U「全員に売ろうとすると、誰にも届かない」という話を聞いたとき、すごく腑に落ちました。スーパーの棚でも、SNSの投稿でも、「誰向けか」が明確なものほど刺さる気がしていたので。STPはその「狙いを絞る」プロセスを体系化したものです。
STPとは、市場を「分ける(Segmentation)」→「狙いを定める(Targeting)」→「立ち位置を決める(Positioning)」という3段階のマーケティング戦略プロセスです。4P(製品・価格・流通・プロモーション)を決める前段として、企業経営理論で毎年出題される重要テーマです。
目次
STPの3つのステップ
STEP 01
S
セグメンテーション
Segmentation
市場全体を共通ニーズや特性を持つグループ(セグメント)に分割する。誰に届けるかを考えるための「市場の地図作り」。
STEP 02
T
ターゲティング
Targeting
分けたセグメントの中から、自社が狙うべきターゲット市場を選択する。「全員に届けようとすると誰にも届かない」を防ぐ意思決定。
STEP 03
P
ポジショニング
Positioning
選んだターゲット市場の中で、競合と差別化した自社の立ち位置(ポジション)を決める。顧客の頭の中に「独自の居場所」を確保する。
セグメンテーションの4変数
市場を分けるときの「切り口」には代表的な4つの変数があります。これらを組み合わせてセグメントを定義します。
地理的変数(Geographic)
地域・場所の特性で分ける
国・地域
都市規模
気候
人口密度
人口統計的変数(Demographic)
年齢・性別・属性で分ける
年齢
性別
職業
収入
学歴
家族構成
心理的変数(Psychographic)
価値観・ライフスタイルで分ける
価値観
ライフスタイル
パーソナリティ
社会階層
行動変数(Behavioral)
購買行動・使用状況で分ける
購買頻度
使用量
ロイヤルティ
求めるベネフィット
有効なセグメントの条件(試験頻出):①測定可能性(規模・購買力が測れる)②到達可能性(接触・サービス提供できる)③維持可能性(十分な規模・収益性がある)④実行可能性(自社が差別化して参入できる)の4つが揃うセグメントが有効とされます。
ターゲティングの3つの戦略
どのセグメントを、いくつ狙うかによって3つの戦略に分類されます。
無差別型マーケティング
全セグメントに同一アプローチ
セグメントの違いを無視して、市場全体に同じ製品・メッセージで訴求する。規模の経済が働きやすいが、競合に対して脆弱になりやすい。
例:大手食品メーカーの定番商品で、特定の層に絞らず広く販売する戦略
差別型マーケティング
複数セグメントに個別対応
複数のセグメントをそれぞれ異なる製品・マーケティングで狙う。市場シェアを拡大できるが、コストが増大する。
例:自動車メーカーが軽自動車・セダン・SUV・高級車を別々の戦略で展開
集中型マーケティング
特定セグメントに経営資源を集中
1つ(または少数)のセグメントに絞り込み、その分野で強固なポジションを築く。中小企業に向いているとされる戦略。
例:特定の業種向けに特化したソフトウェア会社・ニッチ市場専門店
ポジショニングマップで「立ち位置」を可視化する
ポジショニングとは、ターゲット顧客の頭の中に自社製品の「独自のポジション」を確保することです。競合との差を2軸のマップで可視化する「ポジショニングマップ」が試験でよく出題されます。
ポジショニングマップのイメージ(コーヒー市場の例)
ポジショニングの重要ポイント:2軸は「顧客が重視する属性」で選ぶ必要があります。試験では「どの軸を使うべきか」ではなく、「軸を設定したとき自社が競合と重ならない位置を取れるか」が判断できるかを問われます。また、ポジショニングは顧客の「知覚(認識)」の話であり、実際の製品スペックとは異なることがあります。
スタバのSTPを当てはめてみると
スターバックス Japan のSTP(概念整理用)
実例で理解する
SEGMENTATION
市場の切り分け方
・年齢:20〜40代
・ライフスタイル:仕事や勉強にカフェを使う人、自分時間を大切にする人
・行動:週複数回コーヒーを飲む、特定ブランドへのロイヤルティが高い
・ライフスタイル:仕事や勉強にカフェを使う人、自分時間を大切にする人
・行動:週複数回コーヒーを飲む、特定ブランドへのロイヤルティが高い
TARGETING
狙うターゲット
「コーヒーの品質と空間体験にお金を払える、ブランドを好む都市生活者」を中心ターゲットとして選択。低価格層には最初から訴求しない集中型戦略。
