モチベーション理論まとめ|マズロー・ハーズバーグ・マクレガー・期待理論を図解で整理

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モチベーション理論の名前は聞いたことがある。マズローもハーズバーグも知っている。でも「どれがどの分類で、試験で何を問われるのか」を整理しようとすると、途端に混乱してしまいました。内容理論・プロセス理論の区別から始めて、主要5理論を一気に並べてみたら、ようやく全体の地図が見えてきた気がします。

モチベーション理論は「内容理論(何が動機づけるか)」と「過程理論(どのように動機づけられるか)」の2系統に分かれます。内容理論はマズロー・ハーズバーグ・マクレガー・アルダファー・マクレランド、過程理論はブルーム・アダムス・デシが主要な論者です。企業経営理論の中でも毎年必ず出題される最重要テーマのひとつで、理論の名称・提唱者・分類を正確に対応づけることが求められます。

目次

モチベーション理論の全体マップ

まず全体を俯瞰します。「内容理論」と「過程理論(プロセス理論)」という2つの分類を意識しておくと、個別理論を学んだときに整理しやすくなります。

内容理論
何が動機づけるか
マズロー欲求5段階説
ハーズバーグ2要因理論
マクレガーX理論・Y理論
アルダファーERG理論
マクレランド達成動機理論
過程理論
どう動機づけられるか
ブルーム期待理論
アダムス公平理論
デシ内発的動機づけ理論
内容理論は「どんな欲求・要因が人を動かすか」に着目。過程理論は「やる気が生まれる仕組みやプロセス」に着目します。試験では分類を問う問題も出るため、この区別は確実に押さえておく必要があります。
CONTENT THEORY — 内容理論
「何が」やる気の源になるか
人がどんな欲求を持っているか、どんな要因が満足・不満足をもたらすかに注目。マズロー・ハーズバーグ・マクレガーが3大論者。
代表理論:欲求段階説、2要因理論、X理論・Y理論、ERG理論、達成動機理論
PROCESS THEORY — 過程理論
「どのように」やる気が形成されるか
やる気が生まれるプロセスや認知的メカニズムに注目。報酬への期待、他者との公平感の比較、内発的な動機などを分析する。
代表理論:期待理論(ブルーム)、公平理論(アダムス)、内発的動機づけ(デシ)

マズローの欲求段階説

アブラハム・マズローは、人間の欲求を5つの階層に整理しました。下位の欲求が満たされると、より上位の欲求を求めるようになるという考え方で、組織行動論・人的資源管理の基礎として今でも幅広く参照されています。

第5段階(最高位) 自己実現の欲求 潜在能力を最大限に発揮したい
第4段階 承認(尊重)の欲求 認められたい・尊重されたい
第3段階 社会的欲求(所属・愛情) 仲間とつながりたい・愛されたい
第2段階 安全・安定の欲求 身の安全・雇用の安定・健康
第1段階(最も基本) 生理的欲求 食事・睡眠・体を休めること

下位の欲求が満たされるほど、上位の欲求が行動の動機になっていく

第1〜2段階は「低次欲求」(外的充足)、第3〜5段階は「高次欲求」(内的充足)とも呼ばれます。試験では、各段階の名称・順番と「自己実現欲求は他の欲求と異なり、満たされるほど強くなる(成長欲求)」という特性が問われます。

診断士試験でのポイント:5段階の名称と順番を正確に記憶すること。「自己実現欲求は欠乏欲求(第1〜4段階)と異なり、充足されるほど強まる成長欲求である」という点も頻出です。また後述のアルダファーERG理論との違い(欲求退行の有無)も問われます。
批判点・補足
マズロー理論は直感的にわかりやすい半面、「欲求が必ず下から順番に満たされるわけではない」「人によって優先順位が異なる」という批判があります。後述のアルダファーのERG理論は、この点を修正した発展版として位置づけられます。試験でも「批判点として何が挙げられるか」という形で問われることがあります。

ハーズバーグの2要因理論

フレデリック・ハーズバーグは、仕事に関する「満足と不満足は、まったく別の要因によって引き起こされる」と主張しました。この理論は管理職が職場改善を考えるうえで今でも参照されており、1次試験では「衛生要因」「動機づけ要因」の概念と、「賃金は衛生要因である」という点が特に問われます。

