U第5問は固定資産の分類・償却・表示に関する問題です。4つの選択肢がそれぞれ別の論点を問うていて、「なんとなく正しそう」と感じる表現がいくつも混じっています。わたし自身、ウとエで少し迷いました。
問題の基本情報
問題文と選択肢
- ア 資産として計上されたソフトウェアは、減損処理の対象とならない。
- イ ソフトウェアをCD-ROMで購入する場合であっても、当該ソフトウェアは無形固定資産に属する。
- ウ 無形固定資産の償却方法は一律定率法であるのに対して、有形固定資産については定額法も認められる。
- エ 有形固定資産と同様に、無形固定資産も取得原価から減価償却累計額を控除する形式で表示することができる。
この問題が属する領域
├── 第1章 財務会計の基礎
├── 第2章 決算整理
│ ├── 減価償却
│ │ ├── 有形固定資産の償却
│ │ ├── 無形固定資産の分類・償却・表示 ← 今ここ
│ │ └── 減損処理
│ └── 棚卸資産・引当金
├── 第3章 原価計算
└── 第4章 財務分析
頻出度・難易度・得点戦略
| 頻出度 | ★★★☆☆ 固定資産の基本は毎年何らかの形で出題される。無形固定資産特有のルールに絞った出題は数年おき。 |
| 難易度 | ★★★☆☆ 正解のイは判断しやすいが、ウとエはどちらも「なんとなく正しそう」に見える。知識の精度が問われる。 |
| 費用対効果 | 中 各選択肢が異なる論点を扱っているため、ひとつの論点だけ覚えても正解しにくい。 |
| 得点戦略 | 正解のイを確認して2分以内に決定できれば理想。ウ・エで迷うようであれば後回しにして戻る。 |
解法と正解
速解きのチェックポイント
② 無形固定資産の償却は「定額法のみ」
③ B/Sの表示形式は「有形=間接法OK/無形=直接法が原則」
④ 減損処理は有形・無形を問わず「収益性が低下した資産」が対象
| 確認すべき用語 | 判断 |
|---|---|
| 「CD-ROM購入」 | 媒体に惑わされない → ソフトウェアは無形固定資産 |
| 「一律定率法」 | 無形固定資産は「定額法のみ」→ 誤り |
| 「控除する形式で表示」 | 間接法 → 無形固定資産には原則不適用 |
| 「減損処理の対象とならない」 | ソフトウェアも対象 → 誤り |
選択肢の解剖と立て直しルート
| 選択肢 | 正誤 | 選んでしまう思考パターン |
|---|---|---|
| ア | ✗ | 「形がないから評価が難しい=減損できない」という思い込み |
| イ | ✓ 正解 | ― |
| ウ | ✗ | 有形と無形の償却方法を逆に覚えている。あるいは「無形だから特殊な方法」と思い込む |
| エ | ✗ | 「有形と同様に無形も」という表現が自然に聞こえる。B/S表示の違いが曖昧なまま |
ひっかけの構造
固定資産の基礎知識
固定資産は大きく3つに分類されます。試験ではそれぞれの具体例と性質の違いが問われます。
有形固定資産 → 定額法・定率法・生産高比例法 など複数から選択可
無形固定資産 → 定額法のみ(一律)
B/S表示:
有形固定資産 → 間接法(取得原価 − 減価償却累計額)も直接法も可
無形固定資産 → 直接法が原則(累計額を別記する間接法は通常使わない)
| パターン | 問われる内容 |
|---|---|
| ① 分類の当てはめ | ソフトウェア・のれんが有形/無形/投資のどれか |
| ② 媒体と分類 | CD-ROMで買っても無形か(今回のイ) |
| ③ 減損処理の対象 | 無形固定資産も対象か(今回のア) |
| ④ 償却方法の違い | 有形vs無形で使える方法が違う(今回のウ) |
| ⑤ B/S表示形式 | 直接法・間接法の適用範囲(今回のエ) |
| ⑥ 耐用年数 | 市場販売目的ソフトウェアは3年以内など |
選択肢をイメージで整理する
減損の本質は「将来の収益で回収できなくなった帳簿価額の切り下げ」です。ソフトウェアも将来の収益(売上・コスト削減)への貢献度で価値を持っているので、その収益性が低下すれば減損処理の対象になります。
有形か無形かは問いません。「資産として持ち続ける意味があるか」が判断の基準です。
CDが壊れても、プログラムをコピーすれば同じソフトウェアが動く。つまり「物体としての円盤」に価値があるのではなく、「データとしてのプログラム」に価値があります。だから媒体の形を問わず無形固定資産として計上します。
無形固定資産 → 定額法のみ(定率法は不可)
有形固定資産 → 定額法・定率法・生産高比例法など複数から選択可
なぜ無形固定資産は定額法のみなのか。無形資産は時間の経過とともに均等に価値が落ちると考えられるからです。機械のように「最初ほどガンガン使って価値が落ちる(定率法)」という経済的実態が想定しにくいのです。
しかし無形固定資産は直接法が原則です。B/Sにはシンプルに帳簿価額(残存額)だけを記載します。「ソフトウェア 2,400千円」という形で、累計額の内訳は書きません。
理由としては、無形固定資産の取得原価や耐用年数が外部から検証しにくく、累計額を示しても情報として使いにくいという点があります。



ウとエは、どちらも「有形固定資産のルールを無形固定資産に当てはめた場合に正しいか」を問う構造になっているんですね。有形のルールを「そのまま無形にも当てはまる」と思い込むと引っかかります。
経営現場で考えると
もし自分がスタートアップの経営者だったとしましょう。創業時に業務管理システムを400万円で購入し、毎月の売上管理に使っています。3年後、事業転換でそのシステムはほぼ使わなくなってしまいました。
このとき「無形固定資産だから減損しなくていい」と判断すると、B/Sに実態のない資産が残り続け、財務諸表が歪みます。投資家や銀行が見たときに、実際の会社の体力より「良く見える」状態になる。それは信頼を損ねるリスクです。
この問題の知識は、「自社の資産の実態を正しく把握する」という経営判断に直結しています。ソフトウェアを資産として持ち続けるかどうかの判断は、今後の事業計画とセットで考える必要があります。
- ソフトウェアは「CD-ROMで買っても無形固定資産」 ← 媒体で判断しない
- 無形固定資産も「収益性が低下したら減損処理の対象」 ← 有形と同じ
- 無形固定資産の償却は「定額法のみ」 ← 有形は複数から選択可
- 無形固定資産のB/S表示は「直接法が原則」 ← 有形は間接法も可
セットで押さえる関連論点
| 関連論点 | つながり |
|---|---|
| 減価償却の計算 | 定額法の計算式・定率法との比較。有形固定資産の基本として先に固める |
| 減損処理 | 適用対象・帳簿価額と回収可能額の比較・差額の処理方法 |
| のれんの会計処理 | 無形固定資産の代表例。M&Aの文脈で2次試験にも登場 |
| 研究開発費 | 「資産計上できるか vs 費用処理か」の判断。ソフトウェアと混同しやすい |
1次から2次試験へ
Uのまとめメモ
ソフトウェアの分類は「媒体ではなく中身で決まる」という原則さえ押さえれば選択肢イは迷わず選べる。ウとエのひっかけ構造(有形と無形を入れ替える)に気づけるかが合否を分けそう。



次に同じ構造の問題が出てきたとき、まず「有形のルールをそのまま無形に当てはめているか」という視点でチェックしてみてください。多くのひっかけが、この逆転・横並びのパターンから生まれています。









