設定 | 契約ルールの民事的整備 |
| 罰則 | あり(刑事罰) | なし(民事的効力のみ) |
| 主な内容 | 労働時間・賃金・解雇予告など数値規制 | 契約の成立・変更・無期転換・雇い止め |
過去問で確認する
- ア 使用者は、労働者が1日に6時間を超えて労働した場合、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない。
- イ 使用者は、労働者に毎週少なくとも2日の休日を与えなければならない。
- ウ 使用者は、法定時間を超えた時間外労働をさせるには、労働組合または労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結し、これを労働基準監督署に届け出る必要がある。
- エ 使用者は、継続勤務6ヶ月・出勤率80%以上の労働者に対し、少なくとも10日間の年次有給休暇を付与しなければならないが、これはパートタイム労働者には適用されない。
ア:6時間超は45分、8時間超で1時間が正しい。
イ:法定休日は週1日(または4週4日)。週2日は法定要件ではありません。
エ:年次有給休暇の付与規定はパートタイム労働者にも適用されます(比例付与あり)。
- ア 有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、自動的に無期労働契約に転換される。
- イ 無期転換の申込みは、有期契約期間が満了した後に行う必要がある。
- ウ 無期転換を申し込んだ場合、使用者の同意がなければ無期労働契約は成立しない。
- エ 有期労働契約が通算5年を超えた後、労働者が無期転換の申込みをした場合、使用者は承諾したものとみなされ、無期労働契約が成立する。
ア:自動転換ではなく労働者の申込みが必要。
イ:申込みは有期契約期間中でも可能です。
ウ:使用者の同意は不要。これが無期転換ルールの核心です。



労基法の数値は暗記必須ですが、「丸暗記」よりも「なぜその数値なのか」という文脈と結びつけると定着しやすいと感じています。36協定の「締結+届出」・無期転換の「5年・申込み制」・割増率の「25・35・50」——この3点セットが軸になります。関連する問題に触れるたびに、少しずつ精度が上がってきました。