ハーズバーグ理論の核心
「満足」の反対は「不満足」ではない
「満足がない状態(ゼロ)」である
衛生要因を整えても、満足はゼロより上にはならない。
積極的な満足ややる気を生み出すのは、動機づけ要因のみ。
衛生要因(Hygiene Factor)
不満足を取り除くが、積極的な満足は生まない
  • 給与・賞与(頻出:賃金は衛生要因)
  • 会社の方針・管理体制
  • 上司・同僚との人間関係
  • 労働条件・作業環境
  • 雇用の安定・福利厚生
整えても「満足」は増えない。整えないと「不満」が生まれる。最低条件の維持として機能する。
動機づけ要因(Motivator)
満足を高め、積極的なやる気を生み出す
  • 達成感・成し遂げた実感
  • 承認・認められること
  • 仕事そのものの魅力・面白さ
  • 責任を与えられること
  • 昇進・成長の機会
これが満たされると積極的なやる気と満足感が生まれる。欠如しても強い不満にはなりにくい。

マズロー理論との対応関係も試験で問われます。衛生要因は低次欲求(第1〜3段階)に、動機づけ要因は高次欲求(第4〜5段階)に対応するとされています。

マズロー(欲求段階) ハーズバーグ(要因分類) 具体例
第5段階:自己実現 動機づけ要因 仕事の魅力・成長・創意工夫
第4段階:承認 動機づけ要因 達成感・上司からの承認
第3段階:社会的欲求 衛生要因 同僚との関係・職場の雰囲気
第2段階:安全・安定 衛生要因 労働条件・雇用保障
第1段階:生理的 衛生要因 給与(賃金は衛生要因)
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「賃金は衛生要因」という部分が、初めて読んだとき一番驚いた箇所でした。給料を上げればやる気が出ると思いがちですが、ハーズバーグによれば、それは「不満をゼロにする」だけで、積極的なやる気とは別の話なのだそうです。衛生要因を整えることはもちろん大事なのですが、それだけでは満足感は生まれない——この逆説的な視点は、管理職の立場で考えるとき、とても示唆的だと感じています。

マクレガーのX理論・Y理論

ダグラス・マクレガーは、人間の労働意欲についての前提仮定を2種類に分類しました。どちらの仮定を持つかによって、マネジメントスタイルが大きく変わるという考え方です。

X理論
「人は怠けるもの」という前提
  • 人は生来怠け者で、できれば働きたくない
  • 命令・監視・統制によって管理する必要がある
  • 責任を取ることを避け、指示を待つ傾向がある
  • アメとムチ(強制・懲罰)によるマネジメントが有効
管理型・統制型マネジメント
Y理論
「人は主体的に働けるもの」という前提
  • 仕事は本来自然なもので、人は進んで働く
  • 目標に向かって自己管理・自己統制できる
  • 責任を取ろうとし、創意工夫を発揮する
  • 参加・権限委譲によるマネジメントが有効
自律型・参加型マネジメント
どちらが正しいか
マクレガー自身はY理論を推奨していましたが、実際の職場では状況によって異なります。習熟度が低い段階や緊急対応が必要な場面ではX理論寄りの管理が適切なこともあります。試験では「状況適合的に使い分ける(コンティンジェンシー理論との関連)」という視点が問われることがあります。「Y理論が常に正解」というわけではない点は覚えておくと安心です。
日常の場面で考えてみると
アルバイトのシフト管理で感じたX・Y理論の違い

以前、学生時代のアルバイト先で2種類の店長に出会った経験があります。一方は「言われた通りにやれ、それ以上のことはするな」というタイプ。もう一方は「何か気になったことがあったら自分で判断していいよ」というタイプでした。

前者の下では「指示を待っていればいい」という気持ちになり、後者の下では「自分がもっとうまくできることはないか」と自然に考えるようになりました。X理論・Y理論が前提にするのは、まさにこういう管理者の「人間観」の違いなのだと、後から理論を学んで気づきました。

X理論的な管理の職場
細かいルール・チェックが多い。「言われたこと以外はしない」という雰囲気が自然に生まれてくる。
Y理論的な管理の職場
裁量が大きい。「もっとうまくできないか」という意識が自然に育ちやすい。責任感も伴う。

その他の重要理論(アルダファー・マクレランド)

マズロー理論を発展・修正したアルダファーのERG理論と、達成動機に注目したマクレランドの理論も試験での出題実績があります。

アルダファー(Alderfer)
ERG理論
マズローの5段階を3つに集約。Existence(生存)・Relatedness(関係)・Growth(成長)の3欲求。

マズローと異なり「複数の欲求が同時に存在できる」「上位欲求が満たされないとき、下位欲求がより強くなる(欲求退行)」点が特徴。
欲求退行の概念がマズローにはない点が試験で問われやすい。
マクレランド(McClelland)
達成動機理論
人の動機を達成動機権力動機親和動機の3つで説明。起業家・リーダーは達成動機が高い傾向があるとした。

