発注方式——定量発注・定期発注の違いと使い分けを図解で整理 | 中小企業診断士1次試験 運営管理

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「定量発注と定期発注、試験でいつも迷う」という声をよく聞きます。発注のタイミング・数量・向いている品目の違いを表と図で整理して、EOQの計算まで一気にマスターしましょう。

目次

発注方式の全体像——2つの基本方式

📌 在庫管理における発注の2大方式

在庫補充のための発注には大きく2つのアプローチがあります。「何をトリガーに発注するか」という点が根本的な違いです。

比較軸定量発注方式定期発注方式
発注のタイミング在庫が一定量(発注点)を下回ったとき決められた一定周期(週1回・月1回など)
発注量毎回同じ量(固定)毎回異なる(在庫状況に応じて変動)
在庫管理の頻度常時(リアルタイム監視が必要)発注日のみ(定期チェック)
安全在庫少なくて済む多く必要(発注間隔分をカバー)
向いている品目Aランク品・高額品・重要部品Bランク品・低額品・需要変動が大きい品目
管理コスト高い(常時監視)低い(定期チェックのみ)
欠品リスク低い(発注点で自動発動)発注間隔が長いと欠品しやすい
別名発注点方式・Qシステム定期補充方式・Pシステム

定量発注方式——発注点と発注量

基本定量発注方式(発注点方式)とは

在庫量が一定の水準(発注点)を下回ったときに、決まった量(発注量)を発注する方式です。発注のタイミングは変動しますが、発注量は常に一定です。

📌 発注点の計算式

発注から入荷までの時間(リードタイム)中に消費される在庫量を確保するのが発注点です。

発注点 = 1日あたり平均需要量 × リードタイム(日)+ 安全在庫

計算例:

  • 1日の平均需要量:10個
  • リードタイム:5日
  • 安全在庫:20個

発注点 = 10 × 5 + 20 = 50 + 20 = 70個

在庫が70個を下回ったタイミングで発注をかける。

⚠️ 発注点の意味:「70個あるうちに発注しないと、入荷前に在庫が尽きる可能性がある」という警戒ラインです。リードタイム中に70個消費するため、70個を切ったら即発注が必要です(安全在庫20個は予備バッファ)。

定期発注方式——発注量の計算

基本定期発注方式とは

決まった周期(発注サイクル)ごとに在庫を確認し、目標在庫水準(最大在庫量)まで補充するために必要な量を発注する方式です。タイミングは固定ですが、発注量が毎回変わります。

発注量 = 最大在庫量 − 現在在庫量 − 発注残
📌 最大在庫量の計算式
最大在庫量 = 1日平均需要量 ×(発注サイクル + リードタイム)+ 安全在庫

発注サイクル分+リードタイム分の需要に対応できる在庫が必要です。

計算例:

  • 1日の平均需要量:10個
  • 発注サイクル:7日
  • リードタイム:3日
  • 安全在庫:15個
  • 現在在庫量:30個
  • 発注残(未入荷分):0個

最大在庫量 = 10 × (7 + 3) + 15 = 100 + 15 = 115個

発注量 = 115 − 30 − 0 = 85個

安全在庫——需要変動に備えるバッファ

📌 安全在庫とは

需要の変動・リードタイムの遅延に備えて余分に保有する在庫です。「どれくらい需要が読み外れてもOKか」という許容水準(サービス率)に基づいて決めます。

安全在庫 = 安全係数(z)× 需要量の標準偏差(σ)× √リードタイム
サービス率安全係数(z)意味
84.1%1.0100回のうち16回は欠品
90%1.28100回のうち10回は欠品
95%1.65100回のうち5回は欠品
99%2.33100回のうち1回は欠品
99.9%3.091000回のうち1回は欠品
⚠️ 安全在庫を増やすほど欠品リスクは下がりますが、在庫保有コスト(保管費・資金コスト)が増加します。適切なバランスを見つけることが在庫管理の核心です。

ダブルビン方式——定量発注の簡易版

基本ダブルビン方式(二容器法)

同量の在庫を2つの容器(ビン)に分けて保管し、1つ目のビンを使い切ったときに発注する方式です。2つ目のビンの量が「安全在庫+リードタイム中の消費量」に相当します。

📌 ダブルビン方式の仕組み
  1. 容器Aから在庫を消費し始める
  2. 容器Aが空になったとき → 発注をかける(この時点が発注点)
  3. 容器Bから在庫を消費しながら、入荷を待つ
  4. 入荷したら容器Bを補充し、残量を容器Aに入れる

ダブルビン方式は在庫の「見える化」が容易で、管理システムが不要なため、低コストで実施できます。工場の補助材料、医療用消耗品、事務用品などに向いています。

ABC分析——品目の優先順位付け

📌 ABC分析とは

品目を「使用金額(消費量 × 単価)」の高い順に並べ、上位のものから A・B・C に分類する手法です。「大切な少数(A)に注力し、残多数(C)は省力化する」パレートの法則の応用です。

ランク品目数の割合使用金額の割合管理方針
Aランク約20%約80%厳重管理・定量発注方式・常時在庫管理
Bランク約30%約15%通常管理・定期発注方式
Cランク約50%約5%簡易管理・まとめ発注・ダブルビン方式

