実用新案法まとめ|無審査登録・技術評価書・特許法との違いを図解で整理

U

「実用新案法って特許と何が違うの?」という疑問から整理を始めました。保護対象・存続期間・審査の有無という3軸で比較すると、スッキリ区別できます。

高頻度難易度 ★★☆
この記事でわかること

実用新案法の保護対象(物品の形状・構造・組み合わせ)、特許法との違い(存続期間・審査の有無・技術水準)、無審査登録制度の仕組みと技術評価書、4法横断比較(特許・実用新案・意匠・商標)について整理します。

目次

実用新案法とは何か

実用新案法は、物品の形状・構造・組み合わせに関する「考案」を保護する法律です。特許が「発明(高度な技術的思想の創作)」を対象とするのに対し、実用新案は比較的小さな工夫・改良を保護します。

保護対象「考案」とは
  • 物品の形状構造組み合わせに関するもの
  • 「方法」は保護されない(特許との大きな違い)
  • 「物品」が必須なので、化学物質・食品・医薬品は対象外
  • 例:食器の形状、工具の構造改良、部品の組み合わせ
「発明」との違い(特許との比較)
  • 特許:高度な技術的思想の創作
  • 実用新案:物品の形状等に関する技術的思想の創作(高度性不要)
  • 特許より「アイデアの高さ」のハードルが低い
  • 中小企業・個人発明者が使いやすい制度として設計

無審査登録制度:実用新案の最大の特徴

実用新案法の最大の特徴は「無審査登録」です。特許のように実質審査(新規性・進歩性の審査)を経ずに、方式審査(書類の形式チェック)のみで登録されます。

無審査登録のメリット
  • 出願から約6ヶ月で登録(特許は平均2〜3年)
  • ライフサイクルが短い製品でも権利化が間に合う
  • 審査請求費用が不要(特許より費用を抑えられる)
  • 競合他社の製品化を素早く抑制できる
無審査登録のリスク
  • 新規性・進歩性が審査されないまま権利になる
  • 無効な権利(無効理由あり)を行使してしまうと損害賠償リスクがある
  • そのため技術評価書の請求が必要になる
技術評価書とは(試験頻出)

実用新案権者が権利行使をする際は、特許庁に技術評価書の請求をして、その書を提示することが義務づけられています(実用新案法29条の2)。技術評価書は、権利の新規性・進歩性を事後的に評価したもので、「この権利が有効そうか」の目安になります。技術評価書なしに権利行使して損害を与えた場合、不当な権利行使として損害賠償責任を負う可能性があります。

実用新案権の手続きフロー

1
出願(方式審査のみ)

考案の内容・図面を含む出願書類を特許庁に提出。実質審査なし。形式(記載不備等)のみチェック。

2
登録(約6ヶ月後)

方式審査を通過すれば実用新案権として登録。実用新案登録番号が付与される。

3
技術評価書の請求(権利行使前に必要)

権利者・第三者のどちらでも請求可能。特許庁が新規性・進歩性を評価した書類を発行。権利行使の前に必ず提示が必要(義務)。

4
権利行使・存続期間満了

存続期間は出願から10年(特許の20年より短い)。侵害者への警告・差止め・損害賠償請求が可能。

特許法・意匠法・商標法との4法横断比較

比較項目 特許権 実用新案権 意匠権 商標権
保護対象 発明(方法含む) 物品の形状・構造・組み合わせ 物品等のデザイン 商品・サービスの標識
実質審査 あり なし(方式審査のみ) あり あり
存続期間 出願から20年 出願から10年 登録から25年 登録から10年(更新可)
登録の速さ 遅い(平均2〜3年) 速い(約6ヶ月) 普通(約1年) 普通(約1年)
方法の保護 あり なし なし なし
特有制度 審査請求制度(3年以内) 技術評価書(権利行使前必須) 部分意匠・関連意匠・秘密意匠 不使用取消審判(3年)

実用新案法の主要条文ポイント

論点 内容
新規性要件 出願前に公知・公用になった考案は登録不可(特許と同様)。ただし実質審査はされない
先願主義 同一考案を複数人が出願した場合、先に出願した者が権利を取得
補正の制限 特許より補正(出願後の内容変更)の範囲が狭い。基本的に登録後の補正は不可
国際出願 PCT(特許協力条約)に基づく国際出願で実用新案登録出願も可能(一部国のみ対応)
実用新案→特許出願への変更 実用新案登録出願を特許出願に変更することは出願後一定期間内に限り可能(逆も可)

過去問で確認する

H26年度 第14問(経営法務)

実用新案権に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア. 実用新案登録出願は、方式審査及び実質審査を経て登録される。
イ. 実用新案権の存続期間は、出願日から20年である。
ウ. 実用新案権者が権利行使をするためには、技術評価書を提示する必要がある。
エ. 実用新案法では、物品のデザインのみを保護対象とする。

ウ が適切。
ア:方式審査のみ(実質審査なし)。イ:存続期間は出願から10年。エ:保護対象は形状・構造・組み合わせ(デザインは意匠法)。
R2年度 第15問(経営法務)

特許法と実用新案法の比較について問われた問題。実用新案が保護する対象に「方法」が含まれるかについての正誤。

含まれない(誤りの選択肢)。
実用新案は「物品の形状・構造・組み合わせ」のみ対象。「方法」の考案は保護されない。特許法のみが方法の発明を保護する。

まとめ

整理ポイント
  • 実用新案は物品の形状・構造・組み合わせを保護(方法・化学物質は対象外)
  • 最大の特徴:無審査登録(方式審査のみ、新規性・進歩性審査なし)
  • 登録が速い(約6ヶ月)→ ライフサイクルが短い製品・改良品に有利
  • 存続期間:出願から10年(特許は20年、意匠は登録から25年)
  • 権利行使には必ず技術評価書の提示が必要(義務)
  • 技術評価書なし権利行使で損害 → 損害賠償責任を負う可能性あり
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

目次