【中小企業診断士試験令和7年度過去問財務会計 第5問 解説】固定資産の分類・償却・B/S表示を図解で整理

U

第5問は固定資産の分類・償却・表示に関する問題です。4つの選択肢がそれぞれ別の論点を問うていて、「なんとなく正しそう」と感じる表現がいくつも混じっています。わたし自身、ウとエで少し迷いました。

目次

問題の基本情報

R7
年度
令和7年度 第1次試験
第5問
財務・会計
正解
CD-ROM購入でも無形固定資産

問題文と選択肢

令和7年度 第1次試験 財務・会計 第5問 固定資産
固定資産に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 資産として計上されたソフトウェアは、減損処理の対象とならない。
  • イ ソフトウェアをCD-ROMで購入する場合であっても、当該ソフトウェアは無形固定資産に属する。
  • ウ 無形固定資産の償却方法は一律定率法であるのに対して、有形固定資産については定額法も認められる。
  • エ 有形固定資産と同様に、無形固定資産も取得原価から減価償却累計額を控除する形式で表示することができる。
正解
 ソフトウェアをCD-ROMで購入する場合であっても、当該ソフトウェアは無形固定資産に属する。

この問題が属する領域

財務・会計
├── 第1章 財務会計の基礎
├── 第2章 決算整理
│ ├── 減価償却
│ │ ├── 有形固定資産の償却
│ │ ├── 無形固定資産の分類・償却・表示 ← 今ここ
│ │ └── 減損処理
│ └── 棚卸資産・引当金
├── 第3章 原価計算
└── 第4章 財務分析

頻出度・難易度・得点戦略

頻出度 ★★★☆☆ 固定資産の基本は毎年何らかの形で出題される。無形固定資産特有のルールに絞った出題は数年おき。
難易度 ★★★☆☆ 正解のイは判断しやすいが、ウとエはどちらも「なんとなく正しそう」に見える。知識の精度が問われる。
費用対効果 中 各選択肢が異なる論点を扱っているため、ひとつの論点だけ覚えても正解しにくい。
得点戦略 正解のイを確認して2分以内に決定できれば理想。ウ・エで迷うようであれば後回しにして戻る。

解法と正解

解法のポイント
4つの選択肢がそれぞれ独立した論点を扱っています。「ソフトウェアの分類」「減損処理の対象」「償却方法」「B/S表示形式」の4点を順に判定します。
資産計上ソフトウェアは減損処理の対象か → 対象になる(✗)
無形固定資産として資産計上されたソフトウェアも、収益性が低下した場合は減損処理の対象となります。「無形だから減損しない」という特例はありません。
CD-ROMで購入しても無形固定資産か → 無形固定資産(✓ 正解)
ソフトウェアの分類は「媒体(CD-ROMなど)」ではなく「内容(プログラム)」で判断します。CD-ROMというモノが手元に届いても、価値の本体はデータとしてのプログラムなので、無形固定資産として計上します。媒体であるCD-ROM自体に資産価値があるとは見なしません。
無形は定率法・有形は定額法も可か → 逆(✗)
無形固定資産の償却は定額法のみ(一律)です。定率法は認められていません。一方、有形固定資産は定額法・定率法・生産高比例法など複数の方法から選択できます。選択肢は「定率法」と「定額法」を入れ替えた典型的なひっかけです。
無形固定資産も間接法(控除形式)で表示できるか → 原則できない(✗)
有形固定資産は間接法(取得原価 − 減価償却累計額)の表示が認められています。しかし無形固定資産は直接法が原則で、B/Sには帳簿価額(残存価額)だけを記載します。累計額を別記する間接法は、無形固定資産には適用されません。

速解きのチェックポイント

本番で使う判断の軸
① 資産の分類は「媒体ではなく内容で決まる」
② 無形固定資産の償却は「定額法のみ」
③ B/Sの表示形式は「有形=間接法OK/無形=直接法が原則」
④ 減損処理は有形・無形を問わず「収益性が低下した資産」が対象
確認すべき用語 判断
「CD-ROM購入」 媒体に惑わされない → ソフトウェアは無形固定資産
「一律定率法」 無形固定資産は「定額法のみ」→ 誤り
「控除する形式で表示」 間接法 → 無形固定資産には原則不適用
「減損処理の対象とならない」 ソフトウェアも対象 → 誤り

選択肢の解剖と立て直しルート

選択肢 正誤 選んでしまう思考パターン
「形がないから評価が難しい=減損できない」という思い込み
✓ 正解
有形と無形の償却方法を逆に覚えている。あるいは「無形だから特殊な方法」と思い込む
「有形と同様に無形も」という表現が自然に聞こえる。B/S表示の違いが曖昧なまま
アを選んだ方
「減損処理の対象」に戻る。有形・無形を問わず、収益性が低下した資産は対象。
ウを選んだ方
「無形固定資産の償却方法=定額法のみ」に戻る。定率法は有形固定資産で使える方法。
エを選んだ方
「B/S表示の直接法vs間接法」に戻る。無形は直接法が原則、有形は間接法も可。

