Uモチベーション理論の名前は聞いたことがある。マズローもハーズバーグも知っている。でも「どれがどの分類で、試験で何を問われるのか」を整理しようとすると、途端に混乱してしまいました。内容理論・プロセス理論の区別から始めて、主要5理論を一気に並べてみたら、ようやく全体の地図が見えてきた気がします。
モチベーション理論は「内容理論(何が動機づけるか)」と「過程理論(どのように動機づけられるか)」の2系統に分かれます。内容理論はマズロー・ハーズバーグ・マクレガー・アルダファー・マクレランド、過程理論はブルーム・アダムス・デシが主要な論者です。企業経営理論の中でも毎年必ず出題される最重要テーマのひとつで、理論の名称・提唱者・分類を正確に対応づけることが求められます。
モチベーション理論の全体マップ
まず全体を俯瞰します。「内容理論」と「過程理論(プロセス理論)」という2つの分類を意識しておくと、個別理論を学んだときに整理しやすくなります。
何が動機づけるか
どう動機づけられるか
マズローの欲求段階説
アブラハム・マズローは、人間の欲求を5つの階層に整理しました。下位の欲求が満たされると、より上位の欲求を求めるようになるという考え方で、組織行動論・人的資源管理の基礎として今でも幅広く参照されています。
下位の欲求が満たされるほど、上位の欲求が行動の動機になっていく
第1〜2段階は「低次欲求」(外的充足)、第3〜5段階は「高次欲求」(内的充足)とも呼ばれます。試験では、各段階の名称・順番と「自己実現欲求は他の欲求と異なり、満たされるほど強くなる(成長欲求)」という特性が問われます。
ハーズバーグの2要因理論
フレデリック・ハーズバーグは、仕事に関する「満足と不満足は、まったく別の要因によって引き起こされる」と主張しました。この理論は管理職が職場改善を考えるうえで今でも参照されており、1次試験では「衛生要因」「動機づけ要因」の概念と、「賃金は衛生要因である」という点が特に問われます。
積極的な満足ややる気を生み出すのは、動機づけ要因のみ。
- 給与・賞与(頻出:賃金は衛生要因)
- 会社の方針・管理体制
- 上司・同僚との人間関係
- 労働条件・作業環境
- 雇用の安定・福利厚生
- 達成感・成し遂げた実感
- 承認・認められること
- 仕事そのものの魅力・面白さ
- 責任を与えられること
- 昇進・成長の機会
マズロー理論との対応関係も試験で問われます。衛生要因は低次欲求(第1〜3段階)に、動機づけ要因は高次欲求(第4〜5段階)に対応するとされています。
| マズロー(欲求段階) | ハーズバーグ(要因分類) | 具体例 |
|---|---|---|
| 第5段階:自己実現 | 動機づけ要因 | 仕事の魅力・成長・創意工夫 |
| 第4段階:承認 | 動機づけ要因 | 達成感・上司からの承認 |
| 第3段階:社会的欲求 | 衛生要因 | 同僚との関係・職場の雰囲気 |
| 第2段階:安全・安定 | 衛生要因 | 労働条件・雇用保障 |
| 第1段階:生理的 | 衛生要因 | 給与(賃金は衛生要因) |



「賃金は衛生要因」という部分が、初めて読んだとき一番驚いた箇所でした。給料を上げればやる気が出ると思いがちですが、ハーズバーグによれば、それは「不満をゼロにする」だけで、積極的なやる気とは別の話なのだそうです。衛生要因を整えることはもちろん大事なのですが、それだけでは満足感は生まれない——この逆説的な視点は、管理職の立場で考えるとき、とても示唆的だと感じています。
マクレガーのX理論・Y理論
ダグラス・マクレガーは、人間の労働意欲についての前提仮定を2種類に分類しました。どちらの仮定を持つかによって、マネジメントスタイルが大きく変わるという考え方です。
- 人は生来怠け者で、できれば働きたくない
- 命令・監視・統制によって管理する必要がある
- 責任を取ることを避け、指示を待つ傾向がある
- アメとムチ(強制・懲罰)によるマネジメントが有効
- 仕事は本来自然なもので、人は進んで働く
- 目標に向かって自己管理・自己統制できる
- 責任を取ろうとし、創意工夫を発揮する
- 参加・権限委譲によるマネジメントが有効
以前、学生時代のアルバイト先で2種類の店長に出会った経験があります。一方は「言われた通りにやれ、それ以上のことはするな」というタイプ。もう一方は「何か気になったことがあったら自分で判断していいよ」というタイプでした。
前者の下では「指示を待っていればいい」という気持ちになり、後者の下では「自分がもっとうまくできることはないか」と自然に考えるようになりました。X理論・Y理論が前提にするのは、まさにこういう管理者の「人間観」の違いなのだと、後から理論を学んで気づきました。
その他の重要理論(アルダファー・マクレランド)
マズロー理論を発展・修正したアルダファーのERG理論と、達成動機に注目したマクレランドの理論も試験での出題実績があります。
マズローと異なり「複数の欲求が同時に存在できる」「上位欲求が満たされないとき、下位欲求がより強くなる(欲求退行)」点が特徴。
達成動機の高い人ほど「難しすぎず簡単すぎない、適度な困難」な課題を好む傾向がある。
| 理論名 | 提唱者 | 分類 | 主なポイント |
|---|---|---|---|
| 欲求段階説 | マズロー | 内容理論 | 5段階の欲求。下位から順に充足。自己実現欲求は成長欲求。 |
| 2要因理論 | ハーズバーグ | 内容理論 | 衛生要因(不満防止)と動機づけ要因(満足増加)は別。賃金は衛生要因。 |
| X理論・Y理論 | マクレガー | 内容理論 | 人間観の違いがマネジメントスタイルを規定する。 |
| ERG理論 | アルダファー | 内容理論 | E(生存)・R(関係)・G(成長)の3欲求。欲求退行あり。 |
| 達成動機理論 | マクレランド | 内容理論 | 達成・権力・親和の3動機。達成動機が高い人は起業家向き。 |
過程理論①:ブルームの期待理論
ビクター・ブルームの期待理論(1964年)は、「人は期待と報酬への魅力を掛け合わせて行動を選ぶ」という考え方です。やる気の強さは3つの認知的評価の積で決まるとされています。