ABC分析の実施手順

  1. 各品目の年間使用金額(消費量 × 単価)を計算する
  2. 使用金額の高い順に並べる
  3. 累積使用金額の比率を計算する
  4. 累積70〜80%までをAランク、80〜95%をBランク、残りをCランクに分類する
⚠️ ABC分析は金額ベースで分類することが多いですが、「出荷頻度」「緊急度」「調達リスク」なども加味した分類が実務では重要です。安価でも欠品が致命的な部品はCランクでも特別管理が必要です。

経済的発注量(EOQ)——最適な発注量の計算

📌 EOQ(Economic Order Quantity)とは

在庫に関わるコストを最小化する「最適な1回の発注量」を求める公式です。「発注コスト」と「在庫保有コスト」のトレードオフを考慮します。

EOQ = √(2DS / H)
記号意味
D(Demand)年間需要量(個)
S(Setup/Ordering cost)1回あたりの発注費用(円)
H(Holding cost)1個あたりの年間在庫保有コスト(円)

EOQの背景にある考え方

  • 発注量を増やす → 発注回数減 → 発注コスト減、しかし平均在庫増 → 在庫保有コスト増
  • 発注量を減らす → 発注回数増 → 発注コスト増、しかし平均在庫減 → 在庫保有コスト減
  • 2つのコストが等しくなる点がEOQで、総コストが最小になる

計算例:

  • 年間需要量(D):1,200個
  • 1回の発注費用(S):5,000円
  • 1個あたり年間保有コスト(H):500円

EOQ = √(2 × 1,200 × 5,000 / 500)

= √(12,000,000 / 500)

= √24,000

= √(400 × 60)

= 20√60 ≈ 154.9 → 約155個

EOQを使った発注回数と発注間隔の計算

上記の例でEOQ = 155個の場合:

年間発注回数 = D / EOQ = 1,200 / 155 ≈ 7.7回 → 約8回

発注間隔 = 365日 / 8回 ≈ 45.6日 → 約46日に1回

発注方式の選択基準——まとめ比較

状況・条件推奨発注方式理由
高額品・重要部品定量発注常時監視で欠品を防ぐ価値がある
需要変動が大きい品目定期発注毎回需要を確認して発注量を調整
低額・汎用品定期発注 or ダブルビン管理コストを抑えたい
リードタイムが長い品目定量発注発注点設定で事前に手を打てる
複数品目をまとめて発注したい定期発注発注日を統一して業務効率化
POSデータで自動管理定量発注在庫情報のリアルタイム把握が容易
⚠️ ABC分析と発注方式を組み合わせることが実務・試験ともに重要:
Aランク(高額・重要)→ 定量発注で厳格管理
B・Cランク(低額・汎用)→ 定期発注やダブルビンで省力管理

よくある疑問——FAQ

Q1. 定量発注と定期発注の一番の違いは何ですか?
「何が固定で何が変動か」が違います。定量発注は「発注量が固定・タイミングが変動」、定期発注は「タイミングが固定・発注量が変動」です。この逆の関係が試験で最も問われる核心です。
Q2. EOQの計算で「√の中が整数にならない場合」はどうしますか?
試験では計算がきれいになる数値が設定されることがほとんどです。もし割り切れない場合は「最も近い整数」または「切り上げ/切り下げ」で答えます。実務では「最小ロット数(箱単位・梱包単位)」の制約で最終的な発注量が決まります。
Q3. 定期発注方式で「発注残」とは何ですか?
すでに発注済みで、まだ入荷していない在庫のことです。発注残がある場合、それを加味しないと二重発注になるため、「発注量 = 最大在庫量 − 現在在庫量 − 発注残」という式で計算します。
Q4. ABC分析でAランクを多く設定すると良いのですか?
Aランクを増やすと「手厚く管理する品目」が増え、管理コストが増加します。ABC分析の効果は「重要な少数に注力する」ことにあるため、Aランクは品目数の20%前後に抑えるのが一般的です。全品目をAランクにしたら分類の意味がなくなります。
Q5. 安全在庫を多く持つことのデメリットは何ですか?
①在庫保有コストの増加(保管スペース・金利・陳腐化リスク)②キャッシュフローの悪化(在庫に資金が固定される)③需要予測の精度向上へのインセンティブが失われる、などです。欠品コストと在庫保有コストのバランスを見ながら適正安全在庫を決めることが重要です。
Q6. EOQの前提条件はどのようなものですか?
①需要量が一定(確定的)②リードタイムが一定③単価が一定(数量割引なし)④欠品を許容しない⑤一括入荷——これらの前提のもとで成立する公式です。現実にはこれらが揺らぐため、EOQはあくまで「理論値」として使われます。試験では前提条件を踏まえた上で計算するかどうかを問う問題も出ることがあります。

まとめ——発注方式の学習ポイント

📌 試験前に確認する重要ポイント
  1. 定量発注:量が固定・タイミングが変動(在庫が発注点を下回ったとき)
  2. 定期発注:タイミングが固定・量が変動(一定周期ごとに最大在庫まで補充)
  3. 発注点 = 平均需要量 × リードタイム + 安全在庫
  4. EOQ = √(2DS/H):発注コストと保有コストが等しくなる最適発注量
  5. ABC分析:Aランク→定量発注・厳格管理、C→省力管理

発注方式は「どちらが優れているか」ではなく「どちらが適切か」を品目特性に応じて判断する問題です。ABC分析と組み合わせて「高額品はA → 定量発注で厳格管理」「低額品はC → ダブルビンや定期発注で省力管理」という流れを体に染み込ませましょう。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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