U「定量発注と定期発注、試験でいつも迷う」という声をよく聞きます。発注のタイミング・数量・向いている品目の違いを表と図で整理して、EOQの計算まで一気にマスターしましょう。
発注方式の全体像——2つの基本方式
在庫補充のための発注には大きく2つのアプローチがあります。「何をトリガーに発注するか」という点が根本的な違いです。
| 比較軸 | 定量発注方式 | 定期発注方式 |
|---|---|---|
| 発注のタイミング | 在庫が一定量(発注点)を下回ったとき | 決められた一定周期(週1回・月1回など) |
| 発注量 | 毎回同じ量(固定) | 毎回異なる(在庫状況に応じて変動) |
| 在庫管理の頻度 | 常時(リアルタイム監視が必要) | 発注日のみ(定期チェック) |
| 安全在庫 | 少なくて済む | 多く必要(発注間隔分をカバー) |
| 向いている品目 | Aランク品・高額品・重要部品 | Bランク品・低額品・需要変動が大きい品目 |
| 管理コスト | 高い(常時監視) | 低い(定期チェックのみ) |
| 欠品リスク | 低い(発注点で自動発動) | 発注間隔が長いと欠品しやすい |
| 別名 | 発注点方式・Qシステム | 定期補充方式・Pシステム |
定量発注方式——発注点と発注量
基本定量発注方式(発注点方式)とは
在庫量が一定の水準(発注点)を下回ったときに、決まった量(発注量)を発注する方式です。発注のタイミングは変動しますが、発注量は常に一定です。
発注から入荷までの時間(リードタイム)中に消費される在庫量を確保するのが発注点です。
計算例:
- 1日の平均需要量:10個
- リードタイム:5日
- 安全在庫:20個
発注点 = 10 × 5 + 20 = 50 + 20 = 70個
在庫が70個を下回ったタイミングで発注をかける。
定期発注方式——発注量の計算
基本定期発注方式とは
決まった周期(発注サイクル)ごとに在庫を確認し、目標在庫水準(最大在庫量)まで補充するために必要な量を発注する方式です。タイミングは固定ですが、発注量が毎回変わります。
発注サイクル分+リードタイム分の需要に対応できる在庫が必要です。
計算例:
- 1日の平均需要量:10個
- 発注サイクル:7日
- リードタイム:3日
- 安全在庫:15個
- 現在在庫量:30個
- 発注残(未入荷分):0個
最大在庫量 = 10 × (7 + 3) + 15 = 100 + 15 = 115個
発注量 = 115 − 30 − 0 = 85個
安全在庫——需要変動に備えるバッファ
需要の変動・リードタイムの遅延に備えて余分に保有する在庫です。「どれくらい需要が読み外れてもOKか」という許容水準(サービス率)に基づいて決めます。
| サービス率 | 安全係数(z) | 意味 |
|---|---|---|
| 84.1% | 1.0 | 100回のうち16回は欠品 |
| 90% | 1.28 | 100回のうち10回は欠品 |
| 95% | 1.65 | 100回のうち5回は欠品 |
| 99% | 2.33 | 100回のうち1回は欠品 |
| 99.9% | 3.09 | 1000回のうち1回は欠品 |
ダブルビン方式——定量発注の簡易版
基本ダブルビン方式(二容器法)
同量の在庫を2つの容器(ビン)に分けて保管し、1つ目のビンを使い切ったときに発注する方式です。2つ目のビンの量が「安全在庫+リードタイム中の消費量」に相当します。
- 容器Aから在庫を消費し始める
- 容器Aが空になったとき → 発注をかける(この時点が発注点)
- 容器Bから在庫を消費しながら、入荷を待つ
- 入荷したら容器Bを補充し、残量を容器Aに入れる
ダブルビン方式は在庫の「見える化」が容易で、管理システムが不要なため、低コストで実施できます。工場の補助材料、医療用消耗品、事務用品などに向いています。
ABC分析——品目の優先順位付け
