U過去問を解いていて「民事再生と会社更生、どっちが管財人を選任するんだっけ……」と手が止まりました。名前はわかっていても、細部になると混乱してしまって。整理してみると、清算型か再建型か・経営者が続投できるかどうか、この2軸で驚くほどすっきり分類できました。
(清算型・再建型)
(破産・民再・更生)
(特別清算含む)
倒産法制の全体像
倒産手続きは大きく「清算型」と「再建型」に分かれます。清算型は財産を換価して債権者に配分し、法人であれば消滅します。再建型は事業の継続を目指し、経営を立て直すことが目的です。
- 財産を換価し債権者へ配分
- 法人は手続き終了後に消滅
- 個人は免責制度により債務から解放
- 代表手続き: 破産・特別清算
- 再建計画を策定し債権者の同意を得る
- 法人は存続(解散しない)
- 雇用・取引先の維持を図る
- 代表手続き: 民事再生・会社更生
破産 / 特別清算
民事再生 / 会社更生
破産(清算型)
民事再生(再建型)
会社更生(再建型)
3手続きの比較テーブル
| 比較項目 | 破産 | 民事再生 | 会社更生 |
|---|---|---|---|
| 手続きの分類 | 清算型 | 再建型 | 再建型 |
| 根拠法 | 破産法 | 民事再生法 | 会社更生法 |
| 対象 | 法人・個人(どちらも可) | 法人・個人(個人再生含む) | 株式会社のみ |
| 申立権者 | 債務者本人 債権者も可 |
債務者本人 債権者も可 |
債務者本人 一定の債権者・株主 |
| 経営者の地位 | 財産管理権を喪失 (管財人が管理) |
経営者続投(DIP型) 監督委員が監視 |
管財人が全権掌握 経営者原則排除 |
| 担保権の扱い | 別除権 (手続き外で弁済) |
別除権 (手続き外で弁済) |
別除権なし (手続きに組み込まれる) |
| 計画可決要件 | 配当計画を管財人が策定 (多数決不要) |
頭数過半数 かつ金額の過半数 |
各グループで 所定割合(担保権者3/4以上等) |
| 主な利用対象 | 全規模・個人 | 中小企業が中心 | 大企業・上場企業 |
| 個人免責 | 免責制度あり | なし(個人再生は残債を圧縮) | 対象外(法人のみ) |
特別清算(補足)
特別清算は会社法に基づく清算手続きであり、通常の清算では完了できない場合に利用します。
対象: 株式会社のみ(解散後に清算手続き中の会社)
申立権者: 清算株式会社、清算人、監査役、債権者、株主
手続き主体: 清算人が中心(裁判所の関与はあるが管財人は選任されない)
特徴: 通常清算より裁判所の監督が強い。協定(債権者集会での決議)または個別弁済契約によって進める
破産とよく比較されますが、特別清算はすでに解散した会社が対象で、破産管財人ではなく清算人が手続きを進める点が異なります。
身近な場面で考えてみると
3つの手続きの選択が実際にどう分かれるかを、飲食チェーンの経営危機を例に考えてみます。
30店舗の内装・設備を売却し、食材取引先・リース会社・銀行への配当に充てる。
中小企業の飲食チェーンが経営危機に陥った際に最もよく使われるのがこのケースです。
日本航空(JAL)の再建がこの典型例として知られています。
試験での頻出ポイント
- 別除権の有無: 破産と民事再生では担保権者が別除権として手続き外で優先弁済を受けられますが、会社更生では別除権は認められません。会社更生だけが例外であることを意識しておきましょう。
- 管財人が選任されるのは: 破産(破産管財人)と会社更生(更生管財人)です。民事再生では管財人は選任されず、経営者が続投します(監督委員が監視する)。混同しやすいので要注意です。
- 個人に免責があるのは破産だけ: 民事再生の個人再生では債務が圧縮されますが、完全に免除されるわけではありません。免責(残債務の免除)という概念があるのは破産の個人のみです。
- 会社更生は株式会社のみ: 持分会社(合名・合資・合同会社)や個人は利用できません。「中小企業でも会社更生を使える」は誤りです。実際の中小企業は民事再生を利用するケースが大半です。
- 債権者申立ができるのは破産・民事再生: 「債権者が申立できるのは破産だけ」という思い込みに注意。民事再生でも債権者申立は可能です。会社更生は一定の要件を満たす債権者や株主に限られます。
管財人あり: 破産・会社更生 / 管財人なし: 民事再生(監督委員のみ)
個人免責: 破産のみ / 株式会社のみ: 会社更生・特別清算
中小企業が多い: 民事再生 / 大企業向け: 会社更生
過去問で確認する
- ア 破産手続きにおいて、担保権者は破産手続きによらなければ担保物から弁済を受けることができない。
- イ 民事再生手続きでは、原則として経営者が事業を継続しながら再建計画を策定することができる。
- ウ 会社更生手続きは、株式会社のほか合名会社・合資会社も対象となる。
- エ 会社更生手続きにおいて、担保権者は別除権として手続きによらずに担保物から優先弁済を受けることができる。
ア: 誤り。破産手続きにおいて担保権者は別除権を持ち、破産手続きによらずに担保物から優先弁済を受けられます。
イ: 正しい。民事再生はDIP型(Debtor In Possession)であり、経営者続投が原則です。
ウ: 誤り。会社更生は株式会社のみが対象です。持分会社は対象外です。
エ: 誤り。会社更生では担保権者も手続きに組み込まれ、別除権は認められません。
- ア 破産手続きでは管財人は選任されず、債務者本人が財産を管理する。
- イ 民事再生手続きでは更生管財人が選任され、経営者は原則として退任する。
- ウ 会社更生手続きでは担保権者も更生手続きに組み込まれ、別除権は認められない。
- エ 民事再生手続きでは担保権者に別除権は認められず、手続き内で処理される。
ア: 誤り。破産では破産管財人が選任されます。
イ: 誤り。管財人(更生管財人)が選任され経営権を掌握するのは会社更生です。民事再生では経営者が続投します。
ウ: 正しい。会社更生では担保権者も手続きに組み込まれ、別除権はありません。
エ: 誤り。民事再生でも担保権者には別除権が認められます。



清算型か再建型か・経営者が続投できるか・担保権者が別除権を持つかどうか、この3つの視点が整理できると、倒産法制全体がかなりすっきりと見えてきます。会社更生だけ別除権がない点は特に試験で狙われやすいので、しっかり頭に刻んでおきたいところです。
- 倒産手続きは清算型(破産・特別清算)と再建型(民事再生・会社更生)に大別される
- 民事再生は経営者続投(DIP型)・中小企業向け、会社更生は管財人が全権掌握・株式会社かつ大企業向け
- 別除権(担保権者が手続き外で弁済を受ける権利)は破産・民事再生では認められるが、会社更生では認められない
- 個人の免責制度があるのは破産のみ。民事再生の個人再生は債務を圧縮するが免除はしない
- 会社更生は株式会社のみが対象。中小企業や個人は利用できず、民事再生が実質的な選択肢になる