達成動機の高い人ほど「難しすぎず簡単すぎない、適度な困難」な課題を好む傾向がある。
起業家精神・リーダーシップ論との接続で問われやすい。
理論名 提唱者 分類 主なポイント
欲求段階説 マズロー 内容理論 5段階の欲求。下位から順に充足。自己実現欲求は成長欲求。
2要因理論 ハーズバーグ 内容理論 衛生要因(不満防止)と動機づけ要因(満足増加)は別。賃金は衛生要因。
X理論・Y理論 マクレガー 内容理論 人間観の違いがマネジメントスタイルを規定する。
ERG理論 アルダファー 内容理論 E(生存)・R(関係)・G(成長)の3欲求。欲求退行あり。
達成動機理論 マクレランド 内容理論 達成・権力・親和の3動機。達成動機が高い人は起業家向き。

過程理論①:ブルームの期待理論

ビクター・ブルームの期待理論(1964年)は、「人は期待と報酬への魅力を掛け合わせて行動を選ぶ」という考え方です。やる気の強さは3つの認知的評価の積で決まるとされています。

基本式
モチベーション(F) = 期待(E) × 手段性(I) × 誘意性(V)
3つのうち1つでも0になると全体が0になる(掛け算のため)
FACTOR 01 — 期待(Expectancy)
努力すれば成果が出るという確信
「頑張れば達成できる」という見込み。値は0〜1で表される。スキル不足や目標の高さで低下する。
低下要因:目標が高すぎる・スキル不足・劣悪な作業環境
FACTOR 02 — 手段性(Instrumentality)
成果が報酬につながるという確信
「結果を出せば評価される」という見込み。値は−1〜+1。評価制度への不信で低下する。
低下要因:評価制度への不信・成果と報酬の不連動
FACTOR 03 — 誘意性(Valence)
その報酬に対する魅力の強さ
「その報酬は欲しい」という度合い。値は−1〜+1。0で無関心、マイナスで嫌悪を意味する。
低下要因:報酬への関心がない・むしろ負担に感じる
試験でのポイント:「掛け算なので1つでも0になると全体が0になる」という点が問われます。また「期待(E)=努力→成果の確信」と「手段性(I)=成果→報酬の確信」を混同しないように注意が必要です。選択肢でこの定義が逆になっているひっかけ問題が出やすいとされています。
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「掛け算なので1つでも0になると全体が0」という部分、試験勉強に当てはめてみると妙に腑に落ちました。どれだけ勉強しても「どうせ評価されない(手段性がゼロ)」と思えた瞬間に、やる気の式全体が崩れてしまう。理論として整理すると、自分の経験と重なる場面が出てきます。

過程理論②:アダムスの公平理論・デシの内発的動機づけ

過程理論には期待理論のほかにも、重要な2つの理論があります。アダムスの公平理論は「他者との比較」に基づく不満の発生を、デシの理論は「内側から湧き出るやる気」の構造を説明します。

自分の Input
労力・時間
スキル・経験
学歴・資格
/
自分の Output
給与・昇進
評価・地位
やりがい
比較
他者の Input
労力・時間
スキル・経験
学歴・資格
/
他者の Output
給与・昇進
評価・地位
やりがい

不公平感を感じたとき、人は次の6つのいずれかで対処しようとするとされています。

  • 1 自分の Input を減らす——手を抜く・労力を減らす
  • 2 自分の Output を増やそうとする——昇給交渉・待遇改善の要求
  • 3 比較相手の Input を歪めて認識する——「あの人はもっと楽をしているはず」
  • 4 比較相手の Output を歪めて認識する——「あの人の評価はそれほどでもないはず」
  • 5 比較対象を変える——もっと条件が近い人や別の職場と比べ直す
  • 6 職場を去る——異動・転職・退職
公平理論のポイント:「報酬の絶対額ではなく、他者との比較によって不満が生まれる」という点が核心です。「同期より給与が低い」と感じたときに不満が高まるのは、この理論で説明できます。選択肢では「比較」「投入量と成果の比率」というキーワードが目印になります。

デシ(Deci)の内発的動機づけ理論は、報酬や賞罰などの「外発的動機づけ」とは対照的な、「内側から湧き出るやる気」の構造を説明します。自律性・有能感・関係性の3要素が充足されることで内発的動機づけが高まるとされています。

自律性(Autonomy)
自分の意思で行動を選べているという感覚。他者から強制・統制されていないと感じること。
有能感(Competence)
自分が有能であるという感覚。課題に対処できる・成長しているという実感から生まれる。
関係性(Relatedness)
他者とのつながりを感じるという感覚。孤立せず、受け入れられているという実感。
アンダーマイニング効果
デシが提唱したもう1つの重要概念が「アンダーマイニング効果」です。もともと内発的動機づけが高かった活動に対して、外部から報酬を与えると、報酬がなくなったときにモチベーションが以前より低下してしまう現象です。過度な外発的報酬(物質的報酬など)が内発的動機づけを損なう可能性があるという点は試験でも取り上げられます。

