誰に売るかを決めずに施策を考えていませんか?与件文を読んで「強みを活かして集客する」と書いてしまうと、採点官には「誰に向けた施策なのかが見えない」と判断されます。事例IIで安定して得点するには、STP分析の型を身につけることが近道です。一緒に整理していきましょう。
目次
STPとは何か
STP分析とは、Segmentation(市場を分ける)・Targeting(狙うセグメントを選ぶ)・Positioning(競合と差別化する)の3段階で構成されるマーケティング戦略の基本フレームワークです。事例IIでは「誰に・どんな価値で・どう違いを出すか」を論述するための骨格として機能します。
Segmentation ― 市場を切り分ける
セグメンテーション
まず「市場全体」をいくつかの属性や行動パターンで分類します。年齢・性別・ライフスタイル・購買頻度など、さまざまな切り口で「どんなかたまり(セグメント)があるか」を洗い出す作業です。
事例IIでの読み方:与件文に登場する顧客の描写(「〜世代が多い」「〜を目的に来店する」)がセグメントのヒントになります。
Targeting ― 狙うセグメントを選ぶ
ターゲティング
洗い出したセグメントの中から、自社の強みが最も活きる層を選択します。「全員に向けて売る」のではなく、「この層に集中する」と絞り込む意思決定がターゲティングです。
事例IIでの読み方:「強み」「経営資源」「課題」と照らし合わせて、自社が最も価値を発揮できるターゲットを選びます。
Positioning ― 競合と違う立ち位置を決める
ポジショニング
選んだターゲットに対して、競合他社とどう違うかを明確にします。「価格×品質」「専門性×利便性」など複数の軸を設定し、自社だけが占められる立ち位置(ポジション)を定義する作業です。
事例IIでの読み方:「他社にはない強み」「独自性」「歴史・技術」などが差別化軸の候補になります。
事例IIでSTPがどう問われるか
事例IIの設問は「ターゲット」「強みの活用」「施策の提案」の形で出題されますが、その多くはSTPの構造に沿っています。設問文のキーワードからどのフェーズが問われているかを判断する練習が重要です。
| 設問のキーワード例 |
対応するSTPフェーズ |
解答で押さえるポイント |
| 「どのような顧客層を」「ターゲットを明示し」 |
T(ターゲティング) |
年齢・性別・ライフスタイル・利用シーンを具体的に記述する |
| 「新規顧客を獲得するための施策」 |
T + P(ターゲット選定+差別化) |
誰に・何を・どんな強みで、の順で構成する |
| 「自社の強みを活かして」「他社と差別化して」 |
P(ポジショニング) |
競合が提供できない自社固有の価値を軸に示す |
| 「既存顧客のリピート率を高める」 |
T(既存セグメントの深耕) |
現在のターゲット像を再確認し、ロイヤルティを高める施策を展開する |
| 「市場を細分化して」「層を分けて提案」 |
S(セグメンテーション) |
切り口(デモグラ・サイコグラ・行動変数)を明示して分類する |
解答パターンの基本形
ターゲット:〔年齢・性別・ライフスタイル等〕を持つ〔具体的な顧客像〕
提供価値:自社の〔強み・独自性〕を活かし、〔ベネフィット〕を提供する
差別化軸:競合にはない〔専門性・品質・体験・利便性等〕によって差別化する
期待効果:〔客数・客単価・リピート・認知〕の向上につながる
セグメンテーションの切り口
セグメンテーションには複数の切り口があります。事例IIでは与件文に書かれた顧客描写をこの3軸で整理すると、ターゲットの輪郭が見えてきます。
年齢・性別・家族構成・職業・収入・学歴など、統計的に測定できる属性で分類する切り口です。
例)「40〜60代の主婦層」「子育て世代(30代夫婦)」「シニア単身男性」「20代の女性会社員」
ライフスタイル・価値観・趣味・パーソナリティなど、心理的な特性で分類する切り口です。
例)「健康意識が高い層」「体験・非日常を重視する層」「地産地消にこだわる層」「利便性を優先する層」
購買頻度・利用シーン・ベネフィット追求型・ロイヤルティなど、実際の行動や使われ方で分類する切り口です。
例)「週1回以上来店するリピーター」「贈答用途のみの利用者」「平日ランチ利用の会社員」「観光のついでに立ち寄る一見客」
事例IIの典型的なターゲット像
過去の事例IIでは、特定のターゲット像が繰り返し登場します。6つのパターンを押さえておくと、与件文を読んだときに「このターゲットだ」とすぐに対応できます。
PATTERN 01
高齢者・シニア層(地域コミュニティ系)
60代以上
地域密着
交流重視
地域で長く暮らすシニア層は、商品・サービスそのものへの満足だけでなく「居場所」「交流」「安心感」を求める傾向があります。コミュニティ施策・常連化施策と相性がよいターゲットです。
解答キーワード例:地域コミュニティへの参加促進、常連客化、健康・安心・なじみ感、口コミ紹介
PATTERN 02
子育て世代の親(利便性・安心重視)
30〜40代
子連れ
安全・安心
小さな子どもを持つ親は「安全・衛生・子ども対応」に敏感で、時間的余裕が少ないため利便性も重要視します。子育てに寄り添う体験設計やキッズスペースなどが有効な施策となります。
解答キーワード例:子ども連れ対応、アレルギー対応、予約の簡便化、安心感の訴求
PATTERN 03
