事例Iの解法フレームワーク | 中小企業診断士2次試験

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事例Iの過去問を初めて解いたとき、設問に「組織上の問題点を述べよ」とあるのに、何を書けばいいかまったく浮かびませんでした。与件文の言葉をそのまま写すだけで終わってしまって、「これは違う」と感じた記憶があります。2次試験ならではの「答え方の型」があると気づいてから、少しずつ整理できてきました。

2次試験の事例Iは「組織・人事の事例」です。与件文に書かれている中小企業のリアルな問題を、組織論・人事論のフレームワークで診断し、言語化する力が問われます。与件文の言葉をそのまま書き写すのではなく、専門家として言葉を変換する——これが事例Iを解く上でもっとも大切な一歩です。

この記事でわかること
  • 事例Iが「組織論の言葉」で答えることを求める理由
  • 設問を4タイプに分類して解答の方向性を決める方法
  • 与件文の読み方・マーキングのコツと解答プロセス
  • 本番80分の時間配分の目安
目次

「与件文の言葉をそのまま書く」だけでは得点にならない理由

事例Iで陥りやすい失敗が、与件文の表現をそのまま解答に移してしまうパターンです。設問に「組織上の問題点を述べよ」とあっても、「ベテランと若手の間に溝がある」「部門をまたぐ仕事が進まない」という与件文の表現をそのまま書いても、得点になりにくい。

理由はシンプルです。中小企業診断士は経営コンサルタントという専門職です。社長に「コミュニケーションを増やしてください」と伝えるのではなく、「機能別組織の縦割り構造により横断的な情報共有が阻害されています。部門横断のプロジェクトチームを設置し、担当者同士が直接連携できる体制を構築することが必要です」と伝える——これが診断士の仕事です。

事例Iの解答に求められるのは、与件文の問題を組織論・人事論の言語に変換する力です。

与件文の表現(変換前)
ベテランと若手の間に溝がある
部門をまたぐ仕事が進まない
現場の判断が遅い
やる気のある社員が辞めていく
社長がすべての決定を行っている
診断士の言語(解答で使う)
OJT・ナレッジ共有の仕組みの欠如
機能別組織による縦割り・部門間連携不足
権限委譲・分権化の未整備
評価・報酬制度と内発的動機付けの不整合
トップダウン型の意思決定による現場の自律性低下
日常の場面で考えると——
新入社員が「このルールはこう決まっているから従う」と暗記している場合と、「顧客トラブルを防ぐためにこのルールがある」と理解している場合では、例外ケースへの対応力がまったく違います。事例Iの解答も同じです。与件文の表現を暗記するより、「なぜ組織論の言葉を使うのか」という構造を理解した方が、設問のバリエーションに柔軟に対応できるようになります。

設問の4タイプを見極める

事例Iの設問には、よく出るパターンがあります。設問を読んだ瞬間に「どのタイプか」を判断できると、解答の方向性を決める時間が大幅に短縮されます。

タイプA
強み活用型
企業の強みや経営資源を活かして、新規事業・多角化・成長に対応するための組織・人事施策を問う。与件文のポジティブな情報(人材・技術・文化)を根拠にする
例:「A社が新規事業を成功させるために必要な組織的対応を述べよ」
タイプB
課題解決型
与件文から読み取れる組織・人事上の問題点を特定し、改善策を提案する。与件文のネガティブな記述(溝・連携不足・不満)が解答の根拠になる
例:「A社の組織上の問題点を述べ、その解決策を提案せよ」
タイプC
理由説明型
社長がとった施策・組織変更の背景や意図を、経営戦略と組織論を結びつけて説明する。「なぜそうしたか」を問われる
例:「A社が機能別組織から事業部制へ移行した理由を述べよ」
タイプD
制度設計型
採用・評価・育成など、具体的な人事制度の内容・設計・改善を問う。「何をどう設計するか」という実務提案の形式
例:「A社が導入すべき人事評価制度の内容を述べよ」
設問の主語(A社が / A社の / 社長が)と動詞(述べよ / 提案せよ / 説明せよ)に注目すると、タイプの判断が速くなります。「提案せよ」はタイプB・D、「理由を述べよ」はタイプC、「対応を述べよ」はタイプAが多いです。