過去問で確認する

企業経営理論 平成26年度 第19問|ハーズバーグ理論
ハーズバーグの2要因理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 給与・賞与の引き上げは、従業員の積極的な満足感を高める動機づけ要因である。
  • イ 衛生要因は不満足を取り除くことはできるが、それ自体が積極的な満足や動機づけにはつながらない。
  • ウ 動機づけ要因が欠如すると、従業員に強い不満足が生まれる。
  • エ マズロー理論の高次欲求は、ハーズバーグ理論の衛生要因に対応する。
解答・解説
正解はイ。衛生要因(給与・労働条件など)は不満足を防ぐことはできますが、積極的な満足は生み出しません。アは誤りで、給与は衛生要因です。ウは誤りで、動機づけ要因が欠如しても強い不満足にはなりにくいとされます。エは逆で、高次欲求は動機づけ要因に対応します。
企業経営理論 平成29年度 第16問|公平理論
アダムスの公平理論において、不公平感が生じたときの対処行動として、最も不適切なものはどれか。
  • ア 自分の投入量(Input)を減らす。
  • イ 自分の成果(Output)を増やすよう働きかける。
  • ウ 比較対象を設けず、自分の絶対的な評価基準のみで判断し直す。
  • エ 組織を離れる(転職・退職)。
解答・解説
正解はウ。公平理論では、不公平感は「他者との比較」によって生まれます。「比較対象を設けない」という行動は理論の枠外にあたります。対処行動6つ(Input削減・Output増加・他者InputやOutputの認知的歪め・比較対象の変更・離職)はすべて比較を前提にしています。
企業経営理論 令和4年度 第20問|ERG理論
マズローの欲求5段階説とアルダファーのERG理論を比較したとき、ERG理論の特徴として正しいものはどれか。
  • ア 欲求は必ず低次から高次へと順番に充足される。
  • イ 欲求は5段階に明確に分類される。
  • ウ 上位の欲求が満たされないとき、下位の欲求への欲求退行が起こる可能性がある。
  • エ 自己実現欲求は成長欲求と異なり、欠乏欲求に分類される。
解答・解説
正解はウ。ERG理論ではマズローと異なり「欲求退行」の概念が含まれます。成長(G)欲求が満たされないとき、関係(R)欲求をより強く求めるようになることがあるとされます。アはマズロー理論の考え方。ERGでは複数の欲求が同時に存在できます。
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過去問を並べてみると、「理論の核心となる概念(衛生要因・他者比較・欲求退行)」を正確に言えるかどうかを問う問題が多いと感じます。名前だけ覚えるのではなく、「その理論が他と何が違うのか」という差異を意識して整理しておくと、選択肢で迷う場面が減るように思います。

  • モチベーション理論は「内容理論(何が)」と「過程理論(どのように)」の2系統に分類される。
  • マズロー:5段階の名称と順番を正確に。自己実現欲求は成長欲求(充足されるほど強まる)。批判点としてERGとの差異も押さえる。
  • ハーズバーグ:衛生要因は「不満ゼロ」にするだけ。満足を生み出すのは動機づけ要因。賃金は衛生要因。
  • マクレガー:X理論(管理型)とY理論(自律型)。状況に応じた使い分けが重要。コンティンジェンシー理論と関連。
  • ERG理論(アルダファー):欲求退行の概念がマズローとの最大の違い。3欲求(E・R・G)は同時に存在できる。
  • 期待理論(ブルーム):F=E×I×Vの積。1つでも0なら全体が0。期待と手段性の定義を混同しないこと。
  • 公平理論(アダムス):絶対額ではなく他者との比較で不満が生まれる。不公平感への対処行動6つを押さえる。
  • デシの内発的動機づけ:自律性・有能感・関係性の3要素。アンダーマイニング効果(外的報酬が内発的動機を損なう)も重要。
U のメモ
理論の名前を覚えることより、「この理論が他と何が違うのか」という差異を意識して整理するほうが、試験で役に立つと感じています。特にマズローとERGの「欲求退行の有無」、ハーズバーグの「衛生要因は満足を生まない」、期待理論の「積なので1つでも0なら全体が0」——これらは問題文の選択肢でよく見かけるひっかけパターンです。自分の言葉で各理論の核心を1行で言えるようになると、応用問題にも対処しやすくなるようです。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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