20〜30代女性(SNS親和・体験重視)
20〜30代
SNS発信
体験・映え
SNSでの情報発信に積極的で、体験価値や「映え」要素に敏感なターゲットです。インスタグラム等での口コミ拡散が見込めるため、情報拡散効果を解答に組み込みやすいのが特徴です。
解答キーワード例:SNS発信による認知拡大、体験価値の訴求、フォトジェニックな空間・商品
PATTERN 04
観光客・インバウンド
一見客
地域外・海外
非日常体験
地域外・国外からの来訪者は「その土地ならではの体験・購買」を求めています。高単価商品の訴求や体験型コンテンツとの組み合わせが有効で、観光案内所・宿泊施設との連携施策も解答に使えます。
解答キーワード例:地域の希少性・ストーリー訴求、土産品化、体験型コンテンツ、多言語対応
PATTERN 05
ビジネスパーソン(平日昼・週末)
会社員・個人事業主
時間効率
平日ランチ
時間的制約が強く、効率・品質・コスパを重視するターゲットです。平日ランチ帯の回転率向上やテイクアウト強化、予約システムの整備といった施策と親和性が高い層です。
解答キーワード例:時短・利便性、テイクアウト、事前予約、接待・会食ニーズへの対応
PATTERN 06
地域の企業・法人顧客
BtoB
継続取引
信頼・実績
地元企業との取引関係を築くことで、安定的な売上基盤を構築できます。法人向け特別プラン・請求書払い・一括発注対応など、BtoBならではの施策が解答の選択肢に加わります。
解答キーワード例:法人契約・定期発注、信頼関係の構築、地域企業とのパートナーシップ
6つのパターンを覚えておくだけで、与件文を読んだときに「あ、シニア層の事例だ」「観光客向けの施策問題だ」と反応が早くなります。型を持ち込むことが事例IIの得点安定につながります。
ポジショニングを解答に組み込む方法
STPの中でも、ポジショニングは解答に「差別化の軸」を明示することで説得力が増します。ただ「差別化する」と書くだけでなく、何と何の軸でどう違うかを示すことが求められます。
競合と差別化する軸の選び方 ― 3ステップ
STEP 1:競合が強みとしている軸を確認する
与件文で「近隣の大型チェーン店」「周辺に類似業者」などが登場した場合、その競合が「価格の安さ」「品揃えの広さ」「アクセスの良さ」などを強みとしているかを読み取ります。
STEP 2:自社だけが持つ強みの軸を選ぶ
「職人の技術」「地元素材へのこだわり」「地域との長年の信頼関係」「専門的な知識・接客」など、競合が短期間では真似できない自社固有の強みを差別化軸に設定します。
STEP 3:ターゲットが価値を感じる軸かを確認する
差別化軸は「自社が誇れるもの」と同時に「ターゲットが求めているもの」でなければ意味がありません。シニア層なら「安心・信頼」、20代女性なら「体験価値・希少性」など、ターゲットのニーズと一致しているかを確認して解答に組み込みます。
ポジショニング解答の書き方例
NG例:「差別化を図り、顧客満足を高める」
OK例:「近隣チェーン店が提供できない職人技術による手作り感と地元食材へのこだわりを前面に打ち出し、健康意識の高いシニア層に対して『安心して食べられる地域の味』として差別化する」
まとめ
STP分析は事例IIの得点を安定させる最重要フレームワークのひとつです。「誰に(T)」「どこで差別化するか(P)」を意識しながら与件文を読む習慣をつけることで、解答の方向性が大きくブレなくなります。
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与件文を読みながら「どんな顧客層が登場しているか」をセグメントとして書き出したか
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「誰に向けた施策か」をターゲットとして冒頭に明示しているか(年齢・ライフスタイル・利用シーン)
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セグメントの切り口(デモグラ・サイコグラ・行動変数)を意識して分類したか
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差別化軸を「競合との比較」で明示し、ターゲットのニーズと一致させているか
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6つのターゲットパターンのうち、事例に該当する像を選んで解答に活用したか
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「ダナドコ(誰に・何を・どのように・効果)」の骨格と組み合わせて解答を構成したか
私が事例IIで一番意識するようになったのは、「ターゲットを書いてから施策を考える」という順番を守ることです。施策を先に思いついてから「誰に」を後から当てはめると、どうしてもピントがぼける。STPは頭の中の整理ツールとして使うだけでなく、解答の構成順序そのものとして使うと安定感が増します。与件文読み込みの段階でメモ用紙に「S(セグメント候補)」→「T(選んだターゲット)」→「P(差別化軸)」と書き出す癖をつけると、制限時間内でも迷わなくなります。
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