U財務分析の問題で「PER」や「EV/EBITDA」という言葉が出てきて、それぞれがどんな意味を持ち、どう使い分けるのか気になりました。企業価値評価の手法を一度まとめて整理してみます。
目次
企業価値評価の3つのアプローチ
企業価値(Enterprise Value:EV)とは、その企業全体の経済的価値のことです。評価手法は大きく3つのアプローチに分類されます。
インカム
収益アプローチ
将来キャッシュフローや配当を現在価値に割り引いて評価
マーケット
市場アプローチ
同業他社・類似企業との比較倍率(マルチプル)で評価
コスト
純資産アプローチ
B/S上の純資産(時価)をベースに評価
■ 企業価値・株式価値の関係
企業価値(EV) = 株式価値(Equity Value)+ 有利子負債
株式価値 = 企業価値 ー 有利子負債
※ EV = 株式時価総額 + 純有利子負債(負債 ー 現金)
株式価値 = 企業価値 ー 有利子負債
※ EV = 株式時価総額 + 純有利子負債(負債 ー 現金)
収益アプローチ:DCF法とDDM
DCF法(割引キャッシュフロー法)
EV = Σ FCF÷(1+WACC)ⁿ + 継続価値÷(1+WACC)ⁿ
将来の予測フリーキャッシュフロー(FCF)をWACCで割り引いて合計。最も理論的で精緻だが、将来予測の精度に依存する。
収益アプローチ
DDM(配当割引モデル)
P₀ = D₁ ÷ (r ー g) ※ゴードン成長モデル
将来の配当を株主資本コスト(r)で割り引いて株式価値を算出。配当を安定的に支払う成熟企業に向く手法。
収益アプローチ
■ FCF(フリーキャッシュフロー)の計算
FCF = 営業利益 × (1ー実効税率) + 減価償却費 ー 設備投資 ー 運転資本増加額
= NOPAT(税引後営業利益)± 非現金項目 ー 投資CF
= NOPAT(税引後営業利益)± 非現金項目 ー 投資CF
市場アプローチ:主要マルチプル指標
PER(株価収益率)
PER = 株価 ÷ EPS(1株当たり利益)
株価が1株利益の何倍かを示す。成長期待が高いほどPERは高くなる傾向。同業他社との比較で割安・割高を判断。
株式価値ベース
PBR(株価純資産倍率)
PBR = 株価 ÷ BPS(1株当たり純資産)
株価が純資産の何倍かを示す。1倍割れは「解散価値以下」の状態。資産重視業種(金融・不動産)で多用される。
株式価値ベース
EV/EBITDA倍率
EV/EBITDA = 企業価値(EV)÷ EBITDA
減価償却・利息・税金控除前利益で正規化した企業価値倍率。国際比較・M&Aで最もよく使われる指標。負債も含む企業全体の評価に向く。
企業価値ベース
PSR(株価売上高倍率)
PSR = 株式時価総額 ÷ 売上高
赤字企業や利益が安定しないスタートアップの評価に使われる。利益ではなく売上規模を基準にする。
株式価値ベース
純資産アプローチ
| 手法 | 内容 | 用途 |
|---|---|---|
| 簿価純資産法 | B/S上の帳簿価額の純資産をそのまま使用 | 概算・参考値として |
| 時価純資産法 | 資産・負債を時価に修正した純資産で評価 | 清算・相続・中小企業M&A |
| 修正純資産法 | 時価純資産+のれん(超過収益力) | 中小企業の買収・事業承継 |
各手法の比較と使い分け
| 手法 | 特徴 | 向いているケース | 弱点 |
|---|---|---|---|
| DCF法 | 理論的・精緻 | 上場・非上場全般 | 将来予測への依存が大きい |
| DDM | 配当ベース | 安定配当の成熟企業 | 無配・成長企業には不向き |
| PER・PBR | 計算が簡単 | 上場株式の割安判断 | 利益操作・業種間比較困難 |
| EV/EBITDA | 国際比較可能 | M&A・クロスボーダー | 資本集約度の違いを考慮しない |
| 時価純資産法 | 客観的 | 清算・中小M&A | 将来の収益力を反映しない |
身近な場面で考えてみると
■ 中古車を買うときのたとえ
① DCF法:「この車はあと何年乗れて、燃費や維持費がいくらか」から現在価値を計算
② PER的発想:「同じ車種の相場は150万円だから、130万円なら割安」と比較
③ 純資産法:「部品を全部バラにして売ったら80万円になる」という解体価値で評価
企業も同じで、評価の目的や状況によって使う物差しが変わります。
② PER的発想:「同じ車種の相場は150万円だから、130万円なら割安」と比較
③ 純資産法:「部品を全部バラにして売ったら80万円になる」という解体価値で評価
企業も同じで、評価の目的や状況によって使う物差しが変わります。



DCF法が「理論の王道」とよく言われますが、将来予測が難しい中小企業や赤字スタートアップには使いにくいことも多く、実務ではEV/EBITDAや時価純資産と組み合わせて使うケースが多いようです。試験では各手法の特徴と使い分けが問われやすいと感じています。
重要用語の整理
| 用語 | 意味・計算式 |
|---|---|
| EPS | 1株当たり当期純利益 = 当期純利益 ÷ 発行済株式数 |
| BPS | 1株当たり純資産 = 純資産 ÷ 発行済株式数 |
| EBITDA | 利払前・税引前・償却前利益 = 営業利益 + 減価償却費 |
| NOPAT | 税引後営業利益 = 営業利益 × (1 ー 実効税率) |
| EV | 企業価値 = 株式時価総額 + 純有利子負債 |
| FCF | フリーキャッシュフロー = NOPAT + 償却 ー 設備投資 ー 運転資本増加 |
| のれん | 買収時の支払額と時価純資産の差額(超過収益力の対価) |
過去問での出題パターン
| 出題テーマ | 問われる内容 |
|---|---|
| PER・PBRの計算 | 株価・EPS・BPSの数値が与えられた計算問題 |
| DCF法の適用 | FCFとWACCから企業価値を算出する問題 |
| 手法の特徴選択 | ある状況で「最も適切な評価手法」を選ぶ選択問題 |
| EV/EBITDA | EBITDAの計算方法・EVとの違いを問う問題 |
| のれんの処理 | M&A時ののれん計算と償却処理 |
Uのメモ
■ 自分の言葉で整理するメモスペース