「掛け算なので1つでも0になると全体が0」という部分、試験勉強に当てはめてみると妙に腑に落ちました。どれだけ勉強しても「どうせ評価されない(手段性がゼロ)」と思えた瞬間に、やる気の式全体が崩れてしまう。理論として整理すると、自分の経験と重なる場面が出てきます。
過程理論②:アダムスの公平理論・デシの内発的動機づけ
過程理論には期待理論のほかにも、重要な2つの理論があります。アダムスの公平理論は「他者との比較」に基づく不満の発生を、デシの理論は「内側から湧き出るやる気」の構造を説明します。
スキル・経験
学歴・資格
評価・地位
やりがい
スキル・経験
学歴・資格
評価・地位
やりがい
不公平感を感じたとき、人は次の6つのいずれかで対処しようとするとされています。
- 1 自分の Input を減らす——手を抜く・労力を減らす
- 2 自分の Output を増やそうとする——昇給交渉・待遇改善の要求
- 3 比較相手の Input を歪めて認識する——「あの人はもっと楽をしているはず」
- 4 比較相手の Output を歪めて認識する——「あの人の評価はそれほどでもないはず」
- 5 比較対象を変える——もっと条件が近い人や別の職場と比べ直す
- 6 職場を去る——異動・転職・退職
デシ(Deci)の内発的動機づけ理論は、報酬や賞罰などの「外発的動機づけ」とは対照的な、「内側から湧き出るやる気」の構造を説明します。自律性・有能感・関係性の3要素が充足されることで内発的動機づけが高まるとされています。
過去問で確認する
- ア 給与・賞与の引き上げは、従業員の積極的な満足感を高める動機づけ要因である。
- イ 衛生要因は不満足を取り除くことはできるが、それ自体が積極的な満足や動機づけにはつながらない。
- ウ 動機づけ要因が欠如すると、従業員に強い不満足が生まれる。
- エ マズロー理論の高次欲求は、ハーズバーグ理論の衛生要因に対応する。
- ア 自分の投入量(Input)を減らす。
- イ 自分の成果(Output)を増やすよう働きかける。
- ウ 比較対象を設けず、自分の絶対的な評価基準のみで判断し直す。
- エ 組織を離れる(転職・退職)。
- ア 欲求は必ず低次から高次へと順番に充足される。
- イ 欲求は5段階に明確に分類される。
- ウ 上位の欲求が満たされないとき、下位の欲求への欲求退行が起こる可能性がある。
- エ 自己実現欲求は成長欲求と異なり、欠乏欲求に分類される。



過去問を並べてみると、「理論の核心となる概念(衛生要因・他者比較・欲求退行)」を正確に言えるかどうかを問う問題が多いと感じます。名前だけ覚えるのではなく、「その理論が他と何が違うのか」という差異を意識して整理しておくと、選択肢で迷う場面が減るように思います。
- モチベーション理論は「内容理論(何が)」と「過程理論(どのように)」の2系統に分類される。
- マズロー:5段階の名称と順番を正確に。自己実現欲求は成長欲求(充足されるほど強まる)。批判点としてERGとの差異も押さえる。
- ハーズバーグ:衛生要因は「不満ゼロ」にするだけ。満足を生み出すのは動機づけ要因。賃金は衛生要因。
- マクレガー:X理論(管理型)とY理論(自律型)。状況に応じた使い分けが重要。コンティンジェンシー理論と関連。
- ERG理論(アルダファー):欲求退行の概念がマズローとの最大の違い。3欲求(E・R・G)は同時に存在できる。
- 期待理論(ブルーム):F=E×I×Vの積。1つでも0なら全体が0。期待と手段性の定義を混同しないこと。
- 公平理論(アダムス):絶対額ではなく他者との比較で不満が生まれる。不公平感への対処行動6つを押さえる。
- デシの内発的動機づけ:自律性・有能感・関係性の3要素。アンダーマイニング効果(外的報酬が内発的動機を損なう)も重要。