ひっかけの構造

TRAP 01
「媒体で分類する」という思い込み(選択肢イ)
CD-ROMという「モノ」が手元に届くと、有形のように感じてしまいます。しかし会計では「何が価値の源泉か」で判断します。ソフトウェアの価値はプログラムというデータにあるので、媒体は関係なく無形固定資産です。
TRAP 02
定率法・定額法の逆置き(選択肢ウ)
「無形固定資産は特殊なのだから、有形と違うルールがあるはず」という感覚は正しいです。しかし方向が逆で、無形は「定額法のみ」という厳しい制約があります。有形の方が選択肢が多いのです。
TRAP 03
「有形と同様に」という横並び効果(選択肢エ)
「有形固定資産と同様に」という表現で、同じルールが適用されると思い込ませる罠です。B/Sの表示方法は有形と無形で異なります。有形は間接法(控除形式)が使えますが、無形は直接法が原則です。

固定資産の基礎知識

そもそも「固定資産」の分類はなぜ存在するのか
会社が持つ資産の中には、長期間にわたって使い続けるものがあります。機械・建物・パソコン・のれん・特許権・ソフトウェアなど。これらをひとまとめに「費用」として処理してしまうと、購入した期だけ利益が激減し、実態を反映しなくなります。だから「資産として持ち続け、使用期間にわたって少しずつ費用化する」という仕組みが必要になりました。それが固定資産と減価償却の考え方です。

固定資産は大きく3つに分類されます。試験ではそれぞれの具体例と性質の違いが問われます。

有形固定資産
建物・構築物
機械・工具・備品
土地(償却なし)
車両・船舶
無形固定資産
ソフトウェア
のれん
特許権・商標権
借地権・漁業権
有形 vs 無形 償却・表示の違い(試験頻出)
償却方法:
有形固定資産 → 定額法・定率法・生産高比例法 など複数から選択可
無形固定資産 → 定額法のみ(一律)

B/S表示:
有形固定資産 → 間接法(取得原価 − 減価償却累計額)も直接法も可
無形固定資産 → 直接法が原則(累計額を別記する間接法は通常使わない)
有形固定資産のB/S表示
建物    10,000,000円
減価償却累計額 △3,000,000円 間接法OK
帳簿価額  7,000,000円
無形固定資産のB/S表示
ソフトウェア 2,400,000円 直接法(原則)
※ 取得原価・累計額は別記しない
間接法 原則NG
出題バリエーションのパターン
今回の問題はこのうち「②媒体と分類」「③減損」「④償却方法の違い」「⑤B/S表示形式」のパターンが混在しています。
パターン 問われる内容
① 分類の当てはめ ソフトウェア・のれんが有形/無形/投資のどれか
② 媒体と分類 CD-ROMで買っても無形か(今回のイ)
③ 減損処理の対象 無形固定資産も対象か(今回のア)
④ 償却方法の違い 有形vs無形で使える方法が違う(今回のウ)
⑤ B/S表示形式 直接法・間接法の適用範囲(今回のエ)
⑥ 耐用年数 市場販売目的ソフトウェアは3年以内など

選択肢をイメージで整理する

資産計上されたソフトウェアは減損処理の対象とならない
✗ 誤り
場面:5年前に3,000万円で購入した基幹系システム。当初は順調に稼働していたが、業態転換により今後の利用計画が大幅に縮小された。今期の利益への貢献はほぼ見込めない状態。
「形がないから評価できない=減損しない」と考えたくなりますが、それは誤りです。
減損の本質は「将来の収益で回収できなくなった帳簿価額の切り下げ」です。ソフトウェアも将来の収益(売上・コスト削減)への貢献度で価値を持っているので、その収益性が低下すれば減損処理の対象になります。
有形か無形かは問いません。「資産として持ち続ける意味があるか」が判断の基準です。
覚え方:減損は「有形・無形を問わず、回収可能額が帳簿価額を下回ったら処理する」
CD-ROM購入でも無形固定資産に属する
✓ 正解
場面:経理部が会計ソフトをパッケージ購入した。箱の中にはCD-ROMが入っていて、インストール後に使用開始。担当者は「CDという物が来たから有形固定資産かな?」と疑問を感じた。
会計での分類は「何が価値の源泉か」で決まります。この場合、価値の源泉はCD-ROMという円盤ではなく、その中に記録されたプログラムです。
CDが壊れても、プログラムをコピーすれば同じソフトウェアが動く。つまり「物体としての円盤」に価値があるのではなく、「データとしてのプログラム」に価値があります。だから媒体の形を問わず無形固定資産として計上します。
覚え方:「媒体(CD-ROM・ダウンロード)ではなく中身(プログラム)で分類する」
無形固定資産は定率法・有形は定額法も認められる
✗ 逆(誤り)
場面:社内の経理研修で「無形固定資産の償却は特別なルールがある」と習った。「特別なルール=複雑な方法(定率法など)を使う」とイメージした。
方向が逆です。特別なのは「選択肢が少ない=定額法しか使えない」という意味での制約です。