解答に使うキーワードの引き出し

設問タイプが決まったら、解答の材料となるキーワードを引き出します。与件文の記述と照合しながら、使えるキーワードを選びます。は特に頻出・得点直結のキーワードです。

組織構造
機能別組織 事業部制組織 マトリクス組織 プロジェクトチーム フラット化 ネットワーク組織 部門間連携 縦割り構造の弊害
権限・意思決定
権限委譲 分権化 意思決定の迅速化 現場裁量の拡大 自律性の向上 トップダウン→ボトムアップ
人材育成・採用・配置
OJT Off-JT ナレッジ共有・形式知化 多能工化 キャリアパスの明確化 計画的配置転換 採用基準の見直し メンタリング・コーチング
評価・処遇・モチベーション
目標管理制度(MBO) 成果主義・業績連動型評価 内発的動機付け 承認・表彰制度 公平・透明な評価基準 報酬体系の見直し 仕事の意味・やりがい
組織文化・変革
組織文化の変革 ビジョン・理念の共有 変革への抵抗の緩和 リーダーシップ チェンジエージェント 心理的安全性
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このキーワードを丸暗記しようとすると、本番で「どれを使えばいいか」迷ってしまいます。与件文を読みながら「この状況なら権限委譲かな」と自然に紐づけられるようになるのが目標です。過去問を繰り返す中で少しずつ体に馴染んでいく感覚がありました。

解答プロセス 4ステップ

01
設問を先に読み、タイプを把握してから与件文へ
与件文を先に読み始めるより、設問を先に全読みしてタイプを把握する方が効率的です。「何を問われているか」を頭に入れた状態で与件文を読むと、必要な情報に自然と目が向きます。この順序だけで、与件文の読み直し回数が減ります。
02
与件文を色分けしてマーキング
与件文を精読しながら、組織構造の記述人材・育成・採用の記述経営者や社員の言動・感情強みと弱みを色分けしてマークします。事例Iでは数字より「人と組織の状態」の記述が根拠になります。設問番号を余白に書き込むと、後で探す手間が省けます。
03
設問ごとに「何が問題か→なぜか→どうするか」を箇条書き
マーキングした与件情報とキーワードを照合し、現状(何が問題か)原因(なぜ起きているか)対策(どうすべきか)の3点を解答用紙の余白に箇条書きします。この段階ではキーワードの断片で構いません。「方向性」が固まることが目的です。
04
「現状→課題→施策→効果」の論理構造で文章化
箇条書きを、「〜という現状において、〜という課題があるため、〜することで〜の効果が期待できる」の構造で文章にまとめます。与件文の表現は根拠として使いつつ、結論は必ず組織論・人事論のキーワードで表現します。字数が許す範囲で「効果まで」書くと加点につながります。

本番80分の時間配分

0〜5分
設問の先読み——全設問を通読し、タイプを把握する。字数配分・難易度を確認し、解答する順番を決める
5〜25分
与件文の精読・マーキング——組織・人事・人物の言動・強み弱みを色分けマーク。設問番号を余白に書き込みながら読む
25〜35分
設問解釈・解答方針の決定——各設問のタイプを確定し、使うキーワード・解答の骨格を箇条書きで固める。この段階で全設問の方向性が揃っているのが理想
35〜75分
解答の記述——「現状→課題→施策→効果」の構造で各設問を文章化。字数配分に注意しながら進める
75〜80分
見直し——誤字・脱字・字数オーバー・「診断士の言語で書けているか」を確認
よくある時間不足のパターンは「与件文を読み込みすぎて解答時間が足りなくなる」です。与件文精読は20分を目安の上限に。設問解釈に10分しっかり使う方が、解答の質が上がります。
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「設問解釈に時間をかけすぎる」という声もよく聞きますが、方向性がズレたまま書き始めると後から修正できません。最初の35分で骨格を固めることに慣れると、解答スピードが自然と上がってきます。焦らず、この順番を体に染み込ませていきたいと思っています。

まとめ

  • 事例Iでは与件文の表現をそのまま書くのではなく、組織論・人事論の言語に変換して解答する
  • 設問は「強み活用型 / 課題解決型 / 理由説明型 / 制度設計型」の4タイプに分類して解答の方向性を決める
  • 与件文では組織構造・人材・人物の言動・強み弱みを色分けしてマーキングする
  • 解答は「現状→課題→施策→効果」の論理構造で組み立て、効果まで書くと加点につながる
  • 本番80分は「設問先読み5分・精読20分・設問解釈10分・記述40分・見直し5分」が目安
U のメモ
事例Iを解いていて「これが正解だ」という手ごたえがなかなか感じられないのは、正解の幅が広いからでもあります。採点者が見ているのは「診断士として適切な言語で、論理的に診断できているか」という点だと整理するようにしました。キーワードを正確に使いつつ、与件文の事実を根拠にして書く——その積み重ねが得点につながると感じています。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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