品目を「使用金額(消費量 × 単価)」の高い順に並べ、上位のものから A・B・C に分類する手法です。「大切な少数(A)に注力し、残多数(C)は省力化する」パレートの法則の応用です。
| ランク | 品目数の割合 | 使用金額の割合 | 管理方針 |
|---|---|---|---|
| Aランク | 約20% | 約80% | 厳重管理・定量発注方式・常時在庫管理 |
| Bランク | 約30% | 約15% | 通常管理・定期発注方式 |
| Cランク | 約50% | 約5% | 簡易管理・まとめ発注・ダブルビン方式 |
ABC分析の実施手順
- 各品目の年間使用金額(消費量 × 単価)を計算する
- 使用金額の高い順に並べる
- 累積使用金額の比率を計算する
- 累積70〜80%までをAランク、80〜95%をBランク、残りをCランクに分類する
経済的発注量(EOQ)——最適な発注量の計算
在庫に関わるコストを最小化する「最適な1回の発注量」を求める公式です。「発注コスト」と「在庫保有コスト」のトレードオフを考慮します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| D(Demand) | 年間需要量(個) |
| S(Setup/Ordering cost) | 1回あたりの発注費用(円) |
| H(Holding cost) | 1個あたりの年間在庫保有コスト(円) |
EOQの背景にある考え方
- 発注量を増やす → 発注回数減 → 発注コスト減、しかし平均在庫増 → 在庫保有コスト増
- 発注量を減らす → 発注回数増 → 発注コスト増、しかし平均在庫減 → 在庫保有コスト減
- 2つのコストが等しくなる点がEOQで、総コストが最小になる
計算例:
- 年間需要量(D):1,200個
- 1回の発注費用(S):5,000円
- 1個あたり年間保有コスト(H):500円
EOQ = √(2 × 1,200 × 5,000 / 500)
= √(12,000,000 / 500)
= √24,000
= √(400 × 60)
= 20√60 ≈ 154.9 → 約155個
EOQを使った発注回数と発注間隔の計算
上記の例でEOQ = 155個の場合:
年間発注回数 = D / EOQ = 1,200 / 155 ≈ 7.7回 → 約8回
発注間隔 = 365日 / 8回 ≈ 45.6日 → 約46日に1回
発注方式の選択基準——まとめ比較
| 状況・条件 | 推奨発注方式 | 理由 |
|---|---|---|
| 高額品・重要部品 | 定量発注 | 常時監視で欠品を防ぐ価値がある |
| 需要変動が大きい品目 | 定期発注 | 毎回需要を確認して発注量を調整 |
| 低額・汎用品 | 定期発注 or ダブルビン | 管理コストを抑えたい |
| リードタイムが長い品目 | 定量発注 | 発注点設定で事前に手を打てる |
| 複数品目をまとめて発注したい | 定期発注 | 発注日を統一して業務効率化 |
| POSデータで自動管理 | 定量発注 | 在庫情報のリアルタイム把握が容易 |
Aランク(高額・重要)→ 定量発注で厳格管理
B・Cランク(低額・汎用)→ 定期発注やダブルビンで省力管理
よくある疑問——FAQ
まとめ——発注方式の学習ポイント
- 定量発注:量が固定・タイミングが変動(在庫が発注点を下回ったとき)
- 定期発注:タイミングが固定・量が変動(一定周期ごとに最大在庫まで補充)
- 発注点 = 平均需要量 × リードタイム + 安全在庫
- EOQ = √(2DS/H):発注コストと保有コストが等しくなる最適発注量
- ABC分析:Aランク→定量発注・厳格管理、C→省力管理
発注方式は「どちらが優れているか」ではなく「どちらが適切か」を品目特性に応じて判断する問題です。ABC分析と組み合わせて「高額品はA → 定量発注で厳格管理」「低額品はC → ダブルビンや定期発注で省力管理」という流れを体に染み込ませましょう。