無形固定資産 → 定額法のみ(定率法は不可)
有形固定資産 → 定額法・定率法・生産高比例法など複数から選択可

なぜ無形固定資産は定額法のみなのか。無形資産は時間の経過とともに均等に価値が落ちると考えられるからです。機械のように「最初ほどガンガン使って価値が落ちる(定率法)」という経済的実態が想定しにくいのです。
覚え方:無形は「均等減少=定額法のみ」、有形は「自由選択」
有形・無形ともに取得原価から累計額を控除して表示できる
✗ 誤り(無形は直接法が原則)
場面:決算書を見たら、建物の欄に「取得原価10,000千円、減価償却累計額△3,000千円、帳簿価額7,000千円」と書いてある。「ソフトウェアも同じ形式で書けばいいか」と思った。
建物(有形固定資産)のその表示方式は「間接法」と呼ばれます。取得したときの金額と、今までどれだけ償却したかが両方わかるので、利害関係者にとって情報量が多い方法です。

しかし無形固定資産は直接法が原則です。B/Sにはシンプルに帳簿価額(残存額)だけを記載します。「ソフトウェア 2,400千円」という形で、累計額の内訳は書きません。

理由としては、無形固定資産の取得原価や耐用年数が外部から検証しにくく、累計額を示しても情報として使いにくいという点があります。
覚え方:有形=間接法OK(明細を見せられる)、無形=直接法のみ(残額だけ表示)
U

ウとエは、どちらも「有形固定資産のルールを無形固定資産に当てはめた場合に正しいか」を問う構造になっているんですね。有形のルールを「そのまま無形にも当てはまる」と思い込むと引っかかります。

経営現場で考えると

もし自分がスタートアップの経営者だったとしましょう。創業時に業務管理システムを400万円で購入し、毎月の売上管理に使っています。3年後、事業転換でそのシステムはほぼ使わなくなってしまいました。

このとき「無形固定資産だから減損しなくていい」と判断すると、B/Sに実態のない資産が残り続け、財務諸表が歪みます。投資家や銀行が見たときに、実際の会社の体力より「良く見える」状態になる。それは信頼を損ねるリスクです。

この問題の知識は、「自社の資産の実態を正しく把握する」という経営判断に直結しています。ソフトウェアを資産として持ち続けるかどうかの判断は、今後の事業計画とセットで考える必要があります。

  • ソフトウェアは「CD-ROMで買っても無形固定資産」 ← 媒体で判断しない
  • 無形固定資産も「収益性が低下したら減損処理の対象」 ← 有形と同じ
  • 無形固定資産の償却は「定額法のみ」 ← 有形は複数から選択可
  • 無形固定資産のB/S表示は「直接法が原則」 ← 有形は間接法も可

セットで押さえる関連論点

関連論点 つながり
減価償却の計算 定額法の計算式・定率法との比較。有形固定資産の基本として先に固める
減損処理 適用対象・帳簿価額と回収可能額の比較・差額の処理方法
のれんの会計処理 無形固定資産の代表例。M&Aの文脈で2次試験にも登場
研究開発費 「資産計上できるか vs 費用処理か」の判断。ソフトウェアと混同しやすい

1次から2次試験へ

2次試験での使われ方
2次試験では固定資産そのものが直接計算問題になることは少ないです。しかし財務諸表の読み取りや経営分析の文脈で、「この会社は多額のソフトウェア資産を抱えているが、今後の事業計画に照らして減損リスクはないか」という判断を問われることがあります。1次知識として「無形固定資産の特性」を押さえておくことで、事例の財務データを読む精度が上がります。

Uのまとめメモ

この問題で整理したこと
固定資産の問題は「有形と無形で何が違うか」を問うパターンが多い。特に償却方法(無形は定額法のみ)とB/S表示(無形は直接法が原則)の2点は毎回混乱するので、表にして覚える。
ソフトウェアの分類は「媒体ではなく中身で決まる」という原則さえ押さえれば選択肢イは迷わず選べる。ウとエのひっかけ構造(有形と無形を入れ替える)に気づけるかが合否を分けそう。
U

次に同じ構造の問題が出てきたとき、まず「有形のルールをそのまま無形に当てはめているか」という視点でチェックしてみてください。多くのひっかけが、この逆転・横並びのパターンから生まれています。

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

目次