U過去問で「自己株式を取得した」という問題を解いていて、B/Sのどこに表示するんだろう?と迷いました。資産でも負債でもない、純資産のマイナスというのが最初は不思議でしたが、仕組みを整理したらすっきりしました。
目次
自己株式とは
自己株式とは、会社が発行した後に市場等から買い戻した自社の株式のことです。「金庫株」とも呼ばれます。
取得の目的
株価維持・安定化
敵対的買収への対抗
ストックオプション付与
EPS(1株当たり利益)向上
敵対的買収への対抗
ストックオプション付与
EPS(1株当たり利益)向上
B/S上の表示
純資産の部に
マイナス(控除)として表示
資産でも負債でもない
マイナス(控除)として表示
資産でも負債でもない
議決権・配当
自己株式は議決権なし
配当受取も不可
保有中は権利が停止
配当受取も不可
保有中は権利が停止
B/Sへの表示方法
自己株式は純資産の部に「△(マイナス)」として記載します。これは「株主から集めた資金を株主に返した」という性質を反映しています。
貸借対照表(純資産の部・抜粋)
資本金
XXX円
資本剰余金
XXX円
利益剰余金
XXX円
自己株式
← 純資産のマイナス(控除)項目
△ XXX円
純資産合計
XXX円(減少)
なぜ純資産のマイナスか
自己株式を取得すると、株主への「資本の返還」と同じ経済的効果があります。株主から集めたお金を株主に返すのだから、純資産が減る。これが「純資産のマイナス」として表示する理由です。
また、自己株式は「会社が自分自身を所有する」ことになるため、資産とは認められません(資産計上は禁止)。
また、自己株式は「会社が自分自身を所有する」ことになるため、資産とは認められません(資産計上は禁止)。
自己株式の取得・処分・消却の仕訳
取得
自己株式の取得
市場から自社株を1株200円×100株(合計20,000円)で購入した場合:
自己株式は純資産の控除項目。取得原価で記帳。
(借)自己株式 20,000 / (貸)現金 20,000自己株式は純資産の控除項目。取得原価で記帳。
処分
自己株式の処分(売却)
取得原価200円の自己株式を250円で売却した場合(差額50円は自己株式処分差益):
売却益は「その他資本剰余金」へ。損益(P/L)には計上しない点が重要。
(借)現金 25,000 / (貸)自己株式 20,000
その他資本剰余金 5,000売却益は「その他資本剰余金」へ。損益(P/L)には計上しない点が重要。
消却
自己株式の消却
取得した自己株式を消却する場合(その他資本剰余金から控除):
消却により発行済株式数が減少。その他資本剰余金が不足する場合は繰越利益剰余金から控除。
(借)その他資本剰余金 20,000 / (貸)自己株式 20,000消却により発行済株式数が減少。その他資本剰余金が不足する場合は繰越利益剰余金から控除。
自己株式処分差益・差損の取扱い
自己株式の売却価格が取得原価と異なる場合の処理は、株式の発行と同様に資本取引として扱い、損益(P/L)には計上しません。
| 状況 | 処理先 | 理由 |
|---|---|---|
| 売価 > 取得原価(差益) | その他資本剰余金(増加) | 資本取引のため利益計上しない |
| 売価 < 取得原価(差損) | その他資本剰余金(減少) | 不足する場合は繰越利益剰余金を減額 |
重要:損益計算書(P/L)に計上しない
自己株式の売却は「株主との資本取引」であり、「利益を生む取引」ではありません。そのため、売却益・売却損はP/Lには計上せず、純資産の中の「その他資本剰余金」で処理します。これは試験で繰り返し問われるポイントです。



「自己株式の売却益はP/Lに計上しない」というのが最初は不思議でしたが、「株主との取引は資本取引」という原則を思い出すと整理できました。商品の売却(損益取引)とは別物として考えるのがポイントですね。
EPS(1株当たり当期純利益)への影響
自己株式を取得すると、発行済株式数が減少する(ただし発行株式数自体は変わらない)ため、EPS(1株当たり当期純利益)が上昇します。
EPS計算式
EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式数(自己株式控除後)
例:当期純利益1億円・発行済株式100万株・自己株式10万株の場合
EPS = 1億円 ÷ (100万株 – 10万株) = 1億円 ÷ 90万株 ≒ 111円/株
(自己株式なしなら100円/株)
自己株式取得→発行済株式数減→分母が小さくなる→EPSが上昇
例:当期純利益1億円・発行済株式100万株・自己株式10万株の場合
EPS = 1億円 ÷ (100万株 – 10万株) = 1億円 ÷ 90万株 ≒ 111円/株
(自己株式なしなら100円/株)
自己株式取得→発行済株式数減→分母が小さくなる→EPSが上昇
身近な例で考えてみると
10人で出資して会社を作った場面を想像してみてください。
| 出来事 | 会社の自己株式取得に置き換えると |
|---|---|
| 10人が1万円ずつ出資して会社を設立 | 資本金10万円(純資産)で会社スタート |
| 会社が出資者Aさんから1万円で持分を買い戻す | 自己株式1万円を取得。純資産が9万円に減少 |
| Aさんは「お金は返ってきた。でも議決権はなくなった」 | 自己株式には議決権・配当権がない |
| 別の人Bさんに1.2万円で売却 | 自己株式を処分。差益2,000円はその他資本剰余金へ |
試験での頻出パターンと注意点
試験で問われやすいポイント
Q. 自己株式のB/S表示はどこ?
A. 純資産の部にマイナス(控除)表示。資産計上は禁止。「金庫株=純資産のマイナス」と覚える。
Q. 自己株式処分差益はP/Lに計上するか?
A. 計上しない。その他資本剰余金へ。自己株式取引は「資本取引」であり「損益取引」ではない。
Q. 自己株式を取得するとEPSはどうなる?
A. 上昇する。発行済株式数(自己株式控除後)が分母に使われるため、自己株式が増えると分母が減り、EPSが上がる。
Q. 自己株式には議決権・配当受取権があるか?
A. いずれもない。自己株式として保有している間は権利が停止。
まとめ
- 自己株式=自社が買い戻した株式(金庫株)。純資産のマイナスで表示。
- 取得:(借)自己株式 /(貸)現金(取得原価で計上)
- 処分差益・差損はP/Lではなく「その他資本剰余金」へ(資本取引)
- 自己株式には議決権・配当受取権なし
- 自己株式取得→発行済株式数(自己株式控除後)減少→EPS上昇



自己株式の取引は「会社と株主の間の資本取引」という視点を持つと、P/Lに計上しない理由や純資産マイナスで表示する理由がつながってきます。仕訳の形と合わせて整理しておくと本番でも迷わずに済むと感じています。