POSITIONING
競合との差別化
「サードプレイス(家でも職場でもない第3の場所)」というコンセプトで、コーヒーだけでなく”滞在体験”を売る。価格帯×こだわり感で競合と明確に差別化。
過去問で確認する
企業経営理論 — STP戦略
令和2年度 第29問
ターゲット・マーケティングに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 集中型マーケティングとは、複数のセグメントに対して個別に異なるマーケティング・ミックスで対応する戦略である。
- イ 集中型マーケティングでは、特定のセグメントに経営資源を集中させるため、規模の経済の利益を享受しにくいが、専門化によるコスト削減が期待できる。
- ウ 差別型マーケティングとは、市場全体を1つのセグメントとみなし、すべての顧客に対して同一のマーケティング・ミックスで対応する戦略である。
- エ 無差別型マーケティングとは、複数のセグメントを選択し、それぞれに適したマーケティング・ミックスで対応する戦略である。
解説
各戦略の定義を整理します:
・無差別型:セグメントを無視し、全市場に同一アプローチ → ア・エの説明は誤り
・差別型:複数セグメントに個別アプローチ → ウの説明は無差別型の説明
・集中型:特定セグメントに資源を集中 → アの説明は差別型の説明
イが正解。集中型は規模の経済は働きにくいが、特定分野への専門化によってコスト削減(学習効果・専門知識の蓄積)を図ることができます。
・無差別型:セグメントを無視し、全市場に同一アプローチ → ア・エの説明は誤り
・差別型:複数セグメントに個別アプローチ → ウの説明は無差別型の説明
・集中型:特定セグメントに資源を集中 → アの説明は差別型の説明
イが正解。集中型は規模の経済は働きにくいが、特定分野への専門化によってコスト削減(学習効果・専門知識の蓄積)を図ることができます。
企業経営理論 — セグメンテーション
平成30年度 第31問
有効なセグメンテーションの条件に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- ア 各セグメントの規模や購買力など、その特性を測定できること。
- イ 各セグメントの需要が長期的に安定していること。
- ウ 各セグメントに対して、効果的にアプローチできること。
- エ 各セグメントに効果的なマーケティング・プログラムを立案・実行できること。
解説
有効なセグメントの4条件は「測定可能性・到達可能性・維持可能性・実行可能性」です。
・ア → 測定可能性 ✅
・ウ → 到達可能性 ✅
・エ → 実行可能性 ✅
「需要が長期的に安定していること」は4条件には含まれません。維持可能性は「十分な規模・収益性があること」であり、長期安定性とは異なります。よって最も不適切なのはイです。
※本問は選択肢エが正解表記になっているケースもあり、出典・年度によって表現が異なります。4条件を正確に覚えることが重要です。
・ア → 測定可能性 ✅
・ウ → 到達可能性 ✅
・エ → 実行可能性 ✅
「需要が長期的に安定していること」は4条件には含まれません。維持可能性は「十分な規模・収益性があること」であり、長期安定性とは異なります。よって最も不適切なのはイです。
※本問は選択肢エが正解表記になっているケースもあり、出典・年度によって表現が異なります。4条件を正確に覚えることが重要です。



ターゲティングの3戦略(無差別・差別・集中)は名前だけ聞くと混乱しますが、「何個のセグメントを、同じアプローチで狙うか」という軸で整理すると頭に入りやすくなりました。中小企業診断士の試験では集中型が「中小企業向き」として頻出なのも、実際の経営感覚と合っていて記憶に残りやすいです。
U のまとめメモ
- STPは「分ける→絞る→立ち位置を決める」の3段階。4Pより前に考えるプロセス。
- セグメンテーションの4変数:地理的・人口統計的・心理的・行動変数。
- 有効なセグメントの条件:測定可能性・到達可能性・維持可能性・実行可能性の4つ。
- ターゲティング3戦略:無差別型(全市場・同一)、差別型(複数・個別)、集中型(特定・集中)。
- 集中型は中小企業に向いているとして試験で繰り返し出題される。
- ポジショニングは「顧客の知覚の中の位置取り」。実際のスペックではなく認識の話。
- STP→4P/4Cの流れを意識すると、各フレームワークがつながって覚えやすい